わたしは分断を許さない 香港、朝鮮半島、シリア、パレスチナ、福島、沖縄。「ファクトなき固定観念」は何を奪うのか?
- 実業之日本社 (2020年3月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408339184
作品紹介・あらすじ
ジャーナリスト・堀潤が追った、香港・朝鮮半島・シリア・パレスチナ・福島・沖縄。ファクトなき固定観念が生む分断とは何か。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
●この10年でメディア環境も大きく変化し、SNSを中心に誤った情報や一方的な強い表現が跋扈するようにもなっていた。偏った情報により分断が深まり、やがて排除、排斥を加速させていった。政治がそれを利用し、自らに利する都合の良い情報発信に邁進するようにもなった。暮らしが豊かになるのであれば、誰かの人権が制限を受けても構わないと言う、誤った認識も広まったように思う。
●昔に比べて格差自体が広がっているわけではない。ただ現在はその格差が意識されるようになってきたのではないか。中流意識が希薄化し、自分たちが中流なんだと思えなくなってきている。
●日本に来ている中国の留学生。中国語、日本語、もちろん英語も私たちより上手。つまりGDPの1から3位までの言語が全部話せるわけだ。
●新聞がまた読まれる時代はもう来ないと思うんですよね。親も読む習慣がないし親が読む習慣がない子供が読むわけがないですよね。「受け止めて失った真実はどこに行くんだろうか」
●香港は1997年、中国に返還されたが、一国二制度の「特別行政区」として50年間自治を認めると公約をしていた。しかし2014年は民主派の候補が立候補できないよう制限を加え、2019年は逃亡犯条例改正案を提出。中国当局による干渉が強まってきた。
●教室には「新移民」と呼ばれる、中国からの子供たちが増え続けている。香港は広東語だが、北京語しか話せないと言う子供も増えている。香港が同化政策で今の香港らしさが完全に失われるのが怖い。
●ガザ地区は天井のない監獄。長さ50キロ幅5008キロ。イスラエルに封鎖されている地域。
-
割り切れないものは割り切れないままで
複雑なことは複雑なままに
声なき声に耳を傾ける
それがジャーナリズムの仕事で、受け取る側の仕事でもある
安易な強い言葉に流されない
大きな主語でなくその人を見る
新聞記者ドキュメントと似ているかもしれない -
いつも聞いているPodcastの番組のゲストで著者の堀潤さんが出演していました。そのときのお話にちょっと関心を持ったので最近の著作を手に取ってみました。
香港・朝鮮半島・シリア・パレスチナ・スーダン、そして原発事故による強制避難により生じた「分断」の地「福島」、米軍基地移転問題で県民が「分断」された「沖縄」、実際に現場に入って聞くそこにいる人々の声は、たったひとりの意見であったとしても、紛れもない「現実」の証明なのです。 -
自ら監督を務めたドキュメンタリー映画と共に日本、世界の分断の現場を考える。香港、福島、沖縄における分断、それを捉える大きな主語と小さな主語から見える実態、それを伝えるメディアの分断を様々な対談で考察。引き続き、この課題を追って欲しい。
-
ジャーナリストとして自分の信念を貫くためにNHKを辞して独自の取材を続け、発信し続ける著者の姿勢には感服するしかない。かつての自分への自戒を込めて可能なかぎり「小さな主語で」語ろうとする彼の真摯な姿勢は全ての報道関係者にも見習って欲しいと思う。もちろん大局を観るということも含めて様々な視点が必要ではあるが、小さな、非力なものの声をつぶさに拾うことの大切さを忘れないで欲しい。
-
人と積極的に関わり向き合い続ける堀さんの姿にはいつも感銘を受ける。俯瞰で眺めることももちろん大切だけれど、目の前の誰かや目の前の事柄をしっかりと見つめ、考えることの意味。「小さな主語」でとらえることの深さ。堀さんが伝えようとしてくれている、世界中にあふれる「分断」を、わたしも私なりに小さな主語で捉えて考えてゆこうと思う。
映画も、観に行きます。 -
「大きな主語から小さな主語へ」とか「割り切ってしまいたいとい思う心が分断を生む」とか「仕方ないから、という選択に転ぶとあっという間に支配されたままの環境になっていく」とかその他にも多くの言葉が刺さった!知ろうとすることは、知ろうとし続けることなのかも…そんなきっかけになるような本だった。映画見ます!