- Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636173
作品紹介・あらすじ
ただひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類に無我夢中。
莫大な借金、学界との軋轢も、なんのその。
すべては「なんとかなるろう!」
――日本植物学の父、牧野富太郎。愛すべき天才の情熱と波乱の生涯!
「おまんの、まことの名ぁを知りたい」
明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。
小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。
東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。
私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた……。
貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種(ボタニカ)を究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。
感想・レビュー・書評
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2023年度前期朝ドラ「らんまん」のモデルということで読んでみた。
在野の植物学者・牧野富太郎。
小学校中退。学歴なし学位なし留学経験もなし。その富太郎が膨大で精密な標本作りで東京帝国大学の教授たちを感心させ植物学教室に出入りを許され、貴重な学術書や資料などを自由に閲覧させてもらって植物雑誌や図鑑を次々自費出版。
その後も研究を続ける傍ら、東京帝国大学助手から講師へ、そして理学博士学位取得まで上り詰める。
名前を付けた植物は二千五百以上。
…と独学だけでここまで上り詰めたものすごい人なのだが。
他の方々のレビューにあるように、主人公に対しての好感共感は全くなかった。
主人公に対してだけなら☆一つも無いのだが、家族や周囲の人々のフォローに対しての評価、そしてこの良くも悪くもおおらかな時代ならではの彼の功績に対して☆三つとした。
『学問には金がかかる』
この言葉が終始染み渡る話だった。
富太郎の『学問』のために先祖代々築いてきた実家の身代を潰し、俸給三十円の助手時代に三万以上の借金を抱える。
それでも『なんとかなるろう』と植物採集と出版は止めない。
ここまで来ると、富太郎のしていることは『学問』なのか道楽なのか分からなくなってくる。
結果『なんとか』してくれたのは周囲の人々で富太郎本人ではない。彼の功績があってとはいえるけれど。
特に最初の妻・猶(なお)は可哀想で仕方なかった。富太郎に妻として見られたことなど一度もなく、夫婦生活というものがあったのかどうかも分からない。ただ彼の尻拭いをさせられるためだけの結婚で、あげく若い妻に乗り換えられて離縁。
再婚して幸せになれたようだけれど、その後も折に触れて富太郎一家を支援しているのだからもう何というか、いやはや。
二番目の妻・スエは猶に言わせれば『誇りをもってあなたを支えた』らしいが、心労祟って五十代で死去。
東京帝大の矢田部や村田は富太郎にとっては意地悪に見えるようだが、言い方はともかく内容は至極当然だった。
また三万もの借金を清算してくれた上に、富太郎の標本を引き取って植物研究所を作ろうとまで言ってくれた池長孟(はじめ)とも最終的には決別してしまう。
『ガラスの仮面』の月影先生が言うように、天才はその才能のためだけにしか生きられない人なんだろうなと思う。他の人の気持ちとか一般常識とか世渡りとか、そういうことにまで気持ちが及ばない。
例えば妻子に植物採集や標本作りの手伝いをしてもらうとか、自分のしている研究について熱く語るとか、そういう場面が見られれば良かったのだが、自分の『学問』については家族には一切話さずどこに行くかも言わずに出かけて、借金やらお金の算段やらそういう面倒事だけ家族に押し付ける。
それでスエが死に際の朦朧としている中で『新種のササにな、お前の名をつけたぞ』と言われても「ああ、これで長年の私の苦労が報われた」となるだろうか。そもそもそれがどれほど素晴らしいことかを伝えていないのだから本人には分からないだろう。時代とはいえ死んで最敬礼されてもなぁと思ってしまう。
『捨てる神あれば拾うてくれる神がある』という通り、どれほど困窮していてもどこからか手を差し伸べてくれる人がいるのだから、きっと富太郎にはそうせずにいられない魅力があったのだろう。
残念ながらこの作品ではそれが感じられなかったが。
朝ドラは富太郎の人生をモチーフにしたフィクションということで、多分歴代朝ドラのように夫婦愛を全面に出した物語になるのだろうが、この作品を読んでしまうと素直に受け取れないかも知れない。
これだけ好き勝手していたのだから、94歳まで生きられたのも頷ける。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朝ドラ「らんまん」のモデル、牧野富太郎さんの生涯を描いた作品。
植物学者としてとても有名な方らしいのですが、無知なものでこの作品で初めて知りました(^^;)
ドラマはフィクション強めかな?
こちらとはちょっと違う印象。
子供の頃から植物を愛し、その魅力にとりつかれ、植物の研究のために全生涯を費やした牧野富太郎。
ひとことで言うと"奇人変人"。
この人、人生本当に楽しかっただろうな〜
口癖は「なんとかなるろう」。
いやいや、周りはめっちゃ大変な思いしてますから〜〜
周囲への迷惑を顧みず、自分の好きな事だけをして生きてきた富太郎。
人としてはちょっと〜とは言うものの、植物学に於いては多大な功績を残す日本が誇る権威であることは間違いない。
まずこんなに長い間ずっと、一つの事に熱中できるって凄すぎる。←94歳で亡くなるまでずっと!
そしてその行動力には脱帽〜。フットワーク軽い!
気になったらまっしぐら!
ちょっと物怖じするとか全然ない笑
なんとなくそういう所、羨ましくもあったな〜
天才ってちょっと変人が多いのかな〜
家族は苦労が多かったろうけど、それでも寿衛さんは幸せだったんじゃないかな〜となんとなく感じた。
牧野さんの植物画集をチラっと見たけど、もう凄すぎてため息。見惚れてしまうくらい美しかった。
とても良かったけど、長くてちょっと途中でだれてしまったので☆3で。 -
別に朝ドラに触発されたわけではないのですが、昔からそのお名前しか知らない人が一体どんな人物なのか知りたくなって読みました笑
さすがに稀代の人物だったようですネ!
土佐の佐川村の裕福な造り酒屋兼商家に生まれた牧野富太郎、幼くして両親と死別した彼は生業に興味薄くてもっぱら植物に関心のある育ちをする。
長じてさらにその傾向は強まり時間も金銭も植物への研究に注ぐ込み、ついには生家を潰してしまう。
ともかく植物への偏愛ぶりが凄まじく、家庭を持ってもひたすらにのめり込み続けるのが小気味良い♪
また何故か子宝に恵まれて13人を授かり6人が育ち上がる。内助の功の奥さん壽衛と、最初の妻 猶がなかなか魅力的な人物に描かれています。
自分の手足と目で極める実学の植物学者として終生を貫き通して94歳で亡くなるまでボタニカ(植物 種)に向き合った牧野富太郎のお話し!
これを読んだら朝ドラを観る気が無くなるのではありませんか?
いや面白かったです。 -
日本植物学の父、牧野富太郎の波乱万丈な生涯。自然を美しいと感じる心。自分の好きに注ぐ情熱。とにかく植物に対する愛が半端ない。全人生を賭けて取り組む姿に胸を打たれるとともに、その天才を陰で支えてくれた人たちの存在を想った。来年度の朝ドラも楽しみだなぁ。
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植物に魅入られ、持てる財産や時間、エネルギーの全てを我が国の植物学(植物分類学)の発展に捧げ、明治~昭和を生き抜いた在野・独学の植物学者、牧野富太郎。その激烈な生きざまを描いた伝記小説。
既に基礎的な学問を学び尽くしていた富太郎少年は、小学校を中退し、以来学校教育に背を向け、嫁や実家を一切顧みず、日本中を植物採集に駆け回り、書物を買い漁り、図説や専門書を次々自費出版し、挙げ句の果てに裕福な実家の財産を食いつくし、借金まみれで夜逃げ同然に引っ越しを繰り返し…。そして、人間関係の機微に疎く、権威におもねらない傲岸不遜な態度が嫌われて敵を多く作り…。浮き世離れした植物狂い、「最後の本草学者」牧野富太郎、とにかく凄すぎる。
こんな人物が身内に居たら、さぞかし大変だろうなあ(人間的には尖りすぎの欠陥だらけ)。自分は学問に魅入られなくて良かった(笑)。それでも、こういった狂人的科学者が学問を大きく発展させてきたのは事実。また、家族や友人達、そして篤志家に支えられて何とか窮地を脱してしまうところあたり、世の中まだまだ捨てたもんじゃないなあ、とも思わせてくれる。
読み応えある力作だった。 -
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2023年度前期 連続テレビ小説『らんまん』 主演は神木隆之介さん! | 連続テレビ小説 | NHKドラマ
https://www.nhk...2023年度前期 連続テレビ小説『らんまん』 主演は神木隆之介さん! | 連続テレビ小説 | NHKドラマ
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/1000/460323.html2022/02/10
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旬って、よろしいな。今まさに旬の「牧野富太郎」氏の物語。朝ドラ「らんまん」が決まってから、我が岸和田藩が二大名著「本朝食鑑」「重訂本草網目啓蒙」の出版に関わったと、2月の講演会からいろんな関連本を読みだし、予約していたこの本「ボタニカ」が30人待ちで回ってきたのが今月。まさにタイムリーとはこのこと、毎朝のテレビを見ながらのこの本、まさに面白い。富太郎氏の奇人、変人ぶりは一般の常識を逸脱している。
さて、ドラマではどのような描き方になるのか楽しみですな。
数珠つなぎで「南方熊楠」さんと、積読の中から朝井まかてさんの「恋歌」でも読んでみようと・・・。 -
やはり朝井まかてさんの本は話に入り込めて良い。
屋久杉や桜の描写等が綺麗で、実際に見てみたくなった。
本当に奇人であったのだろうが、周りの人は本当に誇りに思っていたのだろうなぁ
出会いにも恵まれている。というよりも掴み取りに行っている気はするが。
興味と才能と(環境も少し)あると、これほどのめり込めるものなのか、こんな人生で長生きできるのはもはや性分でしかないだろうな。
自分なら早死にしそう…
子ども目線の話も気になる。 -
牧野富太郎とはこういう人物だったのか。牧野富太郎の業績だけでなく、その人物像が立ち上がってくる。富太郎に対して感嘆の「へぇ〜」に続いて落胆の「へぇ〜」怒りの「へぇ〜」と目まぐるしく気持ちが揺れる。なんておもしろくて、ちょっと嫌で、魅力的な人なんだ。
本妻の猶、そしてスエの人物像も、これがこの時代の女の在り方だったのか。なぜ我慢できるのかと疑問だったが、猶の言葉に、スエは「たたひたすら、あなたに夢中だったのかもしれませんねぇ。草木に夢中なあなたに」
ああ、そうなんだ。
富太郎とスエは似ている。牧野富太郎の草木に対する一途さとスエの富太郎に対する一途さは同じだ。これ程一途に富太郎を想えたら、尽くすことは幸せであり、おもしろい人生だったのだと気付く。貧乏や苦労が可哀想と思うのは余計なお世話なのだ。
そして猶はどんな思いで生きてきたのだろう。富太郎に顧みられずとも旧家の嫁としての矜持を貫いた生き方に感服する。
富太郎の人物を追いながら、二人の妻たちの生き方にも目を向けさせられた。
植物を見つめ語りかける富太郎の姿がいいなぁ。
著者プロフィール
朝井まかての作品






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