オーケストラがやって来たが帰って来た!

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  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408110899

作品紹介・あらすじ

人々に愛されたメディアの寵児、山本直純が、オーケストラの魅力と名曲にまつわるエピソードをユーモラスに語った、情熱と愛情に溢れた名著。山本祐ノ介氏寄稿「『オーケストラがやって来た』復刊に寄せて」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 2024.3.1市立図書館
    1972年に刊行された山本直純『オーケストラがやって来た』と、1975年の『ボクの名曲案内』を再編集して復刊したもの(2002年なので追悼復刊か)を、さらに新たに加筆・訂正した再復刊版。巻末に御子息山本祐ノ介による文章がついた。
    赤いカバーにインパクト抜群の山藤章二による似顔絵がなつかしい(本文後半の名曲案内では有名作曲家の似顔絵もたっぷり見られて望外のよろこびだった)。

    この間亡くなった小澤征爾、そしてその前に亡くなった岩城宏之が、揃ってこの人の才能を買ってて世間の誤解を悔しがっていたのだけど、だいたい彼についてはこの両人の青春記(小澤征爾「ボクの音楽武者修行」と岩城宏之「森のうた」)にたっぷり登場していたのでいろいろ知ってる気でいるのだが、御本人が書いた本はまだ読んでいなかったのだった(この12年の登録・記録がないのでたぶん…)。小澤征爾追悼読書の勢いで読んでみたくなった。

    冒頭から絵本「オーケストラの105人」を思わせる人間くさい話、そして半世紀前からすでにオーケストラは「経済的にも社会的にも、今や風前の灯」で、そんな(クラシック)音楽とオーケストラのすばらしさをひろく布教するために人生をかけてあれこれ工夫した一端がこの先に書かれているのだなあと今読むとしんみりする。
    指揮の仕事から楽器の個性、音楽の歴史まで、ざっくばらんな文体で、細かいところは要検証ながら勘所はきっちりおさえたおもしろい話満載。昔話は、令和の今なら「不適切にもほどがある!」内容も多々あるけれど、そうだったからこそたくましく育った才能もあったのかもと思える。最後の方の、合唱曲『田園・わが愛』(1962)のメイキングのドタバタはすごかったが、そういう火事場の何とかでなければ生み出され得ないものもはやりあるのだろう。
    今読むと、半世紀前の(小澤征爾と喧嘩してたころの)オーケストラはちょっとお高く泊まってまだまだ未熟な団体だったらしい。そして、日本人プレーヤーたちの世界での立ち位置はまだまだとても不安定だった。教育ママ的な早期才能教育の是非も問われていた。締めくくりの章は恩師斎藤秀雄の死を受けて日本のクラシック音楽界の来し方と未来についてまじめにまとめて希望を語っているが、齢40そこそこでこんな本を書いていたなんて、すごい。

    それにしても、山本直純が音楽一家の二代目だったとは、うかつなことにこれまで気が付かなかった(自伝ではなく周囲の語るエピソードから知ってる気になってるばかりだったからか)。この本でも、「音楽家になるのはたいへんだ」の章などで多少育った環境や二世としての気持ちを語っているが、全体としておもしろおかしい青春時代以外は語られていないことのほうがはるかに多い。すでに小澤征爾もいなくなってしまったが、手遅れになる前に本格的な評伝もだれかまとめてはくれまいか。

  • 私が初めてクラシック音楽に触れたのは、こどもの頃、休みの日の朝にテレビでやっていた「題名のない音楽会」と、この「オーケストラがやって来た」。
    表紙を見て、とっても元気なおじさまが客席に向かって指揮棒を振っていたシーンを思い出した。
    オーケストラや楽器のあれこれ、名曲にまつわるエピソードなどなど、楽しく読みました。

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