- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408551791
作品紹介・あらすじ
日本橋の廻船問屋の番頭・栄助の前に現れたのは、以前同じ店で働いていた愚図でのろまの権助だった。しかし、権助は庄内酒田の出店の主に出世したと聞いて、驚きとともに嫉妬の情も湧きあがり…。表題作ほか、葬具屋、花屋、奉行所同心、夜逃げした呉服屋など、お江戸日本橋に生きる人びとの悲喜交々の心情を名手が掬い上げる傑作人情小説集。
感想・レビュー・書評
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お江戸日本橋を舞台に、葬具屋、花屋、奉行所同心、夜逃げ呉服屋などそこに生きる市井の民の悲喜交々の人情ご描かれる6編の短編集。
歴史小説、時代小説に魅せられるのは、そこに描かれる喜びとの出会い方や、苦悩や悲哀に遭遇した時にそれを乗り越えるきっかけや、周囲の人間が温かく優しい人情が見えるからだと思う。
時に死や、お家取り潰しもあるが、そこに一抹の救いが必ず描かれる。
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宇江佐さんの江戸物は、本当に優しくて大好きです。
江戸市井に生きる人びとが丁寧に描かれていて、
それぞれの心情に心が揺さぶられます。
日常を、滅法界幸せと思える生き方って素敵ですよね。 -
宇江佐節絶好調。
幸せの尺度は何処にあるんだろうかと考えてしまう。
きっと平凡の積み重ねだろうと勝手に推測するけれど。 -
6話の話である。
『浜町河岸夕景』は、手習い所にも行けない 天蓋屋のおすぎが、主人公であり、子供のころに寂しかった事が今の幸せで大したことでは無かったのだと、、、
『桜になびく』は、妻とお腹の子を亡くした同心勝次郎が、後添いに妹を娶り、幸せに約束する言葉が、「お産で命を落とす事はならぬ」と。
『隣の聖人』は、呉服屋の番頭にだまされ店を無くした、主人一家と、裏店の武士一家とのつながり。
『花屋の柳』 「樹下石上」(じゅかせきじょう)--諸国を行脚する僧侶が、樹の下や石の上で野宿する事が、多いから、花屋は、柳の樹を植え、足袋屋は、店先に石を置くようになったと、書かれている。
結婚を親に反対された植木屋の一人娘の話であるが、一人息子の出来の良さに、感心する。
『松葉緑』は、蚊帳商の大お内儀の美音の年を取ってからの女も道の指南で、最後は、三男の息子の嫁を、貰う事になる。
『酒田さ行ぐさげ』は、廻船問屋の番頭栄助と、酒田の権助との話である。
この中で、本間家が、出てくるが、小さい時から、《酒田には本間様には及びはせぬが、せめてなりたや殿様に》と、言う言葉は、何度も聞かされて来た。
又、本間家は、本陣にも使用されたし、佐渡の城主で、御先祖さんは居たんだと、、、、言っていたが、今のように、パソコンで、検索する事も無く、この本を読む事も無かった。
母が、生きていたら、又、話が、一杯出来た事であろうと、思いながら、読み終えた。
阪神大震災、東日本大震災、この間のネパールの地震等を考えると、幸せってなんだろう。
この平凡な生活、食べる事、水が飲める事、眠れる場所が、ある事、そして、人とつながりがある事、家族がいる事、本が読めること、、、、全てが幸せなのだと、気づかないで、生活をしているのではないだろうか?と!
いつも宇江佐真理さんの本は、小さな事なのだが、人の幸せについて、人ぞれぞれの人生の奥深さを物語っている。 -
日本橋の廻船問屋の番頭・栄助の前に、以前同じ
店で働いていた権助が現れた。権助が庄内酒田の
出店の主になったと聞いた栄助の心中に、嫉妬の
情が湧き…。表題作ほか、全6編を収録した人情小説集。 -
人間というものが良くかけているなぁ。。と思わせる、6話からなる短編集。
個人的に「隣りの聖人」、「松葉緑」が好きでした。 -
宇佐見さんの独特の世界観というか、優しさというか・・・うーん、いつもながら満足でした。
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6作からなる短編集。時代小説といえば藤沢周平(ほとんど読んだ)や、池波正太郎、山本周五郎などが好きだが、宇江佐さんの作品は初めて読んだ。それぞれの作品が優しく趣があって(大御所にない女性の視点も)、人生っていいなと思える。ただ、「酒田さ行ぐさげ」の権助の後日談は読者の想像に任せて、あえてない方が良いかも。
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なんてことはない。
読みやすいということだけ。 -
ささやかな倖せ。時代小説って、すぐそばにあるファンタジーだ。