フーガはユーガ

著者 :
  • 実業之日本社
3.69
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本棚登録 : 5486
レビュー : 620
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537320

感想・レビュー・書評

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  • 「フーガはユーガ」フーガは、風我。ユーガは優我。主人公は双子の常盤風我と優我。兄が優我で、弟が風我。「風我は優我(優我は風我)」ふたりでひとりの物語。

    この作品の雰囲気、言い回し、表現がやっぱり今まで通り「作者らしさ」が感じられた作品。私の感じるこの作者の描く主人公は冒頓で、無口。描写は「ひょっとして、この言葉何か意味する?」と引っ掛け、最後に「あれ?そんな展開?」と、しかもあっさり、主人公が亡くなってしまう…
    世の中の悪人と呼ばれる人が実は意外にも気が弱かったり、善人だったりと、物語の中では何かしら悪なんだけれど憎めないキャラ設定である。(あくまでも私見なので、井坂幸太郎ファンの読者の方から見たら異議ありと言われるかもしれませんが、そこはご容赦ください)
    そしてもちろんステージは、仙台。

    今回も仙台。そして、訳ありの生い立ちである。本作は兄の優我の語りで、物語が進んでいくが、今回もすでに「犯人がここにいた!」なんていう展開で、主人公も「そんなところにこだわるなんて!」といつもながらの性格でありながら、そこに筆者のこだわりを感じる。

    彼らは誕生日限定で2時間おきにふたりが入れ替わる。ふたりで生きる。ふたりの意味を考えるときに、こんなこともありうることかもしれないと思う。

    双子の家庭は貧しく、父親はDVで父親におびえる毎日を過ごす。そのために、家にいる時間を少なくするために関心を持っているのではなく、誰かを助けたいという気持ちではなく、単に暇つぶしのように誰かの手伝いをする。「暇な僕たちにとって一番、楽しい時間の過ごし方は、誰かを手伝うことだった」
    この言葉が目に飛び込んできた時、これが本当の善意というものではないのかと、なぜか心が熱くなった。

    DVを受けているので、無関心、日常に怯えるというわけではなく、自分たちは気がついていないが、実はすごく優しい双子の物語とまとめたい。

  • 半分過ぎたあたりからなりふり構わず一気読みでした。あまりに一気に読みすぎて、せっかく散りばめられた比喩や文学的表現をすっ飛ばしているかもしれません…伊坂先生、ごめんなさい。

    毎度のことながら、伏線をキレイに回収する伊坂さんの作品はお見事です。

    次々浮かんでくる疑問…
    ①ボーリングの球はどこへ行ったのか?
    ②風我のこと以来、小玉はどうしているのか?
    ③優我の話の「嘘と矛盾」とは?
    ④母親はどうしているのか?
    ⑤ハルコさんはどうしているのか?
    ④と⑤に関しては明確には描かれていないから、描かれていることで全て、なのかな?

    伊坂さんはいつも究極のエンターテイメント!といっても過言ではないほど、面白い作品を描いてくださいます。そこに潜む悪、それが苦しいことも多く、時にしんどい。「アヒルと鴨のコインロッカー」は、特にそんな印象があって。
    「フーガはユーガ」も、とても苦しい作品なのに、最後はほっこりする終わり方をする。今回は、いつにも増して、しんどかった印象があって、それでも、代償の大きさはあれど、スッキリとした読了感をくれた。あまりの読了感に、次にどんな作品を読むか、考えさせられます。まさに放心状態。

    勧善懲悪、伏線の回収、案山子の登場、言葉遊び、等など、ファンにはたまらない新作です。案山子に気づいた時にはとても嬉しくて、長年伊坂作品を読んできてよかったなーと、しみじみしてしまいました。サイン本で読ませていただきました◎

    • 1学期さん
      苦しい作品…簡潔に的を得てますね
      ここんとこの伊坂さんの(裏⁇)テーマを
      何といったらいいんだろー
      って思ってましたー笑
      苦しい作品…簡潔に的を得てますね
      ここんとこの伊坂さんの(裏⁇)テーマを
      何といったらいいんだろー
      って思ってましたー笑
      2019/04/15
    • naonaonao16gさん
      コメントありがとうございます。
      そのように言って頂けると嬉しいです\(◡̈)/伊坂さんの作品を言葉にするのは難しくて…
      新作の「シーソーモン...
      コメントありがとうございます。
      そのように言って頂けると嬉しいです\(◡̈)/伊坂さんの作品を言葉にするのは難しくて…
      新作の「シーソーモンスター」は読まれましたか?あの作品も、SF要素も含まれていたりして、この作品とは異なる味わいがありました!
      最近、背景にはいつも、社会に対する警告のようなものがある気がします…この作品で言えば、性暴力・性被害でしょうか。
      2019/04/15
  •  伊坂幸太郎さんの小説、初めてです。
     登場人物達があまりにも痛めつけられるので、「得意分野ではなかった」と後悔しながら読みはじめました。
     けれど、優我が語っている〈現在〉についての謎と、主人公たちの優しさや地味だけど印象深い登場人物に惹かれて、読み続けました。
     一卵性双生児の風我と優我は暴力ばかりふるう父とその父親から子供たちを守らず無関心な母という最低の家庭環境で育ち、二人協力しあいながら、世の中のややこしいことには当たらず、触らず生きていきます。
     クラスの中でみんなに軽蔑され、苛められている〈ワタボコリ〉というあだ名の男子に「決して同情などせず」クールに見ているだけなのてすが、理由のない暴力をふるい続ける苛めっ子が自分たちの父親と重なり、それは許せなくて、少しだけ彼らだけに出来る秘密の技を使って助けます。
     こういう虐げられている人とか、底辺にいる人への視点が確かに「同情」であれば、もうその時点で上から目線だと気付きました。だから、彼らの行いは気持ちがいい。
     岩屈おばさんというあだ名のリサイクルショップ経営者にも惹かれました。ケチで無愛想で事務的なことしか言わず、人使いも荒い人ですが、実は人間関係をすごく大事にしている人です。
     彼らと仲良くなる人たちは、みんな耐えられないくらい不幸なはずですが
    、毎日耐えて生きることに一生懸命で、高みを目指すことはありませんが、自分の不幸を誰かのせいにすることもありません。

     中盤以降はやるせなくて、やるせなくて、「嫌ミス?」と思いましたが……そこが伊坂さんの凄いところなんでしょうね!
     切なかったですが、最後は癒やされました。
     〈瞬間移動〉とか超自然現象ものが最近多いような気がして、正直安易に話を展開かせる技法のような先入観を持っていたのですが、最後まで読むとそれは二人の運命に関わるものであったような気がして、「上手いな」と思いました。
     こないだNHKの朝イチに出ておられたヤマサキマリさんが、「人は誰かに助けてもらおうと思っているうちは幸せになれない。一人で生きていこうと決意した時に良い出会いがある」とおっしゃってたのですが、その言葉を思い出しました。

    • まことさん
      Macomi55さん。おはようございます。

      伊坂さんの作品、初読みだったのですね。
      私は、現在活躍中の作家さんの中で伊坂幸太郎さんが...
      Macomi55さん。おはようございます。

      伊坂さんの作品、初読みだったのですね。
      私は、現在活躍中の作家さんの中で伊坂幸太郎さんが、一番好きな作家さんなんですが、この作品は私も確かにつらくて途中で、ちょっとイヤになりました。
      レビューにも、そう書きました。
      でも、伊坂さんの作品は、このような作風のものが主流ではありません。
      もし、よろしかったら、他の作品も読まれてみてください。
      最新作の『逆ソクラテス』などは全然違う感じを受けられるかと思います。
      他にも、いい作品たくさんあります(*^^*)
      2020/10/13
    • Macomi55さん
      まことさん、おはようございます。
      「いいね」&コメント有難うございました。
      初めて読む作家さんの作品、選択が大事ですね。
      特に、伊坂さんの世...
      まことさん、おはようございます。
      「いいね」&コメント有難うございました。
      初めて読む作家さんの作品、選択が大事ですね。
      特に、伊坂さんの世界は作品によって全然違うのですね。
      他の色んな作品を読んでから今回の作品を読んでいたら感じ方が全然違っていたかもしれませんね。
      教えて下さって有難うございました。
      今度、『逆ソクラテス』読んでみますね。
      2020/10/13
  • p216のあたりで、この話は悲惨すぎる。もうやめて、読みたくない!
    伊坂さん史上最悪の話ではないかと思い、目を覆いたくなりました。
    でも、最後まで読んで、全部すっきりとはしなかったけれど、かなり救われました。
    悲しい話でした。

  • 誕生日にだけ2時間ごとに「入れ替わり」が起きる双子の風我と優我の物語。

    設定が独特だし、児童虐待や誘拐など、重い内容を描いているせいか、序盤はなかなか読み進められない。
    でも、伊坂さんの軽妙な語り口は相変わらず。だからこそ、残酷なシーンもより身近に感じる。この世の中、常に暴力と隣り合わせだ。

    後半に進むに連れて、物語に引き込まれて読むスピードも格段に上がってくる。伏線も回収され「さすが伊坂さん!」という感じ。
    ただ、読後にモヤモヤっとしたものも残る。

    「俺の弟は、俺よりも結構、元気だよ」この物語で最も重要な、印象的なセリフ。



    〈ここからネタバレ〉
    物語はほとんどの部分が優我の一人称で進む。そして、優我が死んだ後も優我の一人称が続く。
    「フーガはユーガ」というタイトルも相俟って、語り手もどこからか入れ替わっているのか?とも考えたがどうなんだろう?再読が必要かな。
    今のところは、2人が優我の死により統合してより「手強く」なった、と解釈しておく。優我には死んでほしくなかったし。

  • 優我・風我の双子の不思議なことで悪と戦う物語。伊坂さんらしい会話が続いて、悪が出てきて…となるんだけれど、どうにもリズムが最高潮ではないみたい。悪が全部倒されてないし、どうにもこうにも不完全燃焼。一気に読みそれなりに楽しんだけれど、伊坂さんだけに期待していただけにか。面白さに少し欠ける。弾けきってないっていうか。こんな時もあるさで次作に期待。

    • ひとしさん
      breadandbookさん、明けましておめでとうございます!
      全く同じことを考えていたんですね!
      伊坂さんだけに私も期待し過ぎてしまい...
      breadandbookさん、明けましておめでとうございます!
      全く同じことを考えていたんですね!
      伊坂さんだけに私も期待し過ぎてしまいましたσ(^_^;)
      次回作に期待ですね!
      今年もよろしくお願いします!
      2019/01/04
  • これはとても面白かった。映画やドラマを見ているような臨場感があった。

    主人公は風我と優我という双子の兄弟で、その生い立ちを軸に話が進んでいく。決して明るい話ではなく、両親は虐待やネグレクトしているし、その周りの子供たちも「毒親」と言われるような家族と暮らしていたり、小学校におけるいじめなど、現実の暗くて救いようがない部分が描かれている。読んでいるだけでも、特に双子の父には言いようのない不快感と怒りを覚えた。
    風我と優我は、毎年の誕生日にお互いのいる場所に2時間おきに瞬間移動のように入れ替わってしまうという特殊な状況の中暮らしていて、そのことがストーリーを進めていく上でも大きなキーポイントになっている。とてもフィクションらしい設定だけど、実際にこんなことが起きる身になったら大変で敵わないだろうな。

    「生まれついた時点で人生の絶望が決まっている。その親が死んでも、失われた人生は挽回できない。」というような言葉を読んだ時には、そのような状況下で現実も生きている子供たちがいるんだろうということに心が痛んだ。「子供は親を選べない」とはよく聞く言葉だけど、今まで自分事として考えたことはなく、この本を読んだことによって当事者として考える想像力を授けられたような気持ち。

    えてして暗い部分が多い話だけど、双子同士の信頼関係というか「お互いが自分自身」というような一心同体感は、生い立ちがそうさせた部分もあるとはいえ、いいなと思った。

  • 題名からバッハのトッカータとフーガに関連ある話なのかなと思いながら読み始めたけど、どうやら関係ないみたい。それにしても伊坂さんらしくない出だしでなんだか調子が狂いながら読み進めた。まぶされたユーモラス調は相変わらずだけど、らしくない辛さや暗さや痛さが最後まで 笑。
    やっと終盤に様々な伏線が回収され始めて面白くなってくる。半ばまではギブしようかな と思ったけど最後まで読んで良かった♪
    フーガとユーガが風我と優我とはね。

  • 重い話で辛かったけど、最後の場面で報われた気がする。
    特に後半の伏線回収が、凄くて、一気読みしてしまった。
    寝る前に読んだら興奮して、未だにドキドキしている…
    読み進めるのに夢中になっていたので、再読したらまた新たな発見がありそう。

  • 目をそらしたくなるような子供への虐待に焦点を当てているのに、絶望だけではないエンタメ作品にしているのはさすが伊坂さん。
    きっとこれに近い悲惨な状況にある子供はどこかにいるのだろう。伊坂さんの怒りも見える。

    耐えるしかない支配される子供たち。
    不思議な力がないとあらがえないのはあまりにも切ない。虐待されている子がヒーローにならなくていい、周りの大人が皆、ヒーローであって欲しいと願わずにいられない話だった。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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