大日本: 技術立国日本の恩人が描いた明治日本の実像

  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408103570

作品紹介・あらすじ

明治6年(1873)年に来日して、東京大学工学部の前身である工部大学校の初代都検(校長)に就任、日本の近代化に多大な功績を残したスコットランド人、ヘンリー・ダイアー。本国に帰国後は不遇の後半生を送ったダイアーが、日本滞在の体験と膨大な資料をもとに、欧米諸国の人々へ愛する日本の実相を紹介すべく執筆した「幻の大著」が、イギリスでの出版後約一世紀を経たいま甦る-。

感想・レビュー・書評

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  • 1876年にアメリカから来日し、わずか10ヶ月間
    札幌農学校(現在の北海道大学農学部)で教鞭をとっただけなのに、
    今でも鮮烈な印象を日本史に残すウィリアム・クラーク博士。

    それに対して1973年、当時イギリスで最先端を行くハイテク都市
    グラスゴー大学卒業後25歳の若さで現在の東大の前身、
    工部大学校の初代校長に就任し、
    9年間の滞在中、日本の工業技術教育の礎を築いた
    ヘンリー・ダイアーを知る人は少ない、なぜか?

    江戸時代末期、伊藤博文は4人の長州藩士とともに、
    イギリスに密航。
    伊藤はイギリスとの戦争回避のために日本に急ぎ帰国するが
    4人の中の山尾庸三はグラスゴーに渡り、
    ネイピア造船所で邦人初の西欧社会の徒弟となり修行する傍ら
    アンダーソン・カレッジ夜学で学ぶ。
    技術習得に励み、帰国伊藤とともに明治政府の要職となる。
    明治日本は、同じ小さな島国でありながら世界に君臨する英国を
    模範に、『東洋のイギリス』とすることを目標にする。

    技術教育を確立させようと明治政府が依頼し、来日したのが
    才気溢れるヘンリー・ダイアーだった。

    イギリスの技術者教育を前進させるため研究してたダイアーは
    世界各地の科学と工学の主だった学習方法を詳しく調査、
    そしていくつかの有力な教育機関の組織も研究していた。
    研究結果を実地に試してみる機会を探していたが、
    それが極東日本であった。

    明治政府のバックアップを元に、急激な科学工学技術がこうしてなされた。
    ヘンリー・ダイアーは
    『エンジニアは社会発展の原動力であり、旧来の専門職である
     牧師、医師、法律家に並び得る新しい専門職である』という
    『エンジニア思想』を日本に導入した。
    ここに地球上に存在しなかった「工学部」という概念は
    ダイアーによって初めて具現化された。

    日本に愛情深く関わり、イギリスに帰国後も、
    教え子と長くやりとりをし日本の現状に気を配っていた。
    が、社会主義傾向の思想を持つ本を出版すると
    そのことが、国策と合わない当時の政府によって、
    この大きな記録は抹殺されたのであった。

    この『大日本』は、彼の愛情深い日本理解に感動を覚える内容。
    1世紀も前に、日本はアジアにおいてリーダーとなる国に
    なるであろうと言い切っている。
    が反面、工業と商業の発達は深刻な問題も引き起こし、
    日本人本来の慎しみ深い分別と規範が崩れている。。と危惧。
    このままでは国際関係にも深刻な問題が起こりかねないと、
    心配している。

    ダイアーは見ることはなかったが、
    この後、日本は第二次世界大戦を引き起こす。

    ダイアーが信じ、夢見た日本は、平和主義の国であり
    アジア近隣諸国の向上に尽くす国であった。
    古くて新しい1冊!

    膨大なページ数で、完全読破できなかったが
    何度か読んでみたいと思う本でもあった。

  • 通勤に読むには重かったけど、すらすらと読めるほど面白かった。
    本の中に<日本人はこの改革で得る事があったのか>と書いてあって、この問いをいつも念頭に置かなければ国として衰退するって説いてるのだけど、これは日本の一生付きまとうテーマだと思う。

  • 著者が母国に紹介する為の、日本の近況の分析であり、史料的価値は一級。
    明治時代の空気というか、力の伸びがどう捉えられていたかを理解したい人には非常にお勧めだが、
    一方で現代日本人向けの解説書ではないので、少なくとも明治期の歴史本を一冊通読した程度の予備知識がないと読みこなしがたい。

  • かなり、高い本ですがお薦めです。明治時代に工部大学校の教頭のH・ダイアー氏が当時の大学やその他について書いた本です。6年前に発見されて、つい最近翻訳された本です。
    NHKスペシャルの明治にも登場し紹介されました。

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