時が見下ろす町

著者 :
  • 祥伝社
3.11
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本棚登録 : 252
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635138

感想・レビュー・書評

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  • 一つの町の中で起こる事件を描く連作短編集。

    前の話に出てきた登場人物が次の話のどこかで出て来るという構成はよくあるパターンだが、この作品は更にある仕掛けがしてある。タイトルにもそれが込められているのかも。
    各話の謎解きとしては力技のような印象を持つものも多かったが、人間ドラマとしては楽しめた。
    最後の話がきちんと冒頭の話に繋がるのも良い。

    ただ全体的には暗い。
    泥棒、ゆすり、ヤクザ、児童追い回し、詐欺…こんな人たちが集まる町って…。

  • 大きな時計が目印の百貨店「時世堂」。その周辺で時代を超えて、起こった数々の謎を綴った連作短編集。時間軸が行ったり来たりするのが、唯一、分かりにくかったが、一遍一遍に描かれる謎が想像を超えるものであることに、相変わらず作者の巧さを感じずにはいられない。そして、それを上回るラストのまとめ方。作品の初出は2013年から2年に渡って、掲載されたものをまとめたらしいが、こんなに見事に繋がるのだと、ただただ感心してしまった。

  • 短編集ですが繋がっていて、あとから納得したり。

  • 短編集。
    時代は変化するものの、同じ場所を舞台に繰り広げられるミステリー8編。
    【収録作品】白い修道士/暗い融合/歪んだ走姿/苦い確率/撫子の予言/翳った指先/刃の行方/交点の香り。
    一編一編は読み易いのだが、それゆえ他の話にもリンクして登場する人物などを流してしまいそうになる。途中何度か確認しながら読んだが、見落としてしまった部分もあるかなと。すべてを楽しむには、頭の中に登場人物相関図が必要。

  • +++
    町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂(じせいどう)百貨店の隣に立つ一軒の家。その家で、和江は抗癌剤治療に苦しむ四十年連れ添った夫を介護している。ある日、夫の勧めで、気分転換に写生教室に出かけることになり、孫娘のさつきに留守番を頼むことに。その日だけのつもりだったのだが、なぜかさつきはそのまま居座ってしまい……。和江の家が建つ前は時世堂の物置き、その前は製鞄工場、さらにその前は中古タイヤの倉庫……。様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。その前で、繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件とは?
    +++
    第一章 白い修道士  第二章 暗い融合  第三章 歪んだ走姿(フォーム)  第四章 苦い確率  第五章 撫子の予言  第六章 翳った指先  第七章 刃の行方  第八章 交点の香り
    +++

    一見ミステリとは思えないストーリー展開なのだが、いつの間にかするりとミステリの世界に滑り込んでいる印象である。時世堂百貨店がある町で起こる出来事を集めた短編集なのだが、狭い町のあちこちでこんなことが起こっていることを想像すると、それだけでかなり怖い。それは、殺人事件などの大きなものばかりではなく、時に人の心の中に仕舞いこまれた思いまで抉り出すことにもなるのだが、逆にそれを食い止めようとする愛にあふれた行動につながることもある。怖くもあり、胸がじんわりあたたかくもなる一冊である。

  • 自分の本の好みとして、短編があまり好きじゃないみたい。
    んでもって、最後はまた最初の話に戻って幸せになりましたとさ、チャンチャン、て。
    んな訳ないだろ。
    こんな小さな町で色々事件が起こるなあ。

  • 定点観測的なミステリー風連作短編集。

    第一章 白い修道士
    第二章 暗い融合
    第三章 歪んだ走姿(フォーム)
    第四章 苦い確率
    第五章 撫子の予言
    第六章 翳った指先
    第七章 刃の行方
    第八章 交点の香り
    の8編収録。
    時間軸が過去に遡って行くという手法はありきたりながら、百貨店前の土地という定点観測的なところが面白かったです。
    登場人物がいくつかの章でリンクしているのもありきたりなので、全体で一つの大きな物語になっていて、各章ごとで少しずつ全体像が明らかになる感じであったらもっと面白と思います。
    素材がよさそうなだけにちょっと残念です。

  • 【収録作品】白い修道士/暗い融合/歪んだ走姿/苦い確率/撫子の予言/翳った指先/刃の行方/交点の香り 
     ある土地の変遷に関係者の人生を絡めた連作。
    一つ一つの話には首をひねるものもあったが、全体としてみると面白い試みだと思う。

  • 百貨店を中心にした町で起こる短編集。短編が得意な作者だけに色々と駆使して最後にどんでん返し的なストーリーになって楽しませている。が、今回はちょっと現実的ではない話もあったように思う。時代背景があまりはっきりしていないので時系列がよくわからず読み返して、ああそういうことかと納得することたびたび。

  • 町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂百貨店。
    様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。
    大きな時計が見下ろす町で繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件・・・ちょーっと、捻り過ぎというか、無理があるというか、という気はするけど、なかなかおもしろかったのでまぁいいやw

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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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