ヒナこと小石川日夏は、ふざけてラケットを振り回していたところ、眼光鋭く、デカくてコワくて愛想もなくて、全校中をビビらす男前・海棠斉彬に見事にラケットをぶつけてしまう。そして、あろうことか斉彬の顔に網目もくっきりな青痣を作ってしまったのだ。
強面な斉彬からの仕返しの恐怖に怯えるヒナ。ところが、次第にわざと他人を拒み、孤立する海棠が気になって仕方なくなっていく……。日々胸の奥で育ちゆくこの気持ちは一体何なのか……ヒナは恐ろしい事実にぶち当たりそうで、深く考えないようにしていたが。
斉彬は、一生懸命、斉彬に向かってくるヒナを抱きしめたり。
ヒナのこと、一緒には、勉強したくないと突っぱねたにも関わらず、ヒナに好きだって告白して、襲ったにも関わらず、一緒に清澄を見て、「一緒に勉強しよう」と家に押しかけてきたり……。
喋らないから、やたら行動が唐突で、取り合えず意味がわからない……。
結局、物語は、じれにじれたヒナが海棠に「好きだ」って告白して。
愛を確かめるという行為までいったのに、そこが学校の屋上だったせいもあって、思い切れなかったヒナが嫌がって。
海棠が「そんなとこ見ても勃たない」といういたって微妙なところで終わります。
うーん……一応は、両思い……なんだよね……?
すっごく微妙なラインなんだけど、言葉の少ない海棠がそこまでしたってことは、一応そうなんだと思うし。
実は、顔の割りに優しい(わかりにくいけど)な海棠が、ヒナが嫌がってやめて、その理由としてそんなことを言ったのか、それとも本当に勃たなかったのかは、海棠の性格が性格なので謎なままですが、まぁ、でも現実なんてそんなものなのかな……と、思います。
でも、一度逃したきっかけをもう一度見つけるのはむずかしいと思いますが……。
海棠はかなり重い事情を背負っているわけなんですが、それに対するヒナの気持ちとか、海棠の気持ちがかなり素直に書いてあっていい話だと思いました。
実際にそんな立場に立たされたら実はそんなに同情なんてされたくもないと思うのは正直な気持ちだと思うし。
ヒナはそんな海棠の気持ちをわかっているけど、それでもどしようもなくなてしまう気持ちってやつは必ずあるわけで……
そんなリアルな心情描写の話がステキだと思いました。