ちょっと長い関係のブルース - 君は浅川マキを聴いたか

制作 : 喜多條 忠 
  • 有楽出版社
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本棚登録 : 23
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408593524

作品紹介・あらすじ

熱く、冥く、重く、でも何かがあった"あのころ"そして、マキがいた…さまざまなジャンルの執筆者が、伝説の歌手・浅川マキをとおして60年代、70年代という"時代"を鮮やかに切り取ったエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 日がな一日、ずっと浅川マキを聞いていると、たいがいの人は頽廃的な気分になったり、アンニュイを感じて厭世的思いにおちいったりするのかもしれませんが、その雰囲気はわからなくもないけれど、私はそれをやりすごしてもっと突き抜けて、「心が柔らかく開かれて・・たまらなく寂しい」(長谷川きよし)気持ちになるのです。

    皆が愛憎を込めて哀愁の彼方に蹴飛ばした70年代を、ひとりで丸ごとヒョイと背負ったまま、今に背を向けてただひたすら陰気なせつないマイナー(短調)の曲を、暗闇のむこうから歌い続けた浅川マキに対して、上野千鶴子や最首悟から田中優子や美樹克彦まで、総勢35人の愛好家たちが惜別の心情を露土しているのが本書です。

    ウォークマンで聞いたり、大勢で合唱されることもカラオケで歌われることもなく、ましてやヒットチャートなどというものからもっとも縁遠い歌が浅川マキの歌ですが、心にしみるとか、たまらなく切ないとか、どっぷりつかって酔うということに無関心ではない方にとっては無視できないものです。

    わが平岡正明が「浅川マキの『セント・ジェームズ病院』の封を今切る」という文章で書いています。
    この曲を自分で訳した彼女は、男の立場で歌うか、女として歌うかゆれていて、結局は前半を男の立場で、後半を死んだ女の嘆きの立場の相聞歌として歌っているようだといいます。
    「男はセント・ジェームズ病院に女に会いにきた。女は死んでいる。冷たい空気の部屋、白く長いたぶん解剖台の上に、ベソッと置かれていた。おめえはこれで楽になった。どこへでも好きなとこへ行ける。どこへ行っても俺みたいな男に会えねえだろうけどよ。ああ、俺は死にてえ。俺が死んだときには、ピカピカのエナメルの靴と金鎖の時計と洒落た帽子をかぶせて埋葬してくれ。俺が文無しだと知れないように」

  • 第一章から素晴らしいエッセイが続く。著者は年代的に1940年から1950年前後生まれの人が中心だ。よって、浅川マキをテーマに68~70年あたりの激動の時代が描かれているものが多い。ちなみに、僕が優れたエッセイだと思う理由のひとつは、決まったテーマがあっても、それをもとに書いたその人自身が語られているかどうか…だ。

    第一章に収録されたエッセイすべてが浅川マキを語り、そして自分を語っている。リアルに、楽しそうに、胸をはって、自慢げに、嬉しそうに、懐かしそうに…と、こんなことを書いているとキリがなくなるが、とにかくその人が浅川マキを通して自分を大いに語っている。だから、読む僕は感動する。
    知らない時代のことでも、知らない名前があっても、感動する。本当に素敵で素晴らしいと思ったし、実際に素敵で素晴らしい。

  • 新聞記事によると、浅川マキさんと大学時代から長い交友を続けてきた作詞家の喜田条忠が責任編集、上野千鶴子、安西水丸、田中優子、小椋佳らがつづったエッセイを収録。

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