犬を盗む

著者 :
  • 実業之日本社
3.76
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本棚登録 : 1403
感想 : 151
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408538143

作品紹介・あらすじ

殺人現場に残された愛犬の痕跡――真実を知るのは、その瞳だけ。
デビュー10周年、著者入魂の慟哭ミステリー!

高級住宅地で一人暮らしの老女が殺害された。部屋には、かつて犬を飼っていた痕跡があり、刑事たちは周辺の捜査を開始する。一方、雑誌記者の鶴崎は、あるスクープをモノにするためコンビニでアルバイトを始める。同じコンビニで働く松本の過去を知る鶴崎は、松本が突然犬を飼い始めたことに驚愕するが――。
深まる謎、犬との絆に感涙&一気読み必至! 
貫井徳郎氏も驚嘆の長編ミステリー。
「細かい違和感を憶えておいて。最後に『なるほど』と思うから」

感想・レビュー・書評

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  • 全体的に軽くネタバレしているので、これから読まれる方は、お気をつけください。



    ひとり暮らしの木戸タカ子80歳が何者かによって刺殺されているのが見つかります。
    タカ子は資産家で、家の中からは通帳など金目のものがほとんど盗まれていました。

    警視庁玉堤警察署刑事課の刑事植村光太郎と下山正大が捜査に当たります。
    被害者の家には一年近く前に死んだロングコートチワワの白骨化死体がありました
    湯のみが二つあったことから犯人は顔見知りの犯行と断定されます。

    コンビニでバイトをしている鶴崎猛は実は編集者のアルバイトをしていて、コンビニにもぐり込んだのはそこで働いている松本博巳32歳が16歳の時に両親と犬を殺害した元殺人犯だったので、その後の取材の為でした。
    松本は2歳のチワワのシロを飼っていました。
    鶴崎は「シロの散歩をさせてください」と言って、松本との距離を縮めようとします。

    小野寺真希はミステリー作家の主婦でショコラという犬を飼っています。
    真希はショコラの散歩でシロを散歩させる鶴崎に出会いシロが木戸タカ子の犬だったことに気がつきます。
    そして、シロの本当の飼い主が松本だと知り、松本の昔の事件を覚えていたため、シロを犬を殺した犯人のところにおいて置くわけにはいかないと独自に調査を始め、SNSに松本のコンビニで働いている姿を盗撮して投稿します。

    木戸タカ子の犬は二匹いたのです。
    なぜタカ子を殺した犯人は金品を奪った他に犬を盗んでいったのか…?
    タカ子を殺した犯人も、松本なのか…?

    松本は犬好きですが本当に過去に両親とともに飼い犬を殺したのか?
    冤罪ではなかったのか…?

    最後は犬好きの方には非常に泣けるラストシーンが待っています。
    時々入る、犬の独白シーンも可愛いです。
    犬好きの方にはたまらない作品だと思います。

  • 犬好きにはたまらない本だと思う。
    最後はすっかり騙されてしまいました。
    犬目線の短い挿入がとても良かったです。
    それにしても偏見は本質を見抜く妨げになることが良く分かるエピソードでした。

  • 「真実を知るのは、その瞳だけ。」って…
    表紙の白いチワワ。
    そんな瞳で見つめられたら悪いことなんてこれっぽっちもできないですよ、普通。

    資産家を殺してその愛犬を盗んだ犯人は、一体どんだけ極悪非道なのか?

    思いもよらぬ展開と衝撃の結末。
    犬好きは必読のミステリーだな。

  • ワンコと一緒の生活って素敵だろうなぁ。責任も大きいだろうけれど、もう完全にワンコ中心の生活になるだろうなぁ~。家の事情で飼えないけれど、お散歩中のワンコを見ると妄想してしまいます。

    資産家女性の殺害事件に対して、刑事、コンビニのバイト、ミステリー作家の目線で話が進んでいく。そして、犬の目線も少し。

    事件を追う中で、多頭飼育崩壊やドッグランでの派閥、ネット社会での過熱が実生活にまで影響を及ぼす様子がゾッとする。しかも当事者は「自分は間違っていない」と思っているのが読んでいて辛く感じてしまう。そして、思い込みや偏見は真実を見えなくしてしまうことを実感した。

    犬の目線の一生懸命状況を把握しようとする素直さにホッとする。
    なんせ、最後はワンコも幸せで良かった

  • 資産家の80歳の女性が殺害された事件の謎を追うミステリー。
    犬好き&犬アレルギーの刑事コンビ、コンビニ店員、ミステリー作家の3視点から描かれています。
    少しだけワンコ目線も入ってきます。

    とても読みやすくて引き込まれました。
    里親募集で出会ったワンコを飼っていたし犬猫の保護活動などに関心があったので、共感できるところもありました。
    どうかワンコがつらい思いをしませんようにと願いながらの読書となりました。

    ミステリーとしても面白かったし、多頭飼育崩壊、ネット社会の闇、歪んだ正義、人間の多面性などが盛り込まれていて読み応えがありました。

    表紙に「the Dognappers」と複数形で書いてあるのは、ややネタバレかも?



  • 資産家の高齢女性の殺人事件が起こる。
    気難しく子どもや親戚からも敬遠されていた被害者の唯一の心の支えとなっていた愛犬。その犬を軸にして、両親を殺害した過去を持つ男、その男の裏の顔を記事にしようと近づいた男、犬の散歩友達でミステリー作家の女、それぞれのストーリーが展開されていく。
    真相を追求するのは、愛犬家の下山と犬アレルギーで犬嫌いの植村の刑事コンビ。
    ミステリーの展開としてはそれほど複雑な仕掛けや伏線はない。結末には驚いたけど、呆気なくも感じる。

    『人を殺したことは後悔も反省もしていない。犬を苦しめることは許せない』
    少年時代に飼い犬を父親に殺され、両親を金属バットで殴殺した松本の台詞。愛犬家も度が過ぎるとそれに近いものがあるかもなぁ…と思ってしまった。

    犬には悪意がない。人を裏切ることも騙すこともなく、ただ純粋に飼い主を信じてくれる。
    人は人を欺く。人を騙すし裏切ることもある。
    そう思うと、人を信じられなくなった人にとっては同じ人間よりも動物たちの方が信頼できて命をかけて守るに値するものなのかもしれない。

    話の本筋とは逸れるけれど、犬や猫の一生の幸不幸を決めるのは飼い主であって、人の都合で捨てられたり虐待されたりすることもあれば、我が子のように大切にされ愛されることもある。
    動物の遺棄や虐待、多頭飼育崩壊など、人間の身勝手で苦しめられる動物がいなくなる世界になって欲しいと思った。

    自宅で犬と猫を飼っているので、すごく感情移入して読んでしまった。

  • 独り暮らしの資産家高齢女性が殺され、現金や通帳が持ち去られた。更に飼い犬まで。
    何故犯人は被害者の犬を連れ去ったのか。

    事件を追う刑事コンビ、過去に殺人を犯した男のその後を追うために彼に近付くフリーライター、ふとしたきっかけで事件と元殺人犯の関連に気づくミステリー作家、そして連れ去られた犬、それぞれの視点で物語は進む。

    動物が好きな人に悪い人はいない、なんて言葉を聞いたことがあるが、この作品ではどうか。
    個人的にはドッグランでの飼い主たちのグループ意識が怖かった。グループ意識の一方で簡単に手のひら返しもする。どこにでもあるコミュニティの縮図がある。

    読み進めると、暗澹たる思いにさせられる。事件の真相や過去の殺人も意外なものがあって、そこは面白かった。
    やや荒っぽさは感じるがテンポ良く読めた。

    最後は表紙のワンコが幸せになってくれる希望が感じられて良かった。

  • 殺人現場に残されていたのは、愛犬の痕跡。
    それを追うのは刑事だけじゃなく、ミステリー作家であったり、謎の動きをするコンビニ店員だったりと…
    犬の周りには、いつのまにか誰かしら人の気配がある。
    まるで犬がすべての動きを把握しているかのようで、とても不思議なミステリーだった。

  • 表紙のチワワの可愛さと、犬が死ぬ嫌な話ではないと読者さんの感想でわかったので読んでみたくなった。
    自分も猫を飼う前は犬を2匹飼っていたので、犬飼あるある部分は懐かしく思った。
    途中までは平凡な本だと思っていたけど、犯人がわかった時には驚きすぎて思わず声が出た。
    どうしても許せないポイントは人によって全く違うものだと感じ、読後も考えさせられた。
    思っていた以上に面白くて、心に残るものがあったので他の作品も読んでみたくなった。

    犬目線で語られている所が変に誇張されていなくて良かった。確かにこんな風に思っていそう。
    ペットは飼い主を選べないからこそ、うちに来てくれた子達は悲しむことがないように生涯幸せにしてあげたい。
    Audibleにて。

  • 面白くてあっという間に読了です。正直もう少しダラけるかなと思ってましたが、テンポの良さ、読み易さ、内容自体が面白く、止まることなく読めました。私自身、現在チワワ2匹飼ってるので、感情移入しやすく贔屓目評価かもしれませんが、、殺人事件のミステリー要素と犬をこれだけ上手い事密接に関わらせる発想と展開が見事で秀逸だなと率直に思いました。
    犬の目線で語られる場面が各章ごとにあるのですが、そこを読むたびに改めて大切に育てていってあげたい気持ちになります。実際には犬が何を思い何を考えているのかはわからないわけですが、ただ、当たり前のことですが、人であれ動物であれ、生きているという事、生きるという事、命というもの、それらは絶対に守られるべきものであり、大切にしていくべき事です。人の愚かさと犬の健気さを同時に気付かさせてくれる作品であり、特にこれから犬猫を飼おうとしてる人や今飼ってる人には最適な作品だと思いました。そうじゃない人でも勿論楽しめるミステリー小説だと思います。昨年刊行の一億円の犬も読んでみようと思います。

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著者プロフィール

佐藤青南
一九七五年長崎県生まれ。「ある少女にまつわる殺人の告白」で第九回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、二〇一一年同作でデビュー。一六年に『白バイガール』で第二回神奈川本大賞を受賞。ドラマ化された「行動心理捜査官・楯岡絵麻」シリーズ、「白バイガール」シリーズ、絶対音感刑事・鳴海桜子が活躍する『連弾』『人格者』『残奏』など、著作多数。近著に『犬を盗む』『ホワイ・ダニット 行動心理捜査官・楯岡絵麻』『ストラングラー 死刑囚の逆転』がある。

「2023年 『残奏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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