スニップ,スネイル&ドッグテイル (Feelコミックス オンブルー)

  • 祥伝社
3.55
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396783396

感想・レビュー・書評

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  • ヤマシタトモコがいま最も注目すべき作家なのは間違いないが、今作もすばらしい作品。前作「ひばりの朝」で泥濘に沈み込むような悪意を描き切ったあとは、それより少しライトめのBL。
    話そのものはごく普通のBLだが、その構成の妙が作品を非凡なものに仕上げている。物語は二人がであってから同棲に至るまでの8ヶ月間、それを時系列に描くのではなく、バラバラに分解して再構成する。それによって二人の関係の変化を読み解くためには、読み手は時間を行きつ戻りつしなくてはならない。その時系列を壊した配置と、そして何度もページをめくりかえす行為とが作品に絶大な効果を与えている。
    これだけの構成を実現する手腕というのはなかなかない。ヤマシタトモコは一作ごとに技術を大きく進歩させているが、今作でもまた今までとは違うアプローチに挑戦しそれを見事に成功させている。とんがり過ぎて脱落する読者もいそう(実際amazonレビューで低い評価をつけている人はみな時系列がバラバラなことを批判している)だが、それでも表現に磨きをかけていく姿勢は素晴らしい。やっぱり目が離せない作家だと思う。

  • 結構これ実験作ですね!趣向が面白い!ゲイとノンケがゆっくりと距離を詰めて行く感じ、現実にもこういうカップルいるんではないかと思っちゃいました。あと、2人の空気感が伝わってきて、ヤマシタトモコさん、大好きだー!と改めて思いました。
    ポリネシアンセックスってなにwww

    「…おまえと日吉はもう全然わけが違うから …おまえはダメ」 薄暗い部屋に張り詰めた空気、色気が漂っていて、雰囲気ある。まるで小説を読んでいるようです。

    追記。再読しました。これ、読めば読むほどいい味出してきますね。 普通の物語だと、まあオーソドックスなものだと起承転結があって、大筋がこうで〜ってな展開になるわけですが、これは日記形式で時系列もバラバラ。当然読者は2人がどういう経緯で距離を縮めて行くのか、最後にならないとわからないのだけど、実際、人生ってこういうことがあって、そうなったから、こうなった、といった筋書きがあるのではなくて、この作品で表されているような、小さな日常の積み重ねなんですよね。2人の日常の断片がちりばめられていることで、そういうのが強く伝わってくる。

    ありふれているけど、だからこそ尊い日々の生活の大切さが表現されています。とても素晴らしい物語だ、これは!ヤマシタトモコさん、サイコーー!!

  • ヤマシタトモコさんやよしながふみさん、好きだけどBLにはあまり興味ない。これはBLってよりも好きになったら、男とか女とか関係ない人々のラブな訳ですが、オシャレーな雰囲気に呑まれてオタオタしているうちに時系列にも混乱してあまり浸れませんでした…。

    ただね、どっちから仕掛けたのかも分からず、お互い天邪鬼で認めたら負け!みたいな恋の攻防戦…渦中にいると、もー!!ってなるよね。問いただしたい、でも怖い。伝えたい、でも言いたくない。

  • 時間軸に沿わない、いわゆるハルヒアニメの手法…。
    一回じゃわからないものはたのしい。

  • 時間軸を交差させて二人の日常を断片的に見せる手法は映画的で斬新。しかし漫画だと余韻がないまま次のシーンに移動するので、内容を把握するのが一回では難しいのが事実。
    前からヤマシタさんの作品は映画的だと思っていましたが、もう少し長いターンの時間軸なら分かりやすかったのかも。何度も読むうちに過去の出来事がフラッシュバックされてスルメのように味が出てくる一冊。ただ真面目男とノンケで彼女持ちの男の不器用な関係が、いまいちキャラクターに感情移入出来ないまま話が進んでいってしまったので萌え不足に終わってしまったのが残念。
    装丁はさすがonBLUEさん。鮮やかなピンクとグリーンとオレンジにブラックの帯が映える。タイトルも素敵。

  • 先ず筆者が描きたいようにやりたいようにやった、という前提の元で言うと、とても読み解きがいのある漫画ともとれるし、面倒くさくてわけわかんない、とも取れました。時間軸で遊んでいるので、キャラクターの相互理解深度が時間と沿っておらず、読者とキャラの間には常に不揃いな溝がある。そこはちょっと読みにくかったです。私は面白かったです。試みは成功したと思います。

  • ヤマシタトモコ節、苛烈に炸裂って内容でした、えぇ
    ただ、冗談ブッコ抜きで、読んでいて頭の中で糸が絡まった。一回目は正直、疲れた
    でも、その“ややこしさ”がストーリーに深みを与えてて、峰と安城の普通じゃない純愛を際立たせている、そんな風に私には思えた
    ヤマシタ先生の画ってのは、線一本それ自体にエロさが宿っているからか、男の登場人物がやけに、男目線で見てると色っぽく感じる。特に、手? 骨が太くて無骨な造りなんだけど、その部位で起こす動作が、色事に通じるモノじゃなくても、いや、モノじゃないからこそ、一層にエロく感じる
    何っつーのか、人間の性欲?が体を刺激して発生するフェロモンを本能的に知ってるのかな、と読んでいてドキドキした
    男が読めて、「つ、使えちゃう」と思わせるライトBL漫画を描いてくれる、ヤマシタトモコ先生は半端ねぇ
    本編もしみじみと感じ入れたが、書き下ろしの『the recipe』は勢いがあって、つい笑えてしまう

  • 8ヶ月間の日記だそうですが、時系列が前後します。
    それでも、なんとなくで全体的なまとまりが見えてきます。
    バスの運転手と自分をぼくと言う翻訳家のお話です。

  • 日記形式だが時系列はバラバラなため、1周目は正直なかなかすっきりしない。しかし、2周3周と読むたび、断片的な記憶が繋がりひとつのストーリーになる。話の内容が変哲もない日常を描いていることもあり、ふたりの人間が恋に落ちていく姿をリアルな感覚で追うことができる。それがなんとも心地よい。おすすめです。

  • 何気ない出会いで、なんとなく気が合って、一緒にいたらとても居心地よくて、何気ない一言がずっと心に残って。少しずつ心の中を占める割合が多くなって、それが何なのか認めてしまったら怖くて、自分をごまかして、でもごまかせない。そういうのあるなあと思いながら読みました。

    ヤマシタせんせはいつも、そういう異性とか同性とか関係なく、人を好きになることについてのリアリティを追及されていて、とても好きです。

    友愛だろうがなんだろうが、人を好きになることはいつだってシンプル。そこに線引きは存在しなくて、相手に興味を持った時点でいろんな可能性が生まれる。

    ゆっくりと近づいていく二人の過程が時系列がぐっちゃりしているおかげで、より鮮明にわかって面白かったです。

    でも、1ページ読むたびに何回も前のページを読み返して、あ、そういうことか!ってまるで推理小説を読んでいるような気持ちになりました。笑

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著者プロフィール

1981年5月9日生まれ。 2005年のデビュー後、すぐに「ねこぜの夜明け前」で講談社「アフタヌーン」主催の四季賞、夏・四季賞を受賞。 19年には「違国日記」がマンガ大賞4位に入賞する。主な作品に『BUTTER !!! 』『ひばりの朝』『さんかく窓の外側は夜』(本書原作コミック)『花井沢町公民館便り』などがあり、幅広い層の支持を得ている。

「2020年 『さんかく窓の外側は夜  映画版ノベライズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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