彼方の友へ

著者 :
  • 実業之日本社
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レビュー : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537160

感想・レビュー・書評

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  • どうして☆は5つまでしかないのだろう…。

    日本中の少女たちの憧れの雑誌【乙女の友】
    どんなにひもじくても、どれほど現実が厳しくとも、
    紙面を眺めるひとときだけは、夢を見させてあげたい。
    バラやスミレの絵に、胸をときめかせてあげたい。
    こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を──
    その信念のもと【乙女の友】を出版し続けた有賀と純司、そして波津子たちの物語。

    この気持ちをどう表現したらいいのか、もどかしくてたまらない。
    いくら書いても書き尽くせない、胸にしみる場面ばかりだった。

    貧しくて買うことはできないが、【乙女の友】の切り抜きは波津子の宝物。
    その編集室に雑用係として働くことになった波津子。
    ついたての向こうには、憧れてやまない有賀主筆がいる。

    出征する有賀を見送る波津子の歌声。
    とこしえまで こころかえじ…
    「アニーローリー」の美しい旋律とせつない歌詞。
    有賀のやさしいまなざし…

    武運長久を願う旗の四隅に書いた、五線譜の音符のメッセージ。
    伝えたかった言葉。

    ただ一度だけの電話…
    想いを伝えたら、その人はきっと自分を待つ、だから──
    生きて帰れたら、まさきくあらばその時は───

    日章旗に大事に包まれていた「フローラ・ゲーム」
    そこにはいっていたものは…
    七十年以上の年月を経て、やっと伝えることができた想い…
    たった一言を伝えることが、こんなにも難しくて、また尊いなんて…
    泣いた、ぼろぼろ泣いた。

    そして、暗がりの中に光を灯す存在でありたいと、美しい絵を描き続けた純司。
    彼が柩に納めてくれと頼んだマフラーと、飼い猫の名前が代々「シュクル」だったと知ったとき、
    秘め続けた恋心に、また涙がこぼれた。


    明治神宮外苑競技場、学徒出陣のための壮行会。
    降りしきる冷たい雨の中を、泥を跳ね上げ行進していく学生たち。
    徴兵免除は、まず文科系の学生たちから外されたという。
    作家を夢見ていた方もおられたでしょう。
    戦争がなければ、書かれたはずの素晴らしい物語もあったかもしれない。

    端切れの布で作った髪飾りが咎められ、少女の夢が踏みにじられる。
    そうしたささやかな喜びが許されない時代。
    美しい物を美しいと言えない時代。
    あまりに悲しい…

    『なかよし』や『りぼん』の付録や切り抜き、千代紙、おもちゃの指輪、きれいなペーパーナプキン、リボン、可愛い絵の鉛筆、香りのする消しゴム、
    クッキー缶の中に入れていた宝物たちがよみがえってくる。

    そして、自分がどれだけ恵まれた時代に生きているかをかみしめた。
    あの繰り返してはならない時代があって、今の私たちはここにいる。

    読み終えて、本を両手でぎゅっと抱きしめた。
    Dear friends──Sincerely yours──
    「友へ、最上のものを」
    この本は、伊吹有喜さん、そして有賀、純司、波津子たちから届けられた最上の贈り物。
    私もまた”彼方の友”のひとりになれたことが嬉しくてたまらない。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      これはまたすごく熱のこもったレビューだね♪素晴らしい。
      私は純司先生のことばかり覚えていてお恥ずかしい(〃...
      こんばんは(^-^)/

      これはまたすごく熱のこもったレビューだね♪素晴らしい。
      私は純司先生のことばかり覚えていてお恥ずかしい(〃ノωノ)

      私たちも乙女だよね(⁎˃ᴗ˂⁎)
      2018/05/29
    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~♪

      コメントありがとうね!!
      なんだかお話するのすごく久しぶりだよね♪

      この本、もうね、たまらなく好き...
      けいちゃん、こんばんは~♪

      コメントありがとうね!!
      なんだかお話するのすごく久しぶりだよね♪

      この本、もうね、たまらなく好き!!
      元々感激しやすい性格なものだから、感想もものすごくチカラが入ってしまったの。
      読み返すと妙に恥ずかしいです。
      そんな風に言ってもらえてとても嬉しい(#^^#)

      純司先生、素敵だよね~♡
      報われることのない恋心が切なかった…

      有賀主筆と純司先生、脳内で勝手にキャスティングして楽しんでたわ。
      映像化されたら素敵よね~(きっとまたブツブツ言ってしまいそうだけど・笑)

      そうそう、私たちも乙女よね~♡
      可愛いモノに目がなくて、少女趣味のまま大人になってしまった…と思ったりもするけど、
      最近はそれもいいのかなって思えるようになった(^_-)-☆
      開き直り?(笑)
      2018/05/30
    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      読んだことわかるように、ひとことコメントして自分のは自分で消すしかないんだね。私のは削除しました。
      よろし...
      こんばんは(^-^)/

      読んだことわかるように、ひとことコメントして自分のは自分で消すしかないんだね。私のは削除しました。
      よろしくお願いします!
      2018/06/08
  • 「友よ、最上のものを」
    戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――

    老人ホームでひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が届く。「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」それは大切な想い出の品。
    フローラ・ゲームを私に届けてくださったのはどなた…
    波津子は思い出す、あの愛する人たちと生きた熱い激動の時代を。

    戦時中に雑誌を作るという事はどれだけ大変だったのだろう。書きたいことが書けず、描きたいものが描けず、さらには紙までなくなっていく…
    それでも、有賀も純司もいつでも心はひとつ「友へ、最上のものを」。今こそ必要な記事や作品、そして素敵な付録を。彼らの情熱が伝わってきてグッとくる。

    戦後、みんなどうなったのか不安でどんどん読み進める。みんな生きていて、戻ってきて!と祈りながらページを捲る。

    エピローグ。70年後に語られる真実、届いたもの、そしてそこに書かれた想い。嬉しくて切なくて…。いい読書ができました。

    言霊の話は、前も何かの本で読んだけどやっぱりいいなぁ。言葉の持つ力、五十の音色、日本語の美しさを感じた。
    「ま幸くありこそ」

    私も乙女に戻って『乙女の友』を読んでみたい。そして純司先生におしたいしておりますとお手紙を送りたい。

    しかし、波津子さん、乙女が鼻毛は…(笑)

    • nejidonさん
      けいたんさん、こんにちは♪
      とっても面白そうな本ですね!
      滅多に小説は読まないのですが、読んでみたくなりました。
      これって、フィクショ...
      けいたんさん、こんにちは♪
      とっても面白そうな本ですね!
      滅多に小説は読まないのですが、読んでみたくなりました。
      これって、フィクションですか?もしやまさかのノンフィクション?
      実話だったら本当に素敵なお話ですね。
      ごめんなさいね、基本情報さえ知らなくてコメントしてます。
      70年後に何が明らかにされたのでしょう?
      ああ、とっても興味があります!
      2018/01/25
    • けいたんさん
      nejidonさんへ♪

      いつもありがとうございます(^-^)/
      最近感想がなかなか書けずムムムになっていたのでこんな風にコメントも...
      nejidonさんへ♪

      いつもありがとうございます(^-^)/
      最近感想がなかなか書けずムムムになっていたのでこんな風にコメントもらえて励みになります!
      nejidonさんはいつも素敵な文章を書いていて尊敬です(⁎˃ᴗ˂⁎)
      たくさんの思いが込められている文章ですよね。

      この作品はフィクションだと思います。
      「少女の友」という雑誌がモデルではあるらしいですけど。
      「少女の友」ネットで調べたら懐かしい雰囲気の表紙でした(*≧艸≦)
      きっと戦時中は苦労して作られたのでしょうね。
      何も知らないことを教えあうのがコメントのいいところですよ♪とても楽しいですよ。
      70年後に誰が訪ねてきたのかが明らかになった時色んな思いが胸によぎりました。
      いつか機会があったらぜひ読んでみてください。
      2018/01/27
  • 男の私が言うのもなんですが、これはオススメの本ですね! 一世を風靡した少女向け雑誌が好きな不器用な女の子が はからずも発行する会社に勤めるようになり更には主筆にまでなってしまう。今は卒寿を迎えた彼女 ハツさんだが彼女を育てた前主筆こそ密かに想い続けた人で、戦時 消息が不明になったまま。昭和12年から20年のハツさんの暮らしが走馬灯のように流れて、大空襲から終戦で全てが無に帰す部分は「この世界の片隅に」や「流れる星は生きている」などが連想された。
    そして最後に 老いた彼女に面談を申し入れた若者とのやりとりでハツさんにも読者にも全てが明らかになる仕掛け!「彼方の友へ」は「かなたの ともへ」なのでした。

  • 卒寿を越えて新しい記憶はすぐに薄れていくのに、必死で生きてきたあの頃の記憶だけは薄れることはない。

    戦中の東京、『乙女の友』編集部で少女雑誌をつくる波津子は、給仕から始まり編集者見習い、編集者兼執筆者と徐々に雑誌づくりにのめり込んでいく。
    敬愛するあの人の斜め後ろに立ち雑誌づくりのイロハを教わる。
    あの人が掲げた標語「友へ、最上のものを」を胸に。
    戦中どんなに過酷な状況にあろうとも、そこに読み物や絵があれば虚しい気持ちもなぐさめられる。
    だから次号の発行を待つ「彼方の友」へ向けて最上のものを届ける!
    固い絆で結ばれた仲間達の奮闘ぶりに涙が出た。
    どんな時でもプロ意識を捨てない彼らを誇りに思う。
    単なる娯楽ではない、「読み物」の存在の有り難さが身に染みる。
    そして波津子の願いが叶って本当に良かった。
    あの時代の「友」が築き上げた情熱は、更に大きくなって今の時代の「友」へとしっかり伝えられた。

    是非とも映画化してほしい。
    それにしても、何故この作品が本屋大賞候補にノミネートされなかったのか不思議…。

  • 「卒寿を越えて新しい記憶はすぐに薄れていくのに、必死で生きてきたあの頃の記憶だけは薄れることはない」で始まる本作。

    主人公の佐倉波津子、ハッちゃんは母と近い年齢。遠住みの母とは残念ながらしみじみと語ったことはない。母の過ごした時代に想いを馳せる。

    地味で無垢なハッちゃんにすっかり魅せられてしまった。こんな人が身近に居たら百人力だろう。学歴がないのをコンプレックスに感じているハツが「乙女の友」編集部の中で迷い悩み苦しみながら、自らの才能を開花させていく。傍らで彼女に編集のノウハウを教える有賀主筆、純司先生、上里さん、美蘭さん、史絵里さん。登場人物がそれぞれに魅力的だった。

    美しいものや遊び感覚が抑圧されるとは大きな危険をはらんでいると気づかされた。

    『子供から大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる。やがて清濁併せ呑まねばならぬ大人になったとき、その美しい想い出はどれほど心をなぐさめ、気持ちを支えることになるだろうか』。美しさを必要としているのは少女ばかりではない。そして雑誌も小説も詩も音楽も、生活というものさえも、美しさを求めることは悪ではない。

    戦時色が濃くなり価値感は強要されていくが、それでも、彼女たちは「乙女の友」を待つ全国の少女たちに向け、「最上のもの」を届けるという使命を守り続けた。


    万葉集にある柿本人麻呂の一首を引いてあった。 

    磯城島(しきしま)の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸(さき)くありこそ(日本の国は言葉の力が人を助ける国だ。だから私はあなたに申し上げます。どうかご無事でありますように)

    「言葉には魂が宿る。良きにせよ、悪気にせよ、口に出した言葉には力があり、物事はその通りになるという考え方だ。だから縁起の悪い言葉は言わない方が良いと僕らの先達は考えた」と有賀が語った言葉も、この時代だからこそ光る。

    美蘭のような愛し方もあって良いのだ。だからこそ命は繋がれたのだから・・・。


    疑問は有賀主筆の任務は何だったのか?たぶん憲兵隊のような仕事をさせられたのだろう。

    終章で明かされるハツの五線譜の暗号による告白と彼が亡くなり届いた有賀からの短い手紙。

    泣けるモノと喧伝される作品には手を出さない私が素直に泣かされました。

    読んでる間彼らと過ごせる時間がたまらなく愛おしく感じらた本作です!

  • 「少女の友」の中原淳一さんの絵はとても素敵だ大好き。
    クリアファイル、ポストカード、いろいろ持ってます。
    最初そういうこと知らずに読んでたのだけれど、
    「少女の友」がモデルになっていると知って納得。
    そして面白さ倍増。

    小学校しか出ていないハツの健気さと
    自信のなさがちょっとかわいそうになるくらいで、
    力になってあげたいと思ったけれど
    小間使いから編集者になって作家になってと
    ハツは「友」の希望になっていったのだと思うと、
    弱いだけでないのだなと思った。

    この物語は、戦争の波に飲み込まれる
    多くの人達の悲しさと強さを表し
    そして、言葉を大切にしていた時代の人達の
    それぞれの愛が籠っている。

    私には到底できない所業だけれど、
    桐島美蘭のように愛する人に迫ることができたからこそ、
    命が繋がったと言える。
    しかしながら、私の共感を得るのは、何といっても
    ハツの五線譜の暗号による告白と
    亡くなって70年たって届く有島からの恋文。
    それも、ハツにしか理解できないとなると
    これ以上のどストライクはないのです。
    あー、でも、この恋文も桐島美蘭が命をつないだから
    ハツのもとにとどいたんだよなぁ。。

    伊吹さん、素晴らしい。
    どうやって選ぶのかは知らないけれど
    私なら直木賞だよ。

    「この国の言葉はこよなく美しく、そして魂は宿ると言われている。言霊というんだ」
    この美しい言葉の魂ははきっと繋がっていくと信じたい。

    ★磯城島の、大和の国は言霊の助くる国ぞ ま幸(まさき)くありこそ 柿本人麻呂

    といううたもでてくるのですが、
    柿本人麻呂って、いろんなとこでちょくちょく顔だすよね。

  • 「乙女の友」は昭和、戦中戦後を通して発行され続けた少女向けの雑誌。その出版社で、小間使いとして雇われた佐倉波津子。「乙女の友」を深く愛し、勉強を重ね、次第に有賀憲一郎主筆の信頼を得て行く。「フルーツポンチ大同盟」というユーモア小説が暗い時代に密かに少女たちの協賛を得る。戦争が激化するなか、ついに主筆になった波津子。過酷な時代に押しつぶされそうになりながらも読者である一人一人の「彼方の友」へ届けたい。そのともしびを消すまいと戦った人たちの物語。
    戦争がそれぞれの人生を捻じ曲げていくが、そのことが不思議な運命を呼び寄せる。ある時、卒寿となった波津子のもとに突然訪れたものは・・・。最後に運命の糸がほどけてゆく。
    吉屋信子の小説と中原淳一の挿絵で一世風靡した「少女の友」を彷彿とさせる物語。波津子の健気な様子や、登場人物のことば遣いもレトロな少女小説の雰囲気を漂わせます。あちこちに散りばめられた秘密。ロマンスも純愛と激情。秘密や別れや愛情を、ときにさりげなく漂わせる描き方に、心地よい感動を覚えました。最後の謎解きは、待ちきれずに一気に読みました。

  • 戦前、戦中の雑誌社の感動の物語。
    最後に佐倉波津子に届いたカードを包んでいた紙に書かれた音符に感動しました。
    余韻の残る小説です。
    原稿が出来上がるのを待っているなど空き時間を「マチ」と言う便利な言葉も印象に残った。

  • 少女向け雑誌を作り続けた人々の物語。
    卒寿を迎えるハツが昭和12年からを回想をする。

    その雑誌の付録で大人気だったフローラ・ゲームが物語のキーとなりラストで感動!
    女性が置かれた厳しい立場に対する有賀主筆の言葉が良く、戦中でもいつもポジティブなハツに元気をもらいました。
    登場人物が魅力的だからなのか、テンポが良いからなのかドラマを見ている様に映像が浮かびます。ドラマ好きなので星5としました。

  • 最短の恋文・・・哀しくて切なくて胸がギュッと鷲掴みにされた感覚。

    一冊の雑誌を作りあげる友たちの夢や希望が一杯で、あの時代を如何に輝き生きて行くか。戦争が夢や希望、人への想いも焼き尽くす。

    それでも、また這い上がり手に手を取り、また作りあげる友たち。

    有賀の・・・純司の・・・ハツの・・・史絵里の・・・美蘭の・・・若き友たちの生き様がギュッと胸を掴んで離さない。

    この涙は悔し涙。戦争が悔しい。それぞれの純粋な想いが眩しい。
    感動ではなくて、ただ悔しいんです。悔し涙が止まらない作品は初めてです。

著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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