彼方の友へ

著者 :
  • 実業之日本社
4.31
  • (153)
  • (116)
  • (43)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 809
レビュー : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537160

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 乙女心を持つ熊系男子としてはこの表紙で既に胸キュン。柔らかくて優しくて、作り手の伝えたい気持ちが前面に出ていると思います。題名もいいですよね、会えないけれど会いたい友達など色々な意味にとれるこの言葉、とてもイイです。
    冒頭のハツおばあちゃんの回想から始まる瑞々しい乙女の一代記。大事に大事に雑誌が読まれていた美しい時代が見たこともないのに目の前に広がります。
    煌びやかな人々に気圧されて身をすくめるハツに心を痛め、必要とされていない出版の世界の中で、なんとか自分の居場所を作ろうと必死な姿に心の中で声援を送り、雑誌作りに奮闘しながら、彼方の友(読者)たちへ素晴らしいものを届けようとする姿に胸を熱くして読みました。
    過ぎ去りし日々の暖かな光は、過ぎてしまうと切なさが伴うけれど、思い出す光が有るという事は本当に幸せな事です。創作ではあるけれど、戦争前後を乗り越えてそれでも人々に色々な希望を届けたであろう出版という仕事は本当に尊いです。
    ハツが作中で書く「フルーツポンチ大同盟」読んでみたいですね。

  • はじめのうちは、朝ドラ感がすごくてうーん、、と思っていたが、半分位読み進めたあたりからすごく面白くなって引きこまれた。心に残る本です。

  • 五線譜の暗号の返事がグッとくるね。

  • 直木賞ノミネート作。戦前「乙女の友」という雑誌づくりに携わった乙女の物語ということで興味をひかれて読んでみましたが、思いがけず傑作でした。
    大和之興行社のみんな、クセが強くてとにかく魅力的。
    無学出身なりに一生懸命働く健気な主人公・波津子と、それを明るく支えてくれるハイカラな同僚の史絵里。
    美しい詩をつむぐ有賀主筆と、麗しい少女の絵を描く長谷川潤二、ゴールデンコンビと呼ばれる二人のそのカリスマ性。
    最初は受け入れてもらえなかった冴えない波津子が、「乙女の友」に抱く熱意と努力で、少しずつみんなに認められていく姿には素直に胸を打たれました。友へ、最上のものを。
    (観たことないけど)この雰囲気って朝ドラっぽいのかなぁなんて思ったり。
    順調に雑誌編集に携わっていくかと思った矢先の戦争。思想統制による雑誌の方向性でのすれ違い。出征や疎開でバラバラになってしまう仲間。空襲で瓦礫に埋もれてしまった「乙女の友」。
    フィクションでなくこういうの実際にあったことなんだと思うと、何もかもを奪っていってしまう戦争というものに無念が募る。
    しかし戦時下と戦後を乗り越え、雑誌のいのちを守り続けた現代の波津子のもとに70年のときを経てフローラゲームか届けられたシーンはとても感動した。が、欲を言えばもっともっとハッピーエンドが用意されていてほしかった……結ばれてほしかったのですが、やはりそうご都合主義にはいかないものなのですね……。

    他にも好きなシーンがたくさんあった。
    有賀主筆が、最後の日に主筆の部屋で波津子とすごすシーン。シンシアリィの意味と、まるでバトンをつなぐかのようにプレゼントしてくれた万年筆。君は歌え、という主筆の言葉。波津子にとって有賀主筆がどれだけ憧れで大切な存在なのかがひしひしと伝わってきて苦しいほどだった。
    あとは霧島美蘭が出征後の有賀に旅館で再会し、秘めていた想いをぶつけるシーン。有賀が未だ気付かずにいる愛の深さを知ってしまったが、それでも美蘭はこの瞬間は彼に愛されていて、それは確かなしあわせで。ずっと戦友のようだった二人が鎧をぬいだ、とても耽美な描写でした。
    回想から現代につながったラストで判明した事実まで含めて切なすぎる。

    「乙女の友」って、「少女の友」という実在する雑誌だったんですね。気になりすぎてデジタルデータで閲覧したのですが、本当に詩も表紙絵もため息をついてしまうほど素敵。当時の乙女たちはこの雑誌に夢中になったんだなぁと思うと歴史を垣間見た気がして感慨深かった。
    とにかく魅力にあふれる物語でした。感想をまとめてる今でさえ油断すると余韻に浸ってしまう。
    朝ドラとは言わないから、映画化、せめてスペシャルドラマ、とにかく何かしら映像でみてみたい。潤二先生の役は色白の美少年で。

  • 新聞の書評を読んで図書館にリクエストした本。
    伊吹さんの作品は初めてだったが、はまった模様…他の作品もリクエスト中。

    最初から最後まで、飽きることなく読めた。
    最後は終わらないで!と思ってしまった。

    情景が目に浮かぶ作品と評されていたが、本当にその通りだった。
    ハツさんと一緒に自分も銀座を歩けたら…と思った。
    憧れの主筆のアシスタント?になる強運はなかなかないと思うけど。

    両親、幼馴染み、上司、同僚…戦争で次々と散り散りになっていくシーンは辛かった。
    でも最後はわずかな期待がどんどん大きくなっていって…感動的だった。
    久々に本を読んで涙が出た。

    自分の仕事が知らない誰かの力になるなんて、素敵だと思う。

  • まさか戦時中の話とは思わなかった。表紙だけ見ると、明るくてポップな印象。でも中身は「男と女」臭が結構する。

    ハツは歌手になりたかったのに、後半その夢を忘れてる…まあ駅で主筆を送る時に歌ってるけども。

    ハツも利用されただけなんだけど、本当は歌手になりたかったのに、コネで好きな雑誌の編集部に入れて、ってずるいなぁと思ってしまった。こういう事って現実でもあるじゃないですか…たいして好きでもないけどコネでいい仕事をしてる人。
    まあいろいろ嫌な目にもあってるけど!

    淳二先生は美蘭のことが好きかと思ったけど、違った!騙された〜w

    私には難しくて今はよくわからないのだけど、有賀の子どもを身籠って育てることのできた美蘭と、交わることはできなかったけど心は手に入れたハツ、どっちの「勝ち」なのかな?ということ。
    どっちも勝ちではないのかな。
    戦争のせいでこうなってしまったんだもんな〜と思う反面、戦争がなかったら有賀とハツは出会うことが無かっただろうし…うーん。

    戦争ものの作品を読むたび思うけど、この時代を生きた人達すごい。
    それも雰囲気に流されず、「戦争は醜い」という事を言いながら生きていった人達は勇気があってすごい。
    この小説のなかでは、「みんな本心は違っても、「お国のために」って言ってるだけだ」って言ってる感じがしたけど、実際は何も考えずに洗脳されてただけの人が多かったと思うけどなー。
    そういうバカがいるから世の中最悪なんだけど。
    バカがいるから回ってる部分もあるけど。

    現代も命は使い捨てにされやすいけど、戦時中はもっと酷かっただろうから、嫌だな。

    この小説も、戦争反対と謳いながらも、ちょっとだけ戦争を美化している風に感じてしまった。
    本当にちょっとだけ。

  • 良かった

  • 戦争関連、得意じゃないんだけどな…と思って読んだけれども、戦争に向かう中で文学と人々が揺れ動く様子に現代の自由をしっかり享受しているかどうか考えさせられた。

  • 昭和12年から20年にかけての激動の時代
    読んでいると胸が苦しくなるがそれでも避けては通れぬ。

    興味深い登場人物が
    その時代の背景をよりリアルに。

    女性にとっては感涙のラブストーリーだと思うが
    はてして男性の感想はいかに?

  • 昭和初期の少女向け雑誌の編集者たちの物語。
    戦局が進むに連れ、散り散りになるメンバーと衰退していく紙面。
    編集者たちの情熱と、70年かけて明らかになる真実。
    直木賞候補作ですが、個人的には受賞作よりこちらのほうが面白かった。

全158件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

彼方の友へのその他の作品

彼方の友へ Kindle版 彼方の友へ 伊吹有喜

伊吹有喜の作品

ツイートする