海の翼 (新人物文庫 あ 4-1)

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  • 新人物往来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404037916

感想・レビュー・書評

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  • イラン・イラク戦争開始から5年経った1985年、イラク軍のフセイン大統領は、突如48時間後以降にイラン領空を飛ぶ航空機に無差別攻撃をすることを宣言する。

    欧米諸国は驚くほどに素早い対応で、航空機を準備し、自国の国民を搭乗させて避難していく中、日本はというと、当日、自衛隊を海外に派遣する法的条件が整っていないうえ、社会党や市民団体の猛烈な反対運動にあい、自衛隊は派遣できない。民間の大日本航空が名乗りをあげ、イランへ航空機を準備、機長も手を挙げるが、組合側がわざわざ危険な地に旅客機を飛ばすわけにはいかないと猛反対をされ、手をあぐねる。

    刻々とタイムリミットは近づいてくる。

    そんな日本の苦境を知って、救援に動いたのは、古代オスマン帝国、トルコ政府だった。

    トルコ政府の英断の裏には、イラン・イラク戦争の約100年も前の1890年に、日本を訪問した帰国中に台風に巻き込まれて遭難したエルトゥールル号の乗組員の救出や帰国に扮装してくれた日本人への、百年という時空を超えた恩返しだった。

    イラン・イラク戦争時の緊迫した状況、エルトゥールル号の乗組員を救出に向かった漁師たちの勇気、その当日、国交のなかったトルコへの軍艦派遣を迫力満点に描き、日本人の精神、トルコ人の熱い気持ちがビシビシと伝わってきた。

    歴史はつながっていて、とつのて出来事が起きなければ、その後の出来事は変わっていく。
    先人たちに思いを馳せ、受け継いでいくべき精神を繋いでいこうと思った。

    トルコ人最高!!
    ありがとうございました!
    頂いたご恩は、必ず子孫に繋いでいきます!

  • いやぁ、感動した。日本ですら救出機の出航を拒否したのに、トルコから120年前のエルトゥールル号遭難救出の恩義から救出機2機を出航すると宣言する。更にはトルコ人600名含めると救出機2機では足らないと分かったときに、日本人を優先し溢れたトルコ人は陸地を移動すると決断した箇所を新幹線車中で読んだ瞬間、涙が止まらなくなり、嗚咽すら出る寸前までいってしまった。それにしても、自国民が大変な時に大日本航空の倉元組合委員長の判断は、如何なものかと思う。それに対して、日本が窮地に陥ったときには、何が何でも手を差し伸べろと子々孫々言い伝えられたことを守ったトルコは素晴らしい。今の日本が逆の立場だとしたら本当にできただろうか疑問に思う。当時のトルコ首相のオザルが云った、「歴史は人が一人一人紡いで築かれていくもの」という言葉が忘れられない。これは最高の話だ。

  • [100年越しの恩返し]イラク・イラン戦争の激化に伴い、サダム・フセイン大統領(当時)が発した無差別飛行機撃墜指令。日本からの救援機が駆けつけない中で絶望的な状況に置かれたテヘランの在留邦人であったが、彼らを救ったのは「エルトゥールル号の恩返し」という掛け声を理由として立ち上がったトルコの人々であった……。実際に起きた出来事を基にした小説です。著者は、ミステリーやファンタジーなども手がける秋月達郎。


    ただでさえ感動的な出来事を扱ってる上に、著者のほとばしるまでの日×トルコ間の友好への感情が文章に乗り移っているため、読む側も「こんなことがあったのか」と感嘆しながらページを繰ることになるはず。それにしても国家の間でこのような関係が築けるものなのかと改めて驚かされると同時に、その幸せな最初の邂逅に思いを馳せずにはいられませんでした。


    勤め先が絡んでくることもあり、「当時の大使館の動きはどのようなものだったのか」という半ば実務的な観点からも読んでみたのですが、コミュニケーション手段が発達していない中で、もはや公私の別なく救援のために働いていたことが描かれており、自然と背筋が伸びての読書となりました。個人的には実名を用いたノンフィクションの方が良かったのでは、と感じたのですが、それでも十分に楽しめた一冊です。

    〜恩を忘れないかぎり、歴史は紡がれつづけます。〜

    最近、トルコのエルドアン首相がサッカーでハットトリックを達成したらしいです☆5つ

  • 『恩』と言うものが、どれだけ人の心を揺さぶるものかを感じました。

    エルトゥールル号遭難事件と日露戦争勝利の2つが、トルコ(オスマン)の人々に子々孫々まで大きな影響を与えていたんですね。秋山真之が絡んでいた事、野田正太郎や山田虎次郎と言う人物がいた事、そして95年後のイランイラク戦争での事は全く知りませんでした。作品には、都合の良い脚色も多いかと思いますが、真実を追求する意味はあまりなく、素直にトルコ人に感謝したいです。

    ただ、本書の「解説」で、日本人を過小評価している内容がありました。エルトゥールル号遭難事件で、最初に日本人がトルコ人を助けたのは、『恩』ではなく純粋な『人道的見地』からの行為です。イランイラク戦争でのトルコ人の行為は『恩』が先立っての『人道的見地』です。そう考えると、『恩』もないのに『人道的見地』のみで行動した当時の日本人も素晴らしく、その子孫である我々にその血は受け継がれています。

    そんな風に視点を変えると、日本人は、過去の恩に捉われ過ぎず、『人道的見地』から平等な行動できる民族なのかもしれません。もちろん『恩返し』は素晴らしい事であって、恩に熱いトルコ人は大好きです。少なくともこの作品(出来事)は、日本人もトルコ人も素晴らしいと言う事が物語られているだけに、締めである「解説」の内容としては矛盾を感じるものでした。

    そうは言っても、作品自体は素晴らしいもので、涙なしには読み続ける事ができません。その涙腺を緩めるものは『人道的見地』ではなく『恩』だったりするんですよね!

    エルトゥールル号遭難事件は1890年、日露戦争勝利は1905年、イランイラク戦争(邦人のイラン脱出)は1985年、トルコ大地震(日本の支援)は1999年、東日本大震災(トルコの支援)は2011年、色々と助け助けられています。これからもこんな関係を続けて行きたいものです。

    ---☆---

    下記の記事で、トルコ首相の気持ちに「エルトゥールル号遭難事件」があると感じる事ができるのは、知る人ぞ知る人の特権ですね。

    【東日本大震災の記事から】

    震災後には、世界20カ国・地域から救助隊や医療支援チームが来日。3月20日に現地入りしたトルコの救助隊が約3週間と最も長く活動した。エルドアン同国首相は「日本に十分貢献するまで帰国するな」と送り出したという。・・・背景にはトルコ国民の親日感情に加え、地震国としての共感がある。1999年に約1万7000人が死亡したトルコ大地震で、日本が救助隊を送ったことは同国民の記憶に新しい。

    ---☆---

    ありがとうございます。

  • 始めて本を読みながら泣いてしまいました。。それぐらい感動する本です。
    こういう素晴らしい歴史があるということを、絶対に忘れてはいけないし構成にも語り継いでいかなくてはいけません。

    大学で歴史を学んでいたにもかかわらず、事実を知らなかった自分がとても恥ずかしくなりました。

    映画化も予定されているとか。こちらも見に行きたいと思っています。

  • これは是非皆さんに読んでほしい作品。
    現在、トルコと日本が友好関係にあることは知られていますが、そのきっかけとなったのが紀伊沖で起きたエルトゥールル号事件です。
    この作品はエルトゥールル号事件でトルコ人を命がけで助けた紀伊の人々の姿や、その恩返しにイラン・イラク戦争で孤立した日本人を救出するトルコ人の姿が、実際に関わった人達の伝承や証言をもとに活き活きと描かれています。
    私自身が和歌山県民ということもあってこの事件には思い入れが深いのですが、本当に感動できる物語でした。エルトゥールル号事件と日本‐トルコ交流が後世に語り継がれることを願って。

  • 感動。
    色々と考えさせられました。
    戦争はしたら安全あかんよ。

  • 僭越ながら、私の少ない読書歴の中でベストに輝くのがこの本である。

    なぜなら、読みながら涙が出てしまったから。
    映画ならたくさんあるが、本を読んで涙したのは、この本だけだ。

    この本のおかげで、トルコが好きになったし、是非トルコに行ってみたいと思うようになった。

    あっ、その前に和歌山県の串本に行かなきゃ♪

  • 昨年映画にもなりました。
    100年前に和歌山沖で遭難したトルコ軍艦エルトゥールル号の悲劇、
    嵐の中、トルコ人乗組員を助け、異国の犠牲者を手厚く葬った紀伊大島漁村の人々、
    そしてそれから100年後、イランで路頭に迷った日本人達を国家を上げて救ってくれたトルコ国家と人々。。。

    ただ助けたい、何としても助けるんだ!と思う真摯な気持ちと行動は、100年経とうが千年経とうが、いつまでも忘れられることなく語り継がれていくのだろう。そのような行動を、私は今までにとったことがあっただろうか?

    気難しいノンフィクションかと思い読み始めれば、フィクション仕立てで読みやすく、あっという間に読み切った。日露戦争のくだりも、難しい言葉が並んでいたが何とか理解できた。とにかく昔の日本人は素晴らしかった!(こんな感想しか書けない私なんぞが彼らについて語る資格はないのかもしれないけど。。。)

    トルコへ旅行に行くと日本人観光客にはとても親切に接してくれるという話は聞いたことがあるけど、それはこのような心温まる秘話があってこそだったのですね。

  • 2015_11_25読

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著者プロフィール

作家

「2020年 『海のまほろば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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