嵐をこえて会いに行く

  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784408538723

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『函館』と聞いてどんな光景を思い浮かべるでしょうか?

    “コロナ禍”が過去のものとなり、2024年には外国人の入国者が過去最高を記録するなど、日本各地に観光客が溢れる状況も伝えられています。ようやく普通に観光旅行ができることを喜ぶ一方で、どこに行っても、人、人、人という中に逆にうんざりもしてしまう、なかなか上手くはいかないものです。

    そんな観光地の中で、春節を迎える中国からの観光客に北海道が人気を博しているというニュースを目にしました。100万ドルの夜景が見れるとも言われる函館山がニュースに上がるのを見るにつけ、訪れてみたい思いが私の中にも込み上げます。一方でそんな『函館』には他にも訪れるべき場所は多々あります。

     『三十秒ほどで、地上九十メートルに位置する展望フロアに到着した』。

    そこには、

     『紅葉で彩られた五稜郭が誇らしげに輝いている』。

    これも『函館』観光にはなくてはならない光景です。

    さてここに、そんな『函館』を含め、『八戸』、『盛岡』、そして『仙台』と、東北・北海道新幹線が停車する街を観光するかのように展開する物語があります。紅葉の季節を描くこの作品。そんな物語に、人と人との繋がりを見るこの作品。そしてそれは、彩瀬まるさんが描く『誰か』の存在を思う物語です。

    『会いに行こう、と決めたものの、たいした用事はない』、『初めて会ったのは二十代の頃』と『長い付き合い』になる鳴海遥(なるみ はるか)のことを思うのは主人公の高木志津夫(たかぎ しづお)。『札幌に本社を置く住宅用建材を扱う会社で営業をしていた』高木は、『青森支店で事務をしていた鳴海』と『若手を集めた勉強会で幾度となく顔を合わせ』ます。『鳴海が会社を離れた三十代以降も、なにかと縁があって交流が続いた』という二人は、『還暦を過ぎてなお、年に一度は鳴海が函館に立ち寄る機会』に昼食を共にしています。しかし、『新型コロナウイルス感染症のせい』で『三年近く会っていない』という二人。『会えるときに会っておかなければ後悔する』という『年代になった』こともあり、『津軽海峡を越えて会いに行こう』と高木は鳴海に連絡を取ります。
    『二十七歳のときに上司の知人の娘だという女性を紹介され、見合い結婚した』高木でしたが、結婚当初から『根本的に性質が合わ』ないことがわかったものの『早くに娘の麻衣が生まれ、辛うじて家族のかたちは保たれ』ました。しかし、『麻衣が札幌の大学に合格し、キャンパス近くの女子寮に入ることになった』『直後に、直美から離婚の意志を伝えられた』高木は『異論』なく了承し、『財産を分け』『自宅も売却』し、『五稜郭のそば』の『中古の分譲マンション』に移ります。そして、『五稜郭タワーが建て直されるらしい』という噂を耳にした』高木は、土方歳三が好きだった鳴海への年賀状にその旨記します。『五稜郭タワー、建て直されるんですね!…新しい五稜郭タワー、行ってみたいと思います。久しぶりに高木くんにも会えたらうれしいです』という手紙を受け取った高木。それを起点に『手紙の末尾に』記されていた『メールアドレス』を打ち込む高木でしたが、『なかなか休みの日程が合わ』ず、『やっと落ち合えたのは二〇〇八年の春で、最後に東京で別れたときから実に十八年の歳月が過ぎてい』ました。『いやーお互い、アラフィフだねえ』と再会した二人。そんな中で『高木が離婚したことを告げると、鳴海はずいぶん驚いた様子』。そんな鳴海は『転倒由来の骨折で寝たきりになった父親の介護を、長いあいだ母親と分担して行って』きており、『結婚は結局しなかった』と語ります。そんな起点から一年に一度は会うようになった高木と鳴海。鳴海の暮らす新青森へと向かう高木の姿が描かれていきます…という最初の短編〈ひとひらの羽〉。2016年に新幹線で繋がった北海道と新青森を舞台に大人な男女の姿を印象深く描き出す好編でした。
    
    2025年1月30日に刊行された彩瀬まるさんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2024年11月に寺地はるなさん「雫」と南杏子さん「いのちの波止場」の二冊、12月には瀧羽麻子さん「さよなら校長先生」、そして年明け1月には村山由佳さん「PRIZE」と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを毎月一冊を目標に行ってきました。そんな中に、「くちなし」、「新しい星」で直木賞の候補となる一方で東日本大震災の被災体験に基づく作品も出されるなど幅広い作品展開も魅力な彩瀬まるさんの新作が出ることを知り、これは読まねば!と発売日早々この作品を手にしました。

    そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。

     “古い友人。遠くの恋人。業界を去った恩人。すれ違う家族。途切れかけたつながりを、どうしたら取り戻せるのか。紅葉の季節に、東北・北海道新幹線で青森、盛岡、仙台へ向かう人々を描く、心に深く響く連作短編集”

    なるほど、東北を舞台にした短編集なのか…それがこの内容紹介から読み取れるこの作品の概要だと思います。しかし一方で、彩瀬まるさんのファンの方にはこれだけでピン!とくるものがあると思います。内容紹介にはこんな文章が付記されています。

     “『桜の下で待っている』で、東北新幹線でふるさとへ向かう人々を描き大きな支持を得た著者。あれから10年、著者がひらく新境地!”

    はい、「桜の下で待っている」という作品名が登場しました。2018年1月23日に刊行された彩瀬まるさんのこの作品は、今回の新作同様に東北を舞台にした連作短編集となっており、私も3年前に読了、印象深い作品として今も記憶に残っています。この度刊行された「嵐をこえて会いに行く」も「桜の下で待っている」と同様な趣向ではあるのですが、この前者と後者の間にある7年の歳月がこの作品ならではの色合いをつけています。まずはこの側面から見ていきましょう。それこそが、この作品の執筆時期にも関係するであろう”コロナ禍”の描写です。”コロナ禍”を前提とした作品はここ数年で数多刊行されました。この作品の私のレビューのタグにも”「コロナ禍」を描写する”とつけてありますが、クリックして見ていただくと私のレビューした作品だけでなんと30冊もの作品がリストアップされます。”コロナ禍”はこれほどまでに小説の世界にも影響を与えたことが改めてわかります。この作品には5編の短編が収録されていますが、”コロナ禍”をかなり具体的に描写しているのが特徴です。

     『近年巷を騒がせている、やっかいな新型コロナウィルス感染症のせいだ。県境をまたぐことが制限され、遠出の際には鼻に綿棒を突っ込む検査がマナーとされた。若者と年寄りは出歩くべきではない、なんて言説も流れた』。

    “コロナ禍”初期のこの状況が、これから先まさか三年も続くことになるとほ誰も予想できなかった時代の今となっては懐かしい描写が第一編に登場します。

     『四月に入って早々に、新型コロナウィルス感染症に関する報道がきな臭さを増し、中旬には北海道のみならず全国に緊急事態宣言が発令された。県境を越える人の移動は制限され、マスクと消毒液があっという間にドラッグストアから姿を消した』。

    こちらは『緊急事態宣言』の頃の話です。まるで歴史の教科書を読んでいるような感覚にも陥りますが、これがリアルだった時代はまだほんの4年前のことに過ぎないという事実の方に驚きます。

     『県外ナンバーの車への落書きやあおり運転、営業中の店に対する執拗な嫌がらせ、マスクをつけていない人を激しく罵倒するなど、いわゆる「自粛警察」と呼ばれる過激な言動を行う人々が増加し、社会問題となった』。

    こちらも同じですね。日本人のある意味での怖さを思い知らされた時代、それが”コロナ禍”でした。もう二度とあんな時代はごめん被りたいと思います。
    それもあって、次第に”コロナ禍”の描写がある作品を敬遠する、もしくは古臭く感じられる時代にもなってきたと思います。この作品は2025年の新作です。元となる作品は2023年5月から2024年11月に「Webジェイ・ノベル」という場で発表されたもののようですが、流石に新作としての”コロナ禍”描写はそろそろ打ち止めかなあという気はしました。

    そんな物語は、「桜の下で待っている」同様に主人公たちが新幹線に乗って旅をする様が描かれています。

     『ホームにすべり込んできた美しい翡翠色の新幹線を迎えた。鼻が長いな、と見るたびに思い、人なつこい犬を連想する』。

    そんな風にも描写される『新幹線』。主人公たちは北海道、東北のそれぞれの都市でその土地ならではのものに触れることになります。そんな主人公たちの物語に色濃く描かれるのが、それぞれの都市の観光スポットと食べ物です。「桜の下で待っている」が『東京』を起点に北へ北へと上がっていったのに対して、この「嵐をこえて会いに行く」では、『函館』を起点に『東京』へと南下していくところが興味深いです。また、書名に『桜』が入る「桜の下で待っている」がまさしく春の情景を映し取っていたのに対して、この作品では秋の情景が描かれていくのも特徴です。

     『奥深い緋色のカエデ、黄金色の輝きを帯びたイチョウ。風が吹くたびに豊かな色彩のかけらがちぎれ、はらりはらりと宙を舞う』。

    鮮やかに描写される紅葉の美しさを感じさせる物語はこの作品の大きな魅力にもなっています。そしてそれが、この作品で描かれていくそれぞれの街の魅力を何倍にも高めています。物語ではそれぞれの街で紡がれる人と人との繋がりに光を当てた物語が描かれていきます。

    では、それぞれの章で取り上げられる物語と、それぞれの街で取り上げられる観光スポットや食べ物の描写をまとめてみたいと思います。

     ● この作品で描かれる北国のさまざま
      ・〈ひとひらの羽〉: 『函館』
       - 注目: 五稜郭、雪虫、土方歳三
       - 描写:『「鰊みがき弁当」だ。函館駅の名物駅弁で、「鰊」と大きく印字がされた弁当の包み紙をはがして蓋を開くと、ふっくらとした数の子が四本、そして大きな鰊の甘露煮が三枚、白米の上に広げられている』
       - 概要: 『鳴海遥とは長い付き合い』という主人公の高木志津夫。『二十七歳のときに上司の知人の娘だという女性』と『見合い結婚した』高木ですが『冷え切った』夫婦仲の人生を送るも娘の一人暮らしをきっかけにやがて区切りをつける瞬間が訪れました。一方でかつての同僚だった鳴海と再会する高木は…。

      ・〈遠まわり〉: 『八戸』
       - 注目: 巨大な金属製の肋骨を思わせるホームの天井、種差海岸、七福の岩
       - 描写: 『きれいだよねえ。鮫角灯台。「日本の灯台50選」に選ばれてるらしいよ。写真撮る?』
       - 概要: 『八戸駅のホームに降り』、『重厚な三味線の音色を響かせた印象的な発車メロディに迎えられた』のは主人公の三浦慎治。そんな時、『まあすぐかな?本八戸駅前の公園にいるよー』と『待ち合わせをしている奥平拓海』からメッセージを受けた慎治。大学時代に知り合った拓海の暮らす『八戸』に『函館』から通い続ける慎治は…。

      ・〈あたたかな地層〉: 『盛岡』
       - 注目: さんさ踊り、冷麺、盛岡八幡宮
       - 描写: 『盛岡では、冷麺は焼き肉の締めの一品ではなく、ラーメンのようにそれ一杯で食事として成立するものと見なされているようだ』。
       - 概要: 『もう何度読んだかわからない』松山紫苑の『夜にしか摘めない花』に没頭する中に盛岡に到着したのは主人公の藍井円香。『藍井にとって特別な作家』という松山の小説との出会いの先に自身も小説家となった藍井は、松山の死を編集者の金森から教えられます。そして今、編集者を辞めた金森を『盛岡』に訪ねる藍井…。

      ・〈花をつらねて〉: 『仙台』
       - 注目: 錦ヶ丘ヒルサイドモール、牛タン、萩の月
       - 描写: 『二十年ぶりに訪れた仙台ヒルサイドアウトレット改め、錦ケ丘ヒルサイドモールは平日の午後ともあって空いていた』。
       - 概要: 『仙台に住む母親の俊子から』『ホームに入居している祖母の具合が悪い』と連絡を受け『ひ孫に会うのを楽しみにして』いた祖母のことを思い、娘の聡美と『仙台』へやってきた主人公の大原凛子。そんな凛子は聡美の『癇癪』を宥める中に普段聡美の世話を一手に抱える夫の克彦のことを思います。

      ・〈風になる〉: 『仙台』→『東京』へ
       - 注目: 牛タン
       - 描写: 『切れ込みが入った肉厚の牛タンが下に敷かれた白米が見えないくらいたっぷりと盛り付けられている。たまらず割り箸を割り、脂でつやつやと光る牛タンを口へ運んだ。弾力のある肉は嚙めば嚙むほど肉汁があふれ、口の中がうまみでいっぱいになる』。
       - 概要: 『東京行きの新幹線のグリーン車』に腰を下ろし、スマートフォンのメッセージを確認するのは主人公で国会議員の相庭知子。『とにかく今は早く昼食を済ませ、永田町に戻った後のプランを立てなければ』と思う知子ですが、夫の信治から届いたメッセージにはまさかの内容が記されていました…。

    5つの短編をご紹介しましたが、いずれの短編にも東北・北海道新幹線ゆかりの地を舞台にした物語が描かれています。上記した通りそこには、それぞれの地に由来する場所や食べ物が次から次へと登場します。それは、誰もが知る知名度抜群のものから、これって?というものまで多々ですが、共通するのはまるで読者もその場を観光しているような気分にさせてくれる彩瀬さんのリアルな描写の数々です。まるで紀行文を読むかのようにそれぞれの地を、時には歴史を交えて語られていく物語はそれだけで読み味抜群です。そして、そんな物語に描かれていくのが本の帯にこんな風に記される”存在”です。

     “大切な「誰か」の存在に気づかせてくれる、5つの物語”

    その『誰か』は短編によって全く異なります。〈ひとひらの羽〉の高木志津夫は、かつて会社の勉強会で知り合った鳴海遥と還暦を過ぎても会い続けています。〈あたたかな地層〉の藍井円香は、自身が小説家になるきっかけをくれた亡き松山紫苑のことを思い続けています。そして、国会議員という珍しい設定で登場する〈風になる〉の相庭知子は、きな臭い永田町のことを考える一方で『仙台』を守る夫の信治のことを思い浮かべます。それぞれの人物が思う『誰か』は同じ場所にはいません。物理的に離れた場所に暮らす中にそれぞれの起点を元に『誰か』のことを思い『会いに行こう』と起点の先に進んでいく主人公たち。この作品には、例え物理的な距離が離れていようともそれぞれが持つ太い絆で繋がれた相手を思う気持ちの存在が背景となる物語が、北海道、東北の美しい自然を背景にしっとりと描かれていました。

     『会えるときに会っておかなければ後悔する。そういう時代になったし、自分たちもそういう年代になったのだ』。

    何かしらの理由で離れた土地に暮らす二人の人物の繋がりに光を当てるこの作品。そこには、離れているからこそ気づくお互いの相手に対する思いやりの心が浮かび上がる物語が描かれていました。北国の旅情たっぷりに描かれるこの作品。そんな土地を読者も旅しているかのように感じさせてくれるこの作品。

    季節感豊かに風景を映し取っていく彩瀬まるさんの上手さ際立つ素晴らしい作品でした。

    • オリジナルさん
      私だったら100万ドルの夜景tか五稜郭を思い浮かべますねw
      私だったら100万ドルの夜景tか五稜郭を思い浮かべますねw
      2025/02/03
    • さてさてさん
      オリジナルさん、
      函館というと私も夜景と五稜郭は外せないなと思います。同じですね。
      オリジナルさん、
      函館というと私も夜景と五稜郭は外せないなと思います。同じですね。
      2025/02/03
    • オリジナルさん
      そうですね!  やっぱり函館と言ったらそれですよ〜w
      そうですね!  やっぱり函館と言ったらそれですよ〜w
      2025/02/03
  • 一時期は彩瀬まるの禁断症状に苦しんだが、現在は強い意志を持って定期的摂取に努めている。前回読んだのは去年の11月、三カ月ぶりの彩瀬まるです。戻ってきました!

    今回も全体を流れるテーマ「嵐をこえて会いに行く」が共通して出てくる。この共通概念という纏め方が彩瀬スタイル。今回もその素晴らしさを個々に書き記して永遠に心に留めておきたい。

    〇「ひとひらの羽」古い友人
    いいね。この距離感。友達でうまくいっているのならそれで充分。どう転んでも愛ではないのだ。自分の価値観の範囲内で留まる世界というものもある。自分にそう言い聞かせる。別に冒険なんてする必要はない。このままで良い。それでお互い幸せなのだ。絶妙なバランスで生き続ける。
    〇「遠まわり」遠くの恋人
    三浦の前世はウミネコ。読んでいくと自分もウミネコになりそうな気がする。お決まりのハッピーエンドで油断していたら・・・びっくりしたぁ。最後の最後でどんでん返しがやってくるとは。
    〇「あたたかな地層」業界を去った恩人
    鬼によって人が刈られる村。まるで作物の如く刈り取られるように。中学の図書館では、犯人を突き止めることを諦める推理小説が人気、書いたのは松山紫苑。プロになって憧れの松山紫苑にもう一歩で近づけところまで行くが、寸前で松山紫苑は鬼に刈られてしまう。なるほど、取材先の岩手には二戸市や一関市に鬼滅の刃関係の場所があるようだ。そこで藍井は葛藤する。傑作を求めて自分を追い込む。そして自分のスタイルを恩人と共に確立した。これって私小説ですか?
    〇「花をつらねて」すれ違う家族
    普段からコミュニケーションを密に取ってやれば良いというものでもない。昔気質の、昭和の人々にとっては優劣が当たり前という価値観を持ってきたのだから、今更新しい考えという正論を持ち出しても解決するのは程遠い。骨肉の争いは避けられないもの。ならば古い考え方を持つ人とは疎遠にならざるを得ない。すれ違うべくしてすれ違うのだろう。現代社会でも人間関係は希薄になってきており、これもまたすれ違いの要因となる。つまりどの世代でも家族関係には一長一短があり、良好な関係というものはごく恵まれた環境でしか存在しえないのだろう。すれ違いとどう向き合うかは永遠の課題と言える。
    〇「風になる」途切れかけたつながり
    国会議員を目指すか決断するには十分に考慮しなければならない。それに尽きる話。国会議員になってお金を稼ぐ、大幅な特権を得る時代はもう過去の話になりつつある。現行の国会議員も同様な心構えが要求される。不埒な幻想を抱く大馬鹿者は政治には参加できない時代が到来しつつある。厳しいようだが、国民の生活を豊かにするためには家族を犠牲にする覚悟や、ナイスバディな愛人と楽しむくらいの享楽追及者にならなければならない。現代はそういう政治家像が国民に求められているのだ。世界は、日本はこんなにも変わってしまった。

  • ひらひらの花。大人になっても付き合いがあるって素晴らしいですよね。
    私は、学生の頃から仲良かった友人達と久しぶりに会ったら、株で儲かった話しかしなくて、だいぶ落ち込んだ状態でありました。
    子供が可愛いとか、辛いとか、あそこが楽しい、あれが美味かった、仕事で大変なこととか、そういった事話したかったのに…。

    遠回り。少し不思議なお話でしたね。
    八戸行きたいな。海鮮丼食べたい。

    あたたかな地層。
    宙宇が絶えずわれらに依って変化する。
    時空の話でしょうか。
    これからよく調べて意味を理解したいと思います。

    花をつらねて。結局その人が去った後に残るのは、
    他社に渡せた幸福だけなのかもしれない。
    この帯の書かれてた文章がここで出てきます。
    この言葉にやられて手にとっちゃったんですよね。
    私も幸福を渡せるような人になりたいです。

    風になる。
    議員さんがどれくらいの仕事量で苦労してるのか分からないので、なかなかこのお話に共感するのは難しい。
    少なくないお給料もらって、国会中に寝てる人見るとふざけるなと思ってしまうけど、この登場人物通りならやっぱり大変な仕事だ。
    選挙に行って、投票してるけど、当選した人が自分の生活を少しでも良くなるなど期待を持って投票しておらず、現状維持か、悪くなるなよと思いながらなので、今の議員さんに期待はしていません。

    コロナの時に発表した作品ということもあり、
    コロナ禍ならではのエピソードが多いですが、
    私は本の中にいる時ぐらい忘れたい。
    時代や、コロナ禍エピソードなら仕方ないけど、
    いちいちマスクの話とか出ると、
    急に現実に戻される感じがして、物語の人物達の現実ももしかしたらコロナがあったのかもしれないけど、
    短編集全てでこの話が出たことが少し残念です。
    この感想については私のわがままなのですが。

  • 『桜の下で待っている』からもう10年なんだ、としみじみ。
    あの時、桜が咲く中、北へ北へと東北新幹線で繋がっていった「ふるさと」への思いが、今度は会いたい誰かに向かって紅葉の中を北海道から南へ南へと下ってきた。
    人と人って完全に分かり合うことなんてできない。分かり合えないから分かり合いたいと思うわけで、別々の存在だから、「会う」楽しみも、喜びも生まれる。
    大切な人に会うために、大切な人との明日のために、新幹線に乗り、おいしい駅弁を食べ、時間を超えて会いに行く。
    誰にとってもどこか覚えのある5つつの物語。
    昨日の、今日の、明日の自分の、小さな物語。
    優しくなりたい、優しくしたい、なのにうまくできないいつかの自分を見ているようで。
    大きな物語の陰でひっそりと生きる、名もない誰かのための物語。
    発売日が2月10日というのも、彩瀬まるさんらしくて。

  • 古い友人。遠くの恋人。業界を去った恩人。
    すれ違う家族。途切れかけたつながりを、どうしたら
    取り戻せるのか。大切な誰かの存在に気づかせてくれる
    5つの物語を収録。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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