アーモンド

  • 祥伝社
4.15
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本棚登録 : 1248
レビュー : 96
  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635688

感想・レビュー・書評

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  • ユンジェは扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない、感情がわからない高校生。小さい頃より、母に感情の表現パターンを教え込まれ、普通の子に見えるように訓練されてきた。15歳の誕生日の日、目の前で祖母と母が通り魔に襲われ、祖母は亡くなり、母は植物人間になってしまった。その事件の時でさえも、無表情でその光景を見つめているだけだった。その後、複雑な生い立ちにより激しい感情を持つゴニと出会う。ゴニとの友情、そして恋、感情のない青年の成長の物語。
    淡々と描かれていますが、ユンジェが、そして彼を取り巻く人々がどうなってゆくのか、気になって気になって一気に読んでしまった。感情がわからない少年の苦労の話であったけれど、あとがきにもあるように共感の話の話でもあり、自分に関係ないことは共感の力が薄いという現実も描かれていました。ユンジェを育ててきた母、祖母のユンジェの接し方もどんな子供への子育て・教え方の手がかりの一つにもなるし。読んでよかった。「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」婆ちゃんの言葉はその通りだなと思う。嫌な固定観念は捨てたいね。

  • 喜びも悲しみも愛も恐怖も感じられない、失感情症のユンジェは、他者と共感するとは何かを求め続けていた。
    乱暴なゴニに興味を持ったのは、ユンジェのばあちゃんと母さんを殺傷した犯人の心理状態を理解したかったからだという。
    感情がわからないユンジェに、母さんは状況にあわせた感情表現を必死に丸暗記させ、ばあちゃんはユンジェをそのまま受け止めてくれた。対応の違いはあるが、二人は溢れる程の愛情を与えてくれた。
    それに対し、愛情を知らずに育ったゴニは溢れでる感情を持て余し、言葉で表現できずに力で表していた。それしか方法を知らないから。
    ゴニも、自分とは全く違うユンジェに興味を持つ。
    二人はぶつかり、近づき、友情に命さえも投げ出し、共感しあう。その過程が痛々しく胸が締め付けられる。だからこそ、最後の幸福に心から安堵する。

    読み進めるうちに、感情が感じられないユンジェが最も共感する力と愛する力を持っているのではないかと思う。それは母さんとばあちゃんの愛に包まれて育ったからではないか。
    ほとんどの人は「感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた」とある。そうでなければ生きていけない部分もあるだろう。
    ユンジェは「そんな風に生きたくはなかった」という。
    表紙から各扉絵、全てユンジェがこちらを真っ直ぐに見つめる表情のない顔が描かれている。
    その目に、あなたはどうなの?と静かに問われているようでたじろぐ。
    作者のソン・ウォンピョン、次の作品が待ち遠しいです。

  • 「道端の石ころを見てみろ。何も感じられない代わりに、傷つくこともないだろ」
    生まれつき扁桃体が人より小さく、喜びも悲しみも愛も恐怖も感じることができない16歳のユンジェは、感情が分からないが故にいつも無表情。
    道端の石ころのように何事にも共感することもなければ傷つくこともない。
    「普通」とは違う。
    自分達と違う反応を示す、いつも無表情なユンジェは学校でも孤立する。
    どこの国でも異物を排除する気質は同じ。
    多数決で「普通」の範疇を決めつける。

    相手の感情を読み取れないため却って、裏表のないストレートな言葉を相手に発するユンジェ。
    それ故、物心つかない内に両親とはぐれ不良少年となったゴニの頑なな心も解せたのかもしれない。
    そしてユンジェにとってもゴニとの出逢いと関わりが精神的な成長を促す。

    ユンジェを「世界で一番かわいい怪物」と呼ぶ祖母と、息子が社会で苦労しないように様々な訓練を施す母親。
    この二人の無償の愛に包まれたユンジェは、たとえ頭の発達の仕方は「普通」と違っていても、心の発達は愛に溢れた充実したものだった。
    ユンジェがそれらの愛を理解したのが「普通」の人より遅かったとしても。
    真心は知能に勝るのかもしれない。

    「僕はぶつかってみることにした。これまでもそうだったように、人生が僕に向かってくる分だけ。そして僕が感じることのできる、ちょうどその分だけ」
    ユンジェの一歩は「普通」の人の一歩とは違う。
    けれどその一歩は、ユンジェ自身が創りだした確かなものだ。

  • 韓国で話題の小説の和訳本、孫元平(ソンウォンピョン)さんの作品。生まれつき脳内の扁桃体異常で感情を表せない子が愛を知り友達を知る話。大卒の母さんとばあちゃんと3人暮らしの幼少期に不幸にして扁桃体異常と指摘され、しかも彼の15歳の誕生日祝いの最中に通り魔事件で一人残されたユンジュ。喜 怒 哀 楽 愛 悪 欲を感じないので表せない彼ゆえに接する周りの人たちも戸惑うのだが、高校生になり出会った嫌われ者のゴニと何故か通い合うのだが....
    なかなか良く出来た小説だけど少し劇的過ぎる展開が気にはなるのだがハッピーエンディングでほっとする♪ 映画人でもある作者だからか映像的な雰囲気の本でもありました。今の韓国の社会や暮らしも垣間見えて興味深く面白く読めました。

  • 生まれつき脳にある扁桃体の異常で、感情を感じられず、他人の感情も分からない主人公ソン・ユンジェと幼い頃に両親とはぐれ人の愛を知らず育ち不良少年となったゴニ

    それぞれの理由で、『怪物』と呼ばれ、級友からも社会からも疎んじられている二人の少年が、全く自分にはない相手の行動を訝り、不思議に思いながらも、何とか相手を理解しようと交流が生まれていく

    感情がないユンジェの視点で書かれているためか、文章に装飾がなく淡々と進んで行くところが気に入った

    この小説の大きなテーマは「共感」と「愛」
    ユンジェは、感情がわからないがゆえに本物の共感とは何かを絶えず問いかけている
    その問いは、読者に対しても厳しく向けられる

    遠ければ遠いでできることはないと言って、背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って、誰も立ち上がらない そんなのは本当の共感とは言えないとユンジェは言う
    胸に厳しく突き刺さる。まさしくその通りだ

    両親の愛を知らずに育ったゴニは、社会のあらゆるものを敵視しひたすら強くなりたいと願う
    強くなるんだ。おれが生きてきた人生らしく。勝ちたいんだ。こんなに傷つけられなきゃならないんなら、いっそのこと傷つけてやる

    それに対して、母と祖母の無償の愛を溢れんばかりに受けて育ったユンジェは言う
    僕は誰からも捨てられたことがない。僕の頭は出来損ないだったかもしれないけれど、魂まで荒んでしまわなかったのは、両側から僕の手を握る二つの手のぬくもりのおかげだ と

    二人を対比させることによって、さらに二人の交流と成長を通して、子どもにとって、いかに愛が大切かを語る

    作者があとがきの最後に書いている言葉に胸が熱くなった

    この小説によって、社会の中で傷ついた人たちに、特にまだ多くの可能性が開かれている子どもたちに差し出される手が多くなればと思う。子どもたちは愛を切望すると同時に、誰よりも多くの愛をくれる存在だ

  • 本屋大賞海外部門で受賞されたということで気になって。韓国文学ってほとんど読んだことないので少し不安だったけれど、訳文もストーリーもとても読みやすかった。

    扁桃体(アーモンド)が生まれつき人より小さく、感情がわからない主人公ソン・ユンジェ。
    こういうときって家庭環境が複雑なことが定番だと思ったけれど、ユンジェは感情のしくみを細かく教えてくれる母親と、そんなことは気にするなと豪快に笑う祖母からの愛情をたっぷりと受けて育った。
    でもユンジェは感情が生まれないまま高校生となり、そして激情型の不良少年ゴニと出会う。クラスから浮いた二人の少年は、不器用に、時にぶつかりあいながらも成長していく。

    心ってどこにあるんだろう。嬉しい、悲しい、驚く、喜ぶ、恐怖する。感情は脳の奥、つまり扁桃体によってつくりだされていることはなんとなく理解できるけれど、でも私たちはそれを"心"とよぶ。
    扁桃体が小さくたって、そんなこととは関係なしにユンジェにも"心"はあるはず、とどこかで信じながら読み進めた。

    それだけに同級生の女の子ドラの登場は嬉しかった。
    ユンジェはドラと親しくなって、からだがちくちくするような感覚を覚えだす。それは恋という感情に似た何かなのだろう。
    そしてゴニとの友情。母親との再会。
    他者に共感する、ということの意味を、ユンジェといっしょに学び直したかのような気持ちになった。悲しくて泣く。嬉しくて笑う。そのことの意味を。

  • 韓国人の作家の本は初めてだったので、読む前から結構楽しみであった。

    感情を司る扁桃体が人より小さく、共感能力が欠如したユンジェの成長の物語。ユンジェの成長ももちろん良いが、その脇を固める母やおばあちゃん、博士、ゴニたちの溢れる人間味が良い。

    競争の激しい韓国の社会の中では
    ・成功のため貼られたレッテル通りに生きる
    ・感情を素直にぶつけない(日本の建前と本音と大きくは似ているが、それをもっと鋭くしたようなイメージ)
    以上のことが蔓延っているよう。まっさらな下地があるからこそユンジェにはこれらが疑問に映るのだろう。
    また、真っ向から抗うゴニの姿は爽快。

    全然話逸れるが、「ツッコミ」って素直やないとできない気するし、非常に良い文化と思った。
    感情を素直にぶつける良いツールなんちゃうかな

  • 第二部まではポツポツと読んでいたけれど、第三部以降の展開にそこからは一気読みしてしまった。わからないはずのユンジェの気持ちが、話が進むにつれて理解できるような感じになっていくのが不思議だった。ゴニの繊細な強がり方が愛らしくて、感情移入してしまった。
    翻訳本は読みづらい印象があったけど、これは翻訳本っぽくなくて、読みやすかった。

  • 扁桃体の異常で、感情を理解しにくいユンジェの成長物語。祖母と母の愛にあふれる言葉や思い出が、どんなに大切か、彼の人生のいろんな場面で支えになっていく。一方、健常で生まれたにもかかわらず、愛情が乏しいと自尊心が育たず、感情の抑制もなく社会性も育っていかない。相反するようなゴニの登場で、人間は脆くとも、可能性をも秘めていることも実感した。YA世代にも、子育て世代にも、そして昔、少年だった世代にも読んで欲しい本です。

  • 理解者がいる

    それってほんとに幸せで大事なことなんだなって思いました。

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