キリスト教とローマ帝国

制作 : 松本宣郎  穐田信子 
  • 新教出版社
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本棚登録 : 38
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784400227236

作品紹介・あらすじ

帝国の辺境で生じた新興宗教が、短期間に多くの信徒を獲得し、ローマ帝国を席巻できたのはいったいなぜか。古代史の最大の疑問に対して、アメリカの代表的な宗教社会学者がカルトや新興宗教の消長を分析する際に有効な手法を応用して、その秘密に迫った話題作。初代教会における人々のネットワーク構築への着目はその後の議論にも大きな影響を与えた。1996年の原書はピューリッツァー賞の候補ともなった。待望の邦訳。

感想・レビュー・書評

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  • http://naokis.doorblog.jp/archives/Christianity_and_Imperium_Romanum.html【書評】『キリスト教とローマ帝国』(前半)〜普及に300年かかったキリスト教。宗教とはすなわちソーシャルネットワークである。
    http://naokis.doorblog.jp/archives/common_issue_between_Roma_era_and_today.html【書評】『キリスト教とローマ帝国』(後半)〜ローマ帝国と現代の共通の課題とは?その解決のヒントは?

    骨太のキリスト教が普及した検証。キリスト生誕から約300年経って、ローマ帝国の10%、約600万人まで、キリスト教人口は増えた。平均して10年間で40%増の増加率である。
    人々はキリスト教の教義に挽かれて改宗したのではなく、親しい間柄を通じて普及していった。キリスト教は玉石数多の新興宗教の一つでしかなかったが、そのオープン性や他者を愛せよという教義によって、人と人との愛着関係を醸成し、ほかの新興宗教を差し置いて、一歩ぬきんでた存在になった(一章)。

    下層階級より上層階級を通じて普及し、また、離散ユダヤ人を通じて普及した(二章・三章)。疫病の際には、看護活動を奨励するキリスト教徒とキリスト教徒の友人たちの生存確率が高かったと考えられる。2世紀・3世紀の爆発的に疫病の死者が出た時、キリスト教徒の生き残りが顕著だった(四章)。

    本書で知ったことの一つは、当時の全く異なる倫理観と現在と共通する問題。現在われわれが考えている西洋的な「家族」の観念は、キリスト教がもたらしたもの。家族愛という観念が希薄で、女性は蔑視され、堕胎も頻繁に行われた。女子の誕生は望まれず、男女の人口比は1.3:1だったと言う。そして現在と共通する課題は、実は紀元後の帝政ローマ時代は、一貫して人口減少に苛まれていたこと。ローマ帝国は、当時としては完成度の高い文明国だったわけだが、現代と同じく、文明の行き着く先は、少子化&人口減少である。そこにきて家族愛を持ち出したキリスト教は、女性の支持を受け(信者の62%が女性だったという説)、非キリスト教徒が人口が減少していく中、キリスト教徒は自然増となった。(五章・六章)

    十九世紀のヨーロッパの都市が大変不衛生だったように、紀元後のローマ帝国の都市も大変不衛生だった。アンティオキアは、わずか2平方マイル(2.6平方キロ)に15万人の人口が住んでいたという。城壁で囲まれてたため、人口増に対し柔軟に都市を広げることができなかった。そこに様々な出自の住民が住んでいたため、現代の都市と同じく、人口が多い割には人間関係が希薄で犯罪も多かったと考えられる。そこでもやはりキリスト教の隣人愛の教えは、救いを差し伸べる(七章)。

    <目次>
    はじめに
    第一章 信者の増加と改宗
    第二章 初期キリスト教の階級基盤
    第三章 ユダヤ人宣教は成功した
    第四章 疫病・ネットワーク・改宗
    第五章 信者の増加と女性の役割
    第六章 都市帝国のキリスト教化 数量的アプローチ
    第七章 都市の混乱と危機 アンティオキアの場合
    第八章 殉教者 合理的選択としての自己犠牲
    第九章 時期と組織
    第十章 徳についての小論
    解説
    文献表

    2015.01.24 池田信夫blogより。
    2015.01.25 予約
    2015.04.12 読書開始
    2015.04.22 読了

  • キリスト教では、神が人を愛するのであるから、人は互いに愛し合わない限りキリスト教徒として神に喜んでもらえないとし、「愛と慈善」は、キリスト教社会の垣根を越えてまで全ての人に広げるべきものとされていた。

    ローマは疫病による人口減少により異民族が流入、民族がクレージーキルトのようにひしめきあい、都市部は混乱し、文化的混沌と燃え上がる憎悪に満ちていた。後半ローマは、都市のゆがみを抱えていた。

    異教とされたキリスト教が生き残ったのは、キリスト教徒の慈善活動が人々を癒し、その強い倫理観が人間性を復活させ、殉教者の自己犠牲を原動力とし爆発的に信者の数が増えたから。
    他にも理由があるのだが、なるほど…愛が全ての力なのだと思った。
    しかし、多民族をまとめ上げるには、宗教しかないようだと歴史的にも感じた。

  • 今日もTVはロンドンの15歳の女の子の3人組がISに参加するために英国を出国したらしい、というニュースを報じています。理解の出来ない、なにかが中東で起こっている、そんな夜に読了。もちろん謎のイスラム原理主義と一緒に出来ないのは承知の上で、新興宗教としてのキリスト教は、従来のユダヤ教にとっても、ローマ帝国にとっても得体の知れない存在感を醸し出していたのだろう、と想像しました。その新興宗教キリスト教が、なぜ世界宗教に育ったのか、を紀元300年までの初期に焦点を絞って社会科学のアプローチで追求するユニークな書です。全然ジャンルが違うけど、ビッグバンからの3秒間で宇宙の構造は決まった的な、不思議な感動を与えてくれました。偶然と必然の織りなす物語。「神が人を愛するのだから人はお互いに愛し合わない限りキリスト教徒として神に喜んでもらえないという論法」の発明は世界三大発明よりもっと大きな発明だったのかも。それが愛という概念を生み相互依存性をもたらし人間を自由にし、ひいては科学を生み、資本主義を生んだと考えると、今、起こっているイスラム国との軋みは、やはり紀元300年まで遡らないと理解出来ないものなのかもしれないと思いました。

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著者プロフィール

Rodney Stark

アメリカの宗教社会学者。1934年、アメリカ・ノースダコタ州生まれ。デンバー大学にてジャーナリズム学の学士、カリフォルニア大学バークレー校にて社会学の修士号および課程博士号を取得。32年間、ワシントン大学で社会学および比較宗教学の教授として奉職。現在、テキサス州ベイラー大学教授。

主著『キリスト教とローマ帝国――小さなメシア運動が帝国に広がった理由』(穐田信子訳・松本宣郎解説、新教出版社、2014年)。

「2016年 『十字軍とイスラーム世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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