● メモ
ヒロイン、五月女リオは、元子役の伴リオ
シェアハウス、チロリアンハウスでは、レンタル家族を行っている。
伏線は張られているが、あからさま。伏線の貼り方が巧妙とはいえない。分かりやすい伏線から、子供向けのミステリという印象がある。
「伏線があればいいんでしょ」的なあからさまな伏線が張ってあるが、これは狙っているのか。このあからさまな伏線のせいで、全体的に幼稚に感じる。
ミステリとしてのデキは、トリックは古典的なモノやトリックとは思えないような幼稚なもの。推理っぽい作品は、ドローンを使うとか、器を食べるとか、オリエント急行的な全員が犯人というトリック。そうでないものは、日常の謎的だが、エレガントでない真相。同性婚とか、人物入れ替え。そのほか論理パズル。よく言えばバラエティに富んでいるが、連作の割に首尾一貫もしていない。
トリックが陳腐で、話作りが幼稚。キャラクターが少しいい程度のデキの作品。★2か。
● 第一話 俺の妹があんなことに!
五月女リオは、満月というプロフィールの漫画家の依頼で、レンタル家族として妹となる。これは、漫画のキャラクターのモデルとするため。
満月がプレゼン用に書いたリオをモデルにした「妹」のイラストに髭が掛かれるという事件が起こる。容疑者として、リオの前にレンタル妹をしていた梶谷香という女がいるが、こちらは香水の匂いがきつく、部屋に入ったとは思えない。
リオしか犯行ができないと思われたが、真相は、ドローンを使って髭を書いたというもの。ドローンを使うという点は、花火大会での会話として伏線があった。
犯行は、満月の自作自演。満月は、梶谷香を遠ざけるために、梶谷のせいにしようとして、ドローンを使ったトリックを行ったが、梶谷が香水を使っていたために、梶谷が容疑からはずれたという展開
ドローンを使うという物理トリックがまずひどい。伏線もあからさま過ぎる。凡作なのだが、バカミスでもあり、キャラクターはそれなりに立っている。
● 第二話 ほっとけないのよ、姉ちゃんは
筒香真沙実と葵という親子。葵は、母の再婚相手家族になつかない。そのため、リオにレンタル姉になってほしいと依頼がくる。葵は、女の子の格好をしており、美少女に見えるが男。真沙実の再婚相手は女性。そして、娘と思っていた女性は事実婚相手。葵はそのことを知っていて、仲良くなろうとしなかった。
再婚は失敗に終わり、真沙実、葵親子もチロリアンハウスに住むようになる。
葵が男の子であるという点の伏線、真沙実の再婚相手が女性で、娘と思われていた女性が事実近相手であったという伏線もある。
満月は覆面作家。これは、満月が、本当は「大家望」といい、シェアハウスのオーナーであることの伏線
葵がなぜ、真沙実の再婚相手に懐かないのかというのが謎で、真相が、重婚をしていたからというもの。ストーリーとしてどうかと思う。話作りが下手。腹黒いシングルマザーの真沙実と、美少女っぽい男の娘の葵というキャラクターはそれなりに立ってはいる。
● 第三話 息子の水着にはわけがある
水泳選手の祖父と孫が登場。リオが祖父である鈴木陽之介の息子のふりをする。孫が、祖父と一緒に住みたくないので、食べられる器の和菓子を利用して、効果な皿を祖父が割ったことに見せかけようとするが、リオが犯人にされ掛ける。結果として、祖父がチロリアンハウスに住むようになり、祖父と孫は微妙な距離感を持っていい関係になるというオチ
食べられる器の和菓子を利用するという脱力トリック。動機も、祖父と一緒には住みたくないというひどい動機。相変わらず、さりげなさが全くないあからさまな伏線は張ってある。このあからさま過ぎる伏線は、狙ってやっているのかもしれないが、幼稚に感じてしまう。
● 第四話 娘のためなら嘘くらい平気
ストーリーがこれまで以上に荒唐無稽となり、外務省職員の依頼を受け、チロリアンハウスのメンバーが、イリダル国の王女のために、大家の家族のフリをする。偽家族とバレると外交問題になるという。
伴リオが出ていたドラマがイルダル国で放送されていて、リオの正体がバレかけたり、外務省の職員のフリをしていたのが、イリダル国の王族の者だったり、めちゃくちゃな展開。DNA鑑定が得意というイルダル国の特徴を踏まえ、大家や銀食器に偽のつばを付けておくというトリックで、瀬川が偽者と暴く。この部分は一応の伏線があるが、相変わらずのあからさまな伏線。これまで以上に子供向けな作品に仕上がっている。ミステリ風ギャグ漫画のような短編
● 第五話 家族なんかじゃない
「俺の妹があんなことに!」で登場した満月と香が出てくる。さらにリオの両親が登場。チロリアンハウスからリオを連れて帰ろうとする。
満月が死んだと思わせる推理ゲームが行われる。犯人以外は嘘を付かないという条件での論理パズル真沙実が酔っていることから偽の発言をする程度のトリック。
リオの母がヌードの話を持ってきたとき、リオが泣いたことを、母が「ウソ泣き」といったことから、リオは母に不信感を持っていた。本当は嬉し泣きだったという。リオは母がリオのプロ根性を信頼していないことから、母に対する信頼を失っていた。
この話もめちゃくちゃ。リオの家族の話も別段、いい話でもなく、推理ゲームは論理パズルレベル。今短編集全体での「転」に当たる作品で、第6話に向けての伏線として、満月を出している。
● 第6話 人はそれを家族と呼ぶ
大家の家族が登場。オーヤホテルの一族だという。大家さんが、「大家望」だと見せかけて、実は、満月が「大家望」だというオチ。ミステリとしては、オーヤグループのボスである一族の祖父に毒を飲ませていた。どうやって毒を飲ませていたかについて、真沙実、葵、陽之介が推理をする。それぞれの推理が否定され、大家のヒントを受けて、リオの推理。家族全員の共犯で、家族全員が毒を飲んでいたというもの
最後に、大家は自分が佐藤家康という役者だとばらすが、最後の最後で、佐藤家康が別人と分かるが、大家が何者かは謎のまま終わる。
ミステリとしては、多重推理があって、オリエント急行的なトリック。ありがちな作品