ヘルタースケルター (Feelコミックス)

著者 :
  • 祥伝社
3.76
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本棚登録 : 3442
レビュー : 509
  • Amazon.co.jp ・マンガ (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396762971

感想・レビュー・書評

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  • 岡崎京子が描く女の子はいつだってリアルだ。
    「自然体で」「私らしく」「ありのままで」なんて、最近よく聞く耳ざわりのいい、でもどこか空虚なコトバも、岡崎京子にかかれば一刀両断だ。

    「バーカ!! なわけねーだろ!!」
    「あたしがどんな思いで 今の体重をキープしてるか」
    「お腹すかせて目が冴えて眠れなくて スイミン薬飲んでも眠れないとか」
    「どんだけ時間とお金をかけて この白い肌を守ってるかとか」
    「あんたたちに分かってたまるもんか!!」

    りりこは自分が使い捨ての商品だということを知っている。しかも消費期限は恐ろしく短い。身も心もぼろぼろになりながら、それでも彼女はチキンレースから降りようとしない。誰よりも優れた商品であるということ以外に、自分の存在価値を見いだせないからだ。破滅につながるレースと分かっていても、まずそこで勝ってみせないことには、人格すら認められないのが世の常だからだ。もっとも勝ったからといって、心の平穏が得られるわけではない。いったん勝った者には、次は「勝ち続ける」という、さらに困難な課題が待ち受けている。

    麻田検事のように、最初から他人の評価など気にしなければいいのかもしれない。けれど凡人にはそれが何より難しい。だからフツーの女の子たちは、「勝ちたい」と「ありのままで」の間を、ヘトヘトになりながら行ったり来たりする。いよいよ疲れてくると、「ありのままの自分で勝ちたい」なんて虫のいいことを考えてしまったりもする。

    その点、良くも悪くもりりこは潔い。そんな甘ったれた考えは微塵も持っていない。
    「生まれたときに決定されたもの? そんなの踏みつぶしてやったわよ」
    「びしょぬれの同情なんかいらないもの
     だとしたら無視されるか 笑いものになった方がましよ」
    そう言い切るりりこの覚悟は痛ましいが、どこか爽快でもある。読み進めていくうち、いつしか彼女に声援を送っている自分に気づいた。

    つまるところ、私たちみんな、誰でも少しは「りりこ」なのだ。妄執のために虎に変身して山奥に引きこもった男の話があるが、現代日本の女の子たちはココロに虎を棲まわせたまま、なんにも知らないような顔をして、クレイジーな日常を生きていかなくてはならない。

    麻田検事が言うように、「この街はちっちゃなタイガー・リリィでいっぱい」なのだ。

  • これは持てるものと持たざるものの話だ。
    一世を風靡するスーパーモデルりりこは全身整形の秘密を持ち、カメラの前では視聴者の理想通りの偶像を演じるが、ひとたびプライベートになれば付き人を性的に虐待し周囲に当たり散らすタチの悪い女。
    何故彼女がそうなったのかがストーリーの進行と同時に紐解かれていくのだが、美しさを失うことに終始怯え続けるりりこの劣等感の根は深い。
    美しさを失うのが怖いのは、それが偽物だとわかっているから。自分は賞味期限付きのパチモノだと痛いほど理解しているから。
    後半、りりこの対比となる「正統な美」を生まれ持った若いモデルが登場するのだが、彼女のセリフがまた素晴らしい。
    こずえは生まれながらにライオンであるからして、ライオンの皮を被ったキツネの気持ちがわからない。
    この物語のすごいところ、そして怖いところは、りりこ自身がいずれ視聴者に飽きられると達観しているところ。達観すれども受け入れられない彼女の、周囲を巻き込んだ壮絶な悪あがきが何百ページにもわたって描かれる。

    はたして私達は一年前に売れた芸能人の名前を思い出せるだろうか?
    二年前、三年前は?

    そんな思い出してさえもらえない一過性の人気のために、自己顕示欲と結び付いた自己承認欲求のモンスターとなりはて、文字通り骨も見も削るりりこ。この漫画の登場人物すべてが等しく愚かで、浅ましく、滑稽だ。
    SNSに顕著であるが、私たちはもはや他人の目なくして自分の存在ありえないところまで行き着いてしまったのか。
    りりこは他人見る故に我在り、こずえは我思う故に我在り。外と内どちらに依存するか、両者の違いは大きい。
    ベクトルの方向性を間違えば、だれもが容易にりりこのようなモンスターへ堕ちていく。

    人は足るを知らない生き物だ。整形は癖になるというが、痛みを感じる心を整形できないのに、皮一枚だけ整えた美に何の意味があるのか。

    ラストシーンは賛否両論だが、私は己に一番近い人たちを道連れに行き着くところまで行き着いたりりこに、開き直った清々しささえ感じた。
    悪くないラストだ。

  • 岡崎京子のシンプルな絵が却って、怖さを感じる。

    これが楳図かずお、大越孝太郎、丸尾末広、谷弘児といった見馴れた作家の絵だったら普通に観れるんだけどね(笑)

    • 深川夏眠さん
      同感です。
      生々しく肉感的ではない、いかにも「マンガらしい絵」が、
      女性の欲望と強迫観念を上手く表現している気がします。
      ところで、p...
      同感です。
      生々しく肉感的ではない、いかにも「マンガらしい絵」が、
      女性の欲望と強迫観念を上手く表現している気がします。
      ところで、p.26
      りりこが額にできた小さな痣を見つけて絶叫するシーンのインスパイア元は、
      確実に楳図御大の『洗礼』だろうと思うのですが(^_^;)
      2012/10/02
  • 「散る花の命を惜しむことが芸術だ」みたいな文章を、18歳のときセンター試験の現代文で読んだことを、数年ぶりに思い出した。

    この漫画とそれがリンクしているかどうかといえばしていないけれど。

    全身整形してスターになった女性が、心身ともに崩れていく過程を描いている。
    ちなみに16年前の作品。このどうしようもない感情は、もしかしたらずっと古くならないのかもしれない。

  • ブックオフで立ち読み。すさまじい安野モヨコ臭と思ったら安野モヨコが岡崎のアシスタントだったのね。この人が事故に遭ってなかったら安野モヨコは世に出られなかったかもしれないな…。
    とにかく絵が粗い。で、破滅的で品性下劣でワガママで刹那的で情緒不安定な実に人間の本性の体現たる女が出てきて暴れまくる。生命力と諦観に溢れた不思議な魅力のある作品。女の作家にありがちな作品への思想投影が薄く優れた語り手という感じ。話としてはそんなに型破りでもないような。

  • 「ヘルタースケルター」(ひっちゃかめっちゃかの意)な読後感。大衆の娯楽品として消費され自己疎外の中で…どこまで作り話で済ませられるだろう。誰もが持つ潜在的欲求「美しくなりたい」という願望が嗜癖と化し自我を乗っ取られて崩壊していく様はまさに手段の自己目的化だ。ラッドウィンプスの「ソクラティックラブ」をなんとなく口づさみたくなった。「♪僕を僕たらしめるものが何なのか 教えてよ 例えば
    顔が半分に 腕が二、三本に 眼が五等分にちぎれちゃって
    脳みそが隣人に 声が宇宙人に アレが人参に
    変わっちゃっちゃったとしても 君は僕だと言えるの?
    僕の何が残っていれば僕なのだろう?」どこまでが肉体でどこまでが魂なのだろう。深いテーマである。

  • あ〜…多分、変にリアルなんやろなぁ〜と思わせる内容。

    沢尻エリカがアレをどう演じきるのか?
    …見たくないわ〜?
    出来の良し悪し関係なく、自分の中の、どど暗い、黒い部分を見せられそう。

  • 一皮むけば、みんな骨なのにね

    • katsura8さん
      みんな骨という言葉は怖くもあり強くもありますね

      世界観がそもそも違うなぁと思っていて、
      わたしは映画は見に行く予定はないのです
      予告をみて...
      みんな骨という言葉は怖くもあり強くもありますね

      世界観がそもそも違うなぁと思っていて、
      わたしは映画は見に行く予定はないのです
      予告をみても原作で受けた印象と違ったので……
      2012/06/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「原作で受けた印象と違ったので」
      予告観られたんだ、、、←若干動揺してます。
      私はミーハーで、蜷川 実花の目に痛い原色写真も結構好きなので。...
      「原作で受けた印象と違ったので」
      予告観られたんだ、、、←若干動揺してます。
      私はミーハーで、蜷川 実花の目に痛い原色写真も結構好きなので。。。
      2012/06/05
    • katsura8さん
      うんうん、でしたら観にいかれたほうがいいですね、きっと
      わたしは岡崎さんの作り上げられた世界観と私が持っている個人的な印象を大事にしたいので...
      うんうん、でしたら観にいかれたほうがいいですね、きっと
      わたしは岡崎さんの作り上げられた世界観と私が持っている個人的な印象を大事にしたいのでこのままにしておきます~
      2012/06/05
  • 歓喜の裏に狂気がある。

  • 著者は、漫画家・漫画読みの間で極めて評価の高い人であり、漫画史に影響を及ぼした人であることは承知していた。もっとも、個人的には、「PINK」を読んだが、いまいちピンとこず、雰囲気が新しかったのかな?といった印象だったので、10年以上そのままになっていた。

    今更ながら、傑作との声が最も高い本書をはじめて読んでみたが、いやいや凄い。ストーリー、絵、モノローグが一体となって、全てが研ぎ澄まされていて、高次元で完成している。尖っていて痛くてでも優しくて、脆弱だけど強くて、、、。参りました。

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著者プロフィール

著者経歴 80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写と巧みなセリフ回しで、愛や暴力、トレンド&カルチャーが描かれたマンガを生み出してきた先駆的存在。『ヘルタースケルター』で2003年文化メディア庁マンガ部門優秀賞、'04年手塚治虫文化賞・マンガ大賞受賞。主な作品に『pink』『ジオラマボーイ☆パノラマガール』『リバーズ・エッジ』『エンド・オブ・ザ・ワールド』など。


「2015年 『恋とはどういうものかしら?新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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