また、桜の国で

著者 :
  • 祥伝社
4.32
  • (159)
  • (126)
  • (38)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 1076
感想 : 143
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635084

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ポーランドについて何も知らなかった。信じられないような事があった戦争時代。読んで良かった。

  • 第2次大戦直前から戦中にかけてポーランドを舞台とした日本人と日本を愛するポーランド人たちの交流。主人公・棚倉慎はロシヤ人を父に持つ2世。子供の頃に同年代のポーランド少年カミルとの出会いの思い出を持つ。主人公がドイツからポーランドへの列車で起こった出来事から、いきなりこの世界に惹き付けられ一気に読み上げた。ポーランドを巻き込んだ戦争の悲惨さ、犠牲になっていった人々。また義と友情のために闘う人たちの姿の素晴らしさが感動的に謳いあげられる。それにしてもこれは史実なのか、完全なフィクションなのか?フィクションだとしても、ストーリーを構想した著者には感服する!

  • ワルシャワ蜂起とその後の蜂起軍の話を描く本はそう多くはない。ポーランド人の誇り高き生き方に、感嘆する。登場人物がどれも意志が強く芯があり、そして義を感じる。

    「人が、人としての良心や信念に従ってしたことは、必ず相手の中に残って、いつか倍になって戻ってくるんだ」というセリフが出てくるが、これを体現している人たちばかりで、しかもそれが日本人であり、ポーランド人であり、アメリカ人であり。様々な国籍で様々なバックグラウンドを持つ登場人物が、いろんな角度からこのセリフのように信念に従って、ただただ恩を送るために、返すために、生き抜いていく。
    とても残酷で恐ろしい描写が続くので複雑ではあるが、とても美しい生き様をみた気がした。

    ポーランド語が要所に出てくるのがまた面白かった。

  • 小説の中にも何度か「日本ではポーランドの事はあまり関心が無い」と語られるように、私も”アウシュヴィッツの有った場所”ぐらいの知識しかない。なのでこの本に続いて子供向けの「ポーランドの歴史」本、を読んでいる。

  • ずっしりとした読後感に正直,心が重たくなりました。

    ショパンが祖国を想って数々の名曲を作曲したことは知識としては知っていましたが,この本を読んでポーランドという国の過酷な歴史を初めて知り,改めてショパンがどのような思いで作曲したかに思いを馳せた次第です。

    この作品の中で描かれる登場人物は,まさに人間関係における理想を体現したものであって,現実の世界では綺麗ごとにしかすぎないかもしれません。
    それでも,本書の一貫したテーマである「人が,人としての良心や信念に従ってしたことは,必ず相手の中に残って,倍になって戻ってくる」を心にとどめておきたいと強く思いました。

    その意味で,多くの人,特に若い人には是非読むことをおすすめしたい作品です。

  • 力作です。戦争は何故起こるのか?考えさせられます。
    描写が少し、くどいと感じる所もあるが、戦争の場所と時代を経験してない作者が、ここまで書けるのは驚きだ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    ショパンの名曲『革命のエチュード』が、日本とポーランドを繋ぐ!それは、遠き国の友との約束。第二次世界大戦勃発。ナチス・ドイツに蹂躙される欧州で、“真実”を見た日本人外務書記生はいかなる“道”を選ぶのか?

    重厚な装丁で内容も重厚。第二次世界大戦時のポーランドと日本の絆を書いたフィクションなのですがどこまでフィクションなんだろうと思わせる力があります。
    今まで戦争映画を見ていてポーランドの悲惨さはよく分かっていたつもりですが、考えてみれば日本は枢軸国側なのでヒットラーと手を結んでいたんですよね。距離が遠すぎてあまり関わりが無い気がしますが、この本ではポーランドとの絆と共に日本がナチスドイツと手を結んだ事による忸怩たる思いががっつりと描かれています。主人公の慎をロシアとのハーフにする事によって、アイデンティティーの揺らぎを演出していて、ポーランドやユダヤ人へのシンパシーの根拠としています。共闘する為の動機づけとしては弱いという向きもあるかもしれませんが、もしかしたら人種的に揺らぎのない純潔日本人の思い上がりかもしれません。

  • 戦争の本を読むと必ず触れられる悲惨な物語。これまでも多くの物語を読んできたが、本書はその中でも特別な一冊となった。第二次大戦中、ナチスに蹂躙され、英仏から見放され、最後はソ連に支配された国であるポーランド。歴史上何度も侵略され、近世だけで4回も地図から消えた国。ドイツ系、スラブ系が混在するだけでなく、ユダヤ人も多く、国民同士も憎しみあい、密告や略奪、深刻な対立を抱える。それでも祖国のためにと立ち上げる人々。その人々とともにあろうとするロシア人とのハーフである日本人外交官。自身も日本に対して複雑な思いを抱え、その心情の描写が胸に刺さる。本書は、直木賞ノミネート作品を高校生が読んで、高校生直木賞を選ぶという企画で首相した作品。多くの高校生がこの本を読んだことを嬉しく思うと同時に、本書を大賞に選んだ彼らの読む力に驚いた。

  • 歴史が学べる。
    登場人物の生死をさほど重要視しないスタンス
    嫌いじゃない。

  •  著者お得意のドイツ、欧州史関連。舞台は第2次世界大戦時のポーランドだ。『革命前夜』が非常に面白かったので、同じく直木賞候補となったという本書に手を付けた。

     主人公は外務書記生棚倉慎、1938年にワルシャワの在ポーランド日本大使館に着任してくるところから物語は始まる。ロシア人とのハーフといういきなりアイデンティティの不安な設定。その彼が、ナチス・ドイツが台頭してくるヨーロッパで、ポーランド人、ユダヤ人といった民族の存亡を賭けた闘争に巻き込まれていくお話だ。

     平原の国ポーランド。地図上からなんども消えては復活する不遇の国家。 内弁慶ぶりや外交下手なところが日本に似ていたり、13世紀に「カリシュ法」を定め世界的にも珍しくユダヤ人迫害をほとんど行ってこなかった国。今まで知らなかったポーランド、ポーランド人の横顔が知れて非常に面白かった。
     そんな親日の国で独ソの動きを掴まんと努力する在波日本大使館員たちの奮闘が興味深い。ソ連と隣接するバルト三国、北欧、トルコ等周辺に展開される公使館の中、対ソ情報収集の本拠地ともなっていたのが他ならぬこのポーランドだったそうだ。

     本国の対応、ドイツの電光石火の豹変ぶりや複雑怪奇に荒れ狂うヨーロッパ情勢も、大使館員目線で描かれると、その翻弄されっぷりも実にリアルだ。日本大使館の立ち位置も大使のキャラで揺れ動く様も面白い。親ナチスの大島浩中将がベルリンの東郷茂徳を駐ソ大使へ押し出し、駐ソ大使重光葵は駐英大使に、駐英大使吉田茂は帰国云々・・・
     『ヒトラーの防具』(帚木蓬生著)でも、こうした大使の異動にともなう現地の対応が違ってくるという話が描かれていたっけね。


     さて、歴史的背景としては面白く、舞台となるポーランドへの理解も深まった。ストーリーや登場人物はどうだったかというと。。。
     先に読んだ『革命前夜』が、ベルリンの壁の崩壊に向かう東ドイツが舞台で、主人公が音楽留学生ということで、目指す先が分かりやすかったのに対し、本作品では、外務書記生がどうなっていくのか、第二次世界大戦の中でどの局面に主人公たちや登場人物が関わっていくのかの見通しが悪く、歴史が刻々と進んでいく中、ポーランドでの日々が淡々と綴られる前半はやや退屈か。幼少の頃に出会った亡命ポーランド人孤児探しも謎解きがやや安易すぎた感もある。
     重苦しいポーランドの歴史に対し、あまりにも主人公をはじめとしたポーランド人以外で関わる人物の背負った物語が軽かったかもしれない。ポーランドに肩入れするだけの気持ちに素直に寄り添えなかった。

     主人公は、日本に帰化したロシア人の父に言われたことを信条に、ポーランド人と苦楽を共にする。
    「お前がポーランドから見る世界は、過酷かもしれないがきっと美しい。(中略)慎、おまえは真実と共にあれ。おまえが正しいと信じたことを、迷わず行えるように」

     もうひとりの重要登場人物、アメリカ人のレイは、こう嘯いて慎と行動を共にする。
    「イデオロギーや国のご都合に歪められたものではなく、本物が見たいそういう時は、底辺に叩き落された連中のもとに降りていくのが、一番いいってことさ」

     彼らがどうしても、その場に身を置かなければならなかった理由が、― これだけではないのだが ―、彼らの駆り立てるものとしては弱いという気がしてならなかった。

     そんな彼ら(ともうひとりユダヤ人)が、最後にドイツの包囲網を突破すべく決死隊を組む。
     ドイツ軍に下問され主人公が見栄を切る。

    「そうだ、私は日本人だ。名は棚倉慎という」

     このラストシーン、もう少し感動できたと思うだが、それまでのところで、いやいやお前の役目はそうじゃないだろうという思いが強く、ただただ哀しかった。時代背景、史実、ポーランドの国情などがリアルに描かれていただけに、主人公周りの描写があまりにもロマンに満ち溢れすぎていたかもしれない。惜しい!

     でも、良い作品でしたよ。

全143件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

須賀しのぶの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×