腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550626

感想・レビュー・書評

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  • 市民サーヴィス課臨時出張所
    櫃洗市のみなさまへ
    日頃のご意見、ご要望、なんでもお聞かせください
    個人的なお悩みもご気軽にどうぞ
    櫃洗市一般苦情係
    との不思議な貼り紙と共に、
    ひょろりと鉛筆みたいに細身で、ひと昔前の肺病病みの文学青年みたいに尖った風貌に、丸いフレームの銀縁メガネ。若いのか年寄りなのかよくわからない。無造作に切り揃えたとおぼしき髪には白いものもちらほら混じっているようだが、基本的には年齢不詳。むっつりとした表情や黒っぽいネクタイが如何にもお役所的に堅い感じだが、両腕の肘まで黒い腕貫を嵌めた男が
    大学に、病院に、警察署に・・・
    突如現れ、悩める市民たちの相談に乗り、見事解決のヒントを与える。

    箸休めにちょうど良い。

  • 街のいろいろな所に、今まで見なかった簡易机と折りたたみいすに無愛想そうな腕抜男が出現する。「市民サーヴィス課臨時出張所うんぬん」とあるので、興味を惹かれた人がいろいろ悩みや不思議なことを相談してみると、最後に何かひとことくれて、はいお終いとなって仕舞う。ところが、その言葉をもとに相談者が思いを巡らせてみると、するすると問題が解けてしまうのだ。この腕抜男よりも、相談する人々の物語がなかなか面白いのだ。どうしようもないやつも出てくるが、最初2編の大学生の男女のお互いへの思いが成就してよかったね。最後の画伯の話はなかなかいい。

  • 困った人たちの前に現れる、櫃洗市市民サーヴィス課臨時出張所。ライトなミステリで面白い。殺人起こらなくても、ちょっとした疑問が実は…っていう驚きが面白い。あと登場人物のおかしな名前も好き。

  • 何とも不思議な読み心地(^ ^;

    まず、探偵は主役ではない。
    櫃洗市という地方都市を舞台とした、連作短編集。
    舞台設定や時間軸は連続していて、
    各章の出演者同士も微妙に絡みがあったりする。

    その「狭い世界」の中で起きる様々な不思議を、
    市役所の「よろず相談窓口の臨時出張所」みたいな
    神出鬼没な場所に陣取る男が解決していく。
    その男の風貌が、特に特徴もとらえどころもない
    「公務員顔」で、今どき腕貫(腕カバー)をはめている。

    ...ということで「腕貫探偵」となる(^ ^;

    探偵は(全作品通して男の名前すら出てこない)、
    相談者から話を聞いただけで、本質をズバズバ言い当てていく。
    正に快刀乱麻の活躍...ではあるのだが、
    当人は無表情&無感情(^ ^;
    徹底して「我関せず」(^ ^;

    相談者から持ち込まれる内容は、
    殺人事件から「ちょっと不思議」まで、様々。
    また登場人物も事件もバラエティに富んでいて、
    アハハと笑い飛ばせるものからホラーテイストまで、
    一冊で何作品も読んだような充実した読後感(^ ^

    基本的には明るく楽しい文体で、
    微笑ましい恋愛事情なども絡んでたりして、
    ほっこり幸せな気分で読める(^ ^
    エンタメとしては、とても上質かと(^ ^

    文庫版の巻末解説が秀逸(^o^
    本文より後書きで吹いた(^ ^;

  • 人の話を聞いただけで事件解決。すごくない?

  • 神出鬼没な安楽椅子探偵が謎を解決していく連作ミステリ。

  • 最近ミステリといえば重い話が多かったので、軽く読めるポップな面白いミステリ探して手に取った。
    続編が何冊も出てるってことは面白いんだろうなと判断。
    結果、ちょっと思っていたのとは違っていたけど、希望通りドンピシャど真ん中の軽めなミステリでした。

    思っていたのとは違っていた原因は私の空目!笑
    “腕貫”が“敏腕”に見えていて、こうアクティブに動きまわる敏腕探偵を想像していたので、読み出して早々に『うでぬきじゃん!!!!確かにどこをどう読んでもうでぬきじゃん!!』と自分にツッコんでしまった。笑

    さて、話としてはなんてことない安楽椅子探偵モノ。
    文章からにじみ出る古さはまぁこんなものですよね。
    連作集になっているし、背景より謎解きに重きを置いているので、感情に振り回されることなく時間をかけることもなく純粋に謎解きを楽しめさっくり読めます。

    ミステリとしてどうかっていうより、私の今の気分にちょうどいい作品でした。
    ただ読んでみて思うけど、数冊続編出てるよね?
    この感じで続刊もいくの????この作品のテンションは一冊にまとめてあるから持つのであって、毎回この感じだときつくなるな…




    @図書館本

  • 連作短編ミステリ

    姿かたちは公務員だけど、神様型の名探偵

    腕貫さんに推理のヒントをもらって登場人物が謎を解いたり、腕貫さんが真相を推理して物語が終わったり、色々
    読後感も色々
    モヤッとしたり、ゾクッとしたり、ニヤッとしたり

    腕貫さんは基本的に人間味のないキャラクターなんだけど、最終話で登場人物と会話をするシーンがあって、そこが意外ポイントで好きです
    本当に他愛のない世間話のような会話なんだけど、なんか良かったなぁ

    収録作では『恋よりほかに死するものなし』が一番好き

    西澤作品といえば珍名さん……は慣れたんだけど、地名まで難読地名にするのはやめてー!(笑
    またはフリガナをずっとつけておいて……お願い……

  • 読書録「腕貫探偵」3

    著者 西澤保彦
    出版 実業之日本社文庫

    p129より引用
    “寿憲が〈かや〉へ通いつめてきたのは、そ
    こが他者の心情を慮ることなくお互い思う存
    分馴れ合って生きてもいいんだという刹那的
    な錯覚を提供してくれる場所だからである。


    目次より抜粋引用
    “腕貫探偵登場
     恋よりほかに死するものなし
     化かし合い、愛し合い
     喪失の扉
     すべてひとりで死ぬ女”

     神出鬼没の役所の相談窓口とそこにいる事
    務員の記号のような男に持ち掛けらえる出来
    事を描く、短編連作ミステリ小説。
    同社刊行作文庫版。
     昨夜の出来事の対応で、疲れ切っていた大
    学生・蘇甲純也。事務手続きのため大学の事
    務室を訪れた彼の目に、一枚の張り紙が映り
    込んだ…。

     上記の引用は、なじみの飲み屋で失敗した
    男についての一文。
    外にありながら、少しでも気を許せる場所と
    いうのは、あるとありがたいものなのでしょ
    うね。こういう場所が、歩いて行ける距離に
    ある生活に、少し憧れを持ちます。
     名前もない、役所の相談窓口の男が、一応
    の主人公なのでしょう。すべての話を通して
    出てくるのは、舞台となる架空の都市とこの
    男だけです。しかし、本文中でこの男が出る
    場面の方が少なく、事件の相談を持ち込んだ
    人たちがそれぞれの話の中で、男のアドバイ
    スに従って対応していきます。解説では狂言
    回しと表現されています。
     登場人物の苗字など、名前の付け方が特徴
    的。解説によると、この著者の持ち味のよう
    ですが、希少な苗字の人ばかりで、最初に振
    られた読み仮名を忘れると読めなくて、途中
    から頭の中でアイツ・コイツと変換している
    自分がいました。

    ーーーーー

  • どんなに眼と鼻の先に置かれていても、
    心身ともに健やかな者の視界には
    絶対に入ってこないというものがこの世にはある。

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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