悲しみをみつめて (C.S.ルイス宗教著作集)

著者 :
制作 : C.S. Lewis  西村 徹 
  • 新教出版社
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本棚登録 : 12
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784400520566

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  • C.S.ルイス宗教著作集6。59歳で結婚したルイスが、夫人との死別を経て、綴った手記。訳者のあとがきにもあるが、もともと人に読ませよう、世に現そうという意図から書かれたものではないようで、理性的で明晰な他のルイスの文章とは、全く違った色合いの作品だということ。確かに読んでみると、難解である。他の書においては冴えわたるルイスの譬えも、この書においては分かるようで分からない。愛する者との死別、というものはそれほどに体験的なものであるし、客観的な説明と理解という学びとは距離があるのだろうとしみじみと思う。
     しかし、こうやって出版物となっているわけだから、めちゃくちゃなわけではない。要するに難しいのだ。だからじっくりと取り組めばうっすらと光が差してくる。それでも分からないところは分からないが。
     この書を通じて深く理解できることの第一は、ルイスの亡き妻に対する深い愛情である。人生の晩年にして、人生において初めての愛による合一を、ここまで深奥に味わい尽くすことは並みのことではないと感じる。ルイスの独りごちるような言葉も、不意に客観的に自嘲するような台詞も、それが織りなされるごとに一層愛が滲む。こんな書も珍しい。そして嬉しい。
     残されるものの悲しみは分かる気がする。しかし、それは言ってしまえば、故人とは関係ない悲しみである。自分の感情の問題である。しかしルイスが語る悲しみは、相互的である。亡き妻への投げかけ、思いやり、見えない妻の視線、感情。今そばにいるのか、いないのか、それは不確かでありながらも、空間的な在不在は超越する、夫から妻への、または妻から夫への語りかけの記録である。そしてそれは神へと昇華されようとする。
      
     私たちは、故人を思い悲しむほどに、思い出をそのままに保存しようと思うほどに、死者を死者としてはっきりと自分の中に刻むようになる。ミイラを作る作業と似ていると。故人が生きていると感じるのは、私が生き生きと生活の活力をえている、その瞬間であると、ルイスは語る。村上春樹はあまり好きではないけれど、ノルウェイの森の終盤の一節、「悲しみを悲しみ尽くす」というフレーズがよみがえった。ペットが死んでも、ペットロスと、その喪失感に名前がつく。ここでロスを越える清廉さを学ぶ。奥さんを今まで以上に、強く愛そうと思えた一冊。

    13/11/15

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