翻訳教室

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レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403210884

作品紹介・あらすじ

チュアート・ダイベック『故郷』、バリー・ユアグロー「鯉」、レイモンド・カーヴァー「ある日常的力学」、ハルキ・ムラカミ=村上春樹(英訳はジェイ・ルービン)"かえるくん、東京を救う"、イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』より「都市と死者2」、アーネスト・ヘミングウェイ『われらの時代に』より第5章と第7章の抜粋、ローレンス・ウェシュラー「胞子を吸って」、リチャード・ブローティガン「太平洋ラジオ火事」、レベッカ・ブラウン「天国」。村上春樹、ジェイ・ルービンもゲスト参加!東大文学部の翻訳演習を完全収録。

感想・レビュー・書評

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  • 再読です。

    で、やっぱり面白い!!!

    東大文学部翻訳演習完全収録という本書。
    毎週、課題を与えられ翻訳に挑む学生たちも、それを添削する柴田先生(院生のヘルプがあるとは言え)も、どんなにか大変な日々だと思うのに、みんな、とても楽しそうなんですよ。
    頑張って勉強して東大に入るとこんな面白い演習に参加できるんだなぁ、とこれは前も思ったことだけど。(*^_^*)

    学生さんたちが優秀なのはもちろんだけど、とても前向きに“翻訳”という世界に取り組まれているのが素敵です。

    また、実はここが読みたくてこの本を買ったわけなのですが、演習に村上春樹さんご自身が来られて、学生の質問に答えたり(学生さんたちの驚きと喜びを想像すると、私まできゃぁ~~!(*^_^*)と言いたくなる)、また、同じ作品を村上訳、柴田訳で比べたりする章がこれまたとてもとても面白かった。

    翻訳って・・・
    「横のものを縦にする」(*^_^*) だけでは成立しないんだよね、とこれも改めて。原文の持つ世界観をいかに伝えるか、が命なんだ・・。

    以下、私の覚書のために・・。

    ●英文の語順で日本語に訳す(特に、節の順番!)のが基本。
    ●日本文のリズムを大切に。
    ●原文の持つ雰囲気を壊さないように。→ あまりにこなれた日本文に訳すと、原文の持つ“奇妙な”感じを崩してしまうことがある。あえて固い日本文に訳してみることが必要な場合もある。
    ●英文は誰の目線か、ということがはっきりしている特徴があるので、そこに留意。もし、目線が変わってきていたら要注意。
    ●主語その他の代名詞は、全部訳さないのはもちろんだけれど、半分くらいを目途にするといいかも。
    ●shockをショックと訳すと、文の中での重みが違ってしまう、みたいな、よく知る英語に要注意。

  • この本を読んでいる数日間、楽しくて楽しくてしょうがない、という本でした。このワクワク感。読み終わって寂しい~。

    生まれて初めて、「文芸翻訳」というものに挑戦してみたのですが、こんなに楽しいなんて本当にビックリです。
    村上春樹さんが「趣味は翻訳」とエッセイに書いているのを初めて読んだ時は、「か、変わった人だなぁ~」と思っていたけど、今なら分かる。翻訳ってほんと楽しい。まったく予想していなかっただけに、まずそこに衝撃を受けました。
    毎日、仕事が終わった後、帰る前に会社で課題を1、2個自分で翻訳してプリントアウトして、その後、それを見ながら家とかカフェで本文を読む、という読み方をしていたのですが、毎日毎日、早く翻訳したくて、早く教室でのみんなの訳が読みたくてウズウズしてました。

    そして、他にもいろいろビックリ。
    まず、翻訳って時間がかかるんだなぁ、ということ。しかも、慣れていないせいか、見積もった所要時間と実際にかかる時間が全然リンクしない!
    最初にざーっと課題に目を通したとき、「カーヴァーは20分くらいで出来るかな? ダイベックとかカルヴィーノはちょっと面倒くさそうだから40分くらい?」なーんて見積もっていたのですが・・・ダイベックは人生初翻訳だったのもあって、2時間くらいかかったし、簡単そうだと思ったカーヴァーは私的には3番目くらいに手を焼いて、1時間はかかった。逆に、しっくりくる学術的な用語を探すのに手こずりそうと思った蟻の話はあっという間だったし。
    次にビックリしたのは、自分の誤訳の多さ。けっこうやらかしている。けっこうショック。
    さらに、さらに、プロのすごさに圧倒。(というか、自分の訳のショボさに衝撃)
    特に、カルヴィーノの回は、教師訳例の素晴らしさに驚愕しました。自分で「今回はなかなかよくできたんじゃない?」なんて思っていただけにその差に愕然。
    そして、最後に、ヘミングウェイにも驚いた。原文を読んだことなかったのだけれど、こんな文章を書く人だったのか、と。
    よく言われている彼のスタイルについて、これまでに読んだ翻訳ではあまりピンと来てなかったのだけど、ああ、こういうことか、これがそうか、と今さらながら分かった。日本語に移し替えると全然うまくいかなかったな。何かが増えて、あの簡潔さが減ってしまう。
    カーヴァーの文章も、なんていうか、翻訳していると、ものすごく胸に迫ってくるというか、シンプルさがズキズキ来る。これは、もっとオリジナルで読まないとなぁ、とすごく思った。もちろん翻訳者がよくないということではなく、全部そのまま味わいたい、という欲張りな気持ちからの実感です。
    ブローティガンに至っては、海にポートワイン、岩にロックンロール、この単語の流れを見た瞬間に私はあっさりあきらめてしまった。この感じ、訳せるわけないじゃんーって。

    これまで、「できればこういうことを気にして翻訳してほしいけど、そんなことまで翻訳者に求めていいんだろうか」なんて私が遠慮がちに思っていたことは全部、柴田さんは「翻訳するうえでは当然考慮すべきこと」という前提で講義しておられて、読み終わった今はもう、この人の翻訳は無条件に信頼するに至った。
    本の中で、「藤本和子は唯一、僕が原書を読む必要を感じない訳者で、すごく影響されているんで、」とおっしゃっていましたが、柴田さんご自身こそ、そういう「原書を読む必要を感じさせない訳者」の一人だ、と思う。

    しかし、楽しかったなぁ。この本。
    趣味で翻訳、って、絶対楽しいと今は思う。
    習いに行っちゃおうかな~とすら思う。みんなで、あーでもない、こーでもない、と作者の意図とか、日本語や英語の含意みたいなのを語り合うのが楽し過ぎる。

  • こんな講義受けたかったなあ!私の脳みそじゃ東大になんか入れないしそもそも文系じゃないけど。
    各々が己のポリシーを持った議論って楽しいよねえ。

  • 翻訳とは正解のない作業。それでも精度を高めようと表現を練る教師と学生たち。日本語の表現の豊かさを感じさせる。

  • 2015/03/16 読了

  • こんな授業があれば絶対とりたいな。さすが東大生と、自信を削がれかけもしたが自分の方がニュアンスをつかめてるなと思うところも二、三カ所あり、モチベーション上げる次第。

  • 翻訳者、柴田元幸先生が東大で行った翻訳の講義をまとめたもの。
    購入したのは3,4年前だったが、忙しくてなかなか読めなかった。
    課題の原文が9作あり、これらを訳してから先生の講義の文章を読まないと勉強にならないため、読み進めるのに時間がかかる。
    翻訳者として、決して見過ごしてはならない英語の表現はもとより、日本語にもかなりこだわって、学生さんと議論しながら良い訳文を作っていく。
    原文があって、それを文法通りに意味を取るならだれでもできるが、翻訳はそれを日本語にするだけでなく、作者の気質、これまでの作品、書いたときの状況なども把握しないと、原文を正確に日本語にすることはできない。
    例えば、小説はほとんどが「で・ある」ちょうだが、場合によっては「です・ます」調で訳すこともある。
    このような選択は、作者のことも作品全体のこともよくわかっていないとできないのである。

  • 読むの2回目。柴田元幸氏による東大翻訳講座の記録。先生と学生との、世間一般からみたらどうでもいいような熱いディスカッションは何度読んでも刺激的。ゲストとして日英翻訳家のジェイ・ルービン氏と村上春樹まで登場し、「ああ、何かにかまわず、学問ってこういうふうに発展していくんだな」というのを実感できる。些末な事柄についてとことん具体的に論じ合う、これこそ学問の理想の形ではないだろうか。

  • 翻訳者としての柴田さんのファンとして手に取った一冊。
    雰囲気にあわせた訳をするという印象はありましたが、
    原典の表現一つ一つをくみ取ろうとする誠実さに感嘆させられました。

    英単語のこまやかなニュアンスの説明、
    そして、小説の背景についての解説も流石なのですが、
    それ以上に印象的だったのが日本語への気配りです。
    日本語についても学ばせられることばかりで、
    これはもう一種の文章読本と言い切りたい気持ちです。


    自分でも英語を頭の中で訳してみては、
    学生さんの訳の工夫に唸らされ、
    それについての改善点を考えては、
    その上をゆく先生の指摘にはっとさせられる。
    その連続の中で知的興奮が高まってゆく、とても楽しい読書体験でした。

    この後ここで知った小説を読んで楽しめると考えると、
    一度で二度も三度もおいしいわけで、実に素晴らしい本ですね。

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プロフィール

柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京都生まれのアメリカ文学研究者、翻訳家。東京大学文学部名誉教授。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。
2010年、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』(新潮社)で日本翻訳文化賞を受賞。マーク・トウェインの翻訳に、『トム・ソーヤーの冒険』『ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―』(新潮文庫)、最近の翻訳に、ジャック・ロンドン『犬物語』(スイッチ・パブリッシング)やレアード・ハント『ネバーホーム』(朝日新聞出版)、編訳書に、レアード・ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』、および英語文芸誌Monkey Business 責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。

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