モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408551159

作品紹介・あらすじ

最先端ファッションでオフィスの清掃人をつとめ、日常の謎も解くキリコ。彼女は越野真琴という地味な女性から、夫の友也の行動を探ってほしいと頼まれた。美形である友也の退社後には、数時間の空白があった。ところが友也が事故に遭い、3年間の記憶を喪失してしまう。その後、彼の身辺には不審な出来事が。キリコと夫の大介は、夫婦の絆をめぐる謎に迫るが…。

感想・レビュー・書評

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  • キリコ日常の謎シリーズ

    日常の謎だけど今回は複雑だった。
    何がアルマジロなんだろうと思っていたけど
    最後の最後になるほど…となった。

  • シリーズ第4弾 これまでは、ミステリーといってもキリコが清掃員としての仕事をこなす傍ら、簡単な謎解きをする短編集だったが、今回は趣が異なった

    キリコちゃんと夫の大介が一緒に探偵として謎解きをする長編となっている
    ミステリー作家としての本領発揮といったところか

    タイトルの「モップの精と二匹のアルマジロ」の意味が最後近くになってようやく分かった

    鎧のように硬い背中で丸まって、世界中のすべてから身を守っているアルマジロ
    愛される価値などないと信じ込んでいる人と、世間一般の意味では誰も愛せない人との結婚
    鎧のような皮膚を押し付けあっても、ヤマアラシのように痛みは感じないだろうが、体温すら心の柔らかな部分には届かない

    「恋愛感情も性欲も別にして、もう一つの好き。その人が他の人と違って特別で、その人と一緒にいたくて、一緒にいて楽しくて・・・それだって愛情じゃないの?」
    「恋愛感情はだれにも抱かないかもしれない。だけど、だれとも関われない人じゃない」
    というキリコの言葉にこの巻の主題が隠されていた

  • 清掃作業員キリコのシリーズ第4弾。
    3冊目を飛ばして買ってしまった…。
    キリコ初の長編。

    結婚3年目となる大介とキリコ。早朝勤務のキリコと普通の会社員勤めの大介が同じビルで勤務することに。
    そこで知り合った超美形のガスコンロ王子こと越野友也とその妻真琴。真琴は友也が残業していると嘘をついて外出している事実を知り、キリコに調査を依頼する。
    友也が別のマンションを契約して通っている事実を突き止めたが、その矢先に交通事故に逢い、過去3年の記憶を失う。自分が結婚している事実も、別のマンションに通っていた事も。

    …今回はキリコのお掃除スキルが発揮される場面が少なかったなぁ。
    こういう時に、知らない方がいいなんてことは、絶対ないと言い切れるキリコがカッコいいし、
    現実は考えている以上に冷たいが、目を逸らさずにいれば、その中にも少しの希望があるのかもしれない、と思う大介の優しさにいいコンビだなと思う。

    アルマジロをタイトルにしたのって、硬い甲羅があっても寄り添うアルマジロ夫婦を、人を(世間一般的に)愛せないのに、誰かと寄り添う人間をかけたのかな。

  • 清掃作業員キリコのシリーズ、やっと本当に読みたかった4冊目。新聞でこの本の広告を見て、近藤さんの本だし面白そう!読みたい!と思ったのが、このシリーズに出会ったきっかけ。結局、これがシリーズ4冊目と知り、後の3冊を読むのが先になってしまった。
    今回はシリーズ初の長編で、キリコと大介が再びメインで登場する。テーマは重いものの、優しいタッチで書かれており、さくさく読めた。愛情って当たり前だと思っていたけれど、難しいものだなぁ…。
    キリコの言葉はいつも読者をも元気にしてくれる。まだまだ、このシリーズ続いてくれたら良いな。

  • シリーズ初の長篇です。
    誰もが羨むイケメンと結婚した地味な女性・真琴から、夫が浮気をしているか調べてほしいと頼まれるキリコ。
    あまり現実的ではない導入部だけど、キリコを動かさなくては話が進まないので、まあしょうがないか。

    その後イケメン夫の友也が大介の目の前でひき逃げされ、直近三年間の記憶を失うという事態になり、キリコと大介は夫婦ごと、真琴と友也に関わっていくことになる。
    が、キリコがおせっかいというかお人好しなのはシリーズ通して知ってはいたけど、最近知り合った夫婦にあそこまで頼り切る真琴がちょっと不可解だった。
    だってキリコの方が年下だし、普通はもう少し遠慮すると思うんだけど。

    浮気を疑ったのは、夫の帰りがいつも遅いから。
    イケメンで性格が良くて高給取りの夫に対して引け目を感じていた妻は、「残業だから」という言葉を信じていたが、その会社は社員に極力残業をさせないことで有名な会社だった。
    では夫はいつもどこで何を?

    ところが肝心の夫が記憶喪失で、謎は最初から突き当りにぶつかってしまう。
    夫が隠していた秘密は確かに重たいものだけど、結婚する前に話をするのがフェアだったのではないか。

    二匹のアルマジロとは友也と真琴夫婦のこと。
    互いの体温を感じることもできないくらいの厚い皮で覆われた心。
    全てが明かされた後、二人はその皮を脱ぎ捨てて寄り添い合うことができるのか、それとももう手遅れなのか。
    その判断は読者にゆだねられる。
    私は寄り添い合うと思いました。

  • キリコシリーズ第4弾。
    今回は、初の大介とのコラボ。
    大介も探偵のような動きをするので、いつものキリコシリーズとは違っているし、ストーリー展開もいつもとは趣が違う。
    そして、最後に明かされる「アルマジロ」の意味。
    一言で言って、重い。
    悲しく辛い。
    でも、ひとつ思うのは、友也、真琴2人に幸あれと。
    救いはあるし、救いの一端を見つけていると思うから。
    力強く向き合ってほしいと思う。

    そして、自分は。。「アルマジロ」に近い人間だと思う。
    特に、真琴寄り。
    だから、真琴の考えていること、いや!ってほどわかってしまうな。。

  • 面白かった。
    キリコシリーズ初の長編でしたが、最後までいつもと
    同じリズムで一気に読み終わりました。
    軽いタッチながらも、キリコと大介の個性もいつもと同じで、それ以外の人物も存在感がとても上手く書かれていて読みやすかったです。
    まだ続編があれば良いですけどね。

  • キリコと大介の夫婦は相変わらずかわいい。
    後書きにもある通り苦い経験のが多いけど、介護だの無理解な親戚との軋轢や、悲しすぎる別れなど、キリコや大介みたいないい奴がこんな目にあうのは辛いと思うけど、ここらへんが近藤史恵らしい。
    坂木司は系統は似てるけど、シビアさは低い。
    ただ、若竹七海までの苦さはないので安心して読んでください。
    今回の夫婦、個人的にはどちらも気持ちが分かるので最後の決断は納得できた。
    しようがない、気持ちも自身の存在の在り方もも自分では変えられない。折り合いをつけて、そこで幸せになる努力をするしかない。
    2人が選んだことは打算じゃなく、努力なんだ。そう思える最後でした。
    ネタバレになるので、そこらへんの感想は省きます。

    そして、久々に主人公の夫婦生活が長く出てきたのですが、キリコのご飯美味しそう!
    普通ごはんなんだけど、遅れて食べる分のドレッシングをさっと作るとか、刺身買ってたのに旦那が帰ってこなかったらヅケにするとか、シチューを改変するとか、生活に根付いてるのがいい。
    掃除の話は少ないですが、主婦キリコの活躍はたのしいよ。

    そういや、あのマンションの隣の住人は眠り姫は戦うの、小説家さんですよね。京都在住じゃなかったっけ?

  • 読みやすかった。
    そして最後、後書きでまさかの4冊目…。
    全然気づかないくらい、この本から読んでも多分大丈夫で、でも、1冊目から読んで見たい気もガンガンする。

  • 二匹のアルマジロ、幸せになると良いな。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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