- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784406028431
作品紹介・あらすじ
『沈まぬ太陽』の主人公が語る-その主人公・恩地元の原型と言われる著者が、小説に書かれなかったその歩みをユーモアたっぷりに語り下ろす。
感想・レビュー・書評
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本「沈まぬ太陽」が出てから、モデルとされる小倉氏は「話に来い」と呼ばれることも多くなった。今までの話をまとめ、疑似?講演会として新しくまとめた。
第一部:「沈まぬ太陽」で触れられた以前の話で0巻ともいうべき内容
第二部:「人に何が求められているか」として平和について、働くことについて、人類と環境について語る。
・「アセンボリの自然」(「エネルギーレビュー」1997.10月号)
・小説と事実のちがい
親父は軍人として戦死したのではない。子供の順番は男女逆。また二人ともきちんと育ったのでは小説としておもしろくない、山崎氏は3人目にぐれたのをつくりましょう、と言ったが、そうすると隠し子でもいたのか、などといわれかねないので子供は2人にしてもらった。
「企業と人間」で佐高氏と対談した内容でも触れられているが、旧制中学時代、大学時代、AIU就職、日航就職のいきさつ、日航で労働組合とかかわるいきさつが詳しく語られている。小倉氏の父親は軍需産業にかかわった、として公職追放を受けている。
また仕事に対する考えとして、「余裕とユーモアと、ふてぶてしさ」とでいきていかなければいけないという。特に働くものは、ふてぶてしくなきゃいけない。伸び伸びとしませんか、と言っている。また、one of themで仕事をするな、と言う。その人にとっては、患者、お客さんは一期一会の唯一の関係だ、という。
最後の「アセンボリの自然」では、ケニアは高地で、湿度も高くないため、暮らしやすいという。素晴らしい広い自然があるのだが、この地の遊牧民マサイ族は、牛が糧でその乳と血を食料としていたが、市場経済の広まりにより、牛が換金されるようになり商品となり、自然の許容量より数が増え放牧地が増え、すると野生生物は追い立てられ、自然の植生が破壊された。そして野生生物保全のため、人間の生活、産業を認めないナショナルパークにする必要が生じた。それがアセンボリナショナルパークだという。
小倉寛太郎:1930-2002.10.9 この出版後間もなく亡くなっていた。
2002.1.15初版 2002.2.5第4版 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「沈まぬ太陽」のモデル小倉さんのエッセイ。人生論。
日航労組であんなことがあったからというより、その前から子供のころから育まれてきた小倉さんの信念が、沈まぬ太陽になれた理由なんだろうな。
ありがとう。 -
小説「沈まぬ太陽」の主人公・恩地元のモデルと言われる著者が講演で話したことをまとめて本にしたものです。
本に書かれてあることは殆んど事実で山崎豊子の取材力には驚いている。
この本には「沈まぬ太陽」のことよりも著者が軍国少年として育った頃のこと、日本の為政者が政府、軍部が日本国民を騙し戦争に駆り立てたこと。
ポツダム宣言を21日伸ばした為に40万人の人が死んだこと。
それにより「もう再び騙されまい、権力のいう事は鵜呑みにしてはいけない、眉に唾をつけて聞かなきゃいかん」と思ったらしい。
日航の組合つぶしに負けず、権力と闘ったのもうなずける。
もっと早くこの本に出会いたかった。 -
小説に実在のモデルがいても、小説だから多少なりともおもしろくあるいはオーバーに脚色されているだろうと思っていた。著者は「沈まぬ太陽」の主人公そのモデルとなった人である。小説そのものの人生いやその前に過ごした少年時代の戦争。幾度見聞きしても、体験された方の話は、身にしみてその残酷さは認識させられる。その時に培われた精神力があればこそ、過酷な不当人事にも耐える事が出来たのだろう。戦争時代に培われた精神力の礎となったもの「権力には従わない」小倉さんはずっとその精神でやってこられた。大変な勇気のいることだと思う。