アーモンド

  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635688

感想・レビュー・書評

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  • 『人間を救えるのは結局、愛なのではないか。そんな話を書いてみたかった。』という著者の言葉通りの小説だった。

    扁桃体が小さく感情がわからない"ユンジェ"と親とはぐれて不良少年となった"ゴニ"の2人の少年の成長を描くストーリー。
    他人の感情がわからない"ユンジェ"の視点を通して、『共感』と『愛』について著者が問いかけてくる構成で、読後は余韻が続いている。
    『人生は、そのときそのとき、いろんな味を味あわせてくれながら、ただ流れていく。』という言葉がとてもすてきだと思った。

    『三十の反撃』に続いて本作を読んだが、著者"ソン・ウォンピョン"さんは、作品を通して『社会への疑問』を読者に問いかけることが、この上なく巧みである。
    著者の小説を今後も読み続けたい。

    • なべさん
      ほん3さんはじめまして。なべです。
      いいね!とコメントありがとうございます。
      アーモンドおすすめです♪
      よろしくお願いします。
      ほん3さんはじめまして。なべです。
      いいね!とコメントありがとうございます。
      アーモンドおすすめです♪
      よろしくお願いします。
      2022/06/23
  • 失感情症と診断された“僕”が自分について語る話。感情をうまく表現できない、感じることが苦手。
    医学研究の対象になりそうだったのを母親が断り、「喜怒哀楽愛悪欲」の行動基準を詰め込む独自の訓練を始める。人とは違うことがバレないように、いじめなどの標的にならないように。
    ある事件から母親を頼れなくなる日が来るが、思い出の回想や、家族以外の人との交流や支援、またたくさんの本を読むうちに、自分に変化が起きるのを感じる。そして動く。
    「言わなければいけないことがある」
    「もっとたくさんの人を知り、深い話を交わし、人間とは何かを知りたい」

    僕目線で失感情症の類似体験ができた。「この出来損ないが!」など辛くなる言葉も飛び交うが私は耐えた。そして主人公の返す言葉が淡々としていて気持ちが良い。嘘ではない思ったままの人を見る目だとか発する言葉が、純粋で混じり気がない。
    主人公が羨ましいなと思う場面もあった。例えば…
    ・悪口は聞こえてくるだけ。何も感じないから参加しない。
    ・共感することは難しいけれど、話をじっと聞いてあげる(ことはできる)。
    ・(人のことを)簡単に決めつけない。
    人と良い関係を保つための共感だとか同調だとかは一切ない、他人からの負の感情も感じないなど、なんかカッコよく見えてきた。こういうところは、自分に取り入れたくなる。

    主人公の成長の物語は、考えさせられる場面や言葉も多かったが、もう少し深く心を揺さぶられたかった。

    • 地球っこさん
      なおなおさん♪

      もちろん叙情的な文章を書かれる作家さんもおられますけどね。
      私も全然読めてないのですが、キム・ヨンス氏は好きです。ちょっと...
      なおなおさん♪

      もちろん叙情的な文章を書かれる作家さんもおられますけどね。
      私も全然読めてないのですが、キム・ヨンス氏は好きです。ちょっと難しかったけれど、繊細な感じで「世界の果て、彼女」はよかったです。
      あと、パク・ボゴム&ソン・ヘギョ主演のドラマ「ボーイフレンド」にも出てきた「波が海のさだめなら」も今は積読中ですが、楽しみです。

      それとSF作家さんになるのですがキム・チョヨプさんの「私たちが光の速さで進めないなら」は、叙情的なSFでよかったです。

      私は今、英米文学にも目がいっちゃって、K文学はお休み中です。あと源氏物語やガンダムとか、もう興味あるものがしっちゃかめっちゃかで、ドラマの方もお休み中。
      でもまた冬になるとコタツに入って観始めると思いますので、しばしお待ちを~f(^_^)

      なおなおさんも、週3~4本とはハードスケジュール!
      うんうん、でも面白いからやめられませんよね~♡
      お疲れが溜まりませんように。

      私はタグを利用したことがないので、また時間があるときコツコツとチャレンジしてみたいと思います(*^-^*)
      あ、カテゴリは、少し数を減らして整理してみました。
      2022/10/08
    • なおなおさん
      地球っこさん、Ꮶ文学本の紹介をありがとうございます。
      メモしておきます(^^)
      韓流ドラマって、アイテムに本がよく出てきますよね。
      ドラマに...
      地球っこさん、Ꮶ文学本の紹介をありがとうございます。
      メモしておきます(^^)
      韓流ドラマって、アイテムに本がよく出てきますよね。
      ドラマに出てきた本が、韓国で人気になり売れるとどこかに書いてありました(^^)
      分かる気がします。

      そうそう!地球っこさんの最近の読書はジャンル色々ですよね。
      英米文学とか難しそう…
      特に恋愛小説のあの本は、CMで流れた時は気になって調べたりしました。
      もうすでに地球っ子さんには多数読む読む詐欺しているので、私も読みたい!なんてもう言いません(-_-;)

      カテゴリ、少し変わったのですね。
      相変わらずいい感じです。色々なジャンルの本を読まれるからカテゴリ欄もたくさんあって素敵です♡
      2022/10/08
    • 地球っこさん
      なおなおさん


      そうそう、韓国ドラマでは詩集もよく出てきますよね。

      あとU-NEXTで気になっていた時代劇「赤い袖先」と「暗行御史」が始...
      なおなおさん


      そうそう、韓国ドラマでは詩集もよく出てきますよね。

      あとU-NEXTで気になっていた時代劇「赤い袖先」と「暗行御史」が始まってたようでウズウズしてきました。

      私もそこらじゅうで読む読む詐欺&なおなおさんには観る観る詐欺までしてますので、私たちは仲間です 笑

      ぼちぼちいきましょうね♪
      2022/10/08
  • 『三十の反撃』から飛んできた。
    下記の読書体験から当初は、年齢的なものもあって「『三十の反撃』の方が好きだし共感できる」と身勝手な感想を持っていたけど、思い返せばこちらはこちらでよく作られていると思った。

    扁桃体(「アーモンド」と呼ぶらしい)が通常より小さく、喜怒哀楽、特に恐怖をあまり感じることができない「僕」の人生を描く。
    寒さや痛み等触覚的なものは感じられるようだが、感情を理解できない「僕」の語りが文章を起伏の少ないものにしていた。(原注曰く、物語では医学的知見に基づき、著者の想像も加味しながら「失感情症」を描いているという)

    「平凡というのは、実は一番実現するのが難しい目標なんだ」
    「あんたは、いい子だよ。それに平凡。でもやっぱり特別な子」

    「僕」が将来災難に巻き込まれないよう、そして平凡な人生を送れるよう、母親は「僕」に人との正しい接し方を叩き込んだ。
    彼は何とかそれらを”暗記”し、やがて母親達を襲った通り魔や不良少年ゴニの心情について知ろうとしていく。

    自分はどちらかというと、喜怒哀楽がはっきりしている方(のはず…)だから「何も感じないこと」について、クライマックスまでよく掴めずにいた。ちょうどゴニのようにその疑問を「僕」にぶつけては反芻している感じ。
    彼の年齢設定も「多感」と呼ばれる年代なのに、本人は逆行していて随分大人びている。(「良く言えば”ピュア”ってことなのかな?」)
    辛い出来事に対抗するために心を無にすることはしてきたが、そもそも彼は「辛い」と感じることすら出来ない。「何でわざわざ何も感じないようにするの?」と、彼から聞かれそうだ。

    しかし大人と呼ばれる年代真っ只中の自分でも彼の物語は興味深かった。それに彼と同じ年代には尚更もってこいの一冊ではないだろうか?とりわけ「相手の気持ちを考えなさい」と言われ続けている子達には。
    その証拠に「他人の気持ちなんかその人にとっての他人である自分に分かるわけないだろ」と反抗心を燃やしていたかつての(同年代だった)自分が、彼の素朴な疑問を一緒に考える姿がイメージとして湧いてきた。

    大人から教わった正しい接し方を試みても、ゴニのようにあらぬ反応が返ってくることだってある。素朴な疑問を投げかけられたのは、恐れを知らない「僕」だからこそ出来たことかもしれない。
    でも歩み寄りというのは、結局は素朴な疑問から始まるものではないだろうか。少なくとも無視したり、遠巻きにスマホを向けている連中には出来るはずがない。

  • 感情ってなんだろう…?

    愛ってなんだろう…?

    失感情症である主人公ソン・ユンジェは感情を表現することができない、そして感じることも苦手である
    つまり、喜、怒、哀、楽はもちろん、愛、悪、欲、恐怖といった感情もわからない

    そんなユンジェの成長の助けとなったのがゴニの存在だろう
    ゴニは物心もつかないうちに親とはぐれて愛情を受けることなく不良少年となった

    まわりの人からも社会からも浮いた存在だった彼らがさまざまな出来事を経験し、失ったものを取り戻しながら成長していく

    著者は語っています
    「人間を救えるのは結局、愛なのではないか。そんな話をかいてみたかった」と

    本作『アーモンド』は愛が注がれ二人の少年が成長していく物語だ

    • 1Q84O1さん
      本場の発音ですねw
      私は『フェミ彼女』面白かったです♪
      なおなおさんも즐기다(楽しんで)!
      ハングル文字になったら読めねぇーw
      本場の発音ですねw
      私は『フェミ彼女』面白かったです♪
      なおなおさんも즐기다(楽しんで)!
      ハングル文字になったら読めねぇーw
      2023/08/18
    • なおなおさん
      意味は分かりましたが、何て読むのよ〜((੭ ᐕ))?
      나오나오より(なおなおより)
      ↑合っているか分かりません。難しすぎます。
      意味は分かりましたが、何て読むのよ〜((੭ ᐕ))?
      나오나오より(なおなおより)
      ↑合っているか分かりません。難しすぎます。
      2023/08/18
    • 1Q84O1さん
      즐기다 チュルギダ!
      ハングル難しいー!
      やめましょうw
      エンジョイ!
      (英語もできませんが…)
      즐기다 チュルギダ!
      ハングル難しいー!
      やめましょうw
      エンジョイ!
      (英語もできませんが…)
      2023/08/18
  • おそらく生まれて初めて読んだ韓国文学。
    2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位ということで、ずーっと気になっていた本。
    いざ、手に取ったら、一気に読み終わってしまった。

    ただひたすら、感動的だった。

    脳の中の扁桃体(アーモンド)が人より小さいため、共感能力が低く、怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生、ユンジェが、両親とはぐれ不幸な環境で育ったゴニや、花と香り風と夢を教えてくれた女の子ドラとの交流の中で、徐々に成長していく物語。

    生まれ持った資質には抗えないけど、環境もすごく大事。友達やまわりの大人、そして親の愛があってこそ、感情は育つ。そんなことを教えられて、胸が熱くなりました。

    生きていくことへの勇気を与えてくれる本。良書。

  • 今回はなおなおさんに教えて頂いたK文学です。
    本屋大賞とってるのも全く知りませんでしたが、
    韓国文学はやはり日本よりもあっさりとした文体なのがいつも印象的です。日本の良い所でもあるのですが情緒感が強いのが日本文学の象徴な気がしてます。
    本作をもし日本の作家さんが書かれたとしたら主人公ユンジェを取り巻く様々な事件や感情などがよりエモーショナルになっている気がしますが、題材的に淡々と書かれている方が感情を持てないユンジェの臨場感が増して良かった気もします。

    表紙で分かるように、ユンジェは生まれ付き脳の扁桃体が小さく、人間の持つ喜怒哀楽どころか恐怖心までもが抜け落ちています。家族への愛や友人への愛、恐れすら分かりません。
    熱い鍋の恐怖が分からず火傷をしそうになる程。
    父親はおらず、母と祖母がユンジェが普通の人達の中に入っても苦労を少なくする為に、愛情を持って検診的に教育してくれます。
    外に出る時は必ず手を強く握って歩いてくれる母。この手を繋ぐと言う行為の意味も彼は分かっていません。
    母親が営む古本屋で仲良く暮らしていましたが、ユンジェの誕生日に3人で外食をしに行った際にとある事件が…。

    この後に母の手を握るユンジェの姿を見て、確かに母の愛は伝わっていたのではと感動したものですが、その後の出会いがユンジェの運命を劇的に変えて行きます。

    感情が分からない彼は周りの普通の人からは「怪物」のように見えてしまいます。陰口を言われても平気、殴られても動じない、そんな彼に勿論友達はいません。別にそれに対して何の感慨も湧きません。
    一見、羨ましい事にも思えますがやはり喜怒哀楽が人生のスパイスですし、悲しいから嬉しい事もより有難く思えますし、何より恐怖心が無いという事は身の危険にも関わります。

    ユンジェ自体は悩みも持てないので葛藤したりなどはしないのですが、逆に早や15歳位で人生に失望してもがいている少年が出てきます。
    このゴニとの出会いが彼の運命を揺り動かします。

    ユンジェも確かに大変なのですが家族含めて周りの助けてくれる人達に恵まれており本当に良い人なので、むしろゴニの方が大問題に見えました。

    韓国文学は割と社会問題を風刺したものが多いとなおなおさんに教えて頂きましたが、確かに冒頭の方で貧富の差が激しい韓国社会の問題を提起したエピソードが出ては来ますが、本作は単純に愛の物語に感じました。
    家族愛、友情、恋愛、全ての愛についてです。

    最後の方でユンジェがゴニの為にとった行動は、例え恐れを知らぬ身であったとしても間違いなく愛です。怪物のユンジェだからこそ見返りを求めないその行動に感動しました。
    実際に巻末の作者の言葉でソンさんが「人間を人間にするのも、怪物にするのも愛だと思うようになった。そんな話が書きたくなった」と子育てをきっかけに思ったことを仰っていました。

    久々に爽やかな世界観に入り込んだので上手く感想が書けませんね。いや、普通の基準で言うとこれも爽やかではない気がするなあ…。
    でも読後感は非常にスッキリ!三ツ矢サイダーを一気飲みした後のような気持ちになれます。
    (一気飲みは拷問の類か…)

    • ゆーき本さん
      サイダーガールの「なまけもの」って歌が好き♬.*゚
      サイダーガールの「なまけもの」って歌が好き♬.*゚
      2024/04/19
    • yukimisakeさん
      マッチあんまり見かけないですけど

      (≧∇≦)/□☆□\(≧∇≦ )カンパーイ!!
      マッチあんまり見かけないですけど

      (≧∇≦)/□☆□\(≧∇≦ )カンパーイ!!
      2024/04/19
    • yukimisakeさん
      ゆーきさん、今聞いてきました!
      頑張れ!って歌も良いけど、こういうダウナーなのも気持ち良い♪
      ゆーきさんJPOPお詳しいですね!
      ゆーきさん、今聞いてきました!
      頑張れ!って歌も良いけど、こういうダウナーなのも気持ち良い♪
      ゆーきさんJPOPお詳しいですね!
      2024/04/19
  • とても読みやすく、先が気になってどんどん読んだ。さすがエンタメの国、韓国。
    私の利用している図書館ではYAの棚にあった本作だけど、大人も夢中になれる本だと思う。

    他者の不幸へのほとんどの人の反応について、ユンジェが「遠ければ遠いでできることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった」「感じる、共感すると言うけれど、僕が思うに、それは本物ではなかった」と思うのが、心に刺さった。
    近くの人くらいには、恐怖や不安に負けず、共感や愛を態度で示せる人間でありたい。

    この方の作品、『三十の反撃』も気になる。

  • ユンジェは扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない、感情がわからない高校生。小さい頃より、母に感情の表現パターンを教え込まれ、普通の子に見えるように訓練されてきた。15歳の誕生日の日、目の前で祖母と母が通り魔に襲われ、祖母は亡くなり、母は植物人間になってしまった。その事件の時でさえも、無表情でその光景を見つめているだけだった。その後、複雑な生い立ちにより激しい感情を持つゴニと出会う。ゴニとの友情、そして恋、感情のない青年の成長の物語。
    淡々と描かれていますが、ユンジェが、そして彼を取り巻く人々がどうなってゆくのか、気になって気になって一気に読んでしまった。感情がわからない少年の苦労の話であったけれど、あとがきにもあるように共感の話の話でもあり、自分に関係ないことは共感の力が薄いという現実も描かれていました。ユンジェを育ててきた母、祖母のユンジェの接し方もどんな子供への子育て・教え方の手がかりの一つにもなるし。読んでよかった。「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」婆ちゃんの言葉はその通りだなと思う。嫌な固定観念は捨てたいね。

  • 失感情症と診断されたユンジェ。「感情をあまり感じることができず、人の感情がよく読めず、感情の名前がごちゃごちゃになってしまう」先天的に扁桃体が小さい。「扁桃体が小さいと現れる症状の一つに、恐怖心を知らないということがある」
    一方、複雑な幼年時代を送ったゴニ。恐怖で他人を支配しようとする。
    二人はぶつかり合った末にお互いに興味を持ち友達になっていく。
    二人はお互いの足りない部分をお互いから学び合って変わっていく。
    みんなから理解されなくても、誰か一人が深く理解してくれること、それが幸せなことなんだ、と思いました。

  • 最近話題の韓国文学。
    本屋大賞1位受賞作ということで読んでみた。

    あらすじとしては、喜怒哀楽の感情を持たない少年が、ゴニ、ドラという二人の少年少女と触れ合う中で、少しずつ自分の中に芽生える感情というものの存在に気づいていくというお話。

    ◆印象的だった場面
    ・おばあちゃんが命懸けで僕を守った場面
    ・僕の中の感情を呼び起こす為に、ゴニが蝶の羽根をむしる場面
    ・ドラへの恋心に苦しむ場面

    ◆特に素敵だと思った文章
    ・みんな違うのだから、僕のように“普通とは言えない反応〟も、誰かにとっては正解になるかもしれない。

    ・外を歩くときはいつも、母さんが僕の手をぎゅっと握っていたことを覚えている。…。
    私たちは家族だから、手を繋いで歩かなくちゃいけないんだと反対側の手は、ばあちゃんに握られていた。僕は、誰からも捨てられたことがない。僕の頭は出来損ないだったかもしれないけれど、魂まで荒んでしまわなかったのは、両側から僕の手を握る、二つの手のぬくもりのおかげだった 。

    ・遠ければ遠いでできることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。感じる、共感すると言うけれど、僕が思うに、それは本物ではなかった。僕はそんなふうに生きたくはなかった。

    喜怒哀楽の感情の豊かさ≒感受性の豊かさとも言えると思うが、この感度が高すぎても、人生疲れる。ゴニが僕に対して抱いた、感情に揺さぶられないことが羨ましい、と感じる気持ちはとても共感できた。

    別のミステリー作品と並行読みしたせいかもしれないが、後半でページを捲る欲が低下。最後ほぼ斜め読みになってしまった。苦しい中にも温かさのある作品だったが、個人的にはちょっと物足りなさのある作品でした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。2016年、長編小説『アーモンド』で第十回チャンビ青少年文学賞を受賞。短編集に『他人の家』、長編小説に『三十の反撃』『プリズム』がある。現在、映画監督、シナリオ作家としても活躍している。

「2021年 『私のおばあちゃんへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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