- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408537160
感想・レビュー・書評
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最短の恋文・・・哀しくて切なくて胸がギュッと鷲掴みにされた感覚。
一冊の雑誌を作りあげる友たちの夢や希望が一杯で、あの時代を如何に輝き生きて行くか。戦争が夢や希望、人への想いも焼き尽くす。
それでも、また這い上がり手に手を取り、また作りあげる友たち。
有賀の・・・純司の・・・ハツの・・・史絵里の・・・美蘭の・・・若き友たちの生き様がギュッと胸を掴んで離さない。
この涙は悔し涙。戦争が悔しい。それぞれの純粋な想いが眩しい。
感動ではなくて、ただ悔しいんです。悔し涙が止まらない作品は初めてです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
涙あり、笑いあり。もっともっとこの世界に、浸っていたかった。
2018年読んだ本のなかで、BEST1!
文中、空井先生がハツさんに、小説を書くコツ(登場人物について紹介文(思いつくことすべて)を書いてみる。そしてストーリーの起承転結。)を語っているが、たぶん伊吹さんが普段心がけておられることなのだろう。
佐倉ハツ(波津子)さん、有賀(憲一郎)主事、長谷川純司先生、佐藤史絵里さん、萩野紘青先生、霧島美蘭さん、上里編集長、結城房江先生… 登場人物一人一人が活き活きと描かれていて、皆みんな素敵!
そして、しっかり構成されたなかでの、エピローグ。涙せずにはいられない。
Sincerely yours
追伸
多くの人に読んで欲しいから、本屋大賞をとってほしい。しかし、本屋大賞は毎年12/1~翌年11/30に刊行された本が対象らしく(本書20017/11/25発行)もしかして昨年度の対象だった? だとしたら、時期が微妙に損してる(-_-) -
あまり期待せず読み始めたのに
まあ、すっかり引き込まれてしまいました
初めての作家さんです
昭和を駆け抜けた一人の乙女
雑誌作りに携わった人々の情熱
暗部に潜む人
そして現在
とても心に残りました
≪ 最上のものを友へと灯をかかげ ≫ -
美しい意匠の少女のための雑誌「乙女の友」。
「友へ、最上のものを」を掲げて、戦時下の日本で、多くの規制の元、雑誌を作り続けた編集者達の物語。
余韻に浸っていたくて、一気に2度読みました。
なんという素敵なお話。
なんという切ないお話。
編集部の面々の「乙女の友」に向かう姿勢、熱意に胸が熱くなりました。
有賀主筆が「フルーツポンチ同盟」を代原に決めたシーンなど、ドキドキが止まらない場面に何度も遭遇しました。
この時代でなかったら、波津子は有賀主筆の言葉を聞くことが出来たのでしょうか。
60年の時を超えて、ようやく思いを遂げられた波津子。
あー切ない。
もしかしたら、まだまだ読み込み切れてないところもあるのかも。
今年何度も読み返したい本ナンバー1になりました。
2019/02/17
再読にも関わらず、読後にその世界から現実に戻るのに時間が掛かるほど、のめり込んで読みました。ずっと憧れていた少女雑誌『乙女の友』編集部で働けることになった波津子の成長物語、とまとめてしまうには惜しいほど、中身が濃く、素敵なお話です。有賀主筆の掲げた『友へ、最上のものを』と言う思いが、厳しくなる時局の中でも貫き通され、そのまま乙女主筆がその意思を継いでいく。そんな素敵な雑誌があったことが素晴らしいと思います。どの場面でも、グッとくるシーンがありますが、今回もやはり「フルーツポンチ同盟」の代原のシーンには震えました。 そして、波津子と純司が有賀主筆を見送るシーン、ラストの五線譜のシーンでは、涙が止まりませんでした。 大好きな作品はたくさんありますが、もしかしたら私のベスト1かもしれません。 それぐらい好きな作品。 多くの人に手に取ってもらいたい作品だと思います。
2021/11/02
再々読。 また開こうと思った時から、ずっと胸踊った本、大好きな作品です。 戦前戦時下に「友へ、最上のものを」という志で作り続けられた『乙女の友』。 一ファンから編集部の人間となった波津子、叡智の人有賀主筆、才能の人純司、その他魅力的な登場人物に魅了されます。 この時代の市井の人達の暮らしは、希望と絶望が紙一重で、今回も胸をすくような展開に涙し、胸をかきむしられるような悲しみ、切なさに涙しました。 東京ラプソディー、フルーツポンチ同盟、空井先生、駅での見送り、日章旗のメッセージ・・・また涙です。
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個人的に、現時点で今年読んだ本のベスト。
明治の終わりから昭和30年にかけて刊行された月刊誌「少女の友」をモチーフに、戦前~戦後の混乱期に「乙女の友」の編集者が出版にかけた情熱を描く。
「友よ、最上のものを」という標語は、そのまま編集に携わった者の姿勢であり、困難な時代を生き抜くよりどころだった。
こんな雑誌が70年以上も前の我が国にあったことを奇跡といわずしてなんと言えば良いのか。
本書の出版が「少女の友」の出版元である実業之日本社であり、本書がその創業120周年記念作品であることは、本書をさらに味わい深くしている。 -
雑誌「乙女の友」が大好きだった波津子は、憧れの有賀主筆の元で、「乙女の友」の雑誌作りに携わるようになる。女性一人の職場ということで、お仕事小説でもあり、恋愛もあり、戦争という要素もあり、とても楽しく読み進めた。「友へ、最上のものを」戦時中、紙の枚数や内容が制限される中、なんとか読者たちにいいものを提供しようと奮闘する有賀たちの思いに胸が熱くなった。また、人々の秘めた恋心が、戦争で断ち切られてしまうたびに切なくなった。純司と共に有賀を見送るシーンが悲しい。音符に思いを託すなんて奥ゆかしくてもどかしい。
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順風満帆なときに読んだ本って、意外と覚えていないものだったりする。
苦しいとき、哀しいとき、なんとなく心が満たされないときにそっと寄り添ってくれたり、思いがけず出会っておおきな発見をもたらしてくれた読み物は、本当に深く記憶に刻まれている。
どんな時でも静かに、忠実にいてくれる読み物は、人が生きていくうえで必要だし、大切にしたいもの。思う存分書籍に没頭できるこの平和な時間を、ありがたく思う。
もう一つ大切にしたいのが、日本語という美しい言語。私も、端くれながら英語を日本語に直す仕事をしているが、ひらがな、カタカナ、漢字、これだけ豊富に組み合わせて表現できる言葉は日本語だけだと思う。あえて「かな」にひらいてやわらかさを出したり、強さを出すために難しい漢字を使ったり、主語や目的語をぼかして想像にゆだねたりと、さまざまな表現ができる日本語は本当に面白い。この言葉を母国語として生きていることに、誇りを持ちたい。そして、美しくて簡易な表現ですっと頭に入ってくる文章を、これからも追い求めていこうと思う。 -
図書館で借りたもの。
昭和初期、戦前~戦中の激動の時代、『乙女の友』を作るのに心血をそそいだ波津子たちの物語。
本作は、竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)の存在に、著者が心を動かされたことから生まれたました。
(出版社HPより)
すでに戦闘状態だった日本では、情報統制や紙の不足から、自由に作りたいものを作ることが難しくなっていった。
空襲の描写は、目を背けたくなるほどひどかった。
そんな中でも有賀主筆や波津子たちは、「彼方の友へ」向けて雑誌作りを続けた。
明かされなかったところもあったけど、最後はいろいろ繋がって涙が止まらなかった。
久しぶりにこんなに続きが気になる本に出会えた! -
ハツの病気の母親を支えてがんばろうという気持ちとあこがれの「乙女の友」の編集室で働くことが素直な形で結晶していく.魅力的な有賀主筆,雑誌の顔とも言える長谷川純司,友人となる史絵里など登場人物が暗い時代の中で生き生きと輝いている.
ハツが有賀に薫陶を受けて編集から作家へとそして主筆へ進んでいくお仕事小説でもあり,戦争の理不尽さを訴えてもいて,何より芸術文化の香りのする格調高い物語だ, -
「友へ、最上のものを」
有賀さんはすごい人だな、ハツさんと同じようにお慕いします。何があっても自分が最上だと思うものを選べる人になりたい。
贅沢は敵だとか家庭で使うものまで供出しないとダメなんて、そこからして無謀なことだったのだと、今なら大きな声で言える。でも、当時はどこかでそう感じていても言えなかったのだろうなぁとも思う。未来のある若者まで駆り出してまで、何を得たかったのか。得るものなんて何もなかったはず。どこで亡くなったのかもわからないような事態を二度とおこしたくない。
そんな時代に『乙女の友』を出し続けたことは、意味があったのだろう。
今、この物語が紡がれた意味を考えたい。
ハツさん、頑張って生きて良かったね。胸がふるえました。