さんかく

著者 :
  • 祥伝社
3.69
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本棚登録 : 2676
感想 : 221
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635794

感想・レビュー・書評

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  • 1冊前にハンチバックを読んだからか、心が癒しを欲しており…「千早茜さんなら!」と手に取った本。
    だったけど、華は動物をひたすら解体しているし、タイトルの「さんかく」はなるほど!三角関係か〜〜と、意外と爽やかではありませんでした(笑)

    伊東くんは、彼女がいながらどうなんだ?!
    というような煮え切らない人物だったけど、千早さん文章力と、とてもおいしそうな料理の描写でスルスルと読めてしまった。
    高村さん、京都ぽいね。

  • 正和は、大学生の時に、バイトで一緒だった夕香の賄いが、忘れられなかった。
    偶然に、正和と夕香は、古い京町家で同居する事になる。

    正和には、研究一筋の日々を送る華と言う恋人がいるが、彼女には、その事実を伝えられなかった。

    正和は、京町家で過ごす生活が、穏やかで居心地が良いが、夕香は、恋人でも家族でもない。
    夕香は、正和に食事を提供する事が、幸せではあるが、正和に、愛を求めるつもりはない。

    揺れ動く、男女三人の不思議な三角形の物語。

    いくら「おいしいね」を分け合えるとは言っても、恋人以外の女性と同居するなんて、そんな事あってはいけないのとちがうか。
    知らんけど。

  • 食の魅力が詰まった恋愛小説。
    ヘビーな恋愛小説が多い千早茜さんには珍しく、本作はライトでほのぼのとした恋愛作品。

    料理上手の高村さん、高村さんの昔の後輩である伊東くん、伊東くんの彼女の華。この3人の視点で各章ごとに話が進んで行く。

    伊東くんと暮らすことで、若い男性に拒まれていないという事実が欲しかった高村さん、いつも美味しい手料理が食べられる居心地の好い高村さんの家に居候した伊東くん、自分のライフスタイルを変えることが出来ない華。三者三様だが、それぞれの気持ちはとてもよくわかる。

    千早さんの恋愛小説における登場人物の内面や心情の動きの描き方がとても魅力的で、本作でもその魅力を味わうことが出来た。
    個人的には、華の
    ・自分のライフスタイルは曲げたくない
    ・だけど、恋人の前では可愛くありたい、ズボラなところを見られたくないし指摘されたくない
    この気持ちが痛いほどわかる。
    伊東くんとなら、ちゃんと向き合ってまた寄りを戻せると思うし、二人が幸せになれたらいいなと思う。

    ハードカバーで約250ページと短めで、各章大体15ページずつくらいなのでサクサク読みやすい。そして、高村さんの手料理や、居酒屋の料理など、美味しそうな料理が沢山出てくるのも魅力的。
    食と恋愛が詰まった作品、気になった方はぜひ

  • 京都の古い町家で暮らすデザイナーの夕香、学生時代夕香と同じ職場でバイトをし現在は営業職の正和、正和と交際しているも研究を常に優先させている華…。夕香と正和が再会したことを契機に、夕香の生活する町家での同居生活をすることになる…。正和はそのことを華に言い出せないままでいたが…。

    おいしいものを一緒に食べられる人、その幸せな時間を共有できる人って、考えてみれば私も常に求めているなぁ…って読み終えて思いました。私は家でそんなに凝ったおいしいものを毎日つくるわけじゃないけど、それでもおいしいって言ってくれる家族がいるから…だから夕香の気持ちがちょっとだけわかります。

    でも夕香はなんで正和を誘ったのか、正和は華にこのことを言い出せなかったのはそもそも後ろめたさがあったんじゃないか、ならどうしてこの2人は??どうも納得できない関係なのに、ラストはなんだかきれいでいいエンディングと思えてしまうのは、千早茜先生のテクニックなんでしょうねぇ…。作中ではおいしいものも沢山描かれていて、また京都の雰囲気も堪能できました!

  • 料理の一品一品が目に浮かび、味まで想像出来てしまう描写力。どれも本当に美味しそうだった。
    お店の高級料理と手間暇かけた家庭料理が、それぞれの人間関係を象徴的に表していて面白いなと思った。
    高村さんの暮らしぶりや作る料理が好きで、無意識に応援していたので、ラストは期待していたものとは違っていたかな。
    美味しいものを食べて、伝えたいことを伝え合えたら、それだけで幸せ!

  • 丁寧な料理を学びたくなりました。
    京都の町屋で暮らす高村さんの生活と作る料理が、文章から目に浮かぶようです。

    評価の別れる本のようですが、私は噛み締めるように各章を読みました。
    3人の視点で順番に描かれている三角関係。
    最後は高村さんの視点を読みたかったです。

    高村さんはきっと1人で生きることに飽きてしまって、ペットを飼うように伊東くんを同居に誘ってしまったのだと思いました。

    千早茜さんの作品を読むことにはまってしまっています。


    I know the difference between making food for someone and myself.
    Sharing delicious food is one of the shapes of happiness.

  • アラフォーの料理上手のデザイナー・夕香
    夕香の作るまかないが忘れられず夕香の家に転がり込んだ正和
    研究一筋の正和の恋人・華

    この奇妙な三人の関係を各々の視点から追っていく連作短編集。
    ひとつ屋根の下で暮らす夕香と正和は、食の趣味が合い「おいしい」を共有できる二人。
    食の好みが合うことって血の繋がった家族でさえなかなかない。
    共に生活する上で大事な要素であり貴重な相手だとは思う。
    二人の間で恋愛感情が曖昧なところも見ている分にはいいけれど、正和の恋人・華にしてみたらとんでもない。
    下手な浮気より厄介だ。
    近づきそうになると距離をとる夕香と正和の付かず離れずの距離感は、私が華の立場ならはっきり言って嫌だ。
    そんな風に思う私は考えが古いのだろうか。

    夕香が最後に正和に対して言った「選べる自由って一番を見失うよね」は的を得たもので共感した。

    短編の各章ごとに出てくる料理が美味しそうだった。
    特にあけぼのご飯(すりおろした人参を入れた炊き込みご飯)、塩豚、パクチーとラムの水餃子、お餅入りの豚汁が食べたい。

    そして西淑さんの装画はやっぱりいいな。

    夕香の言う
    「欲しいものに手を伸ばすより、手の中にあるものをなぞるようになったのはいつからだろう」
    これ分かる。私もアラサー辺りからそうなった気がする。
    人はそれを保守的とマイナスイメージで捉えるかもしれないけれど、彼女の生き方は日常を丁寧に過ごす美徳のように思える。とても好ましい。
    日々をあくせく過ごし時間に追われている私にはとてもできない生き方だ。

    華の友達・ともちゃんが華に言った
    「へとへとになって家に帰ってさ、あったかいごはんがあったら、そりゃずるずるとしちゃうよね。しかも、恋人でも家族でもない責任のない関係だったら楽でたまんないわ」
    に激しく同意。
    確かにそんな相手と居場所があったら、ついずるずるしちゃうよね。
    けれどそれも、恋人がいなければ、の話。

  • 「三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語」と帯にはある

    はじめの『塩むすび』の章を読み始めた時は、わあ、おいしそう
    こんなゆったりした文章大好き、肩を張らなくてもスイスイ読めて、好きだなあこの雰囲気と思っていた

    昼前にスーパーに買い物に行くと、小腹が空いているので、ついつい見るもの全てがおいしそうに見えて、余計なものまで買ってしまう。あの感覚に似ていて、出てくる料理の描写すべてがとてもおいしそうで、食欲をそそられる

    でも、この本の主題はそんなところじゃないんだ
    なんてたって三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語なんだから
    心に寂しさを抱えた男女、恋人はいるんだけれど、妙な遠慮があって、しっくりといかない男女・・・

    干渉し合わない。見つめ合わない。ただ横に並んで食べおいしさを共有できる関係が私は楽なのだ
    だからといって、部屋空いてるよって誘う?

    恋人がいるのに学生時代のバイト先の先輩だったからといって、女性とシェアハウスする?

    誘う方も誘う方だし、誘われてその話に乗る男の気が知れない
    そりゃダメでしょ
    自分の娘の彼がそんな男だったら許せない
    頭が固く、古いのかな?

    微妙な揺れ動く心理描写は、とても巧みでうまいなあと感心はするんだけど・・・
    いろいろおいしそうなものがたくさん出てきて、食欲はそそられたんだけど・・・
    根っこの部分が気になって共感できず 残念!

  • 恋と仕事に疲れ、東京から京都へ移り住んだ友香、営業の仕事がうまくいかず、恋人ともなかなか会えない正和、大学の研究に没頭し、恋も仕事も二の次な華。三人の三角関係の物語だ。
    はっきりした恋愛感情はないが、食の趣味や距離感があう友香と正和。ルームシェアすることになるが、正和はそのことを華には言い出せずにいる。

    しかし華はとにかく大学での研究が最優先で、大学から呼び出しがあればいつどんな時でも全てを放り出して大学へ行ってしまう。正和と半同棲めいたことになっても、なぜ鍵を渡してしまったのか後悔すらしているぐらいで、そんな彼女に正和が本当に必要なのか非常に疑わしいし、これだけないがしろにされている正和がどうしてここまで彼女に遠慮しているのか全然分からない。

    友香にしても、正和の世話をなんでここまで焼かなくてはいけないのか…在宅で仕事しているので、家事が気分転換ということ?とこじつけられなくもないが。

    別に友香と正和が付き合ったらいいのにとも思わないけど、この三人の関係性に共感は一切なかった。

    ただ文章はとても読みやすく、丁寧に書かれているので、ついついおもしろく読めてしまう。
    そして食事の描写がとにかく美味しそう。頭の中に料理が浮かんで食べたくなる。この料理食事のシーンだけでも読む価値があると思えるほどだった。

  • 男女の三角関係の十分なドロドロ感を描き切った。①デザイン関係で超多忙の高村、彼女の作る料理は本格的であり相手を満足させる。②大学の博士課程で超多忙の華、彼女は動物解剖に明け暮れる。③華と付き合う伊東、高村の食事旨さに高村の家に引っ越す。高村は伊東が華と付き合っていることを知らない。華も伊東が高村の家に引っ越したことを知らない。伊東の優柔不断さを著者が気持ちよく描いたが、そのアクセントとして「こだわりの美味しそうな料理」を中心に置くことで、話しの緊張感なのかグロテスクさを醸し出すことに成功したのだろう。④

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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