まだ温かい鍋を抱いておやすみ

著者 :
  • 祥伝社
3.64
  • (77)
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  • (26)
  • (6)
本棚登録 : 1989
感想 : 154
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635855

作品紹介・あらすじ

今がどれだけキツくても――“おいしい”が、きっとあなたの力になる。ほろ苦く、心に染み入る極上の食べものがたり
「遠くへ行きませんか」「行くー! 行きましょうぞ!」
スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」)

彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。
病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。
――“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「シュークリームタワーで待ち合わせ」「ミックスミックスピザ」が特に好きだった。

    「シュークリームタワーで待ち合わせ」
    では、家庭内での立場や子どもにとって良いこととは何か、考えさせられた。
    自分と他人、1対1なら事なかれ主義でできても、守りたいものや人があるなら主張することも確かに必要だなと。お互いに後悔しないために。
    本人が好きでなさそう、苦手そうなことを無理矢理やらせるのは、避けるか大分注意してさせるかしないと実際この話のような事故も起こりかねないなと思う。
    妻ならこうあるべき、みたいな価値観を振りかざさず、個として大事にしてくれる関係性の人がいると助かることもあるんだろうなとも思った。

    「ミックスミックスピザ」
    「シュークリーム、、」とは違い、こちらはどんな秘密を抱えても、一緒に人生を冒険するのが楽しい人とうまくやっていこうと決心する話。
    素敵なところを感じ、その魅力が変わっていないのならぶれない芯とするのも素敵だと感じた。

    • アールグレイさん
      とがさん(^-^)/初めまして♪
      アールグレイと申します!
      新米ママさんなんですね。お子さんは何ヵ月でしょう?男の子女の子どちらかしら?
      で...
      とがさん(^-^)/初めまして♪
      アールグレイと申します!
      新米ママさんなんですね。お子さんは何ヵ月でしょう?男の子女の子どちらかしら?
      でも、お子さんのお世話で本を読む時間はありますか?
      本棚を拝見しました。青山美智子さんの本が積読状態ですね。まず月曜日の・・・は後回し、木曜日が先です。青山さんの本は連作短編なのできっと読みやすいと思います。
      レビューの好きな私です。遲読ですが。忙しい中読書で一息入れながら、お子さんのお世話して下さいね。
      これからよろしく(*^_^*)
      2023/09/26
    • とがさん
      アールグレイさん

      コメントありがとうございます♪

      私は1歳の息子を育てています。
      そして最近は寝かしつけ後に自分の読みたい本を読んでます...
      アールグレイさん

      コメントありがとうございます♪

      私は1歳の息子を育てています。
      そして最近は寝かしつけ後に自分の読みたい本を読んでます( ´ ▽ ` )
      第二子妊娠中なので、流石に産まれたらまたしばらく読めなくなるかなぁとは思っています…
      アールグレイさんもママさんなんですね!(本棚名見ました)
      お子さんはおいくつくらいでしょうか?

      青山さんの読み順のアドバイスありがとうございます!
      確かに読みやすく、読後感もほんわかしますよね。
      近いうちに読みたいです♪

      今「遠の眠りの」を読んでいますが、舞台がかなり過去のものだと読むのに時間がかかります…(とても好きですが)

      こちらこそ、これからよろしくお願いします♪
      2023/09/26
    • アールグレイさん
      返信ありがとう!

      ゆうママは以前の名、ママは卒業し紅茶の好きな今の名に改名しました。息子はもう大学生。
      今妊娠中ですか。上のお子さんとは年...
      返信ありがとう!

      ゆうママは以前の名、ママは卒業し紅茶の好きな今の名に改名しました。息子はもう大学生。
      今妊娠中ですか。上のお子さんとは年子?二つ違いになるのかな?体を大事にして読書してね!
      ,゜.:。+゜(^∇^),゜.:。+゜
      2023/09/26
  • 老若男女問わず、人は食べる。
    途方にくれた時でも、悲しいことが起こってどん底に落ちた時でも。
    食べることさえできれば安心できる、元気になれる。
    どんなに冷えた体も、悩みすぎて空っぽになった心も。
    お腹を満たせば、自然と生きる力もわいてくる。
    普段は当たり前のように食べているけれど、食べることって生きることなんだ、と改めて教えられた6つの短編集。

    特に共感したのは『ポタージュスープの海を越えて』。
    仕事に子育てに、と日々奮闘する二人の女性が久しぶりに楽しむ、二人っきりの日帰り温泉旅行。
    「家族の食卓って、忖度の積み重ねでできてるよね。自分がこれを食べたい、以外の理由で組み立てた料理を毎日作り続けるって、考えてみると結構クレイジーだよ」
    ほんとそう。
    私も子供を生んでから作る料理は"義務"となった。
    自分が何を食べたいかなんて、あまり考えていない。
    子供が要望するもの、それでいて栄養のバランスのあるもの(特に今は、翌日の弁当のおかずになるもの)…世の母親の考えることはどこも同じ。
    たまにはこの二人のような小旅行に行って憂さ晴らししたいな。

    そして、大きな鍋に肉や野菜を沢山入れてグツグツ煮込む温かなスープ。
    落ち込んだ時はやはりこれに限る。

  • どんなにどん底でも食べれる時って大丈夫だと思います。

    先日お医者さんに胃腸の調子が悪いと相談しに行ったら、機能性ディスペプシアだろうといまれました。
    今年は痔で悩む時期もあって、食べることを楽しめない時期が多かったです。
    メンタルと消化器官は繋がりが案外強くて、どちらかの調子が傾くと一気にダメになってしまいます。
    本当にひどい時は、喉に何も通らなくなってしまうのです。

    美味しく食べることを楽しめるって、幸せなことだなと感じます。


    We should eat to live.
    Delicious food gives us the power to move forward.

  • 人は日々、食べて生きていく…そんな当たり前のことを心の底から実感できる、6つの短編集。
    恋人、夫婦、友人、親子…様々な人間関係、どんなに相手のことを想っていても、歯車が狂ってしまうことは避けられない。躓いた心を救ってくれるのが、何気なく口にして「おいしい」と思えた味だったりすること、誰でも覚えがあるのではないだろうか。
    哀しみや苦しみと真摯に向き合い、昇華させてくれる彩瀬さんの作品がとても好きだが、今回は「食」をテーマに、がんじがらめの人間関係をゆっくり解きほぐしていく。その過程が丁寧に優しく描かれ、何度も泣きそうになった。
    素晴らしかったのはやはり、フード描写!焼きたての枝豆パン、鶏肉とセリのさっぱり煮、ジャンクなのにたまらなくおいしそうなミックスピザ、鍋いっぱいの具沢山味噌汁…。そそられるメニューがたくさん出てくるが、決して物語の添え物ではなく、登場人物達の喜怒哀楽と密接に絡み、心を揺らす。
    改めて、「おいしい」って最強だな、と思う。そして間違いなく、力をくれる。

  • 私にも少しだけある食べ物の記憶を、大切にしたいと思いました。

  • 短編の中の主人公たちのように、私の心にも寄り添ってくれる料理が見つかればいいなぁ。

  • 職場や家族との人間関係に疲れ、忙しい日常に疲れ
    みんなみんな疲れている
    子どもも大人もあまりに複雑になった現代社会

    今がどれだけキツくてもーー
    "おいしい"がきっとあなたの力になる
    そんなおいしい食べものものがたり6編

    「シュークリームタワーで待ち合わせ」と
    「大きな鍋の歌」 が心に沁みた

    子どもを不慮の事故で亡くし、自分が殺したと責め生きることを拒んでいるかのような幸を自分の部屋に連れてき、次から次へと食べものを作る夜子

    鶏ささみと大根おろしと生姜のスープ
    鱈と水菜の湯豆腐
    トマトで煮込んだロールキャベツ

    毎日毎日おいしいものを作り続けた
    毎日毎日、行きたいと消えたいの境界をさまよいながら箸を使う友人の口を、食の誘惑でこじ開ける。さくさくと噛み砕かれ、ごくんと嚥下された温かいかたまりは、否応なしに彼女の血肉を潤す。これであなたは、明日も死ねない

    次から次へと出てくるおいしそうな料理と迫力ある文章に圧倒される

    大きな6リットルの鍋いっばいにいろんな野菜を煮込んだ万田さんのクリームシチューのおいしそうなこと
    こんなシチューをお腹いっぱい食べたら、少々の悩みなんかどこかへ吹き飛んでいってしまいそうだ

  • 食にまつわる6つの短編集。
    ほろ苦く、切ないストーリーが多かったです。
    また、家庭内での問題を軸に、男女平等について考えさせられる部分が多かったのも印象的でした。

    人それぞれ、好物や食への関心度が違うように、登場人物達の人生もそれぞれ。自分と相容れない考えの人物がでてくる話や、不思議なお話も。辛い事も切なさも、色んな事を乗り越えて、生きていくために食べる。食べること=生きることなんだと、改めて思いました。

    「ポタージュスープの海を超えて」が好きでした。無自覚でも記憶の底に残る事に、報われるものがある。読後は自分も、もう会えない人達と食事をした時の笑顔や場面が蘇り、恋しい気持ちになりました。

  • 温かくて切ない
    シュークリームタワー
    シチューとロールキャベツ
    短編集

    図書館から借りた本

  • 1人の人に焦点を当てて、その心のゆらぎを描いた短編集。

    読み始め、んー…刺激が足りないなぁ。と思っていたが、読んでいくうちにその描かれた個人の重みにお腹がいっぱいになっていく。大きな物語ではなく、個人レベルの小さな物語だけどどれもずっしりと重い。その重みを癒すのが食べ物。それでプラマイゼロになる感じ。食べるって大事だなぁ。

    自分だったら何がその一口になるのだろうとじっと考える。それは幸せな瞬間には思い出せないのだろう。何かが起こった時にこそ、その「おいしい」を欲するんだろうな。なんでも美味しい今この時に感謝。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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