ヒットソングを創った男たち 歌謡曲黄金時代の仕掛人
- シンコーミュージック・エンタテイメント (2018年11月28日発売)
本棚登録 : 31人
感想 : 1件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784401645268
感想・レビュー・書評
-
時代を彩った大ヒット歌謡曲の立役者、14人のプロデューサー、ディレクターとのインタビュー。
著者は冒頭、「歌謡曲」の定義を「分業制のポピュラー音楽」としている。またこの分業制のプロとして歌手、作詞家、作曲家、編曲家、エンジニア、スタジオミュージシャン、ディレクター、プロデューサーを挙げ、いいところは歌手作詞作曲が全部持っていき、最近は編曲やミュージシャンにスポットを当てることもあるけれどディレクターやプロデューサーにフォーカスしたものはなかなかないので自分でやってみようと思って。。と語る。
第一章はディレクターの草野浩二(東芝)
彼の功績No1はやはり坂本九の「上を向いてあるこう」だろう。他社では落選していた当時中2のミコちゃんをオーディションから見出したり、台北で欧陽菲菲を見出したり。
全ての記述が細かく、いつ誰が何故に何をどんなふうにしたのか、過去の記憶を鮮明に言語化して伝えてくれている。
それにしてもミコちゃんを「何故他社で落ちたか分からない」と一発合格させたことと、80年代は川島恵や桑田靖子を担当し「他社では顔>歌だが、私は歌の上手い子しか採らない」と言い切ることになんとなくつながりがあるような。
(皆んな配置が綺麗。)
第二章は酒井政利。まずはコロムビア入社。63年クラウン騒動で歌手も社員も抜けて専属作家ではなく素人だけで固めた「愛と死をみつめて」でコロムビアに初のレコード大賞をもたらす。引き続き専属作家を使わずフリー活用。島倉千代子の泣きが気に入らないとのことで岩谷時子に依頼。出てきたのが「ほんきかしら」→天才の仕事。
元々コロムビアと組んでた米CBSがソニーと。ここでソニーに鞍替え。ゆかりジュン知子と大人路線の他社売れ過ぎに対抗するためヤング路線。CBSソニー邦楽1号はフォーリーブス→天才。
寺山修司からの「添加物はダメ。素材は生もの。」から着想した南沙織の売り方→天才。
ひろみ百恵、「再起」プロジェクトの朝丘雪路坂本スミ子金井克子内田あかり梓みちよ。
で。阿久悠なんかも他の本で書いてる南太平洋への船旅(電通の悪巧み)。ここから4曲。「時間よ止まれ」(サモア)、「いい日旅立ち」、「魅せられて」(エーゲ海)、「異邦人」。
特に矢沢永吉との(気合いの)殴り合いがいい。
オトナはこうでなくっちゃ。
勝敗は31年後に酒井氏の勝ちということで。
阿久悠との思い出「ミュージックはあるけどソングがないね」「イースター島でのあれこれのあとのピンクのUFO」とかも痺れる。
音楽的知識はないけど、本人も言う通り彼は時代の半歩先にヒット曲を用意する天才なのよ。
他の本では彼のプロデュースを「音楽素人の無茶振り」的な評があるけれど(多分そうでしょう。ここでも音楽的な話は出てこない。)本人も幼少期からの「映像」や「映画」を元にしたインスピレーションを自身の個性、強みと認識してるみたいだし、歌詞の重要性を強調してる。
これってプロデューサーにはやっぱ大事よね。商業的成功が任務なんだから。時代の匂いと歌詞曲の匂いを合わせに行ってるんだと思う。
調香師のような。
でも一緒に仕事したらムカつくだろうな。
第三章はGSプロデューサー本城和治(ビクター)
「最近はサウンドはあるけどメロディがない」
「シングルはスマッシュヒットくらいがアルバムが売れてちょうどいい。売れ過ぎるとアルバムが売れなくなる。」「大橋純子は20年早過ぎた。UAやMISIAはいいね。(すでに地盤があって)」
「私はナベプロジャニーズサンミュ芸映とやってない。」なるほどねぇ。
第四章は東元晃(コロムビア、ビクター、テイチク)長く活躍する人は「頭のいい人」。なんかちあきなおみがこの人にずっとついて行ってる理由が透けて見える。あとヒデって日活ニューフェイスでソロデビューもしてたんだ。男前だもんね。
第五章は塩崎喬(ワーナーパイオニア)
ザ・ピーナッツマネからディレクターに。
ルミ子や狩人は特例らしく「ざらつきとんがりはゼニの声」と話す。北原ミレイ朱里エイコ高橋真梨子はその辺りか。てかベースが田中健て男前すぎ。
ルミ子のキャッチコピー、「一発屋おルミ」エピソード、狩人命名、狩人歌唱印税、勝手に歌詞を変えるなどこの章は内容がしっかりあるのに語りが軽妙でキレがいい。
「とにかく声。感性とか笑わせる」的な発言がかっこいい。
第六章 小栗俊雄(日音)
本人も元歌手の音楽事務所原盤ディレクター。
尾崎紀世彦のエピソードがおもろい。
セブン、知らなんだ。
ここでも南沙織ベタ褒め。そんなにいいかねぇ。
第七章 川瀬泰雄(ホリプロ)
百恵ディレクター有名人。ここでも百恵の思い出話が主だが井上陽水のエピも。「俺より百恵を取るのか」と怒るところがかわいい。
悲しみのボートで聖子も担当。百恵については指摘されたことを忘れず一度に改良してくる努力型天才の面を、聖子も同じく集中力の高い3テイクOKの天才としながらも「なんでもすぐ自分の歌にしてしまう」とし、理と力(暴力)、静と動の対比を滲ませる。
第八章 若松宗雄(ソニー)
川瀬とはわざとこの並びなのかしら。
聖子のディレクターというか、生みの親。
哀愁のシンフォニーや、やさしい悪魔のブーツ音エピが楽しい。
聖子がチェリーブラッサムが好きじゃないとは聞いたことあるけどやはり本当らしい。若松氏は「流麗小田からジグザグ財津への違和感」と分析。そうかもね。でも「本人が好きな歌は売れない」と。事実財津3部作の2作目、夏扉は代表作だし。
ユーミンの愚痴はイメージ通り、米国進出に疑問を呈する聖子にはちと意外。
第九章は木崎賢治(ナベプロ)
裏方は顔出しすべきでないとのことで写真もない。現在もバンチキのプロデューサーでバリバリの現役。ジュリー2枚目シングルが初ヒット。
「はっきりくっきり、恥ずかしいくらいのメロディじゃないと売れない」と気づいたという。
邦楽を全然聞かなかったけど上を向いてや振り向かないでは好き、宮川泰や服部良一は好き、歌詞が分かるといいんだけどなと言われ小説など、根っからの洋楽脳のディレクターなのかしら。
「恥ずかしいくらいのメロディ」に繋がることとしてのサビの繰り返しが語られる。汽車ポッポやめだかの学校のような。アグネスの「涙をー隠してー」は追加メロ、よこはまたそがれも「行って行って」が追加。ここを恥ずかしいからとやめてはいかんと。なるほどね。
僕らが憧れた輸入ものが日本独自となって「お手軽」になる。歌謡曲も洋服も飲食もね。と。
山下久美子「だけど本当に好きだったの」は時代劇で刀を一旦飲み込ませてから引き抜くのと一緒だと。なにその表現。好きなんだけど。
第十章は高橋隆(ビクター、テイチク)
元歌手。社内コンペによる襟裳岬企画、歌手時代に吉田拓郎と飲んだ際の「演歌なら森と都に」発言、A面を巡るナベプロとビクターの衝突と緩和策などこの人ものっけからおもろい。
ビクターアイドル、石野真子小泉今日子荻野目洋子酒井法子も手掛ける。「春ラララ」は「人をおちょくったような曲を作ろう」「社内でふざけた歌作りやがってと言われた」全てそりゃそうだよな的な。
石野真子のコンサート後半での洋楽カバー盛り上がりから「ファンが踊れる歌を」と作ってきたのは荻野目ちゃんでそのまんま爆発してる。
六本木純情派がのりぴー用だったこと、のりぴー売りが水谷麻里と被らないためのトータルプロデュースだったことも語られる。
それにしてもチェリッシュのてんサバ前のシングル「古いお寺にただひとり」って売る気ある?嫌がらせじゃない?
十一章は島田雄三(ワーナー)
ほぼ明菜。倉沢淳美デビュー曲は鶴田浩二の「同期の桜」からなんだ。選挙活動ね。
第十二章は田村充義(ビクター)
全員生年月日から始まるプロフ、でも彼だけない。学生時代や就職年があるから言っても良さそうなもんだけど。たまたま?でも肘の入り方が。
5作目からキョンキョン担当。「5番手を3番手にしよう」「本人のキャッチフレーズのようなタイトル」「良い子悪い子普通の子の普通。だったら何か変わったことをせねば」で、その3番手は91年に女性アイドル初のミリオン達成(しかも本人作詞でレコ大作詞賞)まぁキョンキョン普通じゃねえし。
淳子の「窓」やってくれたんだ。ありがと。
第十三章は長岡和弘(キャニオン)
甲斐バンドHEROで1位獲得後に脱退、キャニオン入社。すぐにまちぶせをヒットさせてからの斉藤由貴。「初めてで最後のもの」で卒業に初戀。
京平発案の「あぁ」は平尾昌晃発案の「行って行ってしまった」と同じ作曲家発の成功のフックとな。
不倫女王シングル134は松本隆筒美京平武部聡志。(水色のカチューシャ)2は白い炎。なおアレンジャーの武部はその後もずっと続く。
にしても斉藤由貴はデビュー前から大目玉だったのね。あと同年の不倫とおニャンコに挟まれた井森美幸の立場。
チャゲアスのモニム、指輪、黄昏恋ワイ。よっきゅんもやってくれたのね。ありがと。
最後の第十四章は吉田格(ソニー)
知世とナンノでヒット連発のプロデューサー。
郷ひろみのゴールドフィンガー99も彼。
ナンノの声を「カーペンターズのカレンや竹内まりやに通じる」と高評価。まぁ言い過ぎだけど分かる。欠点の針って返があるから一度刺さると抜けないんだよね。でも言い過ぎ。
途中仙台営業所に2年も左遷されてるのがベティのママのせいなのがウケる。語りではソニー内部の決定となってるしそりゃそうなんだけど震源地はアミューズじゃない?わざわざ「アミューズの」って始まるし。原由子の紹介が。
てか50-60歳のアイドルオタクは読みなさい。
俺は図書館だけど買ってもいいと思う。
それぞれの作品リストもおもろいし。詳細をみるコメント0件をすべて表示
濱口英樹の作品
