為吉 北町奉行所ものがたり

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 136
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536705

作品紹介・あらすじ

為吉は幼いころ呉服屋「摂津屋」の跡取り息子だったが、両親を押し込み強盗に殺されていた。その後、北町奉行所付きの中間となっていたが、ある日、両親を殺した盗賊集団・青蜥蝪の首領が捕まったとの知らせが届く。その首領の発したひと言は為吉の心に大きな波紋を広げ…。与力、見習い同心、岡っ引きなど、江戸の治安を守る"狼"達が集う庭の、悲喜交々の人間模様。そして、為吉の人生にも大きな転機が訪れる…。

感想・レビュー・書評

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  • 北町奉行所に勤める中間、同心、岡っ引きなど様々な人々のドラマを描く連作短編集。
    押し込み強盗からの生き残り、中間の為吉の成長もはさみながら進んでいく。
    複雑な心境を丁寧に細やかに描くところは宇江佐さんらしくそれでいて読みやすい。
    これからも彼らを見ていきたいと思ったが、宇江佐さんが亡くなられたという衝撃的なニュースが舞い込んだ。
    新刊はもう読めないが、今ある作品を大事に読んでいきたい。

  • 月刊ジョイ・ノベル2013年2月号、5月号、2014年11月、2015年1月号、3月号、5月号発表の6編を2015年8月に刊行。奉行所付の中間、下手人、見習同心、与力の妻、岡っ引き、下っ引きの6つの視点で奉行所仕事を味わい深く語るところが良かったです。もう宇江佐さんの新作が読めないと思うと、とても残念です。

  • 2023年5月21日
    与力の妻あさ
    が良かった。

  •  宇江佐真理「為吉」、北町奉行所ものがたり、2015.8発行。奉行所付き中間為吉、下手人磯松、見習い同心一之瀬春蔵、与力の妻村井あさ、岡っ引き田蔵、下っ引き為吉の連作6話。読み応えがあります。ストーリーは私好みではありませんでしたがw。

  • 北町奉行所の中間をしている為吉は,本来なら呉服屋の摂津屋の跡取り息子。だが押し込み強盗で両親もろとも殺され,戸袋に隠れた為吉だけが助かっていた。
    事件の時に親身になってくれた同心の計らいで奉行所の中間となったのであった。
    それまでは,母親の妹,叔母のうちで厄介になっていた。叔母の夫は岡っ引きで,強欲でいじめられて育った。
    自分の働きで,食い扶持をもらうようになってから一生懸命働いた。あるとき、未解決だった多くの強盗を働いた大泥棒がお縄になった。。。

    奉行所の牢屋敷の中と外。同心や与力、お奉行,はたまたその妻たちの人間関係。
    犯人と被害者、日々起こる事件のうち外を知る為吉だった。

    宇江佐真理さんの心優しい物語は,それぞれの物語にも温かい眼差しが注がれる。。。

  • 目次
    ・奉行所付き中間 為吉
    ・下手人 磯松
    ・見習い同心 一之瀬春蔵
    ・与力の妻 村井あさ
    ・岡っ引き 田蔵
    ・下っ引き 為吉

    「北町奉行所ものがたり」となっているが、奉行所が舞台というわけではない。
    「為吉」というタイトルだが、全ての話に出ているわけではない。
    北町奉行所という組織の下っ端で働く人たちが、ゆる~く繋がった連作短編。
    しかし、あまり人と打ち解けて付き合わなかった為吉が、最後の方では恋もして、家族も出来て、人として成長しているところがいいですなあ。

    起きた事件はそれぞれ、普段は隠していた心の闇がなさしめた、後味の悪いもの。
    そんな中、「見習い同心 一之瀬春蔵」は、普段から同僚の弱みを探し回っているような嫌な奴の代表格、臨時廻り同心の神谷舎人の心のうちがとてもよかった。
    江戸の町を守るものであるという矜持。
    人を見る目は厳しくも温かい。

    「与力の妻 村井あさ」も、しみじみよかったなあ。
    男女の愛と夫婦の情。
    家族といえども、自分が気づかぬ面を持っているということ。

    「下手人 磯松」は切なかった。
    磯松には、悪い心というのはなかったのに。
    うっすらと笑みを浮かべて刑に服した磯松の人生は、幸せだったのだろうか。
    最後に笑えたから、幸せといってもいいのだろうか。

  • 宇江佐真理氏の北町奉行所物語。
    6話からなる連作短編集。

    押し込み強盗で、運よく一人だけ難を逃れた幼い為吉だったが、家は取り潰され、叔母さんの所でも、苦労しながら、中間をしてきた。
    与力、同心、岡っ引き、そしてその家族の人間模様と心の揺れ動きを、上手く描いている。

    一之瀬春蔵の見習い同心は、臨時廻り同心の神谷舎人とうまく付き合えるか悩んでいた。
    神谷のヒール役の意味を知って、本当の同心というものを知る。

    与力の妻の村井あさ。嫡男の兄が亡くなったせいで、許嫁までいたあさは、養子を迎えることになるのだが、、、、
    村井家の家族の人柄皆いい事に、微笑ましく読んでしまった。
    両親、子供達、そして、夫の愛情が、どれほど深いのかと、、、
    いつもの宇江佐氏の人情味ある描き方である。

    岡っ引き田蔵と、下っ引き為吉、、、十手を預かる家から竹次を縄付きで出さないといけなくなる。
    ここでも、人の優しさと、御上の采配の上手さを現して、ホットさせる終わり方であった。

  • もうこれも続きは読めないのねー

  • 与力、同心、中間、岡っ引きとその家族たちの連作短編集でした。苦しい環境で育ってきた人間のうち、苦労しても幸せをつかむ者と罪を犯して落ちていく者と。 冤罪、汚職、ブラック職場、いじめ、裏切りなど、江戸の世に現代をみごとに投影していて時にはどきどきして読んだ。いつの世も、まともな人間を作るには、やはり思いやりと正義が必要なのだと思った。地味な作品だけどとても味わい深くてよかった。 

  • 奉行所に働くものとその家族を描いた短編集で、
    当時の仕事ぶりがうかがえる。
    駄作が1つもない。
    やや急ぎ足なところもあったので、
    為吉がらみの話をもう少し読みたかった。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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