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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784405073838
作品紹介・あらすじ
――絵がうまく描けるかどうか。という問題は、「描ける」人にとっては、たいしたことに感じられないかもしれませんが、「絵が描けない」「もっと絵がうまくなりたい」「ちょっとでも絵が描けたら……」などと考えている人にとっては、なかなか大きなテーマです。
「絵を描く人の頭の中って、どうなっているのだろうか?」
「絵をうまく描ける人に、世界はどう見えているのか?」
こんな疑問から本書は生まれました。
「なぜ人は絵を描きたいと思うのでしょうか。」
そんなテーマからはじまる本書は、絵画教室を主宰し、美術学校や大学など多くの場で、たくさんの人たちに絵の魅力を伝え続けてきた著者が、単なる技法書ではなく、絵を描くという素敵な行動について、その楽しさ・理由・背景などさまざまな視点から語る異色の本です。
「ものの見え方はひとりひとり違っている」
「自然物には球体にまとまろうとする意志がある」
「美術史は人類の思想史である」
絵を描いてみたい人には、背中を押されるような、絵を描いているけどもっとうまくなりたい人には、目からウロコが落ちるような、絵に興味を持つ人には、その世界をもっと知りたくなるような言葉がきっと見つかる1冊です。
感想・レビュー・書評
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はじめに:絵画への誘い
本書は、絵を描く際の思考プロセスを解説し、「絵の上達は枚数を描くことだけでなく、1枚の制作からどれだけ多くのことを学べるか」という著者の哲学を提示します。美術予備校の講師、画家仲間、他分野の専門家との対話を通じて得られた知見を基に、絵を描くことが「知的な遊び」であり「哲学の一形態」であることを示唆しています。絵を描くことに興味を持つ人々が、さらに一歩踏み込んだ理解を得られることを目指します。
Prologue:絵を描く、観る根源的な理由
人類が絵を描く行為は、ラスコーやアルタミラの壁画に見られるように太古からの根源的なものです。絵を描くことは、頭の中のイメージを具体化するためのイメージトレーニングであり、写実から抽象への変化は人類の脳の進化を示唆しています。絵画は歴史の中で「見ること」を自身の使命とし、写真やAIの登場によってそのあり方を問い直してきました。人は見覚えのある形に引きつけられ、絵画を通して「騙される楽しみ」や心の深い部分が刺激される「美しさ」を感じます。絵を描くことは、**「人類に与えられた素敵な病」**であり、上手く描けないと感じることはむしろ上達の伸びしろが見えているサインであると述べています。
Prologue:絵が上手くなるトレーニングの意義
絵が上手くなるにはトレーニングが必要ですが、最も大切なのは「気づく」ことだと著者は強調します。デッサンの本質は「描くこと」ではなく「観ること」にあり、見落としに気づくことが上達への鍵です。トレーニングは基礎体力をつけ、物事を正確に捉える「勘」を磨くために行われます。絵を描く原動力は「好奇心」であり、絵を学ぶことは「人類そのもの」を学ぶことにもつながると述べています。「デッサン力」とは、単に見えている部分だけでなく、「見えないところがどれだけ見えているか」を表現できる能力だと定義しています。
Part 1:絵を描くためのものの見方【再現】
絵が上手い人は、ものの見方や頭の中のイメージを紙に表現する技術を持っています。写真やモチーフを見て描く際、そっくりに描けないのは腕のせいではなく、描くべきポイントが見えていないことが原因だと指摘します。デッサンは「見えたかどうかの確認作業」であり、見落としに気づいた瞬間から描けるようになります。赤ちゃんが線を描く快感を忘れずに「落書き」から始めること、身近なものを描いて自分自身を再発見することの重要性を説いています。また、ものの見え方は一人ひとり異なり、デッサンを通じて「個性」の発見につながると述べています。立体視のメカニズムや、形が同じでも似ているわけではないというデッサンの本質を解説し、五感を駆使して情報を捉えることの重要性を強調しています。
Part 2:絵を描くという自由【表現】
絵画は「再現」から「表現」へと進むことで、その存在感を強めます。単に忠実に再現するだけでなく、誇張やデフォルメを加えることで、平面が立体を超えた表現力を持ち始めます。ヨーロッパの透視図法とアジア圏の遠近法の違いを通して、絵画における視点の多様性を提示。「落書き帳は自分だけの「思索の庭」」であり、人目を気にせず、自分の興味を追求することでモチベーションを維持できると述べています。絵の主役やテーマを効果的に配置する「構図」の重要性や、自身のクセを「魅力的な武器」として活用することの意義を解説し、絵を描く行為が「自分自身の存在の確認」にもつながると語ります。陰影法や動きのある人体、動物の骨格、人物の頭部や手の描き方など、具体的なトレーニング方法も紹介し、大胆に試行することの上達への効果を強調しています。
Part 3:絵は知るほどに人生を豊かにする
絵の鑑賞方法は、知識を得ることで豊かになります。美術史や技法に関する知識は、作品の持つ意味を深く理解し、自身の世界観を広げる手助けとなります。「人間は名前をつけることで、その存在を認める」という考察から、作品と鑑賞者の間に生まれる共感や、それがもたらす感動の重要性を語ります。美術解剖学が作品に説得力と存在感を与えるスパイスであり、本物に触れて感動を実感することの意義を強調します。遠近法ワークシートや記憶のデッサン課題といった実践的なトレーニングを通じて、私たちが普段見ている世界には隠されたルールがあることを示し、デッサンが「見えない部分をどれだけ見えているか」という洞察力を養うことだと結論付けています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2025.05.17 絵を描く心得とか、デッサンのヒントとか、色々と参考になった。ただ、タイトルからイメージして期待していた内容とはやや違った。そこはちょっと残念でした。
著者プロフィール
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