ニジンスキー 神の道化

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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403230585

作品紹介・あらすじ

天才ダンサーの栄光と悲惨。奇跡の跳躍で人々を熱狂させながらも狂気の闇へと沈んだニジンスキーの生涯。

感想・レビュー・書評

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  • とにかく読みやすい文章で、近年の研究をふまえたニジンスキーの全体像を提示。
    後書きには、バックル『ニジンスキー』('71)、オストワルド『ニジンスキー 狂気への跳躍』('91)、ガラフォラ『ディアギレフのバレエ・リュス』('89)に多くを負っているとある。

  • 読みやすかった。いくつもの分岐点で悪いほうばかり選択してしまい最悪の結果になってしまったのでは…とりあえず妻がイライラします。

  • やんわりと興味のあったニジンスキーについて、図書館で偶然見つけたので。
    もともと人ひとりの生い立ちとか人生をつらつら書かれるとそれだけでじーんとしてしまうんだけど、もちろんこれも例外ではなかったよ。
    100年前のバレエ界における世界的スター、ヴァーツラフ・ニジンスキー。

    少年時代
    スター時代
    結婚生活と精神病
    あの有名な牧神の衣装
    奇跡の跳躍

    写真がたくさん載っているし文章もものすごく読みやすいので読み物としてとてもおもしろかった。
    だけどそうなると余計に、映像が残っていないのが残念で仕方がないと思ってしまうね。

  • 随分前に「ニジンスキーの肖像」という舞台を観た。『ニジンスキーの手記』を
    元にした舞台だが、バレエというより演劇に近いものだったと記憶する。

    その舞台の劇中劇としてキーロフ・バレエのプリンシバルだったルジマトフが
    「薔薇の精」や「牧神の午後」を踊っていた。

    今でこそ暗黒舞踏や前衛舞踏は珍しくないが、20世紀初頭の舞踏界にあっては、
    ニジンスキーの振り付けはそれまでのクラシック・バレエの概念を覆し、性的な
    表現方法がわいせつだとされた。

    本書ではニジンスキーが作り上げたバレエを詳しく検証しているので、バレエ史を
    齧っていないと理解しかねる部分も多い。生憎、私もそこまで手が回っていない
    ので、専門知識となるとついて行けぬところがある。

    本書の元になったのが「ダンスマガジン」という雑誌の連載なので、致し方ない
    のかも知れぬ。だが、ニジンスキーというひとりの舞踏家の評伝とするので
    あれば、巻末にバレエ用語の解説があってもよかったかと思う。

    尚、映像は一切残っていないニジンスキーではあるが「牧神の午後」については
    詳細な舞踏譜が残されており、これを元にした再現が行われている。また、「春の
    祭典」の再現についても非常に興味深い。

    さて、ニジンスキーの悲劇である。本書では詳しい分析はしていないが、
    思うにそれは愛への渇望ではなかったか。

    幼い頃、父は妻子を捨て愛人の下へ走った。バレエ・リュスの主催者であり
    愛人でもあったディアギレフは、ニジンスキーを愛しながらも別の若者にも
    愛されることを望んだ。

    ディアギレフとの溝が深まった頃、バレエ・リュスはアメリカ公演を行う。
    プリンシバルとしてニジンスキーも出演する公演ではあったが、ディアギレフ
    不在の船旅の途中でニジンスキーは唐突にダンサーのひとりと婚約・結婚
    をする。

    この結婚の報に接したディアギレフは激怒し、ニジンスキーを解雇する。
    後に続く悲劇の引き金となったのは、この結婚ではなかったか。

    妻となったロモラはひとりの人間としてのニジンスキーを愛したのでは
    なかった。「天才ダンサー」としてのニジンスキーだけを愛したのでは
    なかったか。

    事実、心を病んだニジンスキーに4年も会いに行かなかったのだから。

    孤独は人の心に思わぬ作用を及ぼす。ロシア語も通じない人々に囲まれ、
    ひとりの人間として愛してくれる相手さえいない世界で、ニジンスキーは何を
    望み、何を感じたのだろうか。

    死の前日、ニジンスキーはベッドの上で薔薇の精のポーズを取っていた
    という。心を病んで後、舞踏にも興味を示さなくなったニジンスキーでは
    あったが、やはり彼には踊ることしかなかったのではないか。

    ロンドンで息を引き取ったニジンスキーの遺骸はパリに運ばれ、今でも
    モンマルトル墓地に眠っている。

  • “リアリズム”に記しあり。

  • 「ニジンスキーの手記 完全版」の前に読むことをオススメします。ニジンスキーの心の闇を理解することは誰にもできませんが、この世に残したダンサーとして振付家としての素晴らしい功績を、容易に理解することができるのではないかと思います。

  • ニジンスキーは幻想だと断った上で綴られる、あの時代の熱狂と破滅。

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著者プロフィール

1960年横浜市生まれ。フェリス女学院大学国際交流専攻修士、東京大学教養学部非常勤講師(公民科教育法)、
生徒とFW 中心の活動をする「グローカリー」主宰。現在、横浜市立みなと総合高等学校勤務。
単著『旅行ガイドにないアジアを歩く―横浜』(梨の木舎、2020年)、共著『神奈川の戦争遺跡』(大月書店、1996年)、『近代神奈川の史話31選』(神奈川県歴史教育者協議会編、2001年)、『旅行ガイドにないアジアを歩く―マレーシア』(梨の木舎、2010年)『同―シンガポール』(梨の木舎、2016年)。
共著『神奈川から考える世界史』(えにし書房、2021年)。

「2023年 『神奈川の関東大震災 100年後の視点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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