乙女の港 (実業之日本社文庫 - 少女の友コレクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550534

作品紹介・あらすじ

舞台は昭和初期、横浜のミッションスクール。新入生の三千子に、ふたりの上級生から手紙が届く。品よく儚げな洋子と、負けず嫌いで勝気な克子。ふたりの間で揺れ動く三千子だが-昭和12年、伝説の雑誌「少女の友」に連載された本作は一大ブームを巻き起こした。少女時代特有の愛と夢、憧れとときめきに満ち満ちた、永遠の名作。雑誌初出時の中原淳一の挿絵を全点収録。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前の少女小説を初めて読んたが、驚いたのは登場する少女達の心と言葉遣いのうつくしさだ
    「マジ」
    「ヤバイ」
    「チョーウケる」

    何語ですか?

  • 86年前の女の子達も今の女の子達と違わないと感じました
    素敵な先輩(女の子)、可愛い後輩(女の子)に憧れ恋に似た感情をもつ
    可愛いものオシャレな衣装に憧れ
    素敵な風景に感動する
    ときめいたり泣いたり
    胸がキュンとする小説にときめいたり
    オシャレな挿絵にときめいたり
    86年前の小説なのにちゃんとキュンとなりました

    それと、戦争の前の時代をイメージするとどんよりした雰囲気しかイメージ出来なかった
    でも、実際は人々がキラキラとその時代を生きていた明るい時代だったのかなぁと
    その数年後には暗く重い時代があったのだろうと思います

    とにかく
    86年前の女の子達も
    今の女の子達と変わらないことが興味深かったし嬉しくなりました
    日本の女の子は今も昔も「かわいい」と「オシャレ」なことが好き
    楽しい本でした

  • ザ・少女小説。
    代作云々、下書きと清書云々、合作云々、
    という成立事情は込み入っているので、ザックリと川端康成・中里恒子・挿絵の中原淳一の合同プロジェクトみたいな理解でよさそう。
    カバーは中里恒子も連名にすればいいのにとは思う。
    川端の飯のタネになったという点は、水木しげる、つげ義春、手塚治虫、トキワ荘の面々も初期に少女漫画を描いていたという事情と似ているのかもしれない。
    要は多作な作家の氷山の一角でもあった、と。

    で、思った以上に「マリア様がみてる」してた。
    三千子と洋子だけでは理想的すぎて話にならないので克子という掻き回し役を出すとか、あるある~とついにやついてしまったよ。
    エス文化と百合は違うとか厳密な考証はあって然るべきだが、まずは雰囲気を愉しめた。
    この文脈の先に変奏として皆川博子「倒立する塔の殺人」もあるんだろう。

  • 『彼方の友へ』を読んで こちらも。

  • 少女小説の源流。
    主要人物の個性の違いが「花」のようで、そこも素敵。
    当時のほとんどの読者も作中の人物も、お金持ちのお嬢様なのだろうけど、結び直前、作中では卒業直前の、テスト問題ときたら・・・私、こんなの手も足も出ません。
    また、その時の先生の生徒たちに贈る、厳しくも暖かい言葉がじんと胸にせまります。
    この言葉、そのままの思いが、当時の少女小説には流れていたのでしょうか。

    ところで、作中の少女たちは、生きていたとしたら、90歳ぐらい!?その後、どのような人生を送ったのかをふと思います。

  • 最後がとても教訓じみているなと感じた。克子の強引でしつこいところは気に食わなかったけれど、なんとなく気持ちがわかるような気もした。私だったら、三千子のように、洋子さんがいるのに克子に靡いたりしない、とおもったけれど、大事なのはそういうことじゃないのだと思う。

  • ミッションスクールを舞台に繰り広げられる三人の女学生のお話。
    初見の人は、巻末の解説から読み始めるほうが、時代背景やエスという用語について分かるので推奨。

    本文については、一文一文に込められた三千子や洋子の想いがとても深いです。
    だらだら読んでいると、その部分に気付かなくて突然展開が変わったように感じられることも多々。
    一読目ではストーリー把握で精一杯、再読して感情が分かる、そういう話ですね。
    川端康成さんの文体も瀟洒で耽美に表現され、読んでいて心地よい。
    百合という題材からかライトに見られるかもしれませんが、中身は重厚、そういうお話でした。

  • イギリス留学時、ロンドン三越内の日本語の本屋さんで立ち読みしてから、ずっと読みたかった本(ロンドンで買うと2.5倍以上の値段なんだもん…)
    中畑淳一のロマンあふれ少女挿絵、当時大流行した少女小説を、現代読めるとあれば、興味津々!
    でもぶっとんだのが、作者川端康成!?!?!?

    ノーベル文学賞を受賞した大家が、十代の女の子向けに少女の気持ちなんて描けるの…?と思ったが、いい意味で期待を裏切られました。
    女子高のスクールカーストっぽいのや、可愛らしさや妬みや自慢、微妙な思春期の友人関係までばっちり。

    それにしても、疑似恋愛のように、上級生と下級生の女の子が「Sの関係」(SはSisterの略)を結び、下級生は上級生を「お姉さま」と呼び、まるで付き合っているように1人としかそんな関係を結べないという、現代からはちょっと想像しがたい少女間の関係。
    でもそれも、独占欲を満たした友情の範囲にとどまるんですけどね。

    良家の子女(夏休みに別荘に行っちゃう)の、ふわふわしつつでも自分の人生にしっかり意思も持っている、少女たちのお話です。

  • 少女小説は苦手であるが、川端氏の「少年」を先に読んでいたので、
    それを踏まえて楽しく読めた。

  • 女学生たちの人間模様が面白かったです。いつの時代も乙女の胸の内は激しいもの。狭い世界の中でも色んな感情が渦巻いてるのですね。
    物語の面白さも然ることながら、連載当時に夢中になっていた少女たちがいたことに思いを馳せると感慨深いものがあります。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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