ガダラの豚

著者 :
  • 実業之日本社
4.03
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本棚登録 : 527
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (598ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408531915

作品紹介・あらすじ

怪しげな僧侶やインチキ新興宗教の教祖、超能力青年や手品師、さらには呪術研究家やアフリカの呪術師など、日本とケニアの魑魅魍魎が跋扈する世紀末の人間戯画。

感想・レビュー・書評

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  • 三十年ぶり(!)の再読。面白かったという記憶だけがあって、中味はほぼ忘れていたので、まるで初めて読むように楽しめて、トクした気分。いやもう、むちゃくちゃ面白かった!

    そうそう、三部構成だった、確か第三部が壮絶だったおぼえがあるぞ、と少し思い出しながら読み出した。第一部の舞台は日本。この段階で読みごたえたっぷり。テレビが煽った超能力ブーム(ユリ・ゲラーやスプーン曲げ。懐かし-)の内幕やら、怪しい新興宗教の実態やら、次々暴かれていくあたりは、それだけでとても面白い。一見、合理的な説明で片がつくように見せながら、背後で不穏な気配が高まっていく。そのあたりの塩梅が最高。

    主人公である大生部教授一家は悲劇的な過去を抱えている。その一家をはじめ、教授の周辺の人たちや、テレビ界にうごめく人たちが実に個性的で、キャラが立ちまくっている。あ、これはあの人がモデルかな、と思わせる人もいて、まるで映画を観ているような気持ちになった。とにかく脇役がとても良い。

    第二部はアフリカが舞台。ここでもまだ、私たちの慣れ親しんだ理屈の世界と、こちらから見ればスーパーナチュラルな別の理屈で動く世界とは、危うい均衡を保っているのだが、徐々に得体の知れない闇が迫ってくる。ラストでその力が炸裂し、怒濤の第三部へとつながっていくのだ。

    第三部は再び日本。ここは以前読んだ時と同じく、「壮絶」としか言いようがない。スプラッター描写も少しあって、ちょっとひるむが、とにかく圧倒的な迫力がある。そう来るか!というサプライズもある。いやまったく堪能しました。久々に第一級のエンタメを読んだという満足感でいっぱいになった。




    オマケ
    本書の出版は1993年。ちょうど30年前になる。これくらい前の小説なんかを今読むと、PC的に(特にフェミ的に)どうよと思うことも多い。いやもちろん、今の価値観で昔を断罪すること(横行していると思う)の愚かさはわかっているつもりだが、あまりにあからさまだと、どうにも楽しめなくなってしまうのだ。その点、本書はほとんどひっかかりなく読めた。その点でも二重丸。らもさん、好きだったなあ。もっと読みたかった。

  • 久々に、手を止めたくなくなる本

    著者の 合理的で、好奇心旺盛で、慈愛を感じる文章で綴られた物語。
    現実に起きてきた色々な事件を連想させながら、そこへの怒りと市井の人々への暖かい想いに溢れている。それと同時に、事象に対し様々な方向からの解釈の豊さ!
    読みやすく、突き放さず かといって他人の物事を自分事にして侵入することもしない。

    フォントも文字の大きさも読者にも本当に優しい!
    何時でもいつまでも安心して読める本が増えました。


    感性やビジュアル的に、伊集院光が大宇部教授役に浮かんで仕方なかった。似合うと思うんだよな(もう少し年齢高い方がいいけども)。日本での映像化は想像出来ないから韓国で、とは思うけど映像化しちゃうと荒唐無稽すぎるな。
    なんだけども面白すぎて、何かでもっと体感したくなる。アニメ化かな?
    『ソウル・ステーション/パンデミック』的ならなかなか面白そう。
    それにしても、本は唯一無二の自由自在に泳ぎ回れる空間だと再確認。

  • 「呪術」をキーワードに、アフリカの風俗社会と現代日本のテレビ放送(今ならネットか?)を繋いでみるアイデアをひらめいた時点で、この小説の成功は約束されていたのかもしれない。著者自身を彷彿とさせる主人公の民俗学者をはじめ、いずれも魅力十分のキャラクター、またどんな深刻な状況でもウィットを忘れない会話のセンス、そしてあっけなく死んでいく登場人物たち。。。
    中島小説の粋を詰め込んだ極上のエンターテイメントだ。

  • 分厚いが読み始めると止まらない。
    アル中ヤク中描写は本人の体験に基づくんだろうな。
    アフリカの呪術に興味が出てくる一冊。

  • 分厚い本でした。
    でもサクサクと読めて最後の方は気になって気になってめくるめくる。

  • 3月28日読了。「このミステリーがすごい!」1994年度の第5位、国内総合でも14位の作品。まさに書を置く能はず、圧倒的に面白い小説だった!1部で「へー」満載、読者に科学的な態度(?)を植えつけておいて2部で未知の世界へ読者をいざない、後半に向けてハラハラ度を高めてから3部でズドーンと爆発する。最後の締め方は、少々伏線が不足している気もするがまあ、これしかないという終わり方か。いずれにせよ、むちゃくちゃ面白かった。

  • 絶対に面白いから、と言われ読んだ。面白かった。安直に面白かった。オカルト娯楽小説。けど、この本をこんなに面白いと思ってしまった自分が少し悔しかった。

  • ★4.0
    「言葉こそすべてじゃないか。人は自分の魂をちぎって投げるんだ。それが言葉だ」

  • ふと手に取って再読。ムーミン以外の内容をすべて忘れていたので、バナナのくだりなど、楽しめた。家族のやりとり、味方や悪役の設定など、映画版クレヨンしんちゃんのようである。一番近いのは「暗黒タマタマ大追跡」かな。言うまでもなく、暴力描写はよりハードである。

  • 古今東西、特にアフリカの呪術師関連の学者さんの話から密教やらオカルティズム、心理学、奇術師など幅広く書かれていて説明がつくものから解決しないものまである。
    色んな本に参考文献として書かれてたので読んで見たが面白かった。
    そして、よくこんなモノを週刊誌で連載で書けたなと尊敬してしまう。
    ちょっと関係の薄い人たちまでもがサクサク死んでいくのが凄いなと。
    日本のお坊さんに関してが結局一番わからなかったよ……。

  • 知り合いの方に、「今読んでる本を止めてでも、これを読んでください!」と言われ、上下2段、約600ページほどの分厚い本を手に取った。

    プロローグからすでに読む気を失ってしまったが、メインキャラクターが登場する第一部を読み始めると今度は止まらなくなった。
    一体この物語はどこにたどり着くのだろう?と思いながら、夢中になって読んだ。

    かなり人も死ぬし、グロいシーンもあり、一歩間違えればホラー小説にもなり兼ねないのだが、この物語の主人公である大生部教授のノホホンとしたキャラクターによって、読み手を安心させ、また夢中にさせる役割を果たしている。

    散々エグいことをやってのけておきながら、最後はなんとも温かい気持ちにさせる、不思議な小説。

  • 3部構成、緻密で壮大なエンターテイメント。

    第1部は、偽宗教家の奇跡のトリックを暴くミステリー。
    第2部は、アフリカにて呪術師に追い詰められるオカルティックなホラー。
    第3部は血なまぐさいサイキックアクション、と盛り沢山の小説。
    大部な本だけど、息もつかせぬ展開で、あっという間に読み終わってしまった。

  • 大ファンの中島らもさんの代表作のひとつ。
    いつか読もうと思いつつハードカバー598ページの大部に恐れをなして、購入したのがようやく昨年の秋。
    一気読みしたい衝動を抑えながらじっくり読みました。
    で興奮とともに今朝読了。
    ああ、すごい。
    本当にすごい、中島らもさん。
    凡百の作家が束になってかかっても敵わない稀有な才能。
    生きていれば傑作を次々と生み出したはずなのに不慮の事故で52歳で急死しました。
    やはり大ファンの町田康さんが、中島らもさんの思い出を語っていました。
    その中で、ずっと胸に残っている中島らもさんの言葉があります。
    「自分はこれからは本当のことしか書かない」
    「本当のことを言ったら殺される。しかし、それでも自分は本当のことしか言う気がしないのだ」
    町田康さんによれば、中島らもさんが亡くなったのはそれから間もなくのことだったそうです。
    中島らもさんといえば、私が最も気に入っている文章があります。
    「バンド・オブ・ザ・ナイト」に出て来る「蚊の目玉について」。
    長いけどカッコよすぎるので引用します。
    □□□
    人間の目というのは要するにレンズでできている。レンズでできているのであれば我我の脳内に結ばれる影像は上下倒立して映るはずだ。それがそうならないのは人間の脳の中に上下倒立した像をもう一度ひっくり返す、何かそういうシステムがあると考えざるを得ない。
    それで知り合いの眼科医に尋ねたところ、人間の脳にはやはりそういう機能があるのだそうだ。では蚊はどうだと訊くと、蚊にはそういうシステムはないという。つまり蚊の世界観は倒立しているのである。だから蚊にとって下降することは上昇であり、空高く昇っていくことは地獄くだりなのである。だからどう、ということは別にないけれど。
    □□□
    うーん、痺れますっ。
    この流れで「地獄くだりなのである」まで書いたら、普通は教訓めいたことを引き出して書きたくなるじゃないですか。
    でも、中島らもさんはそんな野暮なことはしない。
    「だからどう、ということは別にないけれど」と書いてサッと引いてしまう。
    洗練の極みです。
    って、中島らもさんのことを書いてたら、もう思い入れがあり過ぎてあっち行ったりこっち行ったりですみません。
    で、えーと、そうそう「ガダラの豚」。
    呪術がテーマの作品で、第1部は民俗学者で主人公の大生部が新興宗教にハマった妻を救い出す話、第2部はその大生部たちがアフリカの呪術師の村を訪ねる話、第3部は強力な呪術師と大生部が日本のテレビ番組で対決する話―。
    うん、かなり簡単に書いてしまったけど、間違ってません、よね?
    ラストは殺戮に次ぐ殺戮でもう圧巻の一言。
    くらくらと目眩を覚えながら、ラストだけはページを繰る手が止まりませんでした。
    物語も面白いですが、私はやっぱり中島らもさんの容赦のない描写、ひねったユーモアが好きです。
    贅沢な読書体験でした。
    あらためて故人のご冥福を祈ります。
    一生かけて全著作を読ませていただきますので。

  • 実家の本棚から取り出してパラパラとめくっていたら止まらなくなった。とはいえ分量が多いので一気には読めずに2週間かけて。今回で2回目か3回目。呪いがテーマの冒険活劇。細かい内容はまったく憶えておらず、まっさらの状態で楽しめた。それにしてもこれほど血湧き肉踊る小説は珍しい。この世界にずっと浸っていたい感じ。この本には呪力ならぬ魔力がある。らもさんは書きながらその魔力に助けられていたのかな。『呪い』はネガティブな言葉だけど、どうせならポジティブな『呪い』をかけたいものですな。

  • 学生時代、一気に読んだ記憶が思い返される。
    面白かったなぁ。

  • 一本の太いストーリーの幹があるような話ではなく、大きく分けて3つの話がコンバインドしている。
    それは中島らもが積極的にそうしたかったわけではなく、連載の都合で話を編集者と詰めていく中でそうなったに過ぎない、いわばプロの事情である。

    博学にして物書きのプロたる中島らもの書くこのエキゾチックホラーエンターテインメント小説はその場その場の盛り上がりを楽しめる週刊漫画のようなつくりをしていてあっちへこっちへと読者の興味は振り回される。3部を通しで一気に読めばそれはかつてない体験になるはずだ。

  • 色々なジャンルが混ざっている。
    期待を裏切るヒーロー役に【現実は甘くないんだよ】という
    「中島らも」のメッセージを感じた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「中島らも」のメッセージを感じた。」
      現代の闇に切り込みつつ、素晴しいエンターテイメントになっている。流石中島」らもと言える作品ですね。。...
      「「中島らも」のメッセージを感じた。」
      現代の闇に切り込みつつ、素晴しいエンターテイメントになっている。流石中島」らもと言える作品ですね。。。
      2013/07/16
  • 再読しようと探したけれど
    見つからず..
    面白くて読むの止まらなかった記憶が..
    何十年も前の分厚い本だった
    名前を聞いたので忘れないうちに
    保存

  • アフリカ呪術、超能力、手品、仏教、心理学とありとあらゆる要素をぶち込んだ長編小説。
    読むのに時間はかかったがとても面白かった。
    科学的な部分と非科学的な部分がいいバランスで織り交ぜられており長編だが飽きずに読めた。

  • 久しぶりの読書で何を読んでよいかわからず、このミスやこのSFで評価の高かったこちらの作品に挑戦。
    久々だったのに、字が小さくて、2段になってて分厚い本だったことは誤算。
    子どもに「どんな本読んでるの?」と聞かれても答えるのに難しかったが、アフリカの呪術とかを研究している大学教授がいて、今、TV局の人と一緒にアフリカに来てるんだよ。」というのが精いっぱいだった。
    上記は中盤までの展開。半分読んだけど、この話いつから盛り上がるんだろう?と疑問に思っていた。後半は字の小ささの割にはスイスイ読めたが、すごくおもしろかったかと言われると「?」。
    でも、アフリカ社会のことをすごく掘り下げている話だと思った。

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著者プロフィール

1952年兵庫県生まれ。大阪芸術大学放送学科を卒業。ミュージシャン。作家。92年『今夜、すべてのバーで』で第13回吉川英治文学新人賞を、94年『ガダラの豚』で第47回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞した。2004年、転落事故による脳挫傷などのため逝去。享年52。

「2021年 『中島らも曼荼羅コレクション#1 白いメリーさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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