モラトリアム・シアターproduced by腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550954

感想・レビュー・書評

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  • 大会社の御曹司なのに継ぐ気もなく、目的もなくアメリカに語学留学し、大学卒業しても就職の当てのないヘタレの住吉ミツヲ。前作の男前女子大生住吉ユリエの兄とは思えない情けなさ。コネで有名私立女子高に英語教師として押し込められたが、つぎつぎと教員関係者が殺されていき、あろうことか自分が連続殺人の容疑者に!ところが、教え子の美少女や大富豪探偵や腕貫探偵が寄ってたかって助けてくれようとする。全く馬鹿馬鹿しくてやってられないよというところだが、まあお話としては面白かった。推理の方は、はいはいそうですかというしかないなあ。

  • 腕貫探偵が謎を解くこれまでの短編集とは違って、一冊でひとつの事件。
    前作で腕貫探偵をだーりんと慕うようになったユリエちゃんの弟が主人公。
    ユリエちゃんもしっかり登場して、二人のやりとりは楽しめました。
    とにかく登場人物が濃い。
    キャラが渋滞してる感じはありますが、シリーズの変化球としてはおもしろかったです。

  • ユリエさんの兄、ミツヲ君を中心に物語が展開。彼の過去の封じられた記憶を探りつつ、時間軸と人間関係がグルグル展開していく感じは、「ああ、西澤作品だな~」と安心クオリティ。
    腕貫さんあんまりでてこないけど、タイトルが秀逸なので許せちゃう。

  • プロデュース…最後まで読むと意味がひしひしと。前作までで活躍の女傑ユリエさんの兄が主役。女系一族だけに、頼りない男性として描かれているけど…最後までうん。パパを除いてハッピーでめでたしめでたし。

  • 腕貫探偵の外伝。長編のスラップスティックなコメディミステリ。失われた記憶を取り返すモチーフは他の作品にもあるが上手だと思う。登場人物は、美人ばっかりだが、あんまり萌えとかねらってなくて、個性的で面白い。

  • 舞台は架空の櫃洗市.2日間に関係者(事務員,卒業生,教員の妻)が4人連続で不審死を遂げた名門私立女子校.そこの新任講師の住吉ミツヲは目覚めると血塗れの包丁を握って女性の死体の脇に倒れていた.もしかして自分が? 他にもあるべき記憶がいくつか欠けているミツヲ.女子高生探偵を名乗る美少女・遅野井愛友の積極的なアプローチにはたじたじである.そして騙される快感.西澤節全開である.腕貫探偵,大富豪探偵他,櫃洗市シリーズの個性豊かな登場人物も勢揃いなので,『腕貫探偵』シリーズ,『必然という名の偶然』を先に読むともっと楽しめる.

  • 櫃洗市の私立女子高を舞台にした殺人事件。大半は事件の容疑者・住吉ミツヲの視点で進む。このミツヲが頼りない。個性の強い母親と妹の影響か自己主張もろくにできずにただ言われたことに従い、教え子の遠野井愛友に懐かれ、その後振り回され。ミツヲの記憶に不明な部分があり、その謎は後半にやっと明かされる。冒頭で警告されてたのにすっかり騙されました。弟君が亡くなっていたとは、まったく出てこないからおかしいとは思った。腕貫探偵いい仕事してるなぁ。小説に登場した愛友の伯母大富豪探偵の小説が積読本の中にあったのでさっそく読もう。

  • 〇 概要
     お嬢様学校として有名なミッションスクール,メアリィ・セイント・ジェイムス女子学院(MSJ)の学校関係者が続けて死亡する。同学院の新任英語教師,住吉ミツヲは,混沌とする記憶を抱えたまま,事件に巻き込まれていく。果たして,彼は本当に同僚教師の妻を殺害してしまったのか?
     事件のカギを握るのは,魔性の女性事務員なのか。女子高生探偵遲野井愛友,大富豪探偵月夜見ひろゑ,そして腕抜探偵といった豪華なラインアップの探偵が登場する櫃洗市を舞台としたミステリの決定版!

    〇 総合評価 ★★★★☆
     好きか嫌いかといわれれば好きな作品である。住吉ユリエ,遲野井愛友など登場人物が非常に魅力的であり,そもそも櫃洗市という舞台も好きだ。書評などを見ると,推理小説としてはいまいちという感想も多い。ストーリー全体として見れば意外性はあるのだが,殺人事件の真相を推理するとなると伏線も乏しいし,真犯人も地味。推理小説としてはそれほど評価できないのは分かる。これは,キャラクター小説として,櫃洗市を舞台とした群像劇を楽しむ小説として読むべきだろう。そのように読んでみると,結構楽しめた。
     
    〇 サプライズ ★★★☆☆
     MSJの関係者である薩川佐由理,茅野真奈,智恵クロフォード,瀬脇修一郎の4人が死亡していたが,薩川佐由理,智恵クロフォード,瀬脇修一郎の三人を殺害したのは茅野真奈だった。茅野真奈は,智恵クロフォードを刺殺した後,投身自殺をする。茅野真奈が起こした連続殺人事件に,住吉ミツヲの記憶障害を重ね合わせることで,混沌とした物語を構築している。標葉いつかというMSJの女性事務員にまつわる「標葉いつかと関係を持った男は,決まってその直後に身内の誰かが謎の死を遂げる」という都市伝説を話に絡めてくる。
     住吉ミツヲは,ひょんなことを理由(この理由に,腕抜き探偵残業中の「青い空が落ちる」の登場人物,松嶋充子を登場させるのが心憎い。)に,自分の弟,ミツヒロを殺したいと思って標葉いつかと関係を持つ。そして,本当にミツヒロは交通事故で死んでしまう。ミツヲは自責の思いからミツヒロの死に関する全てを忘れてしまう。
     ミツヲは記憶を失うだけでなく,ときにはミツヒロを演じてミツヒロの死を忘れようとする心の病に陥っており,その状態を脱するために,高校生探偵である遲野井愛友が大富豪探偵である月夜見ひろゑの財力を使って,標葉いつかも殺害され,その真犯人がキムバリィ・ブラウン園長と早藤行雄教頭であるという大芝居を慣行する(この大芝居に,榎本裕子アナウンサーを使うのが心憎い。)。
     という荒唐無稽な話。終盤の怒涛の展開は,意表を突く真相なのだが,話があまりに荒唐無稽すぎて,サプライズはさほど感じなかった。ミツヲの記憶障害を解消するために行った大芝居を踏まえたラストも,「夢オチ」を思わせるようなオチ。話の骨格となる連続殺人の犯人が茅野茉奈で,話全体の構成としては意外性があるのだが,殺人事件の真犯人としてはいたって平凡。総合的に見て,サプライズはぎりぎり★3かな。

    〇 熱中度 ★★★★☆
     住吉ユリエ,月夜見ひろゑ,腕抜探偵といった,これまでのシリーズでも登場した魅力的なキャラクターに加え,遲野井愛友,住吉美津子,住吉譲流と個性豊かで魅力的なキャラクターがてんこ盛り。話としても,「この話にどんなオチをつけるんだ」と思わせるほど大風呂敷を広げていく展開。熱中度は非常に高い。

    〇 キャラクター ★★★★★
     魅力的なキャラクターがてんこ盛り。これまでの櫃洗市シリーズで登場したキャラクターがオールスターとばかりにそう登場するだけでなく,この作品がデビューとなる女子高生探偵の遲野井愛友も非常に魅力的。また,主人公の住吉ミツヲこそやや影が薄いが,その母,住吉美津子,父住吉譲流のキャラクターも一本筋が通っていて魅力的である。推理小説としてではなく,キャラクター小説として読んだ方が面白いかもしれない。キャラクターは文句なし。

    〇 読後感 ★★★★☆
     荒唐無稽な話であるが,読後感は悪くない。住吉ミツヲと遲野井愛友が結ばれるというオチで,住吉家と遲野井家の家族が一緒に食事をするというラスト。殺人事件があったり,住吉ミツヒロが死んでいたり,そもそも住吉譲流と遲野井愛友の母が不倫の関係にあったなど,どろどろした背景があるので,冷静に考えるとそれほどハッピーエンドとも思えないのだが,そのような展開を忘れさせる気持ちのよいラストである。

    〇 インパクト ★★★☆☆
     住吉ミツヲの記憶を取り戻すために,大掛かりな芝居をうったという話全体にはインパクトがある。しかし,推理小説としてみるとインパクトは薄い。殺人事件の真相が地味すぎるのだ。キャラクターが魅力的なのは美点だが,やや過剰なキャラクターが,個々のキャラクターの活躍のインパクトを薄めているのも事実。サービス精神が旺盛すぎたきらいはある。インパクトは★3か。

    〇 希少価値 ★☆☆☆☆
     腕抜探偵シリーズはそこそこ人気がありそうだけど,モラトリアム・シアター自身がどこまで人気があるかは謎。西澤保彦作品は映像化されないし,実業之日本社文庫ということもあって将来的には手に入りにくくなる可能性はある。

  • ユリエの兄、ミツヲの物語
    大どんでん返しありで読み応えあり
    腕貫さんがあまり登場しないのが残念

  • 腕貫探偵スピンオフ作品。
    語り手の新任教師ミツヲは何か記憶の欠落を抱えているような曰くありげな人物で、あまり好感が持てない。彼が私立女子高で続く不審死に巻き込まれることで周囲の人間が事件の真相に迫っていく…
    ミステリとしてはちょっとどうなの、という感じだったが、キャラが個性的で読みやすいのはいつも通り。腕貫探偵の出番が少ないのが残念。

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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