森に願いを

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 339
感想 : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536590

作品紹介・あらすじ

いじめ、就職、恋愛、不治の病…さまざまな思いを抱えた人々の運命を変える言葉とは?静かな感動を呼ぶ「森」のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • ブナ、ヒノキ、ミズナラ、ハルニレ、シラカバ…
    街の中に、そこだけ取り残されたように存在する原生林の森。

    様々な病を抱えた人たちがこの森を訪れ、
    森番の青年と交流するうちに笑顔を取り戻す。

    読みながら、この青年は森の精霊なんじゃないかって思ってたんです。
    でも最終章で、青年が森番をしている理由がわかり、
    それがとても哀しく、やるせなくて…もう一度最初から読み返しました。

    そうしたら、彼もまた、
    この森に守られ救われているのだと思えて…。

    この場所で、こうして生きていくことが、
    彼の幸せなのかもしれないなぁって…。


    ”雲の切れ間から光の筋が地に注ぐみたいな”
    ジェイコブス・ラダー
    その光の差し込む空間に埋められた石板。

    この森が守られ続けて来た、”遠い日の約束”に胸がじ~んとなりました。
    ああ、こんな初恋の実り方もあるんですね…。

    「きれいだったから、それ、母さんにあげる」
    母への誕生日のプレゼントに、
    真っ赤なモミジの一葉を渡した不登校の少年。
    毎日森に通い、その一葉が自然に落ちるまで待った、優しい心が忘れられません。

    『あなたも歩いてみませんか。小さな奇跡の森を。』

    歩いてみたいです。
    そして、もしも森番の青年に会えたら…
    なんて想像しました。

  • 町の中にぽっかりと浮かぶような森。心に悩みを抱えた人たちが誘われるように森に入って行き、そこで若い森番に出会う。
    子供の不登校を悩む母親、不治の病を抱えた青年、リストラ対象になった男性、自分は特別だと頑なな人々…今の世の中溢れかえってそうな事例ばかり。かくいう私もこれほど極端ではないにしても、身につまされる内容に始終胸を痛くしながらの読書だった。人って簡単には変われないけど、変われる糸口は沢山転がっていると思う。それが、文中では森番の姿をして追いつめられている人の道しるべとなっている。どの話も最後は一筋の光が見える終わり方だったので救われた。

  • 「メグル」を読んだ流れで乾ルカさんの著書を続けて。
    みなさんの書評をみて、やっぱりそうか。と。

    カムイミンタラ、がでてきました!
    「神さまたちの遊ぶ庭」(宮下さんの)が大好きだったので、ちょっとだけつながってうれしい。
    心に何かを抱える人たちが、森に、森の番人に救われていきます。
    挫折して人は変わっていく。最後はいい方向に変わったと信じたいですね。
    時間は自分のもの。人の不幸を祈って自分の時間を使うのはもったいないです。みなさんのコメントと一緒で、いい年して。。。と思ってしまいました。

    +++

    数年前の台風で樹々の多くが倒れました。
    なぜかこの1-2年でさらに多くが倒れ、モデルとなった森はすかすかになってきています。驚きを通り越して寂しいです。
    これも森の再生のために必要な自然現象、ということであればいいのですが、地球温暖化に伴う異常気象が原因であるのなら、私たち人類の責任になります。
    樹齢800年の樹はこの本ではミズナラとして登場していますが、実際にはクリで、さらに公園の広さは本から想像できる広さでは全然ないです。(端まで行ったら簡単には戻ってこれませんがな)

  • 街中に不意に広がる居心地の良い大きな森。
    季節の花々やブナ、ミズナラ等の巨木、エゾリス、エゾフクロウ等の小動物、あずまやが森を訪れる人達をひっそりと待っている。
    そしてテノールの声を持つ森番の彼も、丁寧に森を管理しながらいつも優しい佇まいで出迎えてくれる。

    森を訪れるのは不登校、就職難、病気、リストラ等人生に挫折した老若男女。
    悔しさや遣りきれなさの中でもがく彼らは、森に癒され森番に諭されることにより、笑顔を取り戻して再び各々の道を歩き始める。

    傷付いた人達に優しく寄り添う森番の彼の強さの訳に胸を締め付けられた。
    挫折を経験した人は優しさと強さを得る。
    私もこんな安らげる秘密基地がほしい。

  • 街の中にある森に集う人々の話。
    この森にやってくる人には必ずと言っていいほど悩みがある。それを癒やしにやってくるんだよね。
    悲しい思いをしている人ばかりなので、こちらもガクッと気分が下がってしまうのが難点だけれど、森で救われるのだからね〜。自分の心に痛みがある人は、他人の痛みにも敏感で優しく接することができるということなのか。

  • いじめ・就職・恋愛・不治の病…。
    さまざまな思いを抱えた人々の運命を変える言葉とは?
    静かな感動を呼ぶ『森』のミステリー…。


    7編からなる、連作短編集
    ●色づく木 
      学校に行けなくなった穂高と、心配する母・亜希子
    ●春めく木
      自分に見合った仕事が得られないと、世間に不満を抱く・麻衣
    ●雪待つ木
      余命間近である瞬間を見たいと思い続けてる、末期がんの丹
    ●病の木
      高校に居場所や自分の存在意義を感じられない長部
    ●育ちゆく木
    ●とらわれの木
    ●新たなる木


    何かに引き寄せられるように、希望を失い
    森に迷い込んだ人々に森番の青年は語り掛ける。
    『ここはとても気持ちのよい森なんです。
    どうか歩いてみてくださいませんか?』
    森番の青年は悩みを抱えて苦しむ人々の心に寄り添って、
    森を通して色々な導きをしてくれる。
    気付きをさせてくれる。

    この森は何なのだろう?
    この森番の青年は何なのだろう?
    ずーっと、読みながら抱き続けていた思いが
    最後の『新たなる木』で、明かされる。
    この森は、その為に大切にされてたのか…
    あ~彼もそうだったのか…。
    だから、悩める人々の心に寄り添えたのか

    どの物語も淡々と描かれてる。
    訪れる人に反感を抱く様な人もいるけれど…。
    とらわれていた思いから救われる。
    訪れる人皆に救いがある。

    小さな奇跡の起こる不思議な森を歩きたくなりました。

  • 人は弱っているとき、自意識過剰になったり、身勝手で嫌なやつになってしまうものです。最終話以外は基本的に主人公がそういう人ばかりなので、読んでいて少し疲れてしまいました。裏を返せば、そういう人の心の内がリアルに描かれているので、すごいとも思いました。

    (´・ω・`) ココカラネタバレアリ〼
    印象に残ったこと。

    【色づく木】子は親が思うほど幼くないということを感じました。心配なのはわかるけど、どうして大人は子どもに対して答えを急ぐのかなって思ってしまう。自分が子どもの頃、そういう大人を見てどう感じたか、思い出せないものなのでしょうか。

    【春めく木】周囲を見下すことで自分を保とうとする様は、まるで自分の弟を見るようで、痛々しかった。

    【雪待つ木】死の間際に見える自然の美しさが、目の前に広がりました。自分で動くこともままならず、病室で終わりを迎える人も多い中、それが見られる人は幸せな気もしました。

    【とらわれの木】こういう人いるよねって思いながら読みました。というか、子どもの頃の自分はこんな感じだった。すべては周りのせい。どうしてわたしだけ。だけどそれを乗り越えられれば、ひとつ大人になれますよね。作中の奈々さんは十分いい年のようですが…笑

    【新しい木】これが一番好きでした。なぜなら嫌な人がひとりも出てこないからw 誰も悪くないだけに切なすぎるお話ですが、だからこそとても美しく感じました。ジェイコブス・ラダーという言葉を初めて知りましたが、森の中に静かにぽつんとあるお墓が容易に想像できました。本の評価が☆4つなのは、このお話があったからです。

  • 森を案内してもらう前の日に読みたくなった1冊。家のすぐ近くにこんな森があったら&管理人のお兄さんがいたらいいなぁ。みんな、いろんな思いを持って、森に入り込む。

  • 「もしかして・・・」と途中、色んなことを想像したけれど、どれも当たりませんでした。

    全体的に、いい話です。

    ボクの中では本屋大賞です。
    でも、あまり知られてません。なんでだろ?

  • フクロウも棲んでいる森の森番が、傷つき、自分の居場所を失ってしまった人たちを見守り、そして、一歩を踏み出すためにそっと背中を押してあげるという物語。誰しも傷ついたり、自分が必要とされていないと思ってしまうと、周りが見えなくなってしまうもの。それでも、こんなはずじゃなかったと何か自分ではないものに原因を求めてしまう。そして、がんじがらめになってしまい、出口が見えなくなってしまう。そんな状況にいる森に彷徨ってきた人たちに、一筋の光を思い出させる、見つけるお手伝いをする森番。
    現代にはこの森番のような人と人、人と社会を結び付けられる人がめっきり少なくなってしまった。能力主義、効率主義がうたわれ、生きにくい時代になっている。それでも、人は自分の居場所が必要なのだ。失敗してもやり直せる機会が必要なのだ。そんなことをぐるぐる考えさせられた。それは学校という社会で特に顕著になってきているように感じる。少しの間の逃げ場を作ってあげたい。森番のように、そっと見守り待つことができる人になりたい。

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著者プロフィール

乾ルカ

1970年北海道生まれ。2006年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。10年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『わたしの忘れ物』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆した。近著に『明日の僕に風が吹く』『龍神の子どもたち』がある。

「2021年 『おまえなんかに会いたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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