ボタニカ

著者 :
  • 祥伝社
3.53
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本棚登録 : 568
感想 : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636173

作品紹介・あらすじ

ただひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類に無我夢中。
莫大な借金、学界との軋轢も、なんのその。
すべては「なんとかなるろう!」
――日本植物学の父、牧野富太郎。愛すべき天才の情熱と波乱の生涯!

「おまんの、まことの名ぁを知りたい」
明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。
小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。
東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。
私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた……。
貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種(ボタニカ)を究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 2023年度前期朝ドラ「らんまん」のモデルということで読んでみた。

    在野の植物学者・牧野富太郎。
    小学校中退。学歴なし学位なし留学経験もなし。その富太郎が膨大で精密な標本作りで東京帝国大学の教授たちを感心させ植物学教室に出入りを許され、貴重な学術書や資料などを自由に閲覧させてもらって植物雑誌や図鑑を次々自費出版。
    その後も研究を続ける傍ら、東京帝国大学助手から講師へ、そして理学博士学位取得まで上り詰める。
    名前を付けた植物は二千五百以上。
    …と独学だけでここまで上り詰めたものすごい人なのだが。

    他の方々のレビューにあるように、主人公に対しての好感共感は全くなかった。
    主人公に対してだけなら☆一つも無いのだが、家族や周囲の人々のフォローに対しての評価、そしてこの良くも悪くもおおらかな時代ならではの彼の功績に対して☆三つとした。

    『学問には金がかかる』
    この言葉が終始染み渡る話だった。

    富太郎の『学問』のために先祖代々築いてきた実家の身代を潰し、俸給三十円の助手時代に三万以上の借金を抱える。
    それでも『なんとかなるろう』と植物採集と出版は止めない。
    ここまで来ると、富太郎のしていることは『学問』なのか道楽なのか分からなくなってくる。

    結果『なんとか』してくれたのは周囲の人々で富太郎本人ではない。彼の功績があってとはいえるけれど。
    特に最初の妻・猶(なお)は可哀想で仕方なかった。富太郎に妻として見られたことなど一度もなく、夫婦生活というものがあったのかどうかも分からない。ただ彼の尻拭いをさせられるためだけの結婚で、あげく若い妻に乗り換えられて離縁。
    再婚して幸せになれたようだけれど、その後も折に触れて富太郎一家を支援しているのだからもう何というか、いやはや。
    二番目の妻・スエは猶に言わせれば『誇りをもってあなたを支えた』らしいが、心労祟って五十代で死去。

    東京帝大の矢田部や村田は富太郎にとっては意地悪に見えるようだが、言い方はともかく内容は至極当然だった。
    また三万もの借金を清算してくれた上に、富太郎の標本を引き取って植物研究所を作ろうとまで言ってくれた池長孟(はじめ)とも最終的には決別してしまう。

    『ガラスの仮面』の月影先生が言うように、天才はその才能のためだけにしか生きられない人なんだろうなと思う。他の人の気持ちとか一般常識とか世渡りとか、そういうことにまで気持ちが及ばない。

    例えば妻子に植物採集や標本作りの手伝いをしてもらうとか、自分のしている研究について熱く語るとか、そういう場面が見られれば良かったのだが、自分の『学問』については家族には一切話さずどこに行くかも言わずに出かけて、借金やらお金の算段やらそういう面倒事だけ家族に押し付ける。
    それでスエが死に際の朦朧としている中で『新種のササにな、お前の名をつけたぞ』と言われても「ああ、これで長年の私の苦労が報われた」となるだろうか。そもそもそれがどれほど素晴らしいことかを伝えていないのだから本人には分からないだろう。時代とはいえ死んで最敬礼されてもなぁと思ってしまう。

    『捨てる神あれば拾うてくれる神がある』という通り、どれほど困窮していてもどこからか手を差し伸べてくれる人がいるのだから、きっと富太郎にはそうせずにいられない魅力があったのだろう。
    残念ながらこの作品ではそれが感じられなかったが。

    朝ドラは富太郎の人生をモチーフにしたフィクションということで、多分歴代朝ドラのように夫婦愛を全面に出した物語になるのだろうが、この作品を読んでしまうと素直に受け取れないかも知れない。
    これだけ好き勝手していたのだから、94歳まで生きられたのも頷ける。

  • 「ボタニカ」 朝井まかて著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/301053

    日本の植物学の父と呼ばれる「牧野富太郎」の仰天生涯 実家は破産、給料の1000倍もの借金で貧乏に | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/726002

    ボタニカ 朝井まかて 特設サイト
    https://www.shodensha.co.jp/botanica/

    cream 村上千彩
    https://sites.google.com/site/creammurakamisenayahp/

    祥伝社単行本/ s-book.net Library Service
    https://www.sun.s-book.net/slib/slib_detail?isbn=9784396636173

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      2023年度前期 連続テレビ小説『らんまん』 主演は神木隆之介さん! | 連続テレビ小説 | NHKドラマ
      https://www.nhk...
      2023年度前期 連続テレビ小説『らんまん』 主演は神木隆之介さん! | 連続テレビ小説 | NHKドラマ
      https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/1000/460323.html
      2022/02/10
  • 小説NON2018年11月〜2020年11月掲載のものに加筆修正を加えて2022年1月祥伝社刊。朝井さんの植物ものなので期待した。牧野富太郎のシッチャカメッチャカぶりや、助力してくれる人々の話は楽しいが、展開が冗長で疲れました。

  • 私は、実在の人の物語は取っつきやすいし、
    偉業を成し遂げた人の生い立ちや素顔を知ることを面白いと思っている。
    この物語は、主人公の視点からの語りが主だから、周りの人物の心情はあまり語られない。主人公に感情移入できず、脇役の人物と共に主人公に振り回されている感じ。
    物語的な場面や台詞は少なく、特に後半は業績を羅列した感があったので、飛ばし飛ばしになってしまった。それでも主人公の行く末が気になるので一気に読んでしまった。
    所々にある逸話をもう少し広げて物語的になっていたら面白いのかな。それをしなかったのが今回は狙いなのか?

  • 日本の植物学の父、牧野富太郎の波乱万丈な生涯を描く。
    一 岸屋の坊  二 草分け  三 自由  四 冬の庭園
    五 ファミリイ  六 彷徨  七 書読め吾子
    八 帝国大学  九 草の家  十 大借金
    十一 奇人変人  十二 恋女房  十三 ボタニカ
    主要参考文献有り。
    野山を彷徨い、草や花、木々に喋りかける少年。
    五感で感じ、自然と戯れる、牧野富太郎。
    圧倒的な自然描写に彩られる彼は、植物に導かれ、
    植物を愛で、研究する生涯を生きることになる。
    それは凄まじいまでの波乱万丈な人生。
    成長の中で、多くの師に学び、書物に親しみ、知識を吸収。
    それらは植物学のため、一生を捧げるための試金石となった。
    小学校中退ながら、東京大学理学部植物学教室への出入りが
    許可され、文献や資料を使用することも出来た。
    だが、植物のことは詳しいけれども、人の心情には疎い。
    植物学教室での人間関係による軋轢で、出入り禁止や罷職し、
    妻たちの心を推し量ること無く、我が子を亡くし、
    金に無頓着で生家の身上を潰す。そして大借金の山も。
    それでも彼は呟く。「まあ、なんとかなるろう」
    やがて、彼の植物学への情熱に引き寄せられる人々の姿が。
    捨てる神あれば拾う神あり、人の縁の稀なることよ。
    植物を知り、その生きようを究めて識を弘げる、
    好きな事を一生を掛けてとことん極める、その人生の過酷さ。
    惚れ抜いたもののために生涯を尽くす・・・その幸福を知る
    “奇人変人”でなければ成し遂げられないのかもしれない。
    でも、少しずつ“人の心”が備わるようになったのは、
    祖母、妻たちや子どもたち、親友たちの存在でしょう。
    特に、誇りをもって彼を支えたお壽衛の姿。
    彼女の名を新種のササにつけ、
    最敬礼で感謝を告げる場面には、涙が浮かびました。
    また、南方熊楠や森鷗外、長谷川如是閑等、
    大正・昭和初期の著名人の名や姿が出てくるのも、
    興味深かったです。

  • ノーベル賞の授賞式などの時に、受賞者たちがこぞって
    「この賞は妻に捧げます」とか「妻のおかげです」とか言っておられるのを見て、なんだなんだ、妻に感謝ってのがスピーチのお決まりなのか、なんて思っていた。

    けれど、これを読んで納得。
    学者の妻は、ちょっとやそっとの覚悟じゃ務まらない。

    「日本植物学の父」として誰もがその名を知る、牧野富太郎。
    彼の人生がこんなにも「ひどい」ものだったとは!!
    土佐の実家の家業は義母と本妻に押し付けたまま東京で若い妾と暮らし植物採集にあけくれ、裕福だった実家の財産を喰いつぶす。妻と離縁後籍をいれた妻スエへの苦労のかけっぷりたるや。
    読んでいるうちに、腹が立ってくる。なんじゃそれ!とあきれてしまう。食べるものにも着るものにも困り、借金は膨らみ首はてんで回らない。それでもひたすら植物を求め日本中を駆け巡る。
    学者とは、研究とは。
    けれど彼の残した成果が今日の日本の植物学の基礎となっているのも確か。彼がいたからこそ。そしてスエと仲間がいたからこそ。
    こんな常識はずれな偏屈な変人なのに、彼の周りには人が集まってくる。
    植物に愛され人に恵まれた男、牧野富太郎。見ていて腹は立つけど心の底から尊敬してしまう。

  • 鴎外一族を描いた「類」がとても良かったので、おお、今度は牧野富太郎か!ととても楽しみにして読み出した。日本植物学の父にして、画家も顔負けの精密な植物画の描き手。どんな天才ぶりが語られるのか。

    いやもうこれは、期待通りに面白かったが、それ以上に困惑しました。読み進めるにつれ、牧野富太郎ってこんな人だったの?いくら天才とはいえ、これはちょっとあんまりじゃないの?というエピソードのオンパレード。金銭感覚ゼロ、研究のためだけでなく、上等なものを好み、湯水のようにお金を使い、名家であった実家を食いつぶす。その後は借金に次ぐ借金。最初の妻は気に入らず東京で別の女性を迎え(これが二人ともできすぎた人なんだよなあ)、世事は一切妻にまかせてしたいことだけをする。十三人もできた子どものうち育ったのは七人、妻の早世も含めて遠因は(これはごく控えめな言い方)貧乏でしょう。はっきり書かれないけど女性問題も多々あったようだ。脚色もあるだろうが、どちらかというと現実より穏やかにしてあるようだ。ほんと、牧野富太郎ってこんな人だったの。

    著者の筆は、牧野の人間性を肯定も否定もせず、ただひたすらに植物の姿を正しく記録に残そうとした姿を描き出していく。共感はし難いけど、牧野にとってはこういう道しかなかったのかもしれないなあという気がしてくる。今やまずこういう人は現れないだろう。道徳の教科書には載らない偉人。小説の力で生き生きと目の前に浮かんできた。


    オマケ
    牧野富太郎、来年朝ドラでするんだってね。主演は神木隆之介だってね。おそらく純粋な学者として描かれるんだろうけど、数々の困ったエピソードはどう処理されるんだろうか。莫大な借金はまあいいとして(良くないが)、最初の妻への仕打ちとか、次々子どもが死ぬくらいの貧乏暮らしなのに、知らん顔して長期間家を空け、自分は贅沢しちゃってたこととか。でもまあ神木隆之介マジックですべて浄化されるんだろうなあ。

  • 明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。
    小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。
    私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなり……。

    4分の3ぐらいまでは我慢したのですが、いくら私が植物好きといっても、あそこまでいっちゃうと学術的過ぎて小説としての面白みに欠けるというか。
    まかてさんの小説は「ボタニカ」前の「白光」あたりから史実が優先され偉人伝に近い感じになってきているような気がしてならない。「類」までは好きだったんだけど・・・。大浦おけいにしても、まかてさんは最近実在した人を取り上げた作品が多い。
    また日本初のイコン画家となるた山下りんの生涯を追った「白光」にも登場した、宣教師ニコライ。彼は日本にロシア正教を伝道した聖職者だが「ボタニカ」にも出てくる。ロシア正教は他のキリスト教の宗派よりも日本の文化や伝統を敬い尊んだとあり見直していた私。でもプーチンのウクライナ侵攻でロシア正教会との関りが深いと知り落胆している。

    • 5552さん
      しずくさん、おはようございます。

      こちらの小説、興味ありますが、そうですか、ちょっと学術的すぎるきらいがあるのですか…。

      あと、...
      しずくさん、おはようございます。

      こちらの小説、興味ありますが、そうですか、ちょっと学術的すぎるきらいがあるのですか…。

      あと、牧野富太郎、朝ドラになりますね!
      研究以外はけっこうダメ男っぽい?牧野富太郎をどう描くのでしょうか。
      楽しみです!
      2022/04/22
    • しずくさん
      コメントありがとうございます。
      そうね、植物博士牧野さんを語るには必要なのでしょうが。。。。
      神木くん演じる牧野さんに期待しています(*...
      コメントありがとうございます。
      そうね、植物博士牧野さんを語るには必要なのでしょうが。。。。
      神木くん演じる牧野さんに期待しています(*^-^*)
      2022/04/23
  • “サエコザサ”
    日本植物学の父—牧野富太郎-は、
    新種のササに最愛の妻の名前を…。
    波乱の人生ではあったが、
    植物一筋の94年。
    好きなことに好きなだけ打ち込んだ、
    言わば、豪気な人生。
    学問を貫き通した生き様は見事、
    まことに羨ましい限り。
    「恥ずかしい貧乏じゃない」
    とは言っても、
    莫大な借財を陰で支え続けた
    夫人の健気さが
    少しは報われたことに安堵した。
    彼の魂は、
    今も野と山を駆け抜けているのだろう。
    残された者たちはその功績を
    語り継がねばならない、
    そう、強く、強く思い知らされるのであった…。

  • 読んでいる途中に2023年度朝の連続テレビ小説のモデルとなり、神木隆之介さんが演じることを知った。
    牧野富太郎。植物学者。この本を読み、初めてその存在を知った。
    借金とか、家族のこととか、様々な困難があったようだが、研究を続け、その礎を築いてきたのは凄いと思った。

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著者プロフィール

1959年、大阪府生まれ。2008年『実さえ花さえ』(のち『花競べ』に改題)で小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。13年『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、14年直木賞を受賞。同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、15年『すかたん』で大阪ほんま本大賞、16年『眩』で中山義秀文学賞、17年『福袋』で舟橋聖一文学賞、18年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、19年に大阪文化賞、20年『グッドバイ』で親鸞賞、21年『類』で芸術選奨文部科学大臣賞、柴田錬三郎賞を受賞。他の著作に『落陽』(祥伝社文庫)、『白光』など。

「2022年 『ボタニカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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