さんかく

著者 :
  • 祥伝社
3.67
  • (16)
  • (49)
  • (37)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 526
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635794

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アラフォーの料理上手のデザイナー・夕香
    夕香の作るまかないが忘れられず夕香の家に転がり込んだ正和
    研究一筋の正和の恋人・華

    この奇妙な三人の関係を各々の視点から追っていく連作短編集。
    ひとつ屋根の下で暮らす夕香と正和は、食の趣味が合い「おいしい」を共有できる二人。
    食の好みが合うことって血の繋がった家族でさえなかなかない。
    共に生活する上で大事な要素であり貴重な相手だとは思う。
    二人の間で恋愛感情が曖昧なところも見ている分にはいいけれど、正和の恋人・華にしてみたらとんでもない。
    下手な浮気より厄介だ。
    近づきそうになると距離をとる夕香と正和の付かず離れずの距離感は、私が華の立場ならはっきり言って嫌だ。
    そんな風に思う私は考えが古いのだろうか。

    夕香が最後に正和に対して言った「選べる自由って一番を見失うよね」は的を得たもので共感した。

    短編の各章ごとに出てくる料理が美味しそうだった。
    特にあけぼのご飯(すりおろした人参を入れた炊き込みご飯)、塩豚、パクチーとラムの水餃子、お餅入りの豚汁が食べたい。

    そして西淑さんの装画はやっぱりいいな。

    夕香の言う
    「欲しいものに手を伸ばすより、手の中にあるものをなぞるようになったのはいつからだろう」
    これ分かる。私もアラサー辺りからそうなった気がする。
    人はそれを保守的とマイナスイメージで捉えるかもしれないけれど、彼女の生き方は日常を丁寧に過ごす美徳のように思える。とても好ましい。
    日々をあくせく過ごし時間に追われている私にはとてもできない生き方だ。

    華の友達・ともちゃんが華に言った
    「へとへとになって家に帰ってさ、あったかいごはんがあったら、そりゃずるずるとしちゃうよね。しかも、恋人でも家族でもない責任のない関係だったら楽でたまんないわ」
    に激しく同意。
    確かにそんな相手と居場所があったら、ついずるずるしちゃうよね。
    けれどそれも、恋人がいなければ、の話。

  • 「三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語」と帯にはある

    はじめの『塩むすび』の章を読み始めた時は、わあ、おいしそう
    こんなゆったりした文章大好き、肩を張らなくてもスイスイ読めて、好きだなあこの雰囲気と思っていた

    昼前にスーパーに買い物に行くと、小腹が空いているので、ついつい見るもの全てがおいしそうに見えて、余計なものまで買ってしまう。あの感覚に似ていて、出てくる料理の描写すべてがとてもおいしそうで、食欲をそそられる

    でも、この本の主題はそんなところじゃないんだ
    なんてたって三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語なんだから
    心に寂しさを抱えた男女、恋人はいるんだけれど、妙な遠慮があって、しっくりといかない男女・・・

    干渉し合わない。見つめ合わない。ただ横に並んで食べおいしさを共有できる関係が私は楽なのだ
    だからといって、部屋空いてるよって誘う?

    恋人がいるのに学生時代のバイト先の先輩だったからといって、女性とシェアハウスする?

    誘う方も誘う方だし、誘われてその話に乗る男の気が知れない
    そりゃダメでしょ
    自分の娘の彼がそんな男だったら許せない
    頭が固く、古いのかな?

    微妙な揺れ動く心理描写は、とても巧みでうまいなあと感心はするんだけど・・・
    いろいろおいしそうなものがたくさん出てきて、食欲はそそられたんだけど・・・
    根っこの部分が気になって共感できず 残念!

  • 誰かと一緒に居たい。人肌恋しさ。
    本質的に心の底にある欲求について、巧みな言葉で輪郭を与えてくれた素晴らしい作品だった。

    食いしん坊の千早さん(賛辞!)らしく、食べ物や食に対する愉しみを交え、誰かと暮らすこと、食べること、作ること、慈しむことのバランスが絶妙に配合され、私の本能的な欲求をも充たしてくれる。至福だ。

    物語は京都が舞台。
    フリーでデザイン関係仕事をするアラフォー女性高原さんと、以前飲食関係のアルバイト先で一緒だった厨房設備用品会社営業の年下男性正和が、食で意気投合するところから話は始まる。

    食の好みが合うという本質的な感覚は言葉で表現できないほど嬉しいもので、相性に関わる。

    当初は、カウンター席に横に座り、ともに「食べること」を堪能していた2人が一つ屋根の下で同居を始める。

    距離が近づくにつれて、自分の意識が相手へ向けられていることに次第に気づく様が、とても繊細に丁寧に描かれる。

    自分も悦びたいが、相手も満足させたい。

    自分と相手の境界線が曖昧なものに変容していく様。それがまさに「恋愛」なのかもしれない。

    途中から、大学院で動物の解剖に専心する博士課程の華と正和の従来からの恋愛関係も加わり、自分のやりたいことと相手を同時に両立させる難しさも細やかに表現される。

    食べ物の描写はもちろん、千早さんの動物解剖の微に入り、細に入り、臭い立つような表現はまるで映像をみているかのよう。やっぱり上手い。

    今までの恋愛で、気が付くと自分より相手を優先し、尽くしては軽んじられる苦くて、痛い経験をしてきた高原さんが、正和との生活によって、新しい境地に踏み出す様が潔かった。

    本文より:
    人に作る食事と自分のためだけの食事は違った。私は人との生活も、自分だけの生活と同様に慈しむことができた。
    だから、これから探すのだ。ちゃんと自分が欲しいものを。もう遅いかもしれないけれど。

    三人三様の見方、感じ方がどれもとても自然に物語を動かす。人と人はこうして向き合い、すれ違い、悦びを感じ、寂しさを覚えるのだ。

    ああ、塩結びは私も大好き。羊肉と香菜の餃子は想像しただけでワクワク!
    尽くすだけじゃなくて、私のための美味しいものを作るぞ! 食べるぞ!

  • 人物それぞれの視点から捉えた話の切りかえしが心地よかった。
    話の一区切り一区切りをさらりとした書き口で料理の作り方、見た目、味で表現していた。

    後半が近づくにつれ、中途半端に居心地の良さを考え、決断する速さ、気持ちの切り替えができない登場人物に最後までモヤモヤ感が残ってしまった。

  • 恋人・華から新しい動物の名を知るたびに、敗北感と疎外感の混じった苦い気分を味わう伊東。いろんなことに疲れてフリーランスとなった女性・高村。旅行先でも恋人より自分の研究対象を優先させる女性・華。
     これは三人の寂しさの過ごし方についての物語。

     彼らは少しずつ狡くて弱くて身勝手。そんな彼らの心の揺れや戸惑い、仕草が絶妙でじわりとくる。
     それは例えば、恋人と居るときに研究室から呼び出し連絡があった時の仕草だったり、恋人に黙って女性とルームシェアを始めたことを説明する時の一言だったり、恋人と上手くいかない事の八つ当たりだったり。
     彼等と同じように狡くて弱くて身勝手なわたしは彼らに対しきちんと憤りることも糾弾もできない。だからこそ「あぁぁぁ、、」と切なくなるし、この物語がしみる。
     そしてこの物語で話さずにいられないのが、美味しそうな料理の数々。どれもその匂いや味わい、食感が容易に想像でき、口の中に涎がたまること間違いない。
     ちなみに、現在、我が家の冷蔵庫には塩揉みされた豚の塊が安置されており、インターネットの検索履歴には「羊肉」という単語が並んでいる。
     

  • 誰かとの暮らし。当たり前のように感じてしまう瞬間や安堵は、誰かの我慢の上の幸せかもしれない。失う前触れに、特別な時間だったと気が付くのが人間なのかな。
    美味しいが一緒の人との食事は、人生の中でとても貴重。だからこそ疎かにしたくない、食も人も。

  • 不思議な三角関係のお話。伊東くんさ、なんかずるくね?とも思いながら読んだが、高村さんの作る料理やお店の料理が美味しそう。結局 高村さんが大人なんだなぁと思う。

  • 京都の古い町家で暮らしながらフリーのデザイナーをしている高村。恋はもういいと嘯く彼女と、高村の六歳年下で大阪で飲食店向けに消耗品の卸営業をしている伊東、その恋人で京都大学で動物の研究をしている華。

    三者が順繰りに語り手となって物語をつないでいく、タイトル通りの三角関係を描いた物語だ。

    誰もが、少しずつずるくて、どこか誠実で、破たんしそうでしない不思議な関係を、数々の食べ物がやたらめったらおいしそうに彩っている。

    他愛ない、といってしまえばそれまでの話なのだけれど、食べ物の描写が魅力的なことと、食べ物へ向き合う三人の姿勢が面白く、楽しく読んだ。

  • ずるくて潔いお話。久しぶりにすっと読めた本

  • 装丁と京都と町家という設定にひとめぼれ。
    ゆるい三角関係に、どうなるのだろう?と思ったけど、それを上回るごはんの美味しそうな様子が伝わってきました。恋愛小説でもあるけど、ご飯小説でもあると思う。

    …大人はみんなずるいなあと思ってしまいました。

全46件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2019年 『夜に啼く鳥は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千早茜の作品

さんかくを本棚に登録しているひと

ツイートする