羊は安らかに草を食み

  • 祥伝社 (2021年1月7日発売)
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本棚登録 : 792
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636036

作品紹介・あらすじ

認知症を患い、日ごと記憶が失われゆく老女には、それでも消せない “秘密の絆” があった――
八十六年の人生を遡る最後の旅が、図らずも浮かび上がらせる壮絶な真実!

日本推理作家協会賞 『愚者の毒』 を超える、魂の戦慄!

過去の断片が、まあさんを苦しめている。それまで理性で抑えつけていたものが溢れ出してきているのだ。彼女の心のつかえを取り除いてあげたい――
アイと富士子は、二十年来の友人・益恵を “最後の旅” に連れ出すことにした。それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島……満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の苛酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは? 旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露わにした時、老女たちの運命は急転する――。

感想・レビュー・書評

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  • 圧倒された一冊。

    のめり込まざるを得ない、友が友の為に長い過去を紐解く物語。

    次第に浮き彫りになる、秘められた過去の重圧に押しつぶされそうな感覚はまさに老女達と懸命に旅した気分。

    生と死、常にギリギリ危うい綱渡りのような瞬間をたかだか11歳の子供が手を携え生き抜く恐怖、飢えよりも孤独への恐怖はまさに生き地獄だったと思う。

    そして同時に生きるとは、生き抜くとはこういうこと…を見せられ、ただ涙を流し圧倒されるだけの自分がいた。

    あの時の繋いだ手が結ぶ、心と旅の結び。

    歴史の重み、人の強さ、想いの仕舞い方を最後に噛み締め…感涙。

  • 「別れる辛さを思うより、出会えたことをよろこびましょう」
    圧倒されました!

    俳句教室で出会った、まあさん86歳、アイちゃん80歳、富士ちゃん77歳は20年以上の付き合い。
    まあさんこと益恵の認知症が進行している。と、優しい夫から依頼され、3人はまあさんの過去を巡る旅に出る。「カヨちゃん」とは?
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    彼女の俳句の集大成『アカシア』を元に
    滋賀、愛媛、長崎~を巡り、お付き合いのあった人からの話でまあさんの人柄と過去の苦しみが滲む。
    『背を向けるむくろを照らす赫き夕陽に』
    満州での壮絶な子供時代。目を背けたくなる様な
    この衝撃がほんの75年前のことだなんて。
    俳句に込められた心情と共に、一緒に過去の旅をしているようでした。
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    満蒙開拓団は27万人。生き延び引き上げた後の過酷な生活。そして秘密にたどり着いた。
    戦争は人が人でなくなる。
    老いて薄れゆく記憶と、亡霊のようにつきまとう恐怖の中でも、秘密の絆を守り抜いたまあさん。
    どれほどの覚悟だったのだろう。
    最後の決断は驚きハラハラしたけれど、心穏やかに、助け合い、思いやって暮らしていくのでしょう。
    かけがえのない友情と、理屈や損得ではない深い愛を持ったまあさんの生き様を、ずっと忘れないと思います。

    タイトル『羊は安らかに草を食み』は
    バッハのカンタータ第9曲。
    物語にピッタリな素晴らしい装画と、それに溶け込むような温かな音色に癒されました。

  • 神戸新聞NEXT | 全国海外 | エンタメ | 『羊は安らかに草を食み』宇佐美まこと著 過去と現在に向き合う旅
    https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/entertainment/book/202102/sp/0014108340.shtml

  • 装丁含め完璧な小説で、宇佐美氏の代表作のひとつになると思う作品。満州からの引き上げと現在とを詠まれた俳句を通して行きつ戻りつしながら、益恵の人生をその親友たちが遡りながら自分の人生の意義や終着点を見出していく。悲惨な内容が多いにも関わらず、軽快で柔らかな雰囲気をまとっていて、より力強い生命力が浮き彫りになる文章力は流石。

  • 魂が震える一冊。圧巻。
    今年1が出てしまったかと…

    戦争を知らない世代は是非とも読むべき!
    描写が激しくて、読み進めるのが辛かった。それくらいリアルで、力強くて、でも多分それでも足りないくらいなのだろう…本当に辛い。


    認知症になったまぁさんの86年の人生を遡る旅に、アラ80の俳句仲間2人と巡る。

    滋賀、松山、長崎、國先島。
    まぁさんの俳句集、アカシア、の送り先の友を訪ね、少しずつ紐解かれる過去。そして読者は一句ごとに満州からの引き上げの、過去の描写にとぶ…

    友情、家族、夫婦の愛、そして戦争…
    かよちゃんとは…
    全てが最後に収束され、凄まじい生命力を感じる作品

    こんな経験をされた方々がだんだんいなくなってしまう。その前にこうして話になり、出会えて感謝。
    推理作家らしく、終わり30頁は急展開すぎて、不謹慎ながら笑ってしまった。

    これまたメルヘンな装丁が、中身のヘビーと反比例
    タイトルと装丁が柔らかくて救われた…


    「私たちって、日本人だっけ?もうわからなくなっちゃった」
    「大変なことがあるもんですか。この島にいれば食べるものに困ることはない… いつ殺されるかとびくつくこともー」

  • すごい。
    勇猛果敢な戦士の話だった。
    そうしなければならない理由があったから。それだからそういう行動をしたのだと、納得。
    伏線の回収がお見事すぎてびっくりした。
    こんな結末想像できなかった。
    ただの認知症の老人の話ではない。満州事変が大変だったという話でもない。
    友情もあり希望もあり、困難を乗り越える大冒険もあり、キラキラした光がさす終わり方だった。面白かった。
    「別れる辛さを思うより、この世で出会えたことを喜びましょう」←これがタイトルになってる賛美歌なんだね。素敵。
    生きよう。家族はみんないなくなってしまい1人生き残った意味を考えながら日本への船に乗る益江と佳代。
    凄まじい逃避行だった。
    富士ちゃんもアイちゃんも大変だけど、安らかであってほしい。

  • 俳句の会で知り合った老女3人が認知症を患ったその中の1人の過去を訪ねて過酷な半生を知る、と言う話。全編に俳句が散りばめられ、短い句の中に尽きせない程の思いが溢れていて、ページをめくる手が止まらなかった。満州引き揚げの凄惨な現場の描写も俯瞰的に描かれていてよみやすかった。

  • タイトルと表紙絵に惹かれて、内容もよくわからないまま読み始めました。
    過酷な満州引き上げの話が辛くて挫折しかけたこともありましたが、知っておくべき話と読みました。
    思わぬ展開もあり読み切ってよかったです。

  • 認知症になった八十六歳の友人の人生を遡る旅に出る。長年友人として付き合ってきたのに知らなかったこと。その中身に圧倒されてしまう。現在と満州で過ごした戦争の時代が描かれているけれどこの満州での描写が本当にすごい。戦争の悲惨さと人間の怖さが伝わってくる。これだけでも読む価値がある。そして現在との対比。穏やかな日々といつかくる終わりの日に向けての準備。友人たちとの思い出と語られてこなかったこと。ラストもよかった。終始圧倒され続けた時間でした。

  • 丁寧に種を蒔き 丁寧に育て花を咲かせ実らせしっかり刈り取る作者の力に感嘆しました
    今回は戦争という事実を克明に 俳句という創作を豊かに巧みに使ったところも秀逸でした

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著者プロフィール

1957年、愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で 第1回 『幽』 怪談文学賞短編部門大賞を受賞。2017年 『愚者の毒』 (祥伝社文庫)で第70回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞する。19年 『展望塔のラプンツェル』 で 「本の雑誌が選ぶ2019年度ベスト10」 第1位に選出され、第33回山本周五郎賞候補。他の著書に 『入らずの森』 『死はすぐそこの影の中』 『黒鳥の湖』 など。

「2021年 『羊は安らかに草を食み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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