- 新書館 (2015年2月7日発売)
本棚登録 : 241人
感想 : 18件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784403560200
みんなの感想まとめ
互いを思い合うホームズとワトソンの関係を新たに解釈した作品で、友情が恋に変わる瞬間が描かれています。ワトソンの苦悩と成長を通じて、彼が抱える秘めた想いが浮かび上がり、最後には晴れやかな結末が待っていま...
感想・レビュー・書評
-
ドイルの原作は『緋色の研究』から『シャーロック・ホームズの思い出』までを読んだ段階の人間の感想です。
「魅力的な男性キャラクターが二人でコンビを組み、それもひとつ屋根の下で生活し日々直面する事件を協力して解決していく」という物語の形式は所謂「お腐れ目線」で見ればいくらでも邪推や妄想が利くわけで、その手の作品が個人出版の同人誌ではなく出版社から出ているものもあるのかという驚きのもとに本書を手に取りました。
一応「秘めた愛情をゆっくりと育んでいく」部類の展開にはなるのでしょうが、性的嗜好に関する締め付け、男性の同性愛者に対するそれが厳しいという社会の中、そういった法律や当時の社会的な倫理観の壁と己の抱いた愛情との間に板挟みになるワトスン(とホームズ)の葛藤の記録であるがゆえに、物語の全体的な雰囲気は重く陰鬱です。そういう意味では原作の二人のほうが断然「いちゃいちゃ」していると思えるくらいです。
「同族の勘」を持つとはいえ妙に察しのいい依頼人の女性(ミス・ダーシー)にホームズのワトスンへの感情を説明される場面では「おいおい流石に他人がそこまで詳しく両者の関係を言い当てられるモンなんかい」と思わずにはいられなかったものの、その場面ではワトスンも彼女にかなり詳しくホームズとの関係の相談をしていた様子だし、そもそもホームズとワトスンどちらも互いに対しては黙して語らずな面があったので、物語を読み進めていく上で彼女のようなある意味での「読者への二人の関係の説明役」を請け負う人物の存在は必要だったのかなあと思います。
それにしてもマイリンゲンの宿屋の主人も妙に「察し」が良かったり(流石に「覗き」未遂の場面は読んでいて居た堪れない気持ちになった)、この本の世界にはその手の人間を鋭敏に察知する人間のまことに多いこと。それともそんなにワトスン君の態度に彼の秘めた嗜好が滲み出ているんかい。
ミス・ダーシーの口から修正刑法案の話が出るくだりでは些か唐突な印象も受けたけれど、その後もワトスン(とホームズ)の葛藤のポイントの一つとなる要素ではあるのでそこまで引っかかりはありませんでした。
『緋色の研究』から『四つの署名』に至るまでの期間に関する話と『最後の事件』を下敷きにした二部構成で、それぞれの話を「もしワトスンとホームズとの関係が友情ではなく恋愛的なそれであったら」というパテで埋めていくようなつくりだったので、最低限『最後の事件』まで読んだ上でこちらの本を読んで良かったなあと思いました。『空家の冒険』まで読んでからこちらを読んでも良かったかも。
この二人をカップリングとして捉えるのも吝かではないけれど、それでもやっぱり原作で描かれているままの二人の関係(良き友人・良き相棒)が一番好きなので所謂BL的な描写の程度は如何程かとやや不安に思っていた部分はあるのですが、蓋を開けてみればキスと添い寝止まりだったのである意味安心して読めました。九割方心理描写に終始するので「身体の関係よりも登場人物の心の動きを読むのが好き」というタイプの腐女子にはお薦め出来そう。モリアーティ教授からの逃避行で心身共に疲弊しきったホームズとワトスンの宿屋での口論の場面や、互いに(当時の社会的には)表沙汰に出来ない嗜好を持ったワトスン夫妻間に通じる友情の描写はとても良かったと思います。
最終的にこれまで頑なに自身に禁欲的な態度を貫いていたホームズも態度を幾らか軟化させ、ライヘンバッハでの失踪の一幕を経た上でワトスンのもとに帰還し、二人は再びベイカー街221Bでの共同生活に戻るわけですが、読後感が必ずしも良いかと問われると読者によって分かれそうです。
この物語の中で散々「男性同士の恋愛は処罰の対象ですよ」「ワトスン医師の性癖を(悪意を持った第三者に)然るべき場所で露呈されたならば、その時は彼の社会的地位は地に落ちるでしょうね」という旨の描写を見せられた上でのこの結末だったので、私の場合は「この二人は一応両想いにはなったものの、この社会の中に生きていく上では真の安息は得られないのではないか」という心配ばかりが先行し、二人の復縁(?)に喜ぶに喜べない複雑な読後感が残りました(そういう意味では原作を読んで二人の仲の良い息の合った場面に「いいコンビだな」とにこにこしている方が精神的には楽です)。
この読後感の何とも言えなさに関しては物語冒頭のワトスンの記事にある記述が全てなんだろうなあと思います。「これらの記述(=ホームズとワトスンの真の関わり合いについての秘密の原稿)がわたしたちにとって許されたそれよりも、はるかに幸福な日々の光のもとに明らかにされることを、願わずにはいられない」(本文9頁より)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
めっちゃ良かった!ワトソンの苦悩がひたすら続くけど、最後は晴れやかで本当に良かった。手を握っていてくれるホームズに泣いた。
メアリ・モースタンを蔑ろにするようだったら多分嫌いな作品になってたけど、全くそんなこともなく、ちゃんとお互いに大事にしてて良かった。
全然気付いてなかったけど、オスカー・ワイルドと同時代なんだ。そういえば確かにそうだな〜… -
シャーロックが好きなので
本タイトル作品を読んだ -
休憩時間に息を抜こうと思ったのにちょいちょい喧嘩するボーイズに思いのほか拳を握りしめてしまった
-
2017年10月7日に紹介されました!
-
私はシャーロキアンではないので、これがどれほど原典に即しているのか、どれほど忠実な二次創作であるのかの評価はできません。
ただ、ブロマンスではなくロマンスであり、その点においては十分満足できるものでした。 -
ミステリってほどミステリじゃないしらぶってほどらぶもないし、何でしょうねこれは。パスティーシュ、というか二次ですね、としか。
-
(;-人-)ゴメンなさい。この本私に合わなかった。
-
ホームズとワトソンが同性愛の関係だったら……というパスティーシュ物。
とても読みやすく、聖典とも上手く絡めてるので実際こうだったんじゃないの……?!と思ってしまうほど。
二人のすれ違いが多すぎて途中結構切なくなりましたが最終的には丸くおさまって良かったな、と。
ちなみに精神的な恋愛描写が多く、肉体的なことはほぼないと言ってもいいくらいです。 -
存在を知ってから20年あまり、ようやく手元に置ける――復刊に感謝。期待通りのしみじみと感じ入る作品だった。
ただ、ごめんなさい……イラストレーターさんはけっして悪くないのだけれど――カバーや挿絵は、もう少し抽象的でいて欲しかったかな。 -
二人とも愛おしい。
葛藤する二人、様々なことを鑑みて別れを決めたワトソン。
離れていた時が一番お互いのことを考えていたのかと思うと、もう言葉にならない。
自分の中からお互いを締め出そうとはしたけれど結局できなかったんだよねぇ。
