クスノキの番人

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 9837
感想 : 909
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537566

作品紹介・あらすじ

不思議な力を持つ木と番人の青年が織り成す物語。『秘密』『時生』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たな感動作。長編書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 最初はただのダメ男と
    思ってましたよ、ええ。

    この主人公は反則です。
    格好良すぎて悶絶です。

    言葉では伝えられない
    こと。

    言葉にしなければ伝わ
    らないこと。

    それぞれをしかるべく
    相手に伝える役割を、

    神秘の巨木とその番人
    たる主人公が担うわけ
    ですが、

    まあ神秘の力の凄さは
    今更言うまでもなく、

    寧ろそれより凄いのは、

    ここぞ!という場面で
    真直ぐな想いを揺らぎ
    なく言葉に変えて、

    ビシッと相手に伝える
    主人公の弁舌力です!

    世話が焼けて頼りない
    と思ってた男性が、

    ピンチのときに現れて、
    こんなに熱く男らしく
    自分の想いを代弁して
    くれたら、

    そりゃ惚れてまうやろ
    と(汗

    文句なしの星五つです!

  • 凛とした千舟さんの言葉が素敵でした。
    そんな方法もあったかって一本取られた気持ちになったり、うるっとしたり、とても楽しめました。
    クスノキの不思議な力を謎解きながら、クスノキの番人になった青年が成長していく物語でした。

  • お初の東野圭吾さんです。タイトルからの印象は山の話とか期待してたんですけど無茶都会がでてきます。
    読み進めていくと叔母を名乗る人物、柳澤千舟が現れて素行の悪い玲斗を引取り御神木であるクスノキの番人に仕立て上げる話しなんですけど、徐々に判明してゆくクスノキの祈念の仕組みとかゾクゾクしました。
    血筋とか伝承とか、新月に満月、スピリチャルな現象とか色々と絡まって神秘的なものに惹き込まれてどう結びつくのか気掛かりでどんどん興味を引く展開は流石でした。
    この物語の展開を支えるストーリーは大きく3系統あって、1つは鼻歌を歌う佐治寿明と娘の優美との展開。2つ目は老舗和菓子屋のボンボンの壮貴にまつわる展開、クスノキとの関わり方が正反対で面白かったです。
    そして最後は、叔母柳澤千舟との展開。これら3つの大きな根っこが地上へと繋がり幹を支え枝葉を伸ばして行くような作り込みは秀逸でした。クスノキは常緑樹で日差しを遮ってくれるし神秘的なパワーを感じます。
    玲斗も次第に自覚して成長していくのですが、弁が立ち好印象の型にはまって、つまらなくなってゆく気がしたのですがこの先どんな枝葉を伸ばすのか気になってしまいましたww

  • 東野圭吾さんの作品は今まで読んできたものは、サスペンスタッチのものが多かったのですが、この作品はファンタジーのようなあたたかい作風でした。


    以下、ネタバレあります。

    たった一人の母親を亡くして生きてきたまだ未成年の直井玲斗が仲間から嵌められて、出所後、母の異母姉の柳井千舟という初めて出会った、ヤナッツ・コーポレーションの顧問の妙齢の女性から、月郷神社にあるクスノキの木の番人「クスノキの番人」を命じられたことから物語が始まります。

    「クスノキに願い事をすれば叶う」という言い伝えはどういうことなのか?
    玲斗は祈念にくる佐治寿明の娘の優美が父親の浮気を疑い、頼まれて一緒に真相を探し出そうとしていくうちに色々なことに気づいていきます。
    クスノキに祈念する人には二種類あって、新月のときに来る人、満月のときに来る人があることなどを千舟は何もクスノキのことについて教えてくれないので、優美とともに調べていきます。
    玲斗は生来、口が達者なこともあり、祈念にくる人々の問題をみつけて、次々に解決していきます。

    ぞして問題が解決しただけでなく、そこにはすべてあたたかい空気があって、悪人もいない、殺人もないけれど、全て謎は解けて、誰もが心地よく読了できる、ありそうでなかなかない、素敵なストーリーでした。

    「この世に生まれるべきでなかった人間などいません。どんな人間でも、生まれてきた理由があります」
    という最後の千舟の言葉もよかったです。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      私も千舟さんのこの言葉、とても印象に残ってます♪
      素敵な女性でしたね。
      きっと玲斗も千舟さんに出会えたからこそ…...
      まことさん♪こんにちは♪

      私も千舟さんのこの言葉、とても印象に残ってます♪
      素敵な女性でしたね。
      きっと玲斗も千舟さんに出会えたからこそ…の姿なんでしょうね♪
      2020/06/01
    • まことさん
      くるたんさん♪

      そうですね!
      あの出会いがあったからこその物語ですね。
      複雑な家庭環境だったけど、結果的に、
      お互いに助けられて...
      くるたんさん♪

      そうですね!
      あの出会いがあったからこその物語ですね。
      複雑な家庭環境だったけど、結果的に、
      お互いに助けられてましたね!
      2020/06/01
  • その木に祈れば、願いが叶うと言われるのはなぜか。

    不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。
    同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。
    そこへ突然弁護士が現れ,依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるという。
    依頼人に心当たりはないが、玲斗は従うことに。
    依頼人は千舟と名乗る年配の女性で、驚くことに伯母でもあるというのだ。
    あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。
    「あなたにしてもらいたいことそれはクスノキの番人です」と。


    「クスノキに願い事をすれば叶う」という噂でスピュリチュアスポットになってる。
    玲斗はクスノキの事も番人の役割も何も知らずに見習いを続けていた。
    玲斗は流されるままに生きて夢も目標もなりたい物も何もない。
    祈念にくる佐治という男性の娘・優美が父の行動を怪しみ、何を念じているのかを
    探りに来たことで、何となく協力する事になった玲斗。
    古い過去帳をパソコンに入力していくうちに、少しずつ気付きだす。
    新月の時に祈念する人。
    その後、同じ苗字の人が満月の時に祈念している事。

    行動派の優美の行動は激しくて、番人としてやってはいけない事をしたのは
    どうなのーーっと思ったが、まぁそれは置いといて(笑)
    玲斗の姿、成長してく姿が良かった。
    また、千舟の凛とした姿、内に秘めた優しさ。とても良かったです。
    「この世に生まれるべきでなかった人間などいません。
    どんな人でも、産まれてきた理由があります」
    千舟の言葉が心に残りました。

    本を読み進めるにつれ、心ががじんわりと温かくなるお話でした。
    こんなクスノキあればいいね。
    私も祈念したい!
    伝えたい事ばかりでなく、その人の心の底の底の感情までも読んでしまう。
    それでも良いな。心の中の何もかも残ってもいいや。
    伝えたいなぁ。

    ファンタジーだけど、ファンタジーっぽくなく、家族の大切さを改めて認識させてくれました。

  • りまのです。私は、単純に、楠木が好きなのでこの本が、気になりました。(皆さんの、評価も、良いようですし)クスノキの大木は、葉っぱがキラキラ✨して、美しいし、薫りが良いのです。東野圭吾さんは、読んだことは、まだ、ありませんが…
     
    2020.9.22

    心にひびいたシーン

    主人公の玲斗が、物語の後半部分で、自分のことを、「本来なら生まれるべきじゃなかった人間、」と言った言葉に対し、伯母の千舟が、「この世に生まれるべきでなかった人間などいません。どこにもいません。どんな人間でも、生まれてきた理由があります。そのことだけは覚えておきなさい。」と言うシーン。

    そして 玲斗の成長ぶりが、すばらしい。
    クスノキの受念ができなくて困っている青年にアドバイスする玲斗。そこから見事に父親の志を受けついだ青年壮貴。
    千舟のために、役員会で、発言する玲斗。
    ラスト近くで喜久夫のピアノが流れるシーンには感動した。
    そして最後、千舟と玲斗の心がつながるシーンに、心が温かくなった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      東野圭吾は泣かせてくれます、、、
      りまのさん
      東野圭吾は泣かせてくれます、、、
      2020/09/05
    • りまのさん
      ちょっとずつ、読んでいます。
      ちょっとずつ、読んでいます。
      2020/09/08
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      Good!
      りまのさん
      Good!
      2020/09/08
  • 温かさが身体を巡る、一冊。

    願いが叶うと言われているクスノキ。その秘密に徐々に近づいていく物語。

    派手な号泣ものではない、でもページを捲るたびに確実に温かさが身体を巡る…そんな作品だった。

    クスノキの役割を理解していく過程はもちろん、枝葉のようにどんどん心が視野が広がっていく、主人公 玲斗の姿は読んでいて実に気持ちが良い。

    人の想い、伝えたい想い、受け取りたい想いは様々。

    まわり道はあってもいつかきっと必ず伝わる。

    そして負の感情も言葉もそれを逆に 正に包んで返してあげられるようになりたい。

    千舟さんと玲斗の会話からそんなことが心の中を巡った。

    • まことさん
      くるたんさん♪こんにちは。

      図書館が開館して、やっと読めました。
      玲斗の成長ぶりが読ませる、ファンタジックなストーリーでしたね(*^...
      くるたんさん♪こんにちは。

      図書館が開館して、やっと読めました。
      玲斗の成長ぶりが読ませる、ファンタジックなストーリーでしたね(*^^*)

      今、図書館から『ザリガニの鳴くところ』も借りて読み始めていますよ!
      2020/06/01
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪
      図書館開館、おめでとうございます♪

      ほんと、安心して読ませてくれる心温まる作品でしたね♪
      玲斗の姿はほんと拍手し...
      まことさん♪こんにちは♪
      図書館開館、おめでとうございます♪

      ほんと、安心して読ませてくれる心温まる作品でしたね♪
      玲斗の姿はほんと拍手したくなるぐらいでした♪

      ザリガニ…もゆっくりじっくり楽しんでください( ˊᵕˋ* )
      2020/06/01
  • クスノキの番人
    人々の念を受け継ぐ物語
    東野圭吾
    心に響く人間ドラマ

    【物語】
    この本は、神社の神木であるクスノキにまつわる物語です。クスノキには、人々の念が集まり、時代を超えて伝えられていきます。

    主人公は、窃盗で逮捕された後、叔母からクスノキの番人を引き継ぐように頼まれます。そこで、彼はクスノキに参る人々と出会い、彼らの想いや人生に触れていきます。

    この本は、ミステリーではありませんが、東野圭吾さんらしい人間ドラマが展開されます。
    登場人物たちは、言葉では伝えきれない想いや、自分の認知の障害に向き合う姿など、読者に感動や考えさせるものを与えてくれます。
    また、念というテーマは、経営理念や遺言など、様々な形で物語に織り込まれています。

    【以下のような人におすすめ】
    ・東野圭吾さんのファンで、ミステリー以外の作品にも興味がある人。
    ・心にふわっとしたもやもや感を抱えている人。

    【著者・本からのメッセージ】
    1;言葉では伝えきれない想い。
    生きていると、言いたいことや伝えたいことがあっても、なかなか言えなかったり、言っても伝わらなかったりすることがあります。
    でも、それは決して無駄ではありません。その想いは、別の形で、別の時に、別の人に届くかもしれません。

    2;念。
    神社に願をかけるといいます。おみくじもそのならわしのひとつです。でも、小説の舞台となる「クスノキ」でやりとりがされるのは「願」ではなく、「念」です。「願」と「念」の違いは何でしょうか?
    それが、物語の「テーマ」です。
    念とは、自分の魂や生き様を表すものです。念は、時代や場所を超えて、人から人へと伝わっていきます。念は、自分だけのものではなく、共有するものです。

    3;時代を超えて
    念は、時代を超えて、引き継がれていくものです。会社や組織に存在するのが「経営理念」です。創業から現在まで、なぜ、代々語り継がれるのか?
    それは、「想い」だからです。生産する製品やサービスは、時代の変遷とともに変わります。しかし、製品やサービスの根底に流れる「想い」は、不変です。
    念は、自分のためだけではなく、後世のためにも残すものです。

    4;年齢を重ねる
    年齢を重ねると、できることやできないことが変わってきます。記憶や認知の低下もそのひとつです。
    人が「自身の認知の障害」に気づいた時、本人はどう感じ、どう生きるのでしょうか?そして、周囲は、当人にどう寄り添うのでしょうか?
    舞台では、認知に障害があるふたりの女性が登場します。このふたりの描写によって、著者東野さんが私たちに投げかけてくるメッセージも、また「念」なのかもしれません。
    念は、自分の状態や境遇に関係なく、人と人とをつなぐものです。

    5;兄と弟
    小説で兄と弟が登場します。
    兄には才能があります。弟にはそこまでの才能がありません。兄は普通に生きる弟を、弟は、両親の敬愛を一心に受ける兄を疎ましく思います。そう、すれ違いです。兄は、才能の壁にぶつかり、病に倒れます。病のなか、兄は、クスノキに念を預け、亡くなります。
    クスノキの下で、向こう側の世界にいる兄と現代に生きる弟が「分かち合い」を始めます。念は、血のつながりや生死を超えて、兄弟の絆を深めるものです。

    【さいごに】
    この本は、東野圭吾さんが描く念の物語です。念とは、人間の魂や生き様を表すものであり、時代や場所を超えて、人から人へと伝わっていくものです。
    この本を読むことで、自分の念や他人の念に気づき、心に響く人間ドラマを楽しむことができます。

    【書籍より。(ページ)】
    経営理念 は、代々柳澤家によって伝えられてきた念が基盤になっています。その念とは三つの概念によっ 構成されるものです。その三つとは」玲斗は右手の指を三 本立てた。「努力、協力、質素——この三つです。社長も御存じですよね」

    「もちろん知っている。努力を怠るな、人と協力せよ、質素であれ、親から何度いわれたかわからない」

    「そう、たしかにいわれたでしょう。でも念というのは元来、到底言葉だけで表しきれるもので はないんです。念とは魂であり、生き様です。そこで代々の指導者たちは、事業や仕事という形 で後世に伝えてきました。(425)

    「ただひとつ だけアドバイスするならば、この世に生まれるべきでなかった人間などいません。どこにもいません。どんな人間でも、生まれてきた理由があります。そのことだけは覚えておきなさい」(390)

    でも覚悟はできています。失うものが何もないので、怖くありま せん。一瞬一瞬を大切にして、前から石が転がってきたら素早くよけ、川があれば跳び越し、越せない時は跳び込んで泳いで、
    場合によっては流れに身を任せる。そんなふうに生きていこうと 思っています。そうして死ぬ時、何か一つでも自分のものがあればいいです。
    それはお金じゃなくていいし、家や土地みたいな大層な財産じゃなくていいです。ぼろぼろの洋服一着でも、壊れた時計でもかまいません。
    だって生まれた時には、この手には何もなかったんですから。だから死ぬ時に何か一つでも持っていたら、俺の勝ちです」(164)

    「自分たちが食べたいと思ったものを、お客様に召し上がっていただく。
    つまり自分がしてほしいと思うことをお客 様にしてさしあげる、それがサービスの基本だと改めて思い知ったのです。
    以後、迷った時にはそれを第1に考えるようになりました」(235)

  • 神社巡りが好きな母から借りて読みました。
    変な宗教がらみではなくスピリチュアルな感じ。

    主人公は楠の番人を命じられますが、初めは何も知らず役目を任されます。
    不思議なクスノキの中で行われている儀式めいたものは何なのか。念とはいったいどういったものなのか。
    主人公と同じ目線で物語が進んでいくので、全ての謎はすべて最後に分かるようになっています。

    その辺のネタバレなどは控えたいと思いますので、気になってる方はぜひ読んでみて欲しいです。
    ほっこりというよりは「そうだったのかー!」と、驚くことも多いと思います。
    怒涛の謎解きに最後の100ページぐらいは、ドキドキしながら夢中になって読みました。

    —————-

    東野圭吾さんらしい伏線回収も流石ですが、ストーリー展開もスマートで読みやすかったです。

    また、主人公の子供らしさと未熟さをセリフで表現している所はすごいと思いました。

    周りの大人と比べて頼りなかったり、もどかしさを感じる所などは、スマートな文章じゃなくてあえてそうしているところがキャラを魅力的に引き立てているのだなと思いました。

  • 久々のファンタジーの東野作品。

    不遇な環境で育ってきた青年が初めて会った叔母から頼まれたクスノキの番人の仕事。

    詳しい説明がないまま番人の仕事をしていく中で、クスノキについて知っていき、成長していく物語。

    血縁、信念、相続、老いといった内容を見事に繋げています。
    読後もスッキリしていてよかったです。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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