星々たち (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408553139

感想・レビュー・書評

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  • 章ごとに視点が変わる短編連作で、誰かひとりの人物について描く…という小説は前にも読んだことがあるけれど、こういう感覚は初めてだ。
    感動というか、凄い、と唸る感じ。

    奔放な実母・咲子とも、2度目の結婚で自分が産んだ娘とも生き別れた塚本千春という女。
    ひとつの関係に囚われず北の大地をさすらう千春の、数奇な性と生、そして彼女と関わる人々の、光と闇の物語。

    桜木紫乃さんと言えば、幸薄い北海道の女を描かせたら天下一品、というイメージ。
    南国ではなく北国だからこその厳しさや寒さ、乾いた空気が、物語全体をモノクロの風景に変えているように感じる。

    1冊通して塚本千春という女を描いている。そのはずなのに、最後まで千春が本当はどんな女なのか分からないままの不穏さ。
    どんな経過を辿ったのかは描かれているけれど、千春が何を思いどんな風に考えてその道を辿ったのか、そして後悔や悲しみ等はあったのか、というのがまったく分からないところが、独特ですごく良かった。
    ひとりの人をただの人として見つめるとき、実際こんなものなのかもしれない、と思ったりした。
    言葉で語ったとしても感情の全ては分からないのだから、語られないところにその人の真実を見つけるのは不可能に等しい。「こう思う」「こうだったのではないか」というのは、ただの想像に過ぎない。

    北海道のなかで土地は転々と変わるものの、千春と関わった人たちは皆、北の大地でつましく暮らしている。
    安定した職に就く人、金に困っている人、夜の世界に生きる人、夫婦で静かに暮らしている人…実際そこらに生きているような人々の、悲しみや小さな幸せや日々の暮らし。
    小さく光りながらやがて消滅してゆく命たち。
    ドラマチックではないけれど、それぞれに生きた分のドラマがある。

    全ての人が共通して語る千春の像は、細い身体にそぐわぬ大きな胸、美人ではないが妙に惹き付けられるような雰囲気、無表情で無口、何を考えているか分からない…。
    客観的に見れば明らかに不幸な生い立ちと理不尽な人生。それなのにただの不幸な女とは片付けられない不穏な魅力。
    千春もまた、小さく光っていつかは消える“星々”のひとつなのだ。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    奔放な母親とも、実の娘とも生き別れ、昭和から平成へと移りゆく時代に北の大地を彷徨った、塚本千春という女。その数奇な生と性、彼女とかかわった人々の哀歓を、研ぎ澄まされた筆致で浮き彫りにする九つの物語。

    とっても良い話ばかりだった。皆皆身勝手なんだけど人間らしい。短編集で主人公は都度変わるのだが結局全てがつながっており1つの物語を読み終えた感がある。

  • 母、娘、孫の女三代を軸にした短編集。親子の絆なしに、北国で過剰な期待をせずに淡々と生きる。いびつだけれど輝く星。こういったのは桜木さんならではだなあ。

  • 忘れていて2度借りた。
    昭和歌謡曲のような切ない痛い連作。
    でも地方都市には今でもあるのかな。

  • どんな人生にだって煌めき、輝く瞬間がある
    奔放な実母・咲子とも、二度目の結婚で授かった娘とも生き別れた塚本千春という女。昭和から平成へ移りゆく時代、血縁にとらわれず、北の大地をさすらう千春は、やがて現代詩の賞を受け、作家を夢見るが…。千春の数奇な性と生、彼女と関わる人々が抱えた闇と光を、研ぎ澄まされた筆致で炙り出す。桜木ワールドの魅力を凝縮した、珠玉の九編!

  • 星3.5くらい!
    読み終わった後なんとも言えないどんよりな気持ちになってしまった。。なんと不運な星の下に生まれてしまったんだ…特に千春さんよぅ。。不憫で不憫でもう。
    各章の巧みな繋がり具合はさすが桜木さんだなと思いました。

  • 北の女。三世代の人生を綴った短編連作もの。
    ひとりワルツ
     スナック『るる』の咲子とヤクザのヤマさん。

    渚のひと
     咲子の高校生の娘千春、育子の息子圭一の子を身ごもる。

    隠れ家
     ストリップ『ろまん座』麗香と千春。

    月見坂
     木村晴彦と塚本千春、結婚。

    トリコロール
     田上和雄と千春、義母桐子。やや子出産、子を置いて消える。

    逃げてきました
     巴五郎と千春。『女体』塚本千春。

    冬向日葵
     能登忠治と塚本咲子。そして千春。

    案山子
     河野保徳と千春。千春の半生『星々たち』

    やや子
     千春の娘やや子と金平昭慶。最後に案山子の伏線拾う。

  • 桜木紫乃作品の中では あまり好きな作品ではないかな。こういう母娘とか姉妹とかの話は好きだし 他にあるこういうジャンルの話はいいと思ったんだけど これはあまり。
    咲子はわかる。やや子もまだわかる。でも千春がねぇ。なんていうか 感情がないっていうか 何考えてるのかわかんないのが 怖すぎて 全く感情移入はもちろんキライとも思えず ひたすら怖かった。これってある意味ホラーの怖さ。
    新境地?

  • 咲子、千春、やや子三世代のそれぞれのお話。それぞれ独立はしているんだけれど底辺で繋がっている。決して幸福な親子関係ではないけれど、親を恨むでもなく三人三様、それを受け入れ生きているのが似ている点なのか。咲子も千春も何を夢に生きていたんだろう。その時々で精一杯だったのかな。咲かない咲子はそれでも最期、信頼できる相手に看取られた分少し幸せだったかな。北海道の漁村という荒寥とした寂しい土地だからこそ、この女性たちの行き方に共感できる点も生まれてくる。土地の勝利な気がする。東京が舞台だったら埋もれてしまうだろう。

  • 塚本千春という、男女の愛も家族の絆も求めず求められない女性が歩んだ数奇な人生を、彼女と関わる人々の視点から描く連作小説。
    人物設定が秀逸すぎる。何を考えているのか分からない千春の存在を、人生を投げたような人々が語ることで不思議な輝きを与えている。一方で、冴えない生活を送る人々も千春が側にいる時は輝きを見せる。一瞬の相乗作用の後の虚無感が何とも言えない。

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プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『氷の轍』『裸の華』『霧(ウラル)』『それを愛とは呼ばず』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『星々たち』『蛇行する月』『ワン・モア』『誰もいない夜に咲く』等、著書多数。

「2017年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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