闇から届く命

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536545

作品紹介・あらすじ

都内の産婦人科病院に勤める有田美歩は、助産師になって六年目。勤務先にはやや問題があるものの、有能な先輩や同僚に恵まれ、充実した日々を送る。ある日、新生児室から一人の男児が消え…。使命感に燃える助産師たちが生まれくる命のために奔走する!

感想・レビュー・書評

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  • 都内の産婦人科病院に勤める有田美歩は、助産師になって六年目。
    脳性小児まひの姉と暮らす中で看護師を目指すようになり、
    姉の死をきっかけに助産師になる決意をした。
    大学病院を経て移った現在の勤務先、ローズ産婦人科病院は、利益至上主義の院長と
    お産をとれない助産師長がトップに立つワンマン経営、やや問題を抱えている。
    それでも美歩が仕事を続けていられるのは、有能な先輩たち、高い手技を持つ医師たちの
    存在があるからだったが、ある日、新生児室から一人の男児が消え……。

    妊婦健診を受けることなく飛びこみでお産に訪れた母とその子供、
    不妊治療の末に授かった子供の羊水検査の結果に妊娠の継続を悩む妊婦、
    緊急搬送され常位胎盤早期剥離と診断される産婦。

    一分一秒を争う現場で「生まれてくる命を守りたい」と働く助産師を始めとする
    スタッフたちの緊迫の日々を、出生前診断やネグレクトなど
    現代の産科医療現場における問題に切り込みながら描く医療サスペンス。


    毎回ひたむきに一生懸命に生きる人々を描いている藤岡さん。
    今回は産婦人科病院が舞台でした。
    現役の看護師の藤岡さんが描い産婦人科病院で日々起こる
    出来事や現場の様子にはとてもリアリティが感じられました。
    特にこの産婦人科病院は院長に手技がなく、
    愛人で師長も助産師ながらもお産がとれない…。
    トップ二人の人格も技術も知識も駄目過ぎるのですが、
    頼れる有能な先輩たちや、高い主義をもつ医師がいたから
    病院もまわっているし、美雨も少しずつ成長していけていた。

    助産師さんが悩みを抱えた妊婦さんや出産間もないお母さんとの
    面談をされるのですね。
    知らなかったです。
    出生前診断は賛否両論あると思うけど…後悔しないように決めて欲しいと思った。
    命って平等じゃない。
    生れるのを許される命と許されない命。
    確かに望まずに生れてきて不幸になる子供もいる。
    病気を持って生れてきたことで家族やその子自信が苦しみつづけることがある。
    命を平等に守るということは簡単じゃない。
    しかし、人の狡さや弱さ身勝手さ。
    望まれない命の行く末…。
    生れる前の命の重さを考えさせられた作品でした。

    主人公の障害をもって生れた姉との思い出や、出生前診断で語られた
    天くんのお話は涙が零れて仕方が無かったです。

    院長父子の医師としてあり得ない倫理観、イヤ人として許されない倫理観。
    医師免許を剥奪されたのはスカッとしましたが、刑期が短かったです(*`Д´*)
    そして、佐野医院が開院して良かった~♪
    患者様や生れてきた赤ちゃんの事を第一に考える先生の元
    凄い助産師が揃って素晴らしい病院になるんだろうなぁ。
    佐野先生と美歩がこれからうまくいって欲しいなぁと夢見てます( 〃▽〃)

  • 助産師さんが主役という事でドラマ「コウノトリ」の様な感じかなと思い読み始める。ドラマでは毎週感動して泣きっぱなしだった。だけど、この作品は重い。感動より苦しさの方が多かった。

    「初めから健康には生きられないとわかっていたら、その子供は生まれない方が幸せなのか」病気の姉を持つ美歩が母に聞く。
    その答えを読んだ瞬間、そうだよね、そうだよねってお母さんの肩を叩いてギュってしてあげたくなった。
    出生前診断が出来るようになった今凄く考えてしまう問題だと思う。助産師さんたちはますます命の選別に関わる機会が増えるだろう。彼女たちのしている事を読んだ時息が苦しくなった。可哀想に辛いだろう。
    生まれる前の命の重さを考えさせられた作品。

    医療サスペンスと書かれているがサスペンス部分はほとんどないし特に盛り上がりもない。犯人のした事の罪の重さ、その罪に対する量刑の軽さを私たちに伝えようとしている気がした。

    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~♪

      この本、私も読みました。
      けいちゃんの言うように、つらく苦しい作品だった。
      いろいろ考えさせられて、悩...
      けいちゃん、こんばんは~♪

      この本、私も読みました。
      けいちゃんの言うように、つらく苦しい作品だった。
      いろいろ考えさせられて、悩みに悩んで、
      どうしてもレビューを書けなかったの。

      それと、この病院はひどすぎるよね…。
      許せなかったよ!
      産婦人科が減少しつづけているというのにね。
      でもたしか終わり方は少しほっとしたような…。
      2016/06/27
    • あいさん
      うさちゃん♪

      こんにちは(^-^)/ コメントありがとう!

      うさちゃん感想書けなかったんだね。・゚・(>_<)ノノ
      本当に辛...
      うさちゃん♪

      こんにちは(^-^)/ コメントありがとう!

      うさちゃん感想書けなかったんだね。・゚・(>_<)ノノ
      本当に辛いよね。
      赤ちゃんをとりあげる素晴らしい仕事とばかり思っていたけど、こんなに辛い思いをしていたなんて…。

      うん、うん、この病院本当にひどいよ。
      こんな病院あるのかな?
      サスペンスよりももっと美生の事や、望まれない妊娠をした時の心の葛藤とか描いて欲しかった気もするよ。

      次の藤岡作品は「おしょりん」を読みます٩(๑•̀ڡ•́๑)و
      2016/06/28
  • 違うタイトルですでに購入し読んだ本でした。せっかくなのでもう一度猛スピードで読みました。とても良い話で赤ちゃんの出生シーンなど胸が熱くなりました。やっぱり、佐野先生の病院で理央さんも含めて皆んな一緒に働いている続編を読みたいと思いました。

  • 2022.6.28.読了
    久しぶりに読んですぐ感想を書きたくなる本に出会った。
    ある私立産婦人科病院に勤める有田美歩は中堅になろうとする助産師。院長の愛人でというだけで能力もないのに看護師長を勤める巣川、実力あるベテラン助産師草間、海外でのボランティア活動に重きをおき日本での活動は出稼ぎという辻門、経験2年目で大事に育てられている戸田、腕は確かだが、その行動から不審がられている佐野医師…たちを登場人物に、産婦人科病院の日常、そして、とかく不審な行動で噂をよぶ佐野と日ごと元気をなくしていく戸田を気遣う有田美歩がある謎の真相を見極めようとする過程が描かれている。

    と書いたらそれまでだが、産婦人科病院の日常が経験者である作家により具体的に描かれているのが一番興味深かった。

    そして主人公である有田美歩の家族歴…脳性小児麻痺の姉と育った葛藤から生まれた「命」に対する独自の価値観…生まれてから不幸になるなんてこと、誰にもきめられないよ。それを決めるのは、私たちじゃないから。-見ている世界が違うんだって、私の姉がそんなふうにいったことがあるの。姉は生まれながらに病気を持っていて、健康には生きられなかったけど、だからといって姉の人生は不幸なだけではなかったんだと思うし家族を愛して、姉が見ていた世界には、幸せがたくさんあったんだって最近になってそう考えるようになったんだよね。だから生まれてきても不幸という言葉は、使っていけないきがする…というセリフ、。

    くよくよしたってしょうがないのよ生まれてきたら、ただ懸命に生きることだけを考えてたらいいの。

    とい有田美歩の母親のセリフ

    がとても心に残った。

    また、一見不審人物風の医師佐野の行動、言葉も印象的で目が離せず、利己的な院長一族とそれを許せない正義感なスタッフというある意味類型的なストーリーだったかもしれないが、経験による様々なセリフが印象的で、一気読みでき、久しぶりに読書の楽しさを思い出させてくれた作品だった。

  • 中庭にバラ園のあるローズ産婦人科医院で助産師として働く美歩は、過酷な労働条件の中、新しい命と迎える仕事に一生懸命だった。

    出生前診断で胎児に異常が見つかった夫婦、飛び込みでの出産、ネグレクト、乳児院のことなど。
    新しい命を迎える仕事には、たくさんの問題があることが提起されている。
    『いらっしゃい。よくきたね。』と迎えられる赤ちゃんばかりでない事実に、胸が詰まります。

    サスペンス色は弱め。でも、十分読みごたえがありました。
    最後の展開は読めた感じでしたが、ハッピーエンドのため読後感良好です。

  • 藤岡さんの話は、読み終わると何時も心にあたたかいものが残る。
    看護師の学校を出られているだけあって、病院の中の事とか、看護師さんの話とかの描写がよく書かれていると思う。
    毎回、素直な主人公の話からして、藤岡さんも、真っ直ぐなお人柄なんだなぁと思う。
    藤岡さんの本を読み終わるとすぐに、藤岡さんの他の本が読みたくなる。

  • とある産婦人科での物語です。赤ちゃんはかわいいけれど、産婦人科ではそれだけではない辛い事が沢山あるのがよく書かれています。
    明るいタッチで書かれていますが、けっこう怖いというか潜在する不安みたいなものが伝わってきました。
    本としては医療ミステリーに分類されると思うので、ネタバレしたくないので内容には言及しません。出産現場を舞台にした医療ドラマとしても、医療ミステリーとしてもいい出来だと思います。
    主人公にもしっかりバックボーンが有って、がっしりした作りの物語だと思います。藤岡陽子さんが大ブレイクしないのが何故なのか分からない位佳作が多い。

  • 産婦人科で働く助産師の美歩が、生まれる命を守ってひたむきに働く姿に引き込まれたし、小児まひの姉がいたという背景も興味深く読みました。
    ただ後半のホテルのくだりは、ちょっと陳腐というか残念な感じで、ミステリー的なものよりも医療の話をメインで読みたかったなと思う。

  • 命をとりあげる助産師の
    素晴らしい作品。

    病院の現状もや助産師の苦悩も、
    現実にも少なからずあることなのだろうと思う。
    お産はとめられないし。
    佐野氏のようなドクターがいたら心強い。

    私の出産はすでに16年前だけど
    妊婦にとっては、妊娠しているときも
    生まれてからも、助産師は神様のような存在。
    あの、安心して委ねられるような空気感は
    すごいなぁと思ったとことを思い出した。

    人としての命の捉え方を改めて考えさせられた。
    そして、今、生きている大人だって、
    奇跡のもとに生まれ出た命なのだと考えずにはいられない。

  • やっぱり藤岡陽子の作品はいいな。それも、短編よりも長編の方がいい。小説なのに、思わず涙ぐんでしまう場面があるし、登場人物もみな個性的で、ストーリーも適度に複雑だ。所々に、これは何かの伏線だなと分かってしまうシーンも挟まれているが、もしかして、意図的なのかもしれない。
    作者が看護師経験があるということで、助産師が主人公の本書にもリアリティがある。そういえば、「海路」も病院の話だった。でも、「手のひらの音符」のような傑作もあり、病院ものしか書けないわけではない。むしろ、人の命、生と死、大人の生き方といったものの描き方に本領が発揮されると言えようか。もっともっと読んでみたい。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

藤岡陽子の作品

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