フーガはユーガ

著者 :
  • 実業之日本社
4.19
  • (15)
  • (14)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 539
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537320

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 双子の、切なくて、苦しくて、悲しいけれど、優しい、物語(不思議風味)
    読み終わった後、タイトルが「ユーガはフーガ」じゃない意味を考える。
    この世界には、理不尽や無意味な暴力が子供たちの周りにあふれていて。それにさらされながらも無事に生き伸びていくってのはもしかするとものすごく大変なことなのかも、って思ってしまう。
    そういう大変なことを、これは本当に大変なことなんだよと伊坂さんの小説はいつも教えてくれる。じめじめさせずに、軽やかに。
    その軽やかさの後ろにある苦痛を、きっと伊坂さん自身が敏感に感じてしまっているんだろうな、と思ったり。
    いろいろ語りたいことはあるけれど、ネタバレになってしまうので一言だけ。
    「俺の弟は、俺よりも結構、元気だよ」ほんと、そうなんだよ。

  • 伊坂さんは嗜虐主義者をよく登場させる。それを楽しんで出しているのではなく、面白いから出しているのではなく、その存在を許しているのではなく、許せないし何も面白くはないのに存在していることを憎んで恨んで登場させる。それを読んでいるこちら側は、胸糞悪い気持ちにはなるが、伊坂さんがそういう気持ちで書いているものだということがちゃんと伝わってくるから、必ず倒してくれると絶対的な信頼があるから、救いがあるとわかっているから、だからこそ安心して読める。
    伊坂さんの本の登場人物は、親が異常者ででも子供は親を選べないよね、みたいなのがたまにある。のは、伊坂さんのバックボーンに関係するのか?とかんぐっては見るけれど、上司の話を聞くと少なくとも今は幸せそうなようで、ならまぁいいか、と思う。
    ただ、伊坂さん。ワルモンは殺してもいいけど、イイモンはぜひ末永く生かして欲しいなぁ。

  • 特殊能力を持つ双子、優我と風我をめぐるSF的設定の小説。物語運びが巧いの一言に尽きるのだが、さすがにそろそろ伊坂さんの小説のクセが分かってきて、あ、これ伏線だな、と思ったポイントがそのまま回収されるので、驚くよりも、やっぱりな、と思うところが多い。しかしそれでも意外性のある展開を見せ、ミステリ的な驚きもあるので最後まで飽きないどころか、続きが気になって仕方なかった。伊坂さんは悪い奴を徹底的に悪く描くところがあって、本作でも悪い奴はもう本当にどうしようもないのだが、そのどうしようもなさが遺憾なく発揮されている。フーガとユーガも特殊能力以外は普通の人間でスーパーヒーローではないので、その泥臭さもよく出てると思う。伊坂世界にまたひとつ傑作が加わった。

  • 兄弟がテーマの作品は久しぶりかもですね。
    テーマも簡潔だし、らしいな、と思うのですが、もう少し作品の掘り下げが欲しかったかも。

  • 双子の優我と風我は彼らにしか起きない特別な能力を持っていた。
    2時間ズレて産まれてきたその時間を穴埋めするかのように起きるそれは、彼らのどん底だった人生を変えることができるのか。

    待ちに待った伊坂幸太郎の新刊!
    ほとんどがファミレスで向かい合った男と話しているだけのシーンなのに前のめりで読んでしまった。
    読後は優我の人生を思って、あんまりじゃないか!と叫びたくなったけど、きっと優我は笑いながら風我が幸せなら俺も幸せってことだって言うんだろう。

    相変わらずの作品リンクもあり、伊坂作品ファンとしてはそのシーンだけはほっこりしたりニヤリとしたり。

    残虐なことをする人はなぜか世の中から居なくならなくて、理不尽にひどい人生を歩まざるをえない人は耐えないんだけど、少なくともその人たちにもなにか神様から状況を打破する能力がプレゼントされていたらいいのにな。
    願わくば、加虐趣味の人はバーチャルのみでその嗜好を満足させて、誰も悲しませない世の中になって欲しい。

  • 今までの誕生日では、奇妙な体験や、愉快なこと、不愉快なこと、恐ろしいことがあった。(優我)

    「俺たち二人で一人前、という形でやっていくんで」(風我)


    待ちに待った新作。
    タイトルからは全く想像出来なかったが、“重力ピエロ”や“魔王”に並ぶ兄弟の強い絆と期待を裏切らない伊坂ワールド満載の内容で、読後は充実感とちょっと切ない気持ちになった。

    伊坂作品に出てくる悪人は本当に極悪非道。結末には勧善懲悪になるだろうと安心感はあるが、読んでる途中は早く懲らしめてほしいと思い、読むスピードも上がる。笑

  • 伊坂さんだからどんなに苦しい状況に陥っても上手く解決できると信じて読みましたが・・・、この解決方法は切なすぎますね。
    切なかったからこそ、最後のアレがずしんと来ました。

  • 安定の伊坂幸太郎。役1年ぶりの新刊だそうです。
    今回は主人公が双子なのでとても身近なところに味方がいる分、悪魔(のような人)率は高め。
    悪は必ず成敗されるところが伊坂幸太郎の作品を安心して読める良いところだけど、犠牲が辛いね…。

  • 一年に一度誕生日だけ瞬間移動してしまう双子の物語。
    絶対的な善人とは言えない主人公が絶対的な悪を懲らしめるという構図で、本作も伊坂幸太郎節炸裂という感じだった。
    悪に立ち向かうのは勇気だということを伊坂作品は教えてくれる。

    ただ、今回はいつもより悪役の魅力が薄い(?)気がした。本作一番の「悪」であろう父親はあっさり死んでしまうし、黒幕もイマイチパッとしなかった。

    とはいえ、今作は双子の物語ということで、血の繋がりの絆(及び怨み)を強く感じる。前作AXは親子の話だったし、最近伊坂さんは血縁にハマっているのだろうか。この流れには引き続き期待です。

  • 「フーガはユーガ」
    1年ぶりの新作。


    伊坂幸太郎の作品であれば500ぺージ超の上下巻でも直ぐに読み終える自信がある!何ならば1000ページくらいでも良いくらいだ。巧みなストーリー構成と伏線回収、印象的なキャラクター、くぅぅと唸りたくなるツボをつくセリフやシーン、多彩な世界観。一度読むと小説家が創造出来る世界の幅の広さや奥深さ、可能性を見せつけられる。


    「フーガはユーガ」は、上記のストロングポイントを押さえ、更に双子から醸し出される深い“切なさ”がプラスされている。読了後、痛快さよりも不思議さよりも切なさが優った伊坂幸太郎の作品は久しぶりで、いつもは読み終わりたくないと言う気持ちと読み進めたいと言う気持ちの狭間に挟まってしまう気分になるものだが、「フーガはユーガ」は切なさをこれ以上知りたくないから読み終わりたくないと言う気持ちと双子が切なさを乗り越えた姿を見たくて読み進めたいと言う気持ちの間にいた。


    主人公は常盤風我と常盤優我。双子である。風我と優我はある能力が自分達に備わっていることに気づく。ある時だけ発揮出来る不思議な力は、二人だけの秘密であり、巨大な力に屈しない為の拠り所だった。


    この力を中心に物語が進んでいくのだが、もう一つ大きな意味を持つのは些細な気まぐれで少女にあげたぬいぐるみである。このぬいぐるみは、風我と優我にとってしこりであり、不思議な力で全てを終わらせることになったきっかけにもなる。


    そして最期は、いつもであれば粋なキャラクターの粋なセリフ(と言えば、何故か五反田が浮かぶ)で締めるところではあるが、先に述べたようにそこには切なさもくっついてくる。金魚のふんの様にと言いたいところだが、その切なさは他の伊坂幸太郎の作品との差異に寄与するだけにそんなことは言えない笑。


    このぬいぐるみに加え、絶対悪との対峙や悲しい別れ等切ない要素が多い。終わりのシーンも切ない。しかし、読み終わってみると、好きな伊坂幸太郎作品のBEST3に入るくらい好きな一冊になった。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。
2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。
上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

伊坂幸太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

フーガはユーガを本棚に登録しているひと

ツイートする