花や咲く咲く

  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536293

作品紹介・あらすじ

昭和十八年、初夏。女学校三年生の三芙美は、思いがけず手に入った布でブラウスを縫い始める。女学校のマドンナ・和美、韋駄天の詠子、あくびが似合う則子。美しい布に触れ、笑い合う四人にも、戦争の暗い影が忍び寄っていた-。著者がはじめて、太平洋戦争を舞台に描いた、感動の"戦時下"青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 女学生でファッションが大好きな親友の4人組が昭和18年初夏から、終戦直後までどのように生活していたかが描かれた物語だった。

    4人ともファッションのことが大好きだったが、そのうち2人はファッションデザインや裁縫などの才能があった。
    しかし、当時のご時世的に、そのようなことをするのは絶対許されない。それでも気分転換やストレス発散のため、そして、戦争が終わって平和な世の中になったら、自分達が作った服を着るという将来の約束とともにバレないようにこっそりと4人で集まってお互いのスタイルや髪型などを考慮したブラウスを作った。

    やっとできてホッとしたのも つかの間、学校にいる生徒全員が勤労動員することになった。

    なかなか4人が揃って会えない時期が続く中、進学を目指している生徒が、試験を受けに関西に向かって移動している最中に原爆が落とされたことを知る4人組のうちの2人。あとの2人がその試験を受けるために関西に移動しているため、被害にあったかどうかヒヤヒヤしながらも、きっと無事だと強く願いながら、終戦直後も試験を受けに行った2人組の帰りを待つ、あとの2人。

    結局、試験を受けに行った2人は無事だったかどうか、そして4人組が今後どのような人生を歩んだのかが書かれておらず、とても気になった。
    また、戦時中は現代以上に理不尽なことがたくさん起きていたんだなと思った。

    本文から、知らなかったことなど
    1 昭和17年初めまでは派手でなければ、ブラウスやワンピース、セーラー服は着用してよかった。

    2 燃料の節約のため、路線廃止したため乗り合いバスがない、その節約した燃料は全て戦車などに回した。

    3 米や調味料、野菜、肉、卵も配給制になって日に日に手に入れにくくなっているため、旅館の廃業、休業、転業はよくあった。

    4 昭和18年初めには日本の誇りを守るため、アメリカ製品以外の国の商品(写真集、本、ポスターなども)を広場に積み上げて火を放った。それが例えドイツやイタリアなどの同盟国の商品であっても関係ない。

    5 日本の陸軍記念日に大日本婦人会連合会の全員が、戦勝祈願のために黒髪を奉納した。

    6 役場の壁にかかった垂れ幕に、「貯蓄なくして勝利なし」と書いてあった。

    7 出生した旦那のことを思って泣いたり、配給の品の少なさについて愚痴ったりしただけで憲兵隊に密告される。
    実際に、新婚2ヶ月の旦那が出征する前日の壮行会の時、「死んで欲しくない」と泣いたら密告されて3日後に釈放されたが、旦那の家に泥を塗ったということで無理やり離婚させられた。

    8 学校の軍事教練の時間で、まともな食事もしていないのに3時間も歩かされ倒れて気を失ってしまったら、翌日、全校生徒の前で校長から叱責された。しかし、校長が体調不良で倒れたら称された。

    9 勤労動員で被服工場に行くことになり、工場長から 人間のかえは いくらでもあるが、ミシンは貴重なため、ミシンを先に防空壕に収納してから人間が避難するよう言われた。

    10 軍手の支給などとっくになくなっていたため、空襲で焼け焦げた柱やトタン板を素手で運んだ。

  • 戦時中の女学生が主人公。
    どんな時代でも仲良しはキャピキャピしているのかもしれないなぁ。
    厳しい時代でも自分たちの楽しみを見つけ出しているところが素敵。

  • こういう時代があったことを忘れてはいけない。
    お腹いっぱいごはんを食べられて、好きな洋服を着ることのできる今。当たり前じゃないんだなって強く思いました。

  • 人を幸せにするために良かれと思って行動したのに、幸せでない人が続出する、その最たるものが戦争。
    昔も今も個人を蔑ろにする国家、日本。
    当時の方が大東亜共栄圏という理想を掲げていただけマシかも知れない。

    人が望むことは、自分と大事な人たちが、安全で、空腹ではなくて、それが明日も保証されていることだけなのに。
    その上で誰からも迫害されずに自分らしさを発揮出来ることだけなのに。
    三芙美たち女学生の人としての自然な感情に尊さを覚えた。



  • 昭和18年、4人の女学生の物語。生活が逼迫する中、思いがけず手に入った布地で4人はブラウスを縫いはじめる。おしゃれが好きで、笑いあう――そんな仲良し4人組にも、やがて戦争の暗い影が忍び寄り…。

  • 2020.10.08

  • H29/6/18

  • 自由におしゃべりすることさえ許されなかった時代で隠れてブラウスを縫う四人の少女たち。ブラウスが縫い上がったら、いつか私たちだけの秘密のファッションショーをしようと語る四人が眩しくて、せつなくなった。最後の不如帰のきっちょん、きっちょんと鳴く声が悲しい。二人が待っているから「二人とも、早う、帰っておいで」。

  • なんかじわじわ来た。                 本当に「戦争なんて」という気持ちになる。 当たり前だった日常が少しずつ崩れ落ちていき、自分の気持ちの在り方さえわからなくなる様子が切なくなる。          決して非国民なんかではなく、当たり前の感情だと思った。

  • B29が本土爆撃を開始した昭和18年夏、その緊迫した情勢のなかで闇物資の布でブラウスを仕立て戦後のファッションシーンを夢見てはしゃぐ少女たちには違和感を抱くところなのだが…
    しかし思い起こしてみれば我が国では直接戦闘は行われておらず主要都市は焦土と化したものの男達が出征して行くことでしか戦争を実感できない地域が殆んどであったのは間違いない事実。
    つまりこの長閑に見える少女たちもひめゆり部隊の悲劇の少女たちも実は同じ時代に生きた少女たちなのである。
    中三の教科書に載ったそうだがこの新しい戦争の描き方に挑んだあさのさんの想いをきっと感じ取ってくれる若い感性があることを信じたい

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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