よろこびの歌 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 750
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550992

作品紹介・あらすじ

著名なヴァイオリニストの娘で、声楽を志す御木元玲は、音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる-。見えない未来に惑う少女たちが、歌をきっかけに心を通わせ、成長する姿を美しく紡ぎ出した傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「終わらない歌」を先に読んでしまい、その前作のこちらをやっと読めました。
    この本の一章めにあたる短編の「よろこびの歌」は読んでいたのですが。

    あの女の子達の高校時代の話。
    とてもいい感じです!

    御木元玲は受かると思い込んでいた音大付属高校に落ちて、新設の明泉女子高校に行くことになった。
    母親は有名なヴァイオリニストで、高校受験に特別な準備は要らないと言っていたため、どこか軽く見ていたのだろうと考える。
    母親へのコンプレックスと葛藤、つまらない毎日。
    目的を見失い、高校とは別に声楽の勉強をする予定だったのが、そんな気にもなれなくなる。
    孤立する玲をクラスメートは遠巻きにしていた。

    校内声楽コンクールで、御木元玲に指揮をやってもらおうという声が上がる。
    玲の才能はちょっとした指導にも現れるが、専門的に過ぎるやり方についていけないという生徒も。
    だが、マラソンに苦戦する玲を見ていた彼女らは、一人二人とあの歌を歌って声をそろえ、玲を応援する。
    その声を聞いた玲は‥

    どこか他と違う玲へ向ける級友のまなざし。
    小柄で元気な原千夏は、うどん屋の娘。音楽をやりたかったがピアノを買ってはもらえない環境だった。
    音楽室で玲に歌を教わるようになり、父の自慢のカレーうどんを玲に食べてもらいたいと思う。

    中溝早希は、十六にして余生と感じている。
    中学ではソフトボースのエースだったが、肩を壊したからだ。

    牧野史香は、人には見えないものが見え、それを伝えようか迷う。
    思い切って伝えたとき‥?

    里中佳子は、南君に初めて家に呼ばれた後、ふったのかふられたのか‥
    いきなり地下の核シェルターを見せられて驚き、引いてしまったのだ。
    自分には取り得がないと感じている佳子だが‥

    周りを見ていなかった玲も、少しずつそれぞれの事情や気持ちに気づいていく。
    教師の浅原は、もう一度、玲を送り出すために合唱しようと皆に声をかけるのだった。

    それぞれの事情がわかりやすく、悩む様子もはっきり描かれ、切なさとさわやかさと共に、情景がすっと入ってきます。
    極端な不幸というわけではないのだけれど、当人にとっては人生が変わるような大問題というのがよくわかります。
    互いにすべてを知るわけではないけれど、刺激し合い、交差し、時に寄り添う。
    こんな時期を過ごせたら、幸せですね。
    また音楽を聴きながら~再読したい小説でした。

  • 先日、ゴスペルを聴いた。
    地元の駅前広場にステージが設けられ、カルチャースクールの生徒とおぼしき女性達が歌声を披露していた。『アメイジング・グレイス』に始まり、クリスマスらしいナンバーが次々に歌われる。
    普段は地道にお仕事をされているであろうOLさんや、自転車の前後ろに子供達を乗せてペダルを踏んでいるお母さん達。この日ばかりは精一杯のお洒落をして「ハレルヤ!」と満面の笑みで声を上げる姿には、ちょっと感動するものがあった。
    文庫化されて気になっていた『よろこびの歌』をすぐに買った。

    挫折と諦めから始まるそれぞれの高校生活。

    ばらばらだったクラスメイト達が合唱を通じて一致団結......って感じじゃないのがいい。そこがいい。
    それぞれに独立したパートが、微かにふれあい影響しあいハーモニーを奏でていく。すべての人々がみんな普通で特別。どんな人にも自分にしかわからない思いがあるし、また自分が思っている以上に人はそれぞれ素敵なんだということ。

    第一話『よろこびの歌』の終盤から『カレーうどん』は震えた。
    そして、明るく開けていく様なラストが素晴らしい。
    読了後、「あそこ良かったよね」と感想を分かち合っているかのような、大島真寿美さんの解説も良かった。

    時節柄、市民参加の第九コンサート等も各地で開かれるようだ。
    「合唱なんて、俺興味ないし」なんて思っていたけど、今はちょっとやってみたい気もする。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      同じ本を読んで、花丸をいただいたのが恥ずかしくなるくらい素晴らし...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      同じ本を読んで、花丸をいただいたのが恥ずかしくなるくらい素晴らしいレビューで
      この本を読んだときの感動が鮮やかに甦ってきました。
      「すべての人々がみんな普通で特別」という言葉が、この本の印象にあまりにもぴったりで
      趣味も嗜好も家庭環境も、クラスの中での立ち位置もまるっきり違う少女たちが
      ひとりひとり集まって、それぞれの思いを抱えて歌う、そのことを
      こんなに短い言葉で伝えられるなんて、とため息が出ました。

      どのレビューも、そのまま本のあとがきや帯に使えてしまえそうなkwosaさんの
      本棚もレビューも、これから心待ちにさせていただきたいと思います。
      今後ともどうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/12/21
  • とある新設女子高。そこに通う女の子達。みんな、それぞれ事情があって不本意ながらもこの女子高に入学し、毎日を淡々と生きている。そんな淡々とした人生の中に合唱という光が差す。
    ちょっとしたきっかけから合唱する事になり、それぞれが様々な想いを乗り越え、心を一つにし、偶然じゃなく必然だったと思える。学生の頃の合唱コンクールでは、私自身そんなに深く考えた事なかった。この本を読みながら、私も一クラスメートになり一緒によろこびの歌を歌えた気がした。

  • まさに青春小説だと思った。
    女子校生の話だけど、男の自分もすごく共感できる部分があり、満足の内容。

    すべてをやり過ごすことだけで過ぎていく高校生活。
    個人的によくわかった。
    すべてが宙に浮いてて何も実感のない感じがある。
    そんな感覚の主人公とその周りの女の子たちが奏でることになる歌の物語。
    みんな一緒だと思っていたり、あの子は特別だと思っていたり、
    さまざまな出発点だけど、そういった周りの音に気付き、
    耳を澄ませて、自分の音に気付き、認め、一つになって歌になる。

    そんな本人たちにとってきれいとは決して思えないプロセスがとても美しく描かれていたように思う。

    宮下さんの作品独特の雰囲気、和やかさと琴線に触れる漂う緊張感みたいなものが好き。

  • 素晴らしかった!
    読後「2009年小泉今日子さんが推薦」という帯を改めて見て
    小泉今日子さんのことまでますます好きになってしまった・v・
    あと、すさまじく
    ハイロウズとブルーハーツを聴きたくなりました・v・!


    以下、1話ずつの感想。

    「よろこびの歌」
    鬱屈、とか、閉塞感、とか
    静かに押し込められて死んでいくみたいな空気を感じ取っている。
    くせに、たぶんものすごくプライドが高くてある意味自信過剰なんだろうな、という主人公が可愛い。笑
    あの「周囲に比べて熱量が高すぎて空回りしている、でもどうしても漏れて来てしまう」力み具合とか
    けっこう思い当たる節もあったりして、ますます可愛い。
    マラソンのシーンは泣きそうになった。

    「カレーうどん」
    泣いた。
    千夏が本当にステキだ。
    この
    「よろこびの歌」→「カレーうどん」の流れは
    本当に神がかっていると思う。
    だからこそきいてくる「__うれしいな」だと思う。(ここで泣いた)。
    サンタクロース問題から至った想いは、
    すごく大きくて厳然とした真理だったはず。
    自分のしあわせさに気づいた彼女が、
    でも、いつか
    「それで満足しきらなかった人たちの声が社会をベターに変えてきた」
    ことに気づくのだろうか、とか
    物語とは少し関係ないところで考えたりもした。
    でも、彼女がしあわせでいることで周囲はかなり救われているし、
    彼女は彼女のままがやっぱり一番ステキなのかな。

    それにしても、
    玲と千夏の関係性は、本っ当ーーーにステキだ!!

    「No.1」
    余生だ、という表現にドキっとした。
    どちらかと言うと自分ももう余生を過ごしている人間な気がしてしまっているのだけれど
    彼女はまた本道を生き始めた。
    ただ、「余生」だと思えるからこそできることもあったりするのよーとか
    少し思わずにもいられなかった^^;
    “余生感”は、けっこう大事だと思う。

    「サンダーロード」
    可愛かった。
    三谷くんがイケメン。
    「メカに弱い」(笑)
    玲がサンダーロードに力強く立ち、やがて羽ばたいていく姿を想像する
    彼女の持つビジョンの豊かさにうっとりした。

    「バームクーヘン」
    南くんには正直、ひいた。
    だから、彼(シェルターをつくった彼の家族、か?)を
    「しあわせだと思う」と言ったキャラクターがいたことに
    とても新鮮な気持ちを抱いた。
    …でも、やっぱいきなりシェルターに連れ込むのはいくない。きもい。けど。
    それにしても
    ここまでの話を通して一貫していたのだけれど、
    ボーズ(=入道)が効いている。

    「夏なんだな」
    春が好きで夏が嫌いな私には
    個人的には多々「いやいやいやいや!!笑」というところもあったけれど
    とても鮮明な話だった。
    好き。
    ひかり、は
    季節だって問わず、きっとおだやかにぽかぽかと
    あたたかく在り続けられる人になるのだろうな、と
    ちょっと憧れの気持ちすら持ちそうになった。
    姉ちゃんもステキだ。

    「千年メダル」
    集大成。
    まさに合唱のような、ひとつになって広がっていくような章。
    玲が見違えるようにカッコよく、
    柔らかく、強くなっていて
    そんなにイケメンなのに「鼻息荒いよ」とか突っ込まれていて
    なんとも愛おしい。
    千夏との関係性も相変わらずしなやかに強固で、よかった。
    「すごいと思う。どれも間違っていない。」が
    素直すぎてホレそうになった。
    こう本心から思えているのだな、ということが伝わって来た。
    また
    「昔の私とどこが変わっただろう」以降の全ての流れには泣いた。
    2つ目の泣きポイントだった。
    「当日は、よく晴れた。」からの
    最高潮への怒濤のステップが
    文字通り、凄まじく晴々としていてよかった。
    最高のfin.に向けての軽やかなステップだった。


    ステキな作品だった。

  • 3月に入り、受験生の皆さんも長い努力からほっと息ついている時期かもしれません。志望校に入れた方も、そうでなかった方も、新しい生活に自分の道を見つけられると良いですね。

    本書に登場する玲も声楽家を目指し音大の付属高校を受験しましたが失敗。普通科高校で自分の行くべき道を見つけられず、著名な音楽家の母とも上手くいかず、クラスの中でも自ら孤立していました。

    7音階のお話しの中に登場する学生たちも皆、思春期の中それぞれの心の悩みを抱えて過ごしています。純粋に歌う事のよろこび、合唱を通じて響き合う歌声の魅力、やがて皆、自分の殻から外に出て繋がっていきます。そして玲は本来の目指すべき道へ。

    合唱コンクール「手紙 十五の君へ」をアンジェラアキと合唱部の子供たちが泣きながら歌っていたシーンを思い出します。皆の歌がつながった時、いろいろなこころの中の感情が吐露されるのでしょうか。素晴らしい経験だと思います。

    仕事を早めに切り上げて図書館に寄ると、受験生の皆さんが机で一生けん命頑張っている姿をいつも見かけす。閉館時間ぎりぎりまで、赤本と格闘する姿、ちゃんと見てましたよ。

  • 自分らしさとは何かを模索している女子高生たちの、合唱をめぐる物語。友人たちと関わる中で、自分に足りないものや、将来の不安などさまざま悩みながら、合唱をきっかけに自分自身と向き合ったり、他者を認めたりしながらそれぞれが成長していく。
    進路や挫折など私自身も悩んでいたのがよみがえってきた。自分らしさや個性について悩むことは、今でもある。自分らしさの捉え方はいろいろあって良いんだと再認識した。

  • 宮下奈都さんの本は2冊目だけど、この方の文章、すごく好きになった。
    青春とか成長とかくすぐったいような気がしてたけど
    素直にすっと心に入ってくる。さりげなく大事な事がかかれてると思う。
    自分が、とても恵まれてて幸せな環境にいることを、押し付けがましくなく教えてくれると思う。

  • 「メロディフェア」が面白かったので、別の本も読んでみようと手にした本。

    今年読んだ中で最高によかった。

    「著名なヴァイオリニストの娘で、声楽を志す御木元玲は、音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、・・・」と言う設定が面白かったのが理由だけど、校内合唱コンクールを通じて頑なだった主人公の心に変化が生まれると言う連作小説です。うまく書かれているなって感心しました。

    クラスメートを通した連作小説になっているけど、友情が変に前面に出てない雰囲気(と言うか本来こうあるべきなんだろうなあ、べたべたしないところでつながっていく感じ)がまたすごくいいと思う。

    作者は福井県出身。全作読む目標が出来ました。

  • この人の本は、太陽と豆がなんとか…いうタイトルの小説を読んだことがある。いい本だったなという印象が残っていて、こないだ文庫の棚を見てたら、これがあったので、借りてみた。

    舞台は、新設の私立女子校。高校演劇をテーマにした『幕が上がる』の「歌」バージョンというか、「歌」をテーマにした高校生群像のものがたり。

    ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの7つの章のタイトルは、ザ・ハイロウズの歌のタイトルからつけられている。それぞれの章は、同じ高2の6人のものがたりで、話のキモになる御木元玲には最初と最後の章があてられ、他の5人の同級生の話があいだの章で書かれている。

    お互いが、どういう位置にいるか、どういう関係にあるか、ということが、この7つの章を読むなかで、だんだんわかってくる。同じクラスメイトに対してもつ感情は、それぞれに異なり、憧れもあれば、敬遠もあり、さして関心がないという距離もある。

    年間行事のなかでは、ほとんど"やっつけ仕事"のような合唱コンクールが、クラスで「歌」に取り組んだ最初。指揮者として推薦されて、御木元玲は自分なりにクラスの練習をすすめようとするが、どこかちぐはぐなことになる。「音楽は楽しい」はずが、こんな練習楽しくないよとクラスメイトから率直に言われもする。

    合唱コンクールはぼろぼろだった。うまく歌えず、クラスはまとまらず、玲は音楽に対するわずかな自信も失いかけた。

    その玲が、歌のはじまりはこういうものだったのかもしれないと思ったのは、マラソン大会でやっと最後にゴールしようとする自分にむけて、クラスメイトたちが一人また一人と集まり、声をあわせて歌ってくれた歌だった。合唱コンクールのときとは、まるで違う歌に聞こえる。

    ▼よろこびや、祈りや、誰かに届けたい思いを調べに乗せる。同級生たちが私に向かって─おそらくは学校一、足の遅い私を励ますために─いつのまにか声を合わせたように。その自然な感情の高まりこそが歌だったんじゃないか。(p.41)

    そんな歌をきっかけにしたものがたりの中で、同級生たちは、自分とむきあい、自分たちを見つめ、心を通わせあっていく。

    女生徒たちの一つひとつのものがたりもよかったけれど、古文の教師のボーズもなかなかよかった。

    ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シと章がすすむにつれて、読み終わるのがもったいなくなり、シの章が終わったら、またドに戻って、もういちど、ゆっくりゆっくり読んだ。

    (4/13了)

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