もう頬づえをついてもいいですか? (実業之日本社文庫)

著者 :
制作 : 渋谷 展子 
  • 実業之日本社
3.20
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本棚登録 : 65
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550350

作品紹介・あらすじ

AからZのアルファベットで始まる26本の映画について、歌人・枡野浩一が短歌を詠み、語る。独自の視点と率直な語り口の映画コラムは、可笑しく切なく綴られ、ときに私小説にも近づく。シネマ文字ライター・渋谷展子により字幕化された短歌と、映画や短歌に想を得て写真家・ハニーが切り取った風景とともに、スクリーンに映し出される一本の映画のように楽しめる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 歌人・枡野浩一さんの短歌と映画エッセイ。
    写真家・八二一(はに・はじめ)さんの風景写真。
    シネマ文字ライター・渋谷展子さんの字幕文字。

    三人のコラボレーションが唯一無二の読み心地を生む。
    正直、枡野さんの映画エッセイは文字数も内容も中途半端だと思ったが、途中枡野さんの私生活に暗雲が立ち込めてきたあたりから面白くなった、と、言うと残酷なのだろう。
    でも、ほんと。←ひどい。
    二年半に及ぶこのエッセイの途中までは、憧れだった漫画家と子供との幸せな生活が垣間見られる。
    しかし、次第に暗い短歌ばかり詠むようになり、エッセイも、私生活が色濃く出た文章が多くなる。
    枡野さんと同じ体験(離婚)をした人、心優しい人は、辛いかもしれない。
    映画とその人の人生が混じり合うのだ。
    これも、幸福な映画の見方のひとつだな、と、思った。←重ね重ねひどい。

    副題にAtoZと付いているように、映画も短歌もAなら、あ、Bなら、ば行の頭文字から始まっている。
    短歌はすべてに「愛」が使われている。
    この本は枡野さんの二年半の「愛」の記録でもあるのだ。

    <愛という字は乱暴にでかく書くなるべく詩には見えないように>枡野浩一

  • AtoZで升野さんの短歌と映画を巡るエッセイ、八二一さんの写真、渋谷展子さんのシネマ文字のコラボ的なプロジェクトです。映画エッセイと言っても全編升野さんの離婚を巡る文章が多くて、こんなにも私生活と仕事が密接なのがアーティストなのかなぁと驚く。まあ升野さんならではなのかもしれない。私は面白く読めたけれど、こういう人との結婚生活はきびしいのかも。元妻側の言い分もわからないしなんとも言えないけれど。『あるきかたがただしくない』も読んでみたくなった。

  • 自分が好きなぷぷっと笑ってしまうような短歌の源流にいる人として、よく枡野さんの名前があがる。しかも、映画も紹介してるらしい。ということで一石二鳥だと思って読んでみた。

    結論を言うと、そんなに好きになれなかった。ちょっと嫌いになったくらいだ。素人ながら、前々から枡野さんの短歌の大味さが合わないと思っていた。コラムを読んで、それが気のせいではないと分かった。そもそも枡野さんは映画マニアではないらしい。同い年の友達から映画を勧められた時と似た感覚を覚えた。

    また、ある映画について「仕事と私生活を混同するな、とはよく言われる言葉だけど、もともと密接に混じりあっているものを別々に考えるほうが嘘なんじゃないか」と語っているように、枡野さんの映画の感想も私生活と混じりあっている。連載時期が良くなかったのだろう、後半は毎回毎回、自身の離婚について書いている。読み心地は良くない。私は枡野さんと性別が違うので、元奥さんの方に同情してしまう。性別が同じだったとしてもたぶん枡野さんに同情してなかったと思う。

    とはいえ、他人から映画をレコメンドされる体験は悪くないなと思えた。それはいい発見。自分でディグるのには、関連の限界があって、どんなにディグっても触れれない領域が存在すると思う。今回紹介された映画の半分は耳にした事もない映画だったし、確実にいくつかは観たくなった。押井守の映画50年50本を次は読もうかな。

    好きだった短歌
    ・愛という字は乱暴にでかく書く なるべく詩には見えないように
    ・馬鹿なんて言うやつが馬鹿なんだろう 愛してるってもう言ったっけ?
    ・VSのあとに愛しい名を置いた 対等であるふりをしたくて

  •  アルファベット順に1本ずつタイトルの映画を選び、その映画についての短歌とエッセイを写真と白黒ページが並ぶ。ページをどんどんめくるのが気持ちがよかった。ところが枡野浩一さんが、『クレイマークレイマー』のあたりから離婚問題を抱えてしまい、一気にトーンが暗くなる。「死」や「絶望」といった言葉が出て来て不穏な雰囲気になっていた。写真家と編集者と枡野さんがそれぞれあとがきを書いていたのだが、写真家と編集者はそのことに全く触れていないのが余計に不穏な感じがした。

  • パンがない
    愛もないけど朝だった

    ケーキをひとり
    食べて笑った

    初めて降りた駅で
    ぶらっと歩いてたら見つけた古本屋で
    背表紙をボーっと眺めて
    手に取ったこの本。

    まだ晩ご飯を食べれていない。
    そういうこと。

    短歌集としても
    映画評としても
    エッセイ集としても
    楽しめた。

    特に自分が観た映画についての
    筆者の独特な感想が新鮮で
    「もう一度観返したくなる」

    全体がバラバラなようだけど
    読み終わると短歌で
    繋がってるような気がした。

    僕の本棚にこの背表紙が並ぶ。

  • 映画評論と短歌と写真。
    この組み合わせ、おしゃれ~
    けど、映画、ほとんど見たことないやつばっかりだったので。
    しかも、読んで見たくなったりもしないので。
    短歌はやっぱり好きだな~と思うけど、映画はいらなかったんじゃ・・・

  • 著者は歌人らしいのだけど、それは知らない。純粋に映画エッセーかと思って読んだ。 面白かった。
    著者が実生活で別居し離婚して子供に会えない、そんな私小説が入り込み、映画のことよりそれがメインだったりして、織り込まれる短歌も相まって刹那面白い。なにか独特の味わいの本だった。 文字が少ないからあっという間に終わった。 見ていない映画の回もあって、それありかよ(笑)

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著者プロフィール

枡野浩一(ますの・こういち)
1968年9月23日、東京うまれ。歌人。大学中退後、広告会社のコピーライター、フリーの雑誌ライター等を経て1997年9月23日、短歌絵本『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』を2冊同時発売してデビュー。簡単な現代語だけで読者が感嘆してしまうような表現をめざす「かんたん短歌」を提唱。入門書『かんたん短歌の作り方』からは加藤千恵、佐藤真由美、天野慶らがデビューした。笹井宏之、宇都宮敦、仁尾智らの短歌をちりばめた小説『ショートソング』(佐々木あらら企画執筆協力)は約10万部のヒットとなり、若い世代の短歌ブームを牽引。高校国語教科書に《毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである》他掲載。受賞歴は2011年11月22日、明石家さんまが選ぶ「踊る!ヒット賞!!」および2022年3月19日、小沢健二とスチャダラパーが選ぶ「今夜も短歌で賞」。

「2022年 『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

枡野浩一の作品

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