砂漠

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 4393
感想 : 834
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408534848

作品紹介・あらすじ

「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という"砂漠"に囲まれた"オアシス"で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 大学での4年間の男女五人グループの物語。大学時代って、人生最後の青春って感じでいいですね。

    内容はやや無理のある展開と感じてしまう部分もありましたが、個性豊かな登場人物たちが絡み合い、最後のハッピーエンドまで楽しく読めました。

  • 直木賞は東野圭吾さんが受賞しましたが、伊坂さんにもあげたいと思った人は相当いるんじゃないでしょうか。
    5冊目になる伊坂幸太郎の作品。
    この「砂漠」は、大学生たちが主役の青春小説です。
    さてどんな風に騙してくれるかしら?とワクワクして読んだのですが、全体に色素が薄い感じがします。
    もちろんいつも通りのテンポ感とエネルギッシュな処、小粋な会話等はそのままなのです。何故そう感じるのでしょうね。

    物語は、平たく言うと「青春群像劇」。
    岩手出身の「北村」という男の語り口で語られていきます。
    入学から卒業までの月日に巡り会う個性豊かな仲間。
    合コン、麻雀、バイトなどと共に、「超能力」とも遭遇し、暴力沙汰などにも巻き込まれます。
    「砂漠」という比喩は「社会そのもの」のことで、学生である今は「オアシス」のようなもの。
    だから色々あっても「なんてことは、まるでない」と北村はしばしば言っています。

    いや、なんてことあるってば、北村君。
    語り手であるくらいだから、彼は鳥瞰型の人間なのですが、仲間と過ごす日々で徐々に即断即決型の熱い人間になっていきます。
    そう、肝心なのはこの部分。

    卒業式で学長が言う最後の言葉「人間にとって最高のぜいたくとは、人間関係におけるぜいたくのことである」…これに感動した北村と仲間たち。
    まぁこれはサン・テグジュペリの「人間の土地」からの引用なのですが、これに感動できるだけになったんです、4年間で。

    伊坂さんという人は、とことん理論的でありたいのかもしれません。
    そこが青春小説には無理がある気がします。
    もっとみっともないし、カッコ悪いし、惨めだし、やる気ばかりがフライングして切なかったりする、そういう切なさが足りない気がします。
    それが「色素が薄い感」の正体だと思うのですが、他の方の感想も聞いてみたいですね。

    北村君の友だちの「西嶋君」がとても良い味を出しています。
    伊坂さん自身はたぶん「北村型」の人間だけど、本音の部分は「西嶋」に言わせている、そんな設定でしょうか。破天荒だけれど憎めない、危なっかしいけれど何とかなってしまう、ちょうど「チルドレン」を彷彿とさせるキーパーソン。

    私は、カーティス・メイフィールドやジョン・レノンに向かって、言いたいことがあったのですが、読後久々にそれを思い出しました。

     そうだ、麻雀が出来た方が、この本は楽しめます。
     麻雀は「即断即決能力」を養ってくれますよ。  
     と言ったら久々に卓を囲みたくなってしまいました。
     

    • ミオナさん
      私もこの本大好きです!いいねを連打したい!伊坂さんが北村型で、本音は西嶋に言わせているっていうのか納得です。
      再読したくなりました(^_^)
      私もこの本大好きです!いいねを連打したい!伊坂さんが北村型で、本音は西嶋に言わせているっていうのか納得です。
      再読したくなりました(^_^)
      2020/06/10
    • nejidonさん
      ミオナさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。とても嬉しいです!

      これはもともとブログの記事だったのですよ。
      容量...
      ミオナさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。とても嬉しいです!

      これはもともとブログの記事だったのですよ。
      容量がいっぱいになってしまい、急いでこちらに登録して貼り付けたものです。
      でもこれが面白かったのは、よく覚えています。伊坂さんの作品では特に好きな方ですね。
      同じ見方の方がいらして、何だか嬉しくなりました!
      2020/06/10
  • ラモーンズとザ・クラッシュが気になって気になってしょうがなくなり、YouTubeで聴いてみた。確かにどこが良いのか分からない、なんとも言えない感じが堪らなくクセになりそう。
    それから、サン=テグジュペリも読みたくなってきた。

  • 「でも」と僕は弁護するような気持ちで言う。「でも、きりがないよ。一匹飼ったって、保護期間の切れる犬は次々と現れる。全部助ける覚悟があるならいいけど。仕方ないよ」と言いながら、僕は西嶋に呼びかけてもいる。西嶋、僕たちは世界を変えるどころか、シェパード一匹助けられないじゃないかと。

    大学生の北村君はこのように、センターで「処分」される犬たちについては「判断」する。ところが、暫くして西嶋はそのシェパードを連れて北村の前に現れるのである。この辺りが、いかにも伊坂の小説らしいので、読者の私たちはもちろんその強引な展開に文句は言わない。

    「でもさ、これからも保護期間の切れる犬が出てくるたびに、西嶋は犬を引き取りに行くのか?」
    「まさか」西嶋は当然のように肩をすくめた。゜どうして俺が全部の犬を助けなくちゃいけないんですか」
    「はあ」
    「たまたまですよ、今回は見ちゃったからね、気になったんですよ。次からはもうあのホームページは覗かないことにしたし」

    この件(くだり)を読んで思い出すのは、九条の会の呼びかけ人だった故加藤周一のエピソードである。彼はたまたま出合った引きこもりの少女に目をかける。未来を見据えて大学で学究生活を送るようになった彼女はのちに言っている。
    「先生はよく孔子の牛の話もされました。弟子が、一頭のかわいそうな牛を助けたところで他にも多くのかわいそうな牛がいるのだからと言うと、その一頭は私の前を通ったから助ける、と孔子は答えたと言います。ひとつの命を助ける情がなければ、たくさんの命を助ける行動にはつながらないというのです。
     その話を聞いた時、「ああ、私は加藤先生にとって一頭の牛だったのだ」と、深い感動を覚えたことがありました。人の命を、それも多くの命を救いたいと願った加藤先生は、目の前の一頭を助けることに尽力を惜しまれなかった。偶然にも私は先生の前を通り、ちゃんと歩けるまでに助けていただきました。」
    この孔子のエピソードはどこにあるのか、調べたが良く分からなかった。

    西嶋が(言い換えれば伊坂が)加藤周一になれるかといえば、私は幾つものハードルが必要だとは思うが、しかし、一番必要な点で接近していると、私は思うのである。「世界を変える(砂漠に雪を降らせる)」ことと、「目の前の困っている人を助ける」ことは矛盾しないのである。

    さて、これは大学生五人組の四年間の友情の物語である。もう何十年も前の大学生活、私と全然違うけど、空気は似通っている。とっても懐かしかった。

  • 個性的な登場人物が紡ぐ学生生活の物語ですが、読みやすく、面白いです。私が伊坂先生を好きになったきっかけの小説なので、是非読んでみてください。

  • レビューや口コミで期待値が上がりすぎてしまっていたが、
    それでも十分に楽しめた。
    今となっては、友達からもらったこの版の表紙が愛おしい。笑

    つべこべ考えないで、目の前で困ってる人がいたらバンバン助けりゃいい、という西嶋くんは付き合いづらいかもしれないけどカッコいい。

    「思い出は作るものじゃなくて勝手になるんだよ。」という鳩麦さんも好きだった。

    人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである。
    学生時代はもちろん、社会人になっても、きっと死ぬまでこれに満足してたら贅沢でこの上なく幸せなんだと思う。

  • 西澤のキャラクターとそれを受け入れている周りの仲間たちの雰囲気が好きだった。面白かった。やはり若い頃って特別だ。恋愛の駆け引きみたいな部分をあんまり深掘りしてないところが好みだった。

  • 砂漠という社会に向かう前の、大学生達の物語。
    自由があり、1番青春を満喫できる時なのかもしれない。
    かなり個性的だけど、こんな仲間がいたら最高!

  • 伊坂幸太郎のようであってそうでないような。
    でも、ユーモアがあって軽快で知的な感じだね。
    お洒落でちゃんと内容もあるよ。

    ちょっとした違和感はあったものの、1年の話として読んでいたら4年間の話だったとは。
    なるほどねー。
    いいなぁ、ガッツリ人間関係濃くなってての展開だったのね。
    青春だなー、くそー。

    北村くん、鳥井くん、東堂さん、南ちゃん、西嶋くん、鳩麦さん、みんないい。
    西嶋くんのキャラが、なんともいえずカッコ悪くてカッコ良くて、愛おしいわ。

    マージャンもパンクロックもキックボクシングもまるで興味がないけど、面白い話でした。

    大学時代を懐かしく思い出して、砂漠に雪を降らせるくらい余裕でできそうな気がしました。
    なんてことはまるでない、はずだ。

  • 2009.03
    大学の同級生5人の青春物語

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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