彼方の友へ

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 809
レビュー : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537160

感想・レビュー・書評

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  • NHKの朝ドラ、始まってすぐ戦争の気配がすると、さっそく悲しくなる。
    この時代設定、戦争が避けられない。
    うわーんって泣きたくなる。
    暗い時代があっても、カーネーションもごちそうさんも大好きな朝ドラ。

    そんな朝ドラに似た感動。この本も大好きな本になった。
    直木賞、とってほしいな。

  • 伊吹さんの新刊、楽しみにしていました。出版社で働いていたことがあるので、編集者ネタの物語はツボなのですが、とても心に響きました。
    こちらは昭和初期の時代設定で、まだ言論統制や物資が豊かではなかった頃ですが、気に入った部分を切り取ったり、付録に心惹かれる女の子の心は今も昔も変わらないのだと思いました。

  • 老養施設で暮らすハツのもとへ、懐かしい小箱が届く。
    呼び覚まされた淡い記憶をたどり、物語の時間は巻き戻って、舞台は昭和初期、戦前の東京へとうつる。

    父親が失踪し、病弱な母親を抱えて、女中をしながら歌の勉強を続けていた波津子は、雇い主の引っ越しを機に職を失う。

    学はないが前向きでひたむきな少女に紹介された新しい仕事は、憧れの少女雑誌『乙女の友』の雑用係。
    美しい挿絵、胸を焦がす詩編、最上のものを全国の「友」に届ける仕事に、波津子は臆しながらも突き進んでいく。

    彼女の懸命でまっすぐな姿は清々しく、読んでいて楽しい。波津子だけではなく、すべての登場人物が魅力的で、心に残る。ほんのちょっと脇役で出てきた少年さえ、好もしい。

    テレビもなく物流も整っていなかった時代、女であるというだけで侮られ軽んじられた時代、少女雑誌はどれほど全国の少女の憧れで、きらきらした心ときめく存在であったのだろう、と思った。
    そしてそういった雑誌を作り上げること、届けることに、関わった人たちはどれほどの矜持があったのだろう、とも。

    日本は次第に軍国主義へと傾き、富国強兵を謳った戦争がはじまる。
    男たちは兵隊にとられ、贅沢は敵だとされ、美しい物を愛でることは悪とされ、好きなものを好きだと言えば虐げられる、恐ろしい時代へと進んでいく。
    その息詰まるような辛さが、『乙女の友』の目指す世界とあまりにも対照的で、胸にしみて痛い。

    読んでいてどうしようもなく涙が出た。
    なんて愚かで切ない時代だったんだろう。
    だけどこの時代があったからこそ、今自分が生きている時代があるのだと思う。

    いくつかの別れのシーンが特に印象的だった。

    伝わらないとわかっていて口にされるスイートハートという言葉、拳を三回つきあげる再会を願う合図、行進の中でそこだけほころんだ口元、アニーローリーの歌声。
    大仰に別れを告げるのではない、けれどだからこそ切なさが胸を打つ。

    物語としてはきれいすぎるのかもしれない。本当の戦時中はもっともっと殺伐としていたのかもしれない。

    波津子の眼を通した世界はどれほど凄惨であってもどこかに希望があり、でもだからこそ読んでいて胸をうたれる。二度とこんな時代、こんな国にはなりたくないと思わされる。

    最後の「彼方の友へ」でまた泣いてしまった。
    切なくて切なくて美しい物語だった。

  • +++
    「友よ、最上のものを」
    戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
    平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
    「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
    そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
    戦前、戦中、戦後という激動の時代に、情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。

    実業之日本社創業120周年記念作品
    本作は、竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)の存在に、著者が心を動かされたことから生まれました。
    +++

    現在の佐倉波津子は高齢者施設で夢と現を行き来するような日々を送っている。傍からは、何も考えていないように見えるかもしれないが、頭の中には、来し方のあれこれが渦巻いていて忙しい。そんな波津子が駆け抜けてきた人生が彼女の目線で繰り広げられている。時折現在の様子に立ち戻るとき、そのギャップは人の老いというものを思い知らされるが、頭の中は存外誰でも活き活きしているのかもしれないとも思わされて、勇気づけられもする。そんな波津子の元へ、あのころの思い出の品とともに、関わって来た人たちとゆかりのある若い人たちが訪れ、話を聴きたいと言いう。積年の想いも報われ、波津子と「乙女の友」に関わった人たちの生き様が語り継がれることになるのである。ラスト三分の一は、ことに、涙が止めどなく、あふれるままに読み進んだ。外で読むには向かないが、中味がぎっしり詰まった読み応えのある一冊である。

  • 時代に翻弄されながらも「友へ、最上のものを」届けようとする雑誌編集者。主筆がかっこいい。熱い思いに、胸の中がふつふつとしてくる。読み終えてすぐ、人に興奮を伝えたくなる。
    一方的な憧れから、二人の思いが重なっていくのが追えなかった。あと、書籍の天面(?)の裁断が不揃いなのは仕様ですか?

  • 戦争の足音が忍び寄る中でも懸命に、読み手の「友」の少女達に向けて雑誌を作り続けた人達の物語。

    少女雑誌を読んで、その文章に憧れ美しい絵に夢を見る。そんなささやかな自由さえ満足に叶わず、規制されていく世の中。
    やるせなさや、どうにもならない歯痒さを感じながらも物語の中に終始流れるのは人々の希望と、願い、そして祈り。

    思いが届きますように。
    どうか無事で帰ってきますように。

    どこかでその雑誌を心から待っている人達に。
    戦地へ赴く大切な人達に。
    どうかどうか届きますように。

    読んでいてそんな切実な思いが伝わってきて、何度も涙が出そうになった。

    「ディア波津子、シンシアリテイ、ユアズ」の有賀の言葉には、やられた。
    胸がいっぱいになる。最後の最後にそれはずるいよ。
    波津子の秘めた思いは、確かに彼に届いてたんだ。
    出来れば再会して、電話口で言った「ずっと伝えられずにいたこと」のその先を聞きたかったけど。
    でもそう思ってしまうのは野暮なんだろうな。
    最短の恋文。これ以上に彼の思いを伝える言葉は、きっと存在しないから。

  • ここにレビューを書こうと思うだけで涙が出る。
    間違いなく今年いや近年でも一番良かった作品。
    小さい頃「なかよし」「りぼん」の付録や切抜きをきれいなクッキー缶に大事にしまってた。女の子だもの。きれいでかわいいもの大好き。

    「友よ、最上のものを」
    このことばは一生大切なことばになると思う。
    わたしの大切な友にこの本を贈ろう。

  • これまでの伊吹有喜さんの著作もとても好きですが、それらとは一線を画す現時点での代表作だと思います。著者のご経験が、またとない題材に巡り合い、最高の形で昇華し、この物語に結実したのでしょう。映像や音が浮かぶよう、 軽やかなのに力強い! ワクワクと読み進みました♪ 伊吹ファンにはぜひ! 少女雑誌ファン、少女漫画ファンだった方にもぜひぜひ!

  • 愛と知性と感性が、情熱によってカタチになって、時代を越えて受け継がれていく。
    本物とは、そういうものなのでしょうね。

    映像化して欲しい
    ハッちゃんは、松岡茉優さんかなぁ

  • 想いを伝えるということ、想いを込めてブレることなく継続していくということ。そこには自らの意志だけでは動かせない事案を手を取り合って支えていく仲間がいるということでもある。

    『乙女の友』その名の通り、全国の少女たちに夢や憧れを発信している雑誌。幼馴染みからこっそりと手渡される試し刷りの付録のカードはいつだってハツの傍らにあった。「フローラ・ゲーム」なるカードセットは物語の中でも関わるひとびとを動かしている。
    ハツ(波津子)が恋してやまない『乙女の友』の編集部で働き始めた昭和12年から20年の終戦まで、波津子が体験したひとつひとつに一喜一憂する。
    思春期の羞恥心、卑下、自己嫌悪。一方で若さからの突っ走りや突然の行動にオトナを唖然とさせたり。仄かな想いだって、ある。

    初めは邪険にしていた有賀主筆は波津子を一人前の編集者に育てあげ、去って行った。遠い遠いところへ。

    有賀主筆が担げる「友へ、最上のものを」。戦時下でモノもなく華美さを責められる少女たちへ、僅かばかりでも出来得る限りの心の豊かさはちゃんと「友」へ届いていたはず。だからこその美しき付録の数々が生まれていたのだから。


    戦争は大事にしていたものことを奪っていった。
    でも遺るものも、ある。
    ひとが生きている、生きていこうと決めた時から、もう次の世界が始まっている。
    懸命に遺してきたから時代は変わっても見劣りしない。

    この1冊を誰に手渡そうか。
    お気に入りの包装紙かな、それとも手作りのカバーをつけようかな。

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著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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