阿呆者

  • 新書館 (2009年2月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (230ページ) / ISBN・EAN: 9784403210990

みんなの感想まとめ

生きることの苦しさやその現実を見つめるテーマが描かれており、読者に深い感慨をもたらします。作品の中には、見て見ぬふりをすることへの葛藤や、日常の中で感じる無力感が巧みに表現されています。作者の名前が李...

感想・レビュー・書評

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    やっぱり生きるのって苦しいんだね。
    見てみぬふりできるかな。

  •  一時期私はこの作家に入れ込み、当時刊行されていた全作品を読んだのだが、なにか「見切った」ような気がして、その後の本には手を出していなかった。久々の「車谷本」だ。

     車谷作品を読んできた者にとっては旧知の事柄が、たくさん出てくる。本書は自伝的要素の濃いエッセイを多く収録しているので、とりわけ既視感が強い。本書の中だけでさえ、話の重複が少なくないのだ。
     それでも退屈せずに読み通せるのは文章家としての手腕ゆえだが、車谷作品に出合ったころの衝撃はもうない。

     車谷のエッセイ集では、第1エッセイ集『業柱抱き』と、2002年に出た『錢金(ぜにかね)について』がよいと思う。とくに『錢金について』は、玉石混淆ではあるものの、「玉」の中には世にも美しい名文と、何度読み返しても笑える爆笑のエッセイがある。

     『錢金について』にあって本書にないのは、突き抜けたユーモアである。
     「贋世捨人」を自称しつつ、そんな自分を突き放して観察し、笑い飛ばすユーモアが車谷のエッセイの魅力だった。が、本書に収録されたエッセイの多くには、自虐はあっても自虐を笑い飛ばす視点がない。ただただ後ろ向きで暗く、読んでいてげんなりしてくるのである。たとえば――。

    《人間は罪深い。私はいつもそう思うのである。他の生き物を殺して喰うという意味において。だからこの次ぎ、生れて来る時はどうあっても二度と人間にだけは生れて来たくない。》

    《嫁はんが私より先に死ぬことを、私は何よりも恐れている。だから私は毎日、自分が早く死ぬことを祈っている。極楽に往生したいとも思わない。私のような極道者はどの道地獄へ行くのである。》  

     ただ、小説家としての「覚悟」を記したエッセイには、感動的なくだりもある。たとえば車谷は、羞恥心を捨てないかぎりよい小説は書けない、という。

    《塾高(慶應義塾高校/引用者補足)から大学に進学して来た人からは、作家が生まれない。塾高出身の作家は山川方夫だけである。(中略)塾高から来た人は絶えずお体裁をかまうので(つまり、それを羞恥心があるからと言うのだが)、作家には向いていないのである。お体裁などかまっていると、絶対に作家になれない。と言うて、羞恥心をかなぐり捨ててしまうと、作家になれるか、と言うとそうでもない。内心では羞恥心を持ちつつ、原稿を書く時はそれを捨てなければ、作家としては認められない。「新潮」「文學界」「群像」「野生時代」私の作品を発表して下さった文藝雑誌の編輯者はみな、羞恥心を捨てることを要求して来る。実際、羞恥心を抱いて原稿を書き、これらの雑誌の人に読んでもらうと、かならず没原稿になった。》

     あと、面白かったのは、“原稿依頼をしてきた『クロワッサン』の編集者が、漱石が明治の人であることすら知らずに呆れた”という話。

    《この渡辺という女は、夏目漱石を昭和時代の人だと思っていたのである。近ごろの婦人雑誌の編輯者は、その程度の出来なのである。私は深く失望した。(中略)後刻、この女から入ったFAXを見ると、『我輩は猫』と書いてあった。要するに編輯者でありながら、『吾輩は猫である』も読んでいないのである。
    (中略)
     夏目漱石も読んだことがない無教養な者が「読む楽しみを伝えたい 小説家の読書案内」という企画を雑誌に立て、それを女に売ろうとしているのである。これでは女・子供がどんどん阿呆になって行く筈である。》

  • ふむ

  • 作者が李賀(李長吉)と同じ名前なのに興味を持ったのがきっかけで手に取った本。

  • 車谷さんの好きな作家
    知らなかったので探して読む。
    小池昌代
    石川桂郎
    嘉村礒多

    私が車谷さんに惹かれるわけが良く分かった本だった。
    己の執着をよくご存知で、
    それに向ける力に魅せられる。

  • 読みました。
    また読んでしまった。何か知ってるなとも思ったんですが・・・

  • 三田文学2009年春より

  • (200904)

  • 09年5月

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著者プロフィール

車谷長吉

一九四五(昭和二〇)年、兵庫県飾磨市(現・姫路市飾磨区)生まれ。作家。慶應義塾大学文学部卒業。七二年、「なんまんだあ絵」でデビュー。以後、私小説を書き継ぐ。九三年、初の単行本『鹽壺の匙』を上梓し、芸術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。九八年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、二〇〇〇年、「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。主な作品に『漂流物』(平林たい子文学賞)、『贋世捨人』『女塚』『妖談』などのほか、『車谷長吉全集』(全三巻)がある。二〇一五(平成二七)年、死去。

「2021年 『漂流物・武蔵丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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