- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784404041593
感想・レビュー・書評
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もともと「モナリザ・ミステリー」というタイトルが文庫化されるにあたって改題されたものなので、内容の7割くらいはダヴィンチに関することで占められる。
モナリザの正体は誰なのか? ダヴィンチ最大の謎に大学で教鞭もとる写真家が、芸術家の目線からその謎に迫る快作。
有名なダヴィンチの鏡面文字の謎。一説にはダヴィンチが、複写機の発明を見据えて、わざと鏡面文字で記したとの見方があるが、著者はイタリアに渡り、現物をみて、その考え方を退ける。なぜなら文字は速記体で流れるように書かれていたからだ。そこから導き出され答えはひとつ。ダヴィンチは鏡面文字が書きやすかったから書いたのだ。
幼い子の書く文字をみると、ときどき平仮名を鏡面文字で書くことがある。それは右脳と左脳の役割分担が大人ほどまだ分化されていないためだが、左利きの場合、それがより顕著になる。
通常、左利きは成長する過程で矯正されてしまうため、こういった現象も見られなくなるが、ダヴィンチは矯正されなかった。彼は幼くして母と生き別れ、父親にも放っておかれた。いわばネグレクトの中で左利きを矯正される機会もなく、芸術的な脳を司る右脳を発達させていったと思われる。その一方で両親の十分な愛情を受けらなかったことにより、脳のある部分が未発達であったのではないかと著者は主張する。
それが「扁桃体」である。
ここからモナリザの謎の解明が加速する。扁桃体をめぐり、法然と、神戸連続児童殺人の「少年A」と絡めるなど、突飛と思われる事例を経るものの、やがてひとつの事実に収れんする。それこそモナリザの正体だ!
絵画研究書としては論証が足りないと思うが、美術ミステリーとして読むならば一級品。詳細をみるコメント0件をすべて表示